野老の里

奥武蔵をメインに日帰りの山歩きを中心としたブログです

奥武蔵へようこそ 平成30年12月24日 城山から熊倉山を経て弟富士山

2018年12月30日 | 奥武蔵へようこそ
(笹平)

2018年はこれまで奥武蔵の縁辺にある山を主に歩いてきた。今回歩く熊倉山はその南西の端に位置する山で、そこから派生する聖尾根の西側は秩父多摩甲斐国立公園の範囲内となる。以前蕎麦粒山を歩いた際、ボクは酉谷山までを奥武蔵と看做していた。それは熊倉山から酉谷山以東の都県境尾根が国立公園との境になっていたからなのだ。蕎麦粒山が奥多摩と奥武蔵を画する山だとしたら、熊倉山は奥秩父と奥武蔵を画する山だとしてよいだろう。今回は冬の陽の短い時期ということもあり、城山(じょうやま)と弟富士山(おとふじやま)を繋いで歩く一般向け縦走ルートを歩くことにした。

白久駅から城山
朝、始発電車を乗り継いで白久駅へやって来る。当初は今年度中の熊倉山登山を予定していなかったのだが、奥武蔵のメジャーピークは歩ききってしまおうと朝早い時間にやって来たのだ。駅前から谷津川沿いに延びている道路は熊倉山登山口へと続く林道だが、城山への縦走ルートはここを東に折れて線路を渡った先から取り付くことになる。駅前の案内板を見ると最初に登る城山には「じょうやま」とルビが振ってあった。前日までやや曇りがちな天気が続いたせいか山のほうはまだ雲が掛かっている。天気が良くなるとのことだがどうなることやら。

(踏切を渡ると鉄道撮影に良さそう鉄橋がある)

道標の立つ分岐を上がっていくと枯草に覆われた林道へと変わる。林道を上がると急斜面をトラバースするように付けられた山道になる。よく整備された道ではあるが、岩が剥き出しの斜面なので落石が怖い。擬木の土留めが現れると北に延びる尾根を回り込むように上がっていく。手元の地形図・地理院地図を見ると谷を東へトラバースするかのごとく描かれているが、実際はアンテナ施設から北に延びる尾根を木段を使って上がっていくことになる。木段のない急斜面を登れば草地が広がるアンテナ施設の記号が描かれたピークに出る。伐採されているが周りの木々が高くて展望はない。

(城山登山口付近)


(まずは西へ延びるトラバース道を行く)


(アンテナ施設の記号がある山頂へ向かって 基本的に杉檜が多い)


(アンテナ施設があるとされるピーク)

アンテナ施設のピークより先は細かなアップダウンが城山まで続く。土留めの木段が多く、腿やふくらはぎへのダメージが蓄積されていく。アンテナ施設のピークの次は山と渓谷社発行の「新・分県登山ガイド 埼玉県の山」によるとP1だ。確かに「山火事注意」の看板がある。P2は地理院地図にある510m峰で、長い木段を登った末に着く。P1と同じく杉檜に覆われた暗い山頂だ。P3へは地形図で見る限りだと細いフラットな尾根だが、実際はアップダウンが多い。ただ落葉樹が多く、冬場の今は枝越しに展望を得ることもできる。P2以降は小ピークが多く、どこがP3~5なのか正直わからない。ただ城山に差し掛かると落葉樹林に覆われた比較的緩やかな斜面を登っていくので、唯一歩いていて現在地が把握できた。

(分県ガイドでP1とされるピーク)


(P2へ続く長い木段 尾根が細く九十九折が作れないので木段がどうしても多くなる)


(展望が得られる所はなく、冬枯れの時期限定で木の間越しの眺めを楽しむしかない)


(荒川を見下ろす 右端の一番高い所は丸山辺りだろうか?)


(熊倉山方面を望む 麓から山頂を望める所がなかったので地形図を見ながら現在地の把握しかできない)


(城山直下の緩斜面 奥に見えるのが山頂)

雑木林の斜面を登りきると暗い檜林が広がる城山の頂上部(648)に出る。地形図に描かれた通りの広い山頂だが、戦国時代に山城として使われていたため人為的な堀切が通っている。特に頂上であることを示すものは無く、中ほどにある堀切の辺りが最も高くなっているようだ。頂上部の東側に道が付けられていて、それを辿っていくと南へ延びる尾根に出られる。尾根は東へ折れる辺りでガイド用のピンクテープがいくつも括り付けられており、テープが示す踏み跡を下ると林道が乗り越す熊倉城跡入口・熊倉山城山コース登山口に下りてくる。

(城山頂上に上がって最初にある堀切)


(山頂の様子)


(中ほどにある堀切 この辺りが一番標高が高いようだ)


(南端の堀切)


(ピンクテープがベタベタと貼ってある 熊倉山へは右に折れて下っていく)


(熊倉城跡入口 ここから城山に上がれる)

熊倉山へ厳しい道を行く
林道脇で一休み中に時間を確認すると「山と高原地図」(昭文社)のコースタイムよりやや遅れ気味だ。アップダウンの多さで早くも疲れが出てきているのだろう。もっとも分県ガイドのコースタイム程度には歩けているので、山と高原地図のコースタイムが早すぎるのかもしれない。藪っぽい登山口付近を抜けると少しの間緩やかな登りが続く。途中谷津川によってできた谷から展望が得られる。どの辺りが見えているのかはっきりはしないが、送電線が右手奥へ続いていくことから三峰口駅と白久駅の間に広がる集落と秩父御岳山から東に派生する尾根が見えているのだろう。

(熊倉山城山コース登山口)


(尾根上は傾斜が緩く所々展望が得られる)


(林道を見下ろす辺りから展望が得られる 谷津川の谷を通して三峰口~白久駅間の集落が見える)

「熊倉山頂に至る」と書かれた道標が現れると緩やかな尾根も終わり、地獄のような九十九折の登りが始まる。地形図を見ると996mの標高点が描かれているが、特にピークであるという訳では無さそうだ。おそらく尾根の分かれ目なのだろう。まずはそこを目指して登っていく。踏み跡は明瞭な九十九折で登る分には比較的歩きやすい。ただ急斜面のトラバースなので体力的に楽なことはない。細かな九十九折が終わるとしばらく東へトラバースが続く。「城山コースNo.10」と書かれた道標が立つ辺りが標高750m。再び九十九折となり、No.9の道標の辺りでようやく九十九折も終わりに差し掛かり、No.8の道標の辺りでは尾根に乗ったことがはっきりとわかる。その後は尾根が広がり、いつの間にか996mは過ぎてしまったようだ。

(ここから急斜面に付けられた九十九折が始まる)


(九十九折の様子 登る分には良い道)


(これだけ傾斜が急)


(No.9の道標 この辺りで九十九折が終わる)


(No.8の道標)


(No.7の道標 この辺りが996mだろうか)

九十九折が終わればしばらくは傾斜の緩い道が続く。しかし既に10時半を回っており、12時までに山頂に着くにはあまり時間がない。何せ400m以上の標高差を残しているのだ。No.6の道標が立つ細長いピークを越えると一旦大きく下る。鞍部から先は急傾斜の岩稜帯で落石注意の看板が立つ。周囲はヤシオツツジなどの灌木類が多く、陽当たりは良い。問題は冷たい風が終始吹き付けてくることだ。岩尾根の急斜面を登っていると城山を越えてきたダメージも相俟ってか、ついに右の太腿が攣って動けなくなる。通常ならもう城山は越えたので引き返して帰宅してもそれなりの格好はつくのだが、この足であの急な九十九折を下りられる自信はない。何とかして日野コースへ入るしかなさそうだ。

(ようやく傾斜が緩んでくる)


(No.6の道標が立つ細長いピーク)


(岩稜帯は低い木が多く、このように両神山が見える所もある)


(冷たい風さえ吹き付けなければ面白いルートだ)

岩稜帯を登りきった先は1238m峰の頂上だ。檜に覆われた尾根の一部といった具合だが、木の間越しに熊倉山の山頂を望める。地理院地図を見ると1238m峰を巻いて笹平へと下るように道が描かれているが、実際は笹平へは寄らずに尾根伝いに山頂へと道が続いている。再び岩稜帯を下り、杉檜が植えられた暗い鞍部がかつての日野コース分岐だ。現在日野方面へはロープが張られ、踏み跡もない。檜林の急斜面を登ると不意に大岩のある広場に出る。山頂まではあと一息だが、ここで右足が痛んで動けなくなった。山頂でのんびり食事をしている時間も無さそうなので、大岩の陰で昼食用に買った調理パンを食べる。風が冷たい上にパンもキンキンに冷えていて苦行というほかないが、昼食ついでに休憩も取れたせいか足は何とか動かせるようになった。

(1238m峰の頂上)


(一旦下るとしばらく雑木林の岩稜帯)


(かつての日野コース分岐)


(大岩の広場)

山頂へは檜の植林中をひたすら九十九折で登っていく。足の痛みで何度も立ち止まりながら進むと日野コース分岐の白い道標が見えてきた。山頂までの標高差はおそらく50mもないだろう。分岐が見えた嬉しさで元気が出たのか一気に熊倉山の山頂(1426.5)に出る。南北に長い山頂で、意外にも北側は日当たりが良くて明るい。幅もある山頂を南へ進むと岩が露出した中に三角点の標柱が埋設され、傍らには古びた山頂標識が立てられていた。檜と雑木に囲まれて展望はないが、木の間越しに傷の無い武甲山の姿を拝むことができた。

(熊倉山頂上)


(左に見えるのが武甲山)

快適な日野コースを下る
苦労の末に登りきった熊倉山頂上ではあるが、冬場の今は下山に使える時間も残り少ない。5分も滞在せずに下山に取り掛かる。日野コース分岐まで戻り、トラバース道が続く日野コースへと入る。地理院地図だと1300m付近から分岐するように描かれている。しかし実際は山頂近くで分岐し、しかも東へ延びる尾根を一回越えて沢の近くで折り返して尾根を回り込んで笹平へと下っていく。急斜面の九十九折が続く城山コースに比べるとアップダウンもなく歩きやすい。ところが歩き易いにもかかわらず歩みは捗らない。というのも強烈な吐き気に襲われたからだ。大岩の広場で食べた冷たい調理パンが胃腸にダメージを与えたのだろう。富士山で下山中に高山病による吐き気に襲われたときと同じように何度も道端にしゃがみ込んで動けなくなってしまう。それでも不幸中の幸いというか山を下りる分には右足の痛みもほとんど出ないので、できるだけ止まらずに歩いていく。

(日野コース分岐)


(こんな具合にトラバース道が続いて歩きやすい)


(こんな大岩もある)

大きくジグザグに下っていくとウノタワ近くの苔庭のような苔が生える石がゴロゴロと点在する緩斜面に出る。道なりに進むとカラマツ林の広い緩斜面に道標が立っており、笹平に着いたことを教えてくれる。ここは国立公園外でテントも張れそうな広さはあるが、結構傾斜があるのでテントの向きが重要になるだろう。笹平からは再びトラバースの九十九折で、途中ロープが括り付けられた岩場があるなど少々歩き難い。笹平の道標には水場があることが示されていたが、途中涸れ沢を通っただけで水場らしきものはなかった。冬場は使えないと考えてよいだろう。

(笹平の苔庭)


(ロープの括り付けられた岩場 通常ならそれほど難しい所ではない)

下るにつれて水の流れる音が大きくなり、やがて沢の側に出る。上流側を見ると岩壁に大きな穴が開いており、そこから沢が流れ出していた。沢へ下ることができるのでもう少し近くで見ることもできそうだが、体調が悪いので無理はしない。ただ笹平といい、見所は多いルートだ。岩穴から少し下れば官舎跡に着く。屋根材に使われていたのだろうトタン板などが今でも散乱している。

(岩壁に大穴が開いた沢)


(官舎跡)

官舎跡からも沢を高巻くようにトラバース道が続くが、10分も歩けば広い谷に出る。ここが分県ガイドにある三又だろう。奥武蔵では他にない広い谷で沢沿いに付けられた踏み跡もそれほど状態は悪くない。標高が下がって気温も上がってきたのか吐き気はだいぶ解消された。ようやく景色を楽しみながら下る余裕も出てきた。小滝などを眺めつつ沢を何度か渡渉していくと林道が見えてきた。踏み跡は更に下へと続いているが、もうここで林道に上がることにした。隙間が空いて怖い丸太橋を渡り林道に上がるとやっと人心地が付けた。山と高原地図のコースタイムが1時間半のところ2時間もかかってしまった。白久・武州日野の両駅からの標高差が1100m以上あることを考えると、城山・弟富士山を経由することなく林道を使って山頂を目指したほうが熊倉山をじっくり楽しめるのではないかとつくづく感じさせられた。

(三又と呼ばれる広い谷)


(連続する小滝)


(渡渉する所もあるが、概ね確りとした踏み跡が付いている)


(小滝)


(林道の終点)

寺沢地区を経て弟富士山
砂利の林道を下っていくと白久・武州日野の両駅を結ぶ舗装された林道に出る。普段舗装路歩きは不満が大きいのだが、今日ばかりは助けられた気分だった。沢歩きルートが合流する辺りから民家がポツポツと現れ、公衆トイレと水車小屋が立つ辺りはちょっとした集落が形成されていた。ここから弟富士山南麓辺りまでが寺沢と呼ばれる地区だ。如意輪堂などが立つ集落の中心地は流石に民家が多く立ち並び、出歩く人も多く見かける。集落内を流れる川の左岸に付けられた道路を進むと道標があり、細い舗装路が上に向かって延びる。分岐に入らず道なりに進めば日野温泉へ至るが、ここまで来たのだから弟富士山を登ってみる。

(薄の生える砂利の林道)


(水車小屋)


(如意輪堂)


(弟富士山入口への道との分岐 左に道なりに進めば日野温泉にも出られる)

分岐を上がると矢通反(やどおりぞり)トンネルと弟富士山入口が見えてくる。トンネルは山と高原地図に記載があるとおり閉鎖されているので、分岐に入った場合には山頂経由でしか武州日野駅に行くことができないことになる。入口から土留めの木段を上がっていく。ここに来ての木段はかなりきつい。尾根に上がると左手に送電鉄塔が見える。地形図から察するにここが弟富士山頂上から派生した尾根の西端だということがわかる。

(弟富士山入口 トンネルは通行止め)

道は東へ延びる細い尾根上に延びており、傾斜がきつい所はいちいち木段が設置されている。まあカタクリが咲く時期は観光地として賑わうらしいので、観光客向けの整備は致し方ないのだろう。山頂直下へと出られる急斜面を上がると道標が立ち、山頂へは往復する道しかないようだ。そこで荷物を置き、空荷で木段を上がる。弟富士山(386)頂上には神社の建物が立っているが、周囲は檜に覆われ展望は無い。そもそもこの山頂以外も展望を得られそうな所はない。山の規模としては天覧山を少し大きくしたくらいだろうか。標高は日和田山や大高取山よりも高いが、麓からの標高差は100m程度でそれらの山に比べるとだいぶ小さく感じる。

(山が小さく細い尾根が続く)


(弟富士山頂上)


(弟富士山ではこんな山野草が見られるそうだ)

分岐に戻って荷物を回収し、山を下る。山頂を西から回り込んで北に延びる尾根に乗ると道案内板がある。ところがこれが何ともわかり難い。一旦北に延びる尾根をそのまま下っていったが、道は途切れてしまう。そこで案内板から下へ続く木段を下りていく。倒木や土砂が流失している所があって整備状況はあまり良くない。無事木段を下りきれば鳥居が立つ浅間神社前に着く。周囲は住宅街でもう危険な所はない。駅へ向かう横道もあったようだが、いちいち探る元気もなく、国道に出て武州日野駅に着く。次の電車が来るまでまだ結構時間があったが、幸いなことに駅舎の待合室が大きかったので、のんびり待つことができたのであった。

(浅間神社へ向かって 観光地にしては整備状況はあまり良くない)

DATA:
白久駅7:43→9:18城山(648)→9:28熊倉城跡入口・熊倉山城山コース登山口→9:40九十九折スタート→10:27 No.8の道標→11:19 1238m峰付近→11:36大岩→12:04熊倉山(1426.5)→12:14日野コース分岐→12:41笹平→13:30官舎跡→14:03林道終点→14:43寺沢の水車(公衆トイレ)→14:56矢通反トンネル(弟富士山入口)→15:12弟富士山(386)→浅間神社→15:33武州日野駅

地形図 三峰 秩父

トイレ 寺沢の水車近く(但し現在故障中)

交通機関 
西武池袋・秩父線 小手指~西武秩父 494円(往復)
秩父鉄道秩父線 御花畑~白久 440円
秩父鉄道秩父線 武州日野~御花畑 310円

ルート全般一般向けながら標高差が1100m以上ある体力的に厳しい山です。体力に自信の無い人は城山・弟富士山をカットしたほうが無難です。また城山コースは岩稜帯を通過する所があり、下りは危険を伴います。山頂を目指すだけなら日野コースを往復するのが一番楽で見所も多いかと思います。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 奥武蔵へようこそ 平成30年1... | トップ | 2018年のまとめ »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

奥武蔵へようこそ」カテゴリの最新記事