「うねらない動作」については既に何度か触れたが、改めて考えて見たい。
甲野善紀は「捻らない、うねらない、ためない」動作を武術的に優れたものとしている。
「うねる」というのはムチ動作のことと考えれば良いだろう。「古武術に学ぶ身体操法」(岩波アクティブ新書)p82にはこのように書かれている。
鞭をかんがえればわかるように、「うねり」というのはささやかな人力が、音速を超えるほどの威力を発揮できる動きなので、たしかに凄いことです。このように、「うねり」の有用性は、決して否定できません。
ムチ動作は旧来の打法(Ⅰ型)や投球に活用されている。甲野もその優れている点は認めているのである。しかし「うねる」動作には欠点がある。続けて・・・
しかし、「うねり」の動きがその威力を発揮するためには、準備する、つまりうねっている時間と空間が必要になります。鞭の先端をいきなり唐突に飛ばすことはできないでしょう。このようにうねり系の動きは、必要なときに直ぐに使えないという欠点があるのです。
武術においては文字通り致命的なわけだが、武術ばかりではなく、始動から加撃までの時間が短い方が有利なスポーツ動作については、「うねり」の時間差が不利に働くのである。
現代の打撃理論にとって非常に重要な点であるということは何度も述べてきた。メジャーの打者のほとんどが採用するⅡB型の最大の特長は「うねらない」ことにある。旧来のⅠ型に比べて、打球の飛距離は落ちるが、打率を上げることができるだろう。
さらにボクシングの「ノーモーションのパンチ」がまさに「うねらない」打撃を意味するという風に、スポーツ動作一般にとって重要な概念であることは間違いない。
「うねる」と「うねらない」の違いを具体的に見てもらいたい。NHKの講座「古(いにしえ)の武術に学ぶ」の一部 を借用した。
(文中敬称略)