ちょっと前にCDをまとめ買いした。一通り聴いたので、感想を書いておこう。左上から順番に。
●奥村愛子『恋したいハート』
『いっさいがっさい』で僕のハートを鷲掴みにし、『砂に消えた涙』『他人の関係』のカバーで僕を歓喜させてくれた奥村愛子の新曲である。しかも新境地。これまでとは違いジャケットに初めて本人の写真が使われており、デザインワークを含めて「昭和歌謡」路線からは外れている。うん、これで正解。あのイメージを定着させてしまう必要はない。まだメジャーデビューして2年に満たないのだから。
とはいえ、今回も曲調そのものは、いわゆる昭和歌謡っぽい。というか、なんと作曲したのは天下の筒美京平である。『たそがれMY LOVE』をカバーしたことが発端で交流が始まったらしい。そしてカップリングはユーミンの『14番目の月』のカバー。これは『さよならみどりちゃん』という映画(名古屋では10/15公開)の主題歌でもある。
さて、『恋したいハート』。こういう楽しい曲に野暮な解説は不要だろう。聴いてて心地よければそれでオッケー、なのである。『14番目の月』も同じ。何度も繰り返して聴きたくなる曲だ。
この奥村愛子、次のシングルでは、つんく♂が作曲した曲を歌うらしい。一時期の勢いは失っているとはいえ、つんく♂も相当の才人ではある。どんな曲になるのか楽しみだ……とは言いつつも、本音は「奥村愛子が自分で作曲すればいいじゃん」だったりもするけど。でもまあ、とにかく次も楽しみにしてます。
●高橋徹也『ある種の熱』
高橋徹也が98年に発表した『チャイナ・カフェ』は名曲中の名曲だ。歌詞も曲もアレンジも実に素晴らしいし、テナーサックスの意図的な調子外れっぷりは絶妙である。これほどの傑作は滅多に存在しないと断言していいだろう。その『チャイナ・カフェ』が入ったアルバム『夜に生きるもの』は、ジャケットや歌詞カードのアートワークを含めておそろしく完成度が高い作品集だった。
そして今回の『ある種の熱』。まずは帯に書かれた宣伝文を紹介しよう。
<2ndアルバム『夜に生きるもの』、3rdアルバム『ベッドタウン』の世界観を踏襲した最高傑作の誕生!!>
確かにジャケットのデザインは『夜に生きるもの』の雰囲気に似ている。何よりの特徴は、わざと文字間を詰めた明朝体である。くっつきすぎじゃん、なんてツッコミは野暮よ。
で、肝心の中身。いやぁ、いいですわ。これぞ高橋徹也の世界、って感じ。歌詞の語り手は、強迫観念に囚われたかのような男だ。病んではいるのだが、どこか軽やかで、冷静でもある。迷ったり悩んだりしている自分を常に客観的に眺めているような印象を受けるのだ。そして曲調は、ごく大雑把に言えば「ジャズっぽい」。端正で少し頼りなさを感じさせる高橋徹也の声にジャストフィットする演奏であり、アレンジである。おそらく自分の声質にはどういう楽器が合うのかを知り抜いているのだろう。もちろん、それまでには試行錯誤を繰り返したのだろうが。
そんなわけで大満足できるアルバムなのだが、後半は落ち着いた曲が続くせいか、いつの間にか聴いていることを忘れてしまう。もしくは眠くなってしまう。これは決してケナしているわけじゃなくて、つまりそれだけ心地よいサウンドってことね。
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