やや辛口っぽい感想ですので、この映画をお好きな方は読まない方がいいかもしれません。まあ、「そういう考え方もあるんだ」などと笑いながら読んでいただければ幸いです。あと、思いっきりネタバラシしていますので、これから絶対に観るつもりの方は読まないように!
観てから1ヶ月ぐらい経ってから書いたものなので記憶違いの箇所があるかもしれませんが、その辺はご容赦を。というか、間違いがあったら指摘してくださいませ。なお、1回で載せようとしたら文字量オーバーになってしまったので2回に分けます。こっちから読んでね。
※ ※ ※ ※ ※ ※
一組の老夫婦がいる。妻の方は老人性痴呆症が進行しており、夫や家族の顔を見てもそれが誰なのか分からない。そんな妻のために、夫は自分たちが若かった日々の想い出を綴ったノートを読み聞かせる――。実に美しい物語である。心温まる感動作だ。こんな作品を悪く言っちゃバチが当たるってもんである。
でもさ、どうも首を傾げざるを得ない描写が随所にあるのよ。そもそも出会った頃の二人の行動は、若気の至りとはいえ「それはアカンのちゃう?」の連続である。まずはノア! お前、動いてる観覧車によじ登るとは何事じゃい。周りの迷惑を考えろって。そういうのは「行動力がある」とは違うぞ。そして、そんなノアのズボンを下げるアリー! 普通、会ったばかりの男のチャックに手をかけるか? お前には恥じらいってもんがないのか? あと、アイスクリームを道路に捨てるな!
この二人、付き合い始めたかと思ったら、やたらめったらイチャイチャ。そしてチュッチュッ。この映画の舞台は60年ぐらい前でしょ? いくらアメリカとはいえ、あんな風に人前でイチャイチャベタベタしていてヒンシュクを買わなかったんだろうか。しかも、あれだけイチャついている割には、その時点ではまだアリーは最後の一線を踏み越えさせてなかったわけだ。それじゃあノアが可哀想だて。生殺しじゃん。
などと攻撃的に書いてみたが、恋する男女ってヤツは結局のところすべてバカップルになり得る。僕だって過去を振り返れば、人のことをとやかく言う資格はない。なのでまあ、以上のことは大目に見よう。って、言い方が思いっきり偉そうだけど。
肝心なのは、ここから。終盤になって明かされるのだが、年老いたノアがアリーに読み聞かせている物語は、実はノアが書いたものではない。アリーが執筆し、「いつか私の記憶が消えそうになったら読み聞かせて」と渡したものである。これは感動的な種明かしでもあるわけだが、冷静に考えると「なんかヘンじゃねえか」と言いたい気分にならない?
たとえば、ノアと肉体関係を持った戦争未亡人がアリーと鉢合わせする場面があったよね。ここでちょっとした衝突が起こるのかと思いきや、アリーは戦争未亡人を快く受け入れ、食事に誘う。で、食事を終えて家を出た未亡人を、ノアが彼女のクルマまで送る。その時、未亡人はノアに「素晴らしい人ね」みたいなセリフを言うのである。素晴らしい人ってのは、アリーのことだ。そう、このストーリーを書き綴った本人なのよ。
自分が記した物語の中で、いけしゃあしゃあと自分への褒め言葉を書いているわけだ。かなりの厚顔ぶりじゃん。しかも、玄関先でのノアと未亡人との会話はアリーには聞こえていなかったはずだ。アリーがノアに「あの人、なんて言ってたの?」と聞いたんだろうか。ノアがアリーに「キミのこと、素晴らしい人だと言ってたよ」と伝えたんだろうか。どっちにせよ、ノア経由で聞いた自分への褒め言葉を「事実」として記すとは、ちょっと厚かましい気がするぞ。
ここまで読んで「お前、その考え方は意地が悪すぎ」と思う方は多いだろう。実は僕も書きながらそう思っている。でもまあ、もうちょっと付き合ってね。
<つづく>
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