ゼミ合宿は遊びに行くのかと学生から質問された.
感覚的には,遊びも重要だと思うんだけど,学問的にはどうなのか,遊びやスポーツと脳の働きについて調べてみた.
人工知能について研究しているので,もともと人間の脳の働きには興味がある.
研究に必要な「創造的活動」というのは,大脳の「前頭連合野」(前頭前野)の機能のひとつだと言われている.
そして,この前頭連合野を活性化させるのに有効なのがスポーツであるということが,最近の脳科学研究の発展に伴い,明らかになってきたらしい.
たとえば,ランニングをすると,足下のでこぼこの様子を確認したり,見える風景がいろいろと変化するので,脳は適度に情報処理をしなければならない.
これが前頭連合野に良い刺激を与え,脳の働きが活性化されるとのことだ.
(つまり,フィットネスマシンでは脳の働きに効果はない.)
この分野では,元京都大学霊長類研究所長で日本福祉大学教授の久保田競先生が有名.
「スポーツと脳のはたらき」「ランニングと脳」「頭を良くするランニング」など著書がたくさんある.
つまり,体を動かす必要性は必ずしもないが,いつも見ている風景とは異なるものを見て・感じて,脳に刺激を与えることが頭を良くするというわけだ.
そして,良いアイデア,柔軟な発想というものが生まれてくる.
さて,この前頭連合野には,創造性だけでなく,人間が生きていく上で必要な機能の多くをつかさどっているらしい.
前頭連合野が未発達なまま前頭葉や側頭葉に知識を詰め込むと,他の大脳へ知識が入らなくなるそうだ.いわゆる知識偏重というヤツ.
教育という側面からとらえると,前頭連合野がうまく育たないと,高度な思考と判断の低下,自己中心的,責任転嫁,思いやりの欠如,無気力,せつな的,憂鬱,被害妄想,ルーズな生活,親や教師への反抗・暴力,登校拒否・中退,引きこもり,非行,自殺などにつながってしまうそうだ.
つまり,ゼミ合宿での「運動」とか「遊び」は,まったく無駄ではないということだ.
実際には,ここまで考えているわけではなく,「体を動かした方がいい」とか「スポーツは楽しい」いうだけのことなんだけど.
結論:
とにかく,前頭連合野に適度な刺激を与えた方が頭が良くなるらしい!
甘いものばかりを食べると糖尿病になるように,知識ばかりを詰め込みすぎると思考能力がなくなってしまうのだろう.
プロスポーツ選手など体が資本の人たちが体の栄養バランスに気を使うのと同じように,頭が資本である研究者は脳の栄養バランスに気を使う必要がある.
参考資料:
ソニー幼児教育支援プログラム:
子どもの脳をいかに育むか
北海道大学大学院医学研究科脳科学専攻教授 澤口俊之氏
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