純じゃぱ の えいご道中膝栗毛

アメリカに12年もいたのにトホホな英語・・・純じゃぱが涙をインクにその叫びを綴ります。

182 ハロウィンの”故郷”を訪ねて

2006年11月06日 21時22分46秒 | 英語えいごエイゴ
 古新聞を整理していたらハロウインの話を見つけました。 

 いったい何のために、こんな騒ぎを始めたんだ。誰がいつ、どこで、どんな風に?分かるまい。君ら子供は何も知りはしない・・・。幻想小説家レイ・ブラッドベリの『ハロウィーンの木』は恐ろしげな謎の男の問いかけで物語が始まる◆お化けの装束で町の家々を駆け回る「トリック・オア・トリート」。お菓子をくれないと悪戯するぞ。大人を怖がらせる「つもり」で大興奮で走る子供たちの姿は愛らしい。米英の十月の風物詩は日本でも見慣れた光景となった。でも一体これは何のお祭りなのか。子供でけでなく多くの大人も答えを知らない。◆起源は古代ケルト文明にさかのぼる。収穫期の十月は一年の終わり。この時期に現世と霊界の扉が開き、精霊や悪霊が人と同じ空間で交差する。生と死が等価で向き合う厳粛な日。先人は灯火で結界を築いたという。駆逐されたケルトの信仰にキリスト教の風習が移植され、気楽な現在の子供の遊び文化が育った。(以下略)
                    (日本経済新聞10月16日「春秋」欄)

 結構、厳粛な起源を持っているんだと知り少し調べて見ました。

 ケルト人とはThe Celtsと綴り、紀元前に中央アジアから欧州にやってきて広く分布した多神教の民族のことです。
 彼らの運んできたケルト文化は欧州大陸ではゲルマン人に圧迫されシーザーのローマ文化にも征服されて融合しましたが(大陸ではフランス人となった)、現在の英国周辺では両文化の影響がその西部まで及ばずウエールズやアイルランドでケルト文化が残ったのです(現代でもケルト語系文化圏としてアイルランド・スコットランド・ウエールズがあげられる)
 ケルト文化では10/31が一年の終わり大晦日でこの日の夜、死者の霊が家に戻ったり精霊や魔女が出ると信じていました。
 それでケルト多神教の祭司ドルイドは新年を迎えるにあたり大きな焚き火をして悪霊を祓いました。
 人々は家内安全を祈りこの火の消し炭をカブの中に入れ、また亡霊を鎮めるために村の入り口には収穫の一部を捧げました。

 15世紀になってもこの伝説はアイルランド人の間に残り悪霊を追い払うために、窓辺には奇怪な顔が彫られたカブに火が燈されるようになります。
 捧げ物の収穫物も村の入り口に置かれる代わりに子どもたちが家々を訪れて求めるようになりました。
 その時何も出さない家は亡霊に代わって子どもたちから災いを受けると考えられるようになります。
 17世紀に米国に移民したアイルランド人は、ロウソクを立てるに、同じ野菜でもカブよりもカボチャの方が彫りやすいと考えるようになりカボチャを使うようになります(カボチャしか手に入らなかったという説もあり)
 そして子どもたちに贈り物をする風習はそのまま残りました。

 いつしか、このケルトの風習がキリスト教に取り込まれていきます。

 もともとキリスト教の暦では11/1が「万聖節」ですべての聖人の記念日でした(5/13が万聖節だったが、8世紀にローマ法王グレゴリー3・4世が移した)
 元来カトリックの記念日だったのですがプロテスタントの教会も「先に天国に召された者たちの記念日」と位置付けています。
 (一般的にプロテスタントでは聖なる存在は神のみで聖人という概念はない)

 これを英語ではAll Saints' DayAll Hallows' Day古くはHallowmasと呼んでいました。
hallowはアングロ・サクソン語で「聖人(saint)」を意味します。

 それで前日10/31の夜がAll-hallow-even(=evening before All Hallow's Day)でHallowe'enとなりHalloweenとなったのです。
 これはChristmasとChristmas Eveの関係と良く似ています。
 そもそもEveとは前夜をあらわすのが元でそれが発展して「前日」をも意味するようになったのがよくわかります(接尾語-masはキリスト教で「・・・祭」を意味することば)

 そしてこの万聖節の前夜というお化けやランタンとはまったく関係のない夜にケルト人の風習が取り込まれ現代のHalloweenの風習となったのです。

  アイルランドでは今でもAll Hallows' Eve (Hallow Eve)と呼ばれることもあります。
 ハロウィンはアイルランド・米国・英国・カナダ、そして豪・ニュージーランド・比で祝われますが、フランスやスペインにも広がりを見せています。
 フランスはこの日を祭日としており、ケルト人末裔としてケルト文化を少し残しているのかも知れません。
 イギリス、アイルランドなどでは、今でも教会的行事のほか古代ケルト人の風習に由来する焚火、運勢占い、リンゴ食い競争などの民俗的行事が行なわれるそうです。
 最近は、お化けのコスチュームもお祭り色を強め、映画の影響を受けて海賊や、ディズニーものが出回っています。
 さらに子供だけでなく大人も仮装パーティーを開くようになり、そのためのコスチュームもあらゆるもの、バニー、看護婦、メイドなどセクシー系のものまで出現する始末です。
 昔の土俗的な厳粛な祭事から現代の宗教色ゼロのパーティーまでその様相はさま変わりしましたが、これもまた流れゆく文化の変遷ということなのでしょうか。

レイ・ブラッドベリーは、きっとこう思っていたんだと思います。
 「無邪気に騒ぐのもいい。でもきっと君たちもいつかは向こうの世界に行く。そして年にたった一度のこのときに過去の無邪気な自分たちを見るだろう。 でも過去の自分は一向に彼岸にいった自分に気づいてくれない。未来の自分にそんな寂しい思いをさせないように」と。


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長くなってしまい済みません。ハロウィンの歴史を訪ねてみました。異端だったケルトの宗教行事がキリスト教に取り込まれていくさまは民族の生きざまそのもののような気がします。しかし驚いたことにお化けなど縁起の悪い風習に対し多くのキリスト教会は宗教に無関係なものとして無視しているところが多いようです。人間の歴史はホント宗教抜きに語れませんね。
なお万聖節の翌日つまり11月2日は死者の日となっており、死者の霊魂に祈りをささげる日となっています。死者が戻ってくる日と信じられていることから、先祖を偲んで世界各地で墓参りが行われています。

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