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なごみchan

毎日の中で起こる、ひとコマ、その中で分かち会いたい。そんなページです。

2199島くんのこんなお話しが書きたかったのです☆

2014-08-01 21:08:40 | 小編(小説)
「徳川さん、僕に・守りたい人・が現れました。」

「ほぉ~それは、それは。」

徳川は満面の笑みであいづちを打った。

「その人が大切で・・・不思議ですね、想いを伝えたいとか自分を好きになって欲しいとかは思わないんです。」

「ふ~む。たいがい好きになって欲しいと、"報い"を期待するもんじゃがのう。」

うんうんと、更にうなずきながら、島の話しに耳をかたむける。

「その人に赤い清んだ瞳で見られると、それだけで嬉しくて・・なんていうか・・それで満足しちゃうんです。

 
 この人の存在が自分に力を与えてくれる・・それが嬉しくて・・・。」

島の横顔を徳川は見詰め続ける。

「でも、不安もあるんです。」

徳川は何も言わず、次の言葉を待った。

「守りたいがゆえに、自分が・護り・に入ってしまうんじゃないかと。 僕は前に進まなければならないんです。

 
 だから、・守り・に入ってしまうと身動きできなくなってしまう気がして・・・。僕は人を愛する事に臆病なんですかね。」

島は苦笑いをする。

「島くん、守る事と臆病であることはいつも裏表じゃ。じゃが、そういう自分と闘うのも・想う・気持ちの形なんじゃないかとわしは考える。

闘う事で前に進める。わしは、そう信じるとるよ。」

島は徳川の目を思わずみつめた。

「それにな、島くん、そんな君のわしは味方になりたいと強く思うぞ」

徳川は島の肩に手をかけ、にっこりと笑った。

「徳川さん・・・。」

「島くん、君は一人で闘わなくとも良い事を忘れないでいて欲しい。今の君の、自分の気持ちを大事にすれば

 もっと味方は増える。まず、君、自身が君を後押ししてくれるはずじゃ。そうすれば、色々なものを大切にする

 
 ことが出来る君になれるはずじゃよ。」

「徳川さん。」

島の瞳に灯りがともってくるのを徳川は見ていた。

「今の君になら、必ず地球を救う事が出来る。わしは、そう確信しとるよ。」

島は目を閉じて、徳川の言葉をかみめた。そして、顔を真っ直ぐに上げて言った。

「徳川さん、ありがとうございます。」

二人は微笑みを交わし合うのだった。



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今日から八月を向かえますね

毎日、とっても暑い日が続いています・・。でも、太陽に負けないように

そう願って、ずっと、書きたかった、玲に恋をする島君のお話しを書いてみました

皆さまの夏が、良き夏となりますように、心から願っております

挑戦 第9段 『澪の恋心』 ~新たな明日へ~1

2010-06-16 14:28:56 | 小編(小説)
やっと、やっと小編が書けました。
書き始めたものの途中で途切れたまま
何日もの日がいたずらにすぎていきました。
でも、そんな時、私の大切な友人が
有る事を出来なくなると言いました。
それを聞いてショックでしたが
友人の状況では、受け入れるしかない現実でした。

そして、なにもしてあげられない、その人に
これを贈らせてもらいたいと思いました。
私が・創作・する事を何よりも喜んでくれる
その人に・・・・・・。

そして、続きを書き切る事ができました。

その友人のこれからの道のりに幸いある事を願い
これを載せます。

また、皆さまのお目に留まる事が出来ます事を
本当に幸いに思い感謝致します。

楽しんで読んで頂けましたらと心より願いつつ。





「ねえ、古代さん」
展望室で並んで二人。
「はは、澪いまは"叔父さん"でかまわないよ。」
艦長である古代は姪の澪に艦の中では身内同士のけじめをつけるよう
厳命してあったが戦いが終わり地球に帰路をとっている今リラックス
するよう促した。

「じゃ叔父様わたしが佐渡先生の所でずっと治療受けていた間、叔父様
私の事たずねてくださった?」
澪は負傷し佐渡と言う軍医の元で治療を受けていた。
「いや澪もうしわけないとおもってても地球に戻ってからの再興計画で
皆いそがしくて君の所へはいけなかったんだ・・・・。」
「そうなの・・・・・。」
澪は不思議そうに人差し指を唇につけた。
「なんだ?何かあったのかい?」
古代が心配そうな表情になると大丈夫大丈夫と手をひらひらさせてみせた。
「まだ熱が有った時だったんだとおもうんだけど・・・・私ゆめを見たの。」
「夢?」
古代はくりくりとした愛らしい瞳の顔を見た。
「夢の中で私お父様をさがしていたの。でもお父様は見つからなくて・・・・。」
戦闘で父親を亡くした澪の心を思い古代は聞いていた。
「すごく辛くて悲しくて、でも、でもね誰かが私の手を取ってくれたの。優しく
握ってくれてー大丈夫だよーって・・・・・。それでそれも夢だったんだろうと
思っていたのだけど何だかその時の私の手を取ってくれた人の感覚がずっと残っていて・・・・。」
澪は片方の手でもう一方の手をそっとさすった。
「訪ねてくださった方が居てもしかして手をとってくれたのじゃないかと思って・・・ずっと
わすれられないの。だから叔父様か真田さんだったのかしらと思っていたのだけれど違うのね・・・・。」
手をさすり続ける澪を見ていて古代はハッとした。
親友の島大介に澪の様子をみてくれるように頼んだ事を思い出していた。
誰もがそれぞれの任務に忙しく澪が気がかりでも軍医の部屋を訪ねる事が出来なかったある日
たまたま軍医に用事が有った島にたのんだのであった。島は・自分は男で、
しかも怪我で寝ている澪の所にいくのなど幾ら仲間でも嫌だと澪に失礼な事はしたくない・と
一旦は断られ曲げてお願いした事を思い出したのだった。
古代は思わず腕組みをした。


「よぉ島ご苦労様」
当直で躁艦してる島に古代は声をかけた。
「なんだ古代こんな時間なのに寝てなかったのか?」
「うん、なんか眠れなくてね。」
島の隣の自分の席に腰を下ろす。
「早く雪に会いたくてしかたないんじゃないのか?」
地球で古代の帰りを待っている恋人の事で島は古代をチョッとからかう。
「ば、ばか、そんなんじゃなくて!」
むきになる古代をみて島は声を挙げてわらう。
「あのなあ、お前に聞きたい事があるんだよ。」
そういわれて島は笑うのをやめて古代に顔を向けた。
「お前に澪がまだ状態良くなかった時に様子見頼んだろう」
「うん。確かにあったな。」
「その時・・・澪と何かあったか?いや、全然へんな意味じゃなくて」
古代の思いがけない質問に戸惑うような顔を見せた。
返事を待つ古代に島は、やおら頭を下げた。
「すまん!古代!彼女の手・・・・・握った。」
「なんだって?!お前の事信用してたのに!」
古代は島のむなぐらをつかんだ。
その時島と躁艦を交代するために乗組員の真田が入ってきた。
「こらこら、この夜中になにじゃれ合ってるんだ?」
真田は二人をいなすように扱い手を離させた。
「真田さん!聞いて下さいよ!島の奴みおの手をにぎったって!」
年齢も上で人の面倒見が良い真田は島の困り切っている顔を見ながら言った。
「まあ古代それがホントだとしても理由もなくスケベ心でそんな事する島じゃないじゃないか
理由を聞いてみたらどうだ?」
古代はムスッとして「話してみろよ」と島に言った。
「澪さんが・・・・夢にうなされてたんだ。」
真田と古代は島の顔をじっとみた。
「涙・・・涙ながしながら・おとうさん・と言って何もないところに
一生懸命、手をのばして父親さがしてたんだ・・・・・。」
一時だけだが澪の本当の父親代わりになって彼女の面倒をみていた真田は憐れむような顔になった。
「その姿があんまり辛そうで・・・・思わず手をとったんだ・・・・それでしばらくそうしていたら
落ち着いてきて・・・・それで・・・。」
すまなそうにする島の肩に古代は手を置いた。
「こっちこそスマン島・・・・みおの事励ましてくれたんだな。」
しょぼんとして見せる島を見て真田が言った。
「まあ古代そういうことなら許すもゆるさないもないだろう島はもう当直時間が終わりだ
寝かせてやるのが良いんじゃないか?」
古代はその言葉にもっともだと思った。
「島いたずらに疑ってすまなかったな。もうゆっくりやすんでくれ。」
「すまん、古代」
小さな声でもう一度すまなそうにそう言うと席を立ち交代する真田に一礼して部屋を出て行った。

「マズッたな・・・俺ってどうしてこう短気なんでしょうね・・・。」
操艦する席に座った真田は笑顔で言った。
「なんでも思った事言いあえるお前達が俺はうらやましいがな。」
真田のその言葉に古代はそれはそうかもしれないと思いつつも、もう一つの思いを口にした。
「いや真田さん・・・澪が・・・もしかして恋してるんじゃないかと思って・・・。」
「恋?」真田は意外な展開の話しに古代の顔を見た。
「澪は夢の中で自分の手を取ってくれた人物が夢ではなく実在してたんじゃないかと思えて
しょうがないって言うんです。」
真田は笑いながら言った。
「それだけで恋ってことにはならんだろう。」
「ええ。でも・・・・握られたらしい方の手を、なんだか妙にいとしげにさすってみせて
いたんです。神妙な顔しながら・・・。」
二人は顔を見合わせた。
「真田さん、もしも・・・もしもですよ澪が手を取ってくれた人物にホントに心惹かれて
いるとしたら・・・それが島だと解ったら・・・澪は島を意識するようになるんじゃ
ないでしょうか・・・・。」
「だったら困るか?」
真田はストレートに聞いた。
「いえ、あいつだったらなんの不足もありませんよ。ただ・・・・。」
「ただ?」
操縦桿を握りながら聞き返す。
「島・・・・島が、もしも澪を嫌いでないなら"あの事"を、もう忘れてくれてもいいんじゃないかと・・・・。」
その言葉に真田は古代の眼を見詰めた。
「"あの事"か・・・・確かにな・・・・・。」
「あいつはもう自由になっていいんだと俺は思うんです・・・・。」
真田と古代は流れていく星ぼしに目を向け見入った。

部屋で眠れず何度も寝がえりをうつ。そばにある引き出しに手をのばして
綺麗な色に光る砂のような物が入っているカプセルになったペンダントを
島は顔の上に持っていった。それはゆれて輝いた。
『島さん・・・・。』声が頭の中に響いた。
島はペンダントを握ったまま手を胸の上に置き目をとじた。


「おはよう澪さん。いやまた凄い量の本だね重くないかい?誰だ?君に
こんなことさせるの」
朝時間に早速がんばって働いてる澪を見て島は手伝おうと手を伸ばした。
「真田さんが必要だからって私から頼んでって・・・・・島さん私一人で大丈夫・・・・。」
本を持つ澪の手に島の手が重なった。
その瞬間みおの中に夢でふれられた手の感覚がよみがえった。
澪は思わず本を手から離してしまいそうになった。島があわてて支える。
「ほら、やっぱり無理だよ澪さん僕が持つよ。」
そう言って本の束を半分持った瞬間、艦が急に大きく揺れた。
キャッと澪はバランスを崩して倒れてしまった。島はかろうじて体を支えたので大事には
至らなかったが、放り出された本の山の中に澪が足首を押えて眉間にしわをよせていた。
「澪さん!大丈夫か?」
島は走り寄よった。
「イタ・・・・・。」
澪は立ちあがろうとしたが痛みが走ってそれは出来なかった。
「痛めたんだね。」
顔をゆがめて返事する。その様子を見て島は言った。
「澪さん僕の肩に手をかけて。」
そういわれて澪は躊躇したが島は構わず澪を抱き上げた。
「僕にしっかりつかまって!佐渡先生の所に行こう。」
「し・・しまさん・・わたし・・・重いわ・・・・無理・・・・。」
恥ずかしさと痛さでやっと言葉にする澪。
そんな澪に島は「大丈夫。軽いよ。」と笑顔を向けた。

「なんじゃ島あさっぱらから、お嫁さんでもつれてきよったのか?」
澪を・お姫様だっこ・している島を見て軍医の佐渡は医務室のドアで二人を出迎えた。
「佐渡先生、冗談言ってる場合じゃないですよ。澪さん足痛めたみたいで・・・・。」
診察台の上に下ろすよう佐渡が促すと島はショックをあたえないように、そっと澪を下ろした。
澪は痛みよりも恥ずかしさでいたたまれないでいたが島には解らなかった。
「じゃ、澪さん先生によくみてもらって。僕はさっきの本、真田さんに届けるから心配しないで。」
少しだけ澪に笑顔をみせたが直ぐ仕事の顔になって急ぎ足で医務室を後にした。
さっきの艦の傾きの事で頭が一杯になっていた島だった。


「澪ちゃんまだ痛むかの?」
治療を済ませた彼女は医務室のベットに横になっていた。
「軽い捻挫じゃから後30分も過ぎれは落ち着くとおもうがの。」
「はい。痛みはほとんどもう・・・ありがとう先生。」
澪がそう言うと佐渡は笑顔で頷いた。
でも澪の鼓動は早まったまま治まらずにいた。
男らしくがっしりとした腕に支えられた感覚そして何より夢の中の手の感覚に戸惑いを覚えて
澪は困惑しきっていた。
『島さん・・・私の手をとってくれたのは貴方だったのね・・・・。』


「おおい、さっきの傾きはなんだったんだ?!」
島が艦橋に飛び込んできた。
「自動操縦の何処かが軽く故障を起こしたらしい。今しらべてるところだ。」
艦の技師である真田がそう説明した。
故障個所を示されてある計器画面を覗き込んだ。
「そうだ!故障といえば古代、澪さんが今の揺れで転んで足怪我したぞ。」
「え!ほんとか?」先に画面に見入っていた古代にそう言った。
「島なんでお前が?」澪の状況を知っている事をいぶかしんだ。
「たまたま資料本かかえた澪さんと会ったんだ。重そうだから手伝おうとしたら艦が揺れたんだ。
そうだ、真田さんこれ、澪さんに頼んだ資料本です。」
ひざに受け取りながら真田は言った。
「しまった!頼んだ事すっかり忘れていた!」
二人の話しを聞いていた真田が自分をいさめるように額を叩いた。
「大丈夫ですよ真田さん。僕が佐渡先生の所連れて行ったら軽い捻挫だって言ってましたから。」
「いや~スマン。助かったよ島。」
古代が二人の会話に割って入った。
「連れてったって島、足怪我したならどうやって・・・。」
困惑したように聞く古代に・だっこしてだよ・と軽く当たり前のように島は言う。
後で艦長として様子見にいってくれよと頼む島の声が妙に響いて来る。
『火に油になるかも・・・・・。』
古代は頭をかかえた。

-次に続きますー


挑戦 第9段 『澪の恋心』 ~新たな明日へ~2

2010-06-15 15:18:32 | 小編(小説)
ちょうど医務室を出ようとしていた澪は見舞いにきた古代とはち合わせた。
「おっと澪もう大丈夫なのか?」
「ええ、ほらこの通り」
軽く両ひざを曲げて見せる。
「古代か~!」部屋の奥から佐渡の声がした。
「はい。佐渡先生、澪は・・・。」奥に向かって聞くと・もう仕事場つれてって
いいぞ・と返事が返ってきたので礼を言って部屋を出た。
「澪早く良くなってよかったな。」
そう言う古代に小声でありがとうと言う澪は明らかに様子がおかしかった。
「どうした?澪もう大丈夫なんだろう?」
「捻挫は大丈夫・・・・。」とうつむいたままである。
「みお?」
「叔父様・・・・・。」
「どうしたんだ?」
「私・・・・胸が苦しいの治らなくてどうしたらいいのか・・・・。」
熱が有る時のような目を古代に向けた。
「ええ?!じゃ、もう一度佐渡先生に・・・・・・。」
「ちがうの!」
澪は古代の腕をひっぱると困り果てたように言った。
「私の・・・私の手・・手を取ってくれた・・・夢の中の人・・・・島さんだったの。」
『うわ~もうわかっちゃったのか!』心の中でそう叫ぶ。
「それからずっと動悸がとまらなくて・・・・叔父様わたしどうしちゃったのかしら。」
ーそれは"恋"だよーと言う言葉を飲み込んだ。

「う~ん・普通に振る舞え・って言ってもなあ~・・・・。」
皆、昼食時間になって職場を離れており、艦の修理の為に残っている真田に古代は相談を
もちかけていた。
「今なあコンピューターが"この艦は今自動操縦なんだぞ~"と命令しても
はい?今なにか言いましたか?みたいな事になっててな、まあ有る意味"てんぱってる"状態に
なっちまってるんで話ちゃんと聞けよと念押しの入力してるようなもんなんだ。
だいぶ反応良くなってきてるから、もう少しだと思うんだか・・・・人は機械のようには
いかんからなあ~。」
真田はメインの席から自動操縦モードの入力をするように古代に頼むと
古代は前席からモードスイッチを押した。
「おお!よしよしオールグリーンだ!これでもう大丈夫だろう。」
真田は軽く伸びをすると「まあ、とにかく俺達も飯くいにいかんか」と誘う。
「もうほうっておいても艦が傾くような事はないから安心してな。」
その言葉に笑顔でうなずいた。



澪は眠れずに展望室に居た。
今日の出来事が何度も何度も頭に浮かんでくる。
『お父様・・・お父様は、お母様を愛して滅んで行くのが解ってる惑星にたった一人で
暮らしていたお母様の元に行った事・・・・お義父様から聞いたわ。
お母様どんなに嬉しかったかしら・・・』
澪は窓に映る自分の顔をじっと見た。澪は母親によく似ていると義父である真田から
聞いていた。
『お母様・・・生きていらしたら、こんな風に胸が苦しいのがなぜなのか・・・
お父様はどうしてそんな勇気が出せたのか・・・・色々な事・・・聞く事が出来るのに・・・・』
いいしれぬ寂しさが澪を襲ってきた。目を閉じて窓に額を預けた。
「澪さん、大丈夫かい?」
ふいにかけられた背後からの声に澪は飛び上がるように驚いた。
そこにいたのは島だった。
大きな瞳をさらに大きくして自分を見る澪に島は言った。
「驚かせたみたいだね、ごめんよ。」
島の姿を目にした澪の心の寂しさはどこかに吹き飛んでしまった。
「眠れないのかい?」
島は澪の近くに歩み寄った。
「え、ええ・・・・チョッと眠くならなくて・・・・し、島さんも眠れなくてここへ?」
またドキドキしてきて澪はやっとの事で聞き返した。
「いや僕は当直で見回りにきたんだよ。そしたら君が居たから・・・。」
澪は島の優しげな目にどぎまぎしていた。
「足、早く治ってよかったね。」
「し、島さんのおかげで・・・・ほんとにありがとうございます。」
ふかぶかと頭を下げる澪。そんな澪に島は照れ臭そうに言った。
「そんな、僕は何もしてないよ。」
「私の事・・・運んでくれたから・・・・・。」
その言葉に島はその時は夢中でした事だったので何も意識していなかったが改めて言われると
照れる気持ちがグッと込み上げてくる。
二人で顔を赤くして見合う。
でも島は思った。毎日毎日、艦が地球に着いてからの復興の計画の為に奔走していて疲れを感じてもいた。
けれども今の自分の心の中に広がる温かなホッと出来るようなこの思い。
島はそんな思いに癒されているような気がしていた。
「澪さん君が居てくれて良かった。」
島のそんな言葉にえっ?と顔を見上げた。
「雪の部署で頑張ってくれてくれていることはもちろん・・・・君は明るくて場の雰囲気を優しくしてくれる
そんな君の・・・・・そうだな・・・たとえば笑顔で入れてくれるコーヒーの一杯に何度助けられたか
判らない・・・・・お礼を言うのは僕の方だよ。」
「島さん・・・・・・。」
島の言葉は澪の心の奥にまで響いて行った。
「良かった!さっきより顔色が良くなってる。」
「え!?」
「君を見た時・・・後ろ姿が元気がないみたいにみえたからホントは通り過ぎようとしたんだけど
君は不思議な人だ。何かしてあげたくなる・・・・。」
島は自分が着ていたカーディガンを澪の肩にそっと掛けた。
「これは"ニット"って言って・ひつじ・って言う動物から毛を取って作る地球じゃみんなが使ってる洋服なんだ。」
かけられた澪は思わず・あったかい・と言葉をもらした。
「毛を取るって・・・その動物は殺されてしまうの?」
カーディガンをぎゅっと握って言った。
澪のその不安そうなリアクションを見た島は両手を肘まで挙げて不安を外に追いやるように何度か広げてみせながら言った。
「いやいや、殺したりなんかしないよ。体中モコモコに毛だらけの動物だから、そこから毛だけをもらうんだ。
地球に行ったら見せてあげたいな。かわいい動物だよ。」
島は意識していたのかは解らない。でもその地球の話に澪の未知への不安は確実に和らいでいた。
「島さん・・・・・島さん、ありがとう・・・・。」
笑顔で答える島に澪は『私はこの人が好き・・・好きなんだわ』と思うのだった。

「古代」
艦橋の中、真田はファイルを渡しながら小声で言った。
「澪は自分の気持ちに気が付いてるみたいだな。」
「え?」古代は思わず澪のオペレーション席に顔を向けた。
「島の事ばかり見てるじゃないか・・・・・。」
「ここのところ落ち着いて仕事もしてるし・・・気がつきませんでした。」
「お前さんも忙しいからな。」
真田は古代の肩を軽くたたいて自分の席に戻っていく。
ーどうしたもんだろうー
古代は困惑するばかりだった。

島と二人だけで誰も居ないシュチュエーションになった時だった。
古代は仕事の手を止めた。
「なあ島」
呼びかけても島は仕事の手をやすめようとはせず生返事をした。
「お前に聞いて欲しい事があるんだ。」
そういわれてやっと手を止めた島。
「澪が・・・澪がお前の事を好きみたいなんだ。」
「え?」古代の顔を見る。
「何言い出すのかと思ったら・・・なに改めてそんな事言ってんだ?澪さんなら俺だって
好きだぞ。良い娘(こ)だもんな。さすが真田さんが育てただけの」
「バカ!!そんなんじゃない!」
机を叩いて立ちあがる古代に島は驚いた。
「お前を・・島を一人の男性として意識してる!恋してるって事だ!」
ふたりはしばし互いを見た。
「そ・・・れはホントなのか?古代・・・・・。」
黙ってうなずく。
島は深い溜め息をつくと自分の両手をみながら言った。
「古代・・・解ってるだろう・・・俺の中には"あの人"の血が流れてるんだ・・・・
忘れるなんて・・・・・できやしない!」
最後にはうめくようにそう言って机の上につっぷした。
古代は島の背をさするようにして静かな声で言った。
「なあ島もう後ろを忘れられないか?明日に生きる事を考えちゃ駄目なのか?」
島は古代の手を払いのけると強い口調で言った。
「いくら親友だからって、そこまで俺の中に土足でふみこんでこようとするのか?
解った風な事、言って、お前の可愛い・姪・だから愛してやってくれっていうのか!!」
島の激しい怒りに戸惑いながらやっと言葉を古代は口に出す。
「そんな、そんな事言ってるんじゃない。ただ俺はお前が過去にしばられてるように見えるから・・・・。」
「いうな!!」
島はファイルを机から、まるで怒りをぶつけるように振り払うと部屋から走り出て行った。
古代はしばらくたちすくんでいたが、ゆっくりしゃがみ込むとバラバラになったファイルを一枚いちまい拾いあげた。

島は固く鍵をして自分の部屋に居た。
ベットに寝転がると普段なんとなく愛用している・聖書・が目に入った。
パラパラとページをめくると在る個所に目が止まった。
~後ろの物を忘れひたむきに前をもとめ~と、そこには書かれてあった。
『神まで俺に後押しするってか!』分厚いその本を無造作に棚に投げ置く。
引き出しに寝たまま手を伸ばしペンダントを取りだす。
砂が入っているようなそれは相変わらず美しく光輝いている。
「俺は絶対君をわすれない」
ペンダントは物言わず揺れていた。


「あ、島さんちょうどいまコーヒーが入った所なんですよ。」
ちょうど艦橋に入ってきた島に澪が言った。
しかし島は澪の笑顔をみると少しイライラした。
「今飲みたい気分じゃないんだ!」断る手を伸ばした時タイミングが悪くコップに手が
当たってしまった。そしてそれは床に転がった。
島は澪の少し悲しそうな顔を見ていたたまれなくなってしまって艦橋から出て行ってしまった。
ざわめく艦橋のスタッフを見て真田は黙って後を追った。


展望室に島は居た。
「島」
声で真田と分かったが振り向こうとはしなかった。
「真田さん、すみません。仕事中なのに・・・・・。」
「島、残念ながらここは宇宙のど真ん中だ逃げ道はないんだよ。」
その言葉にハッとして真田の方に振り返った。
「島、逃げたい事なんて沢山あるよな。俺たちは神じゃない。ただの人間だからな。」
「真田さん・・・・・。」
真田は島の両肩に手をかけて言った。
「島・・・・物事ってのはにげればにげるだけ追ってくる・・・・だったら正対するしか
ないんじゃないか?」
真田の言葉をじっと聞いた。
「愚痴でも泣き事でも俺でよければいくらでも言ってくれ。それでお前さんが前を向けるなら
俺は応援したいと思うから。」
その言葉に島の肩からスッと力が抜けるのを真田は感じた。
「古代から聞かされて・・・自分はどうしたらいいのか・・・・。」
うんうんと真田はうなずく。
「澪さんが・・・・俺の事、好いてくれてると・・・・だけど俺は・・・・。」
うつむく島の両肩にかけた手に力を込めて真田は言った。
「辛いと思う。辛いとは思う。でも、島、澪から逃げないで彼女をしっかり見てみたらどうだ?
仕事の上でももちろん彼女を良く見るんだ。見るだけでも今のお前にとっては大変なエネルギーが
要る事だろう・・・・でも・・しっかり見る、そのことができれば俺は必ず次にどうするべきか
見えてくる何かがあると信じている。なあ島!」
確かに今の島にはやらねばならない事が地球復興計画の仕事が待っている。澪を避けていたら
仕事はなりたたない。~後ろの物を忘れひたむきに前に進み~あの聖書の一節が島を促しているように
感じていた。

「澪さん、さっきはゴメン。実は頭痛がして少しイライラしてて・・・・。みんなもゴメンすまなっかった。」
澪と周りをみまわしながら島はそう言った。
「解りますよ島さん。おれなんか肩バリバリに凝ってて」
「細かい事ばっかりやってると嫌んなりますよね。」
「俺ももう寝たいですよ~島さんの気持ちわかります。頭痛つらいっすよね。」
艦橋のスタッフ達が口ぐちに言った。自分に共感してくれる仲間の気持ちが嬉しかった。
「島さんコーヒーよかったら飲みませんか?まだ温かいので」
遠慮勝ちにそう言う澪に笑顔で答えた。
「ありがとう。いただくよ。」
艦橋にもどってくれた島に得心を得た古代は黙って見守っていた。


島は真田に言われた通りに出来る限り澪と接した。
その中で気がつく事もあった。
いつも笑顔で人に真っ直ぐに向かう澪。どんな仕事でも嫌な顔一つせず忠実にこなす澪。
澪の長く美しい金色の髪が自分に近づく時、心地よささへ感じる事に島は気がついていた。
『俺は澪さんを好ましく思っている。でも・・・・でも・・・。』
操縦かんを握りながら島は自分の心を見つめるのだった。


「澪、ちょっと手伝ってくれないか?」
その古代の掛け声に従った。

『また本?』
澪は古代が次々と渡して来る図書室の本の重さに苦笑いしつつ、でも島との本での触れ合いの事を
思いだしていた。
ふと手を止め本を手に空をみつめる古代をいぶかしんだ。
「叔父様」姪の気持ちになってそう呼んだ。
「澪・・・・。」
古代の真剣な目に引き寄せられた。
「島には・・・・島には、ずっと心に思っている女性(人)が居る。」
澪は驚いて、しかし古代に自分の思いをとっさに隠そうとして言った。
「叔父様、な、なんのお話?」
「隠さなくても良いよ。」
澪の手に何冊も重ねた本を受け取り側に有ったテーブルの上に置いた。
「見ていれば解るよ、君の目はいつも島を追っている。」
笑顔でそう言う古代に澪はただ目を見つめ返した。
「もうだいぶ前からだ。島は、その人だけしか見ていない。」
さすがにショックを隠しきれない顔になった澪だったが古代は続けた。
「最初は普通の恋だったんだ。知り合って、付き合って・・・でも、有る時事件が起きたんだ。」
じっと耳をかたむける澪。
「デートで道を歩いてる時だった。工事してる場所があって、その日は風が強くて・・・。」
古代はテーブルに少し腰を置いてひと呼吸した。そして話しを続けた。
「工事で重ねてあった機材が落ちてきたんだ島達の上に・・・・島は一緒にいたその人を
助けるために落ちて来た機材の下敷きになった。」
古代は澪の動揺する瞳をみて、それでも先を続けた。
「致命的な怪我にはならなかったものの傷の場所が悪く沢山の血が流れた。島は“輸血”が必要になった。
そして偶然・・・と言っていいのか解らないがその人の血液型が一致した。直ぐに輸血がほどこされて
島は助かった。でも本当の悲しみは・・・それからほどなくして起った。彼女の父親が・・・
大学の教授だったんだが研究の為に宇宙に出る決心をした。彼女は父親のその情熱が理解できたし
逆らう事が出来なかった。澪、解るだろう?もし守にいさんがこころざしをもったら
君だってそれに従いたいとおもうだろう?」
澪はうんうんと首を縦に振って見せた。
「島と彼女は別れを惜しんで・・・惜しんで・・・・でも、それでも生きてさえいれば
いつかまた会える事を二人は信じたんだ。けれど・・・・彼女の乗ったその飛行艇はトラブルを
起こし・・・・・宇宙で空中分解を起こした。」
澪は手で顔を覆いながら少し後ずさりした。
「島は彼女に会う事が永久に出来なくなってしまった。」
古代は深くため息をすると言った。
「それが・・・島の“恋”なんだ。」
しばらくの沈黙が流れた後みおが言った。
「叔父様・・・少し一人にしてもらえる?ごめんなさい・・・・。」
古代は本を手にすると黙って部屋から出て行った。

中に居る澪の心を思いながら古代は願うように一人、空に向かって言った。
「澪、それでも俺は・・・島に未来に生きて欲しいと思うんだ。そして島ならそれが出来ると・・・信じたい。」
その古代のつぶやきは不思議と澪の耳に届いていた。

ーさらに続きますー

挑戦 第9段 『澪の恋心』 ~新たな明日へ~最終

2010-06-14 14:46:48 | 小編(小説)
それから二日ほどして古代達の艦に立ちふさがる大きなトラブルが起こった。
「真田さん、これは・・・・」
真田は腕組みをした。
躁艦する為に前方を見る島の視界は厚いガス情の雲にさえぎられていた。
「駄目です!100宇宙キロ流しても付いてきてます!」
艦橋スタッフの悲鳴にも似た報告が飛ぶ。
「このガスが何処まで続いててどうなってるのか解らないとワープも出来ないな・・・。」
島が悔しそうにそう言った時だった。
「艦長!私には見えます!」
そう強い口調で澪は言った。
「そうかもしれないが・・・・。」
確かに澪には透視能力が備えられていた。でもその能力も長く使う事は出来ない事を古代は知っていた。
「ひるんでる場合じゃないわ!叔父様!こうすれば!」
澪は、つかつかと島の躁艦席に歩み寄ると思いがけない事をした。
「わ!澪さん!何を・・・!」
操縦かんを握る島の手の上に遠慮も何もなく自分の手を重ね合わせた。
島はあわてたが澪の決心は全てを振り払うものだった。
「島さん、目を閉じて!前が見えるでしょう?」
言われるままにそうすると確かに前方の物体の数々がはっきりと島の脳裏に映った。
「前進するのみよ!叔父様!島さん!」
古代は決心したように言った。
「解った。澪、たのんだぞ!」
澪は古代に振り向いて笑って見せた。
「全速前進!」島は艦を進ませた。

島には目を閉じている状況は辛い。つい目を開けてしまいそうになる。だが
目を開けると只ガスが渦巻いているだけである。
「島さん!お願い私を信じて!」
あわてて目を閉じる。するとまた眼前の景色が広がるのであった。

澪の手の平が汗ばんでいるのが島には分かった。無理しているのが明白だった。
「澪さん、少し休もう・・・君の体が・・・。」
「駄目よ!前見て!」
次の瞬間おおきな岩石が艦をかすめた。島はとっさに舵を切った。
澪はこの状況がいつ終わるか解らないのを知っていて自分に手を預けている事を島は思った。
その思いに答える事が今は全てと強く操縦かんを握った。

側に立つ古代に澪の額に流れる大粒の汗を見た。
「誰か!澪に水を!」
「だめ!前だけ見て!お願い!」
水を汲みに腰を上げた真田は、その迫力に気おされてしまった。

今や澪と島は一体となっていた。島は澪の目を通して前方、地球に生還する事しか考えられなかった。
地球の人の為に地球の未来の為に島は全てを忘れて只操縦かんを握り続けていた。

遠くから自分を呼ぶ声がしたような気がした澪。
「しっかりしろ!澪、雲はぬけたぞ!」
古代に支えれているのに気がついた。
「澪、よくやってくれた!」
「澪さん、ありがとう!」
朦朧としていたが自然えがおになった。
「島、お前もご苦労様だった。二人で念の為医務室にいってこい。水分補給して一休みしたら戻ってきてくれ
これは艦長命令だ。」

ふらつく澪を島は支えながら澪の歩調に合わせて歩いた。
「島さん・・・あなたに支えられるのは、これが二度目・・・ありがとう・・島さん・・・。」
「なんの!君がしてくれた事に比べたら。」島は心底そう思っていた。



「ほれ!これ飲め。」医務室の佐渡医師が島にアクエリアスと言うスポーツドリンクを差し出した。
むさぼるように飲むと自分がこれほど喉が渇いている事に気が付かなかったのだと感じた。
「澪ちゃん、あんたは点滴の方がよさそうだ・・・。」
島が、え!?と言う顔をすると佐渡が空気を察したように言った。
「なあ~に、軽い脱水症状と疲労じゃ、点滴しながら休めば直ぐに良くなる。」
「そうですか。」
ホッとするように笑顔になる島に澪は横になりながら言った。
「島さん・・・最後まで私を信じてくれて・・・ありがとう。とても嬉しかった。」
島は疲れた顔を見せる澪を励ましたくなって、でも本心から言った。
「君が・・・そうさせてくれたんだ・・・お礼を言うのは僕の方だよ。」
思わず澪の手を取っていた。
重なる手に澪は笑顔を浮かべて見せた。
「手・・・島さんの手から・・・私の恋は始まったの・・・・島さん。」
はじめて澪自身から、その気持ちを聞き島はとまどったが澪は言葉を継いできた。
「私が夢の中で、お父様を探して・・・とても悲しかったのを助けてくれたのは島さんのこの手だったの・・・・。」
点滴をする為の手を進めながら佐渡医師は黙って二人を見守っていた。
「島さんの・・・・事・・助けてくれた・・・島さんの愛している人に・・・・感謝したい・・・だって
その人が居なかったら・・・・島さんと会う事も無かった・・・・島さんは愛した人に生かされたのね・・・
とても・・・・幸せな事だわ・・・・・。」
その言葉を聞いた瞬間、島の中で何かがパーんと割れるような音がした。でもそれはこころよいショックのようになって
島の中に響いた。
鎮静剤が点滴の中に入っているらしく澪の言葉はとぎれとぎれになってきていた。
「島さん・・・・こまらせ・・・・て・・・・・ごめんな・・・さい・・・・でも・・・私は
生きて・・・・あなたに・・・・出会えて・・・・ほんと・・にしあわせ・・・・・・。」
そのまま澪は眠りにおちて行った。


個室で休むように古代に薦められていた島は横になりながら澪の言葉を思った。
何時ものように引き出しから光るペンダントを取り出して顔の上に下げながら眺めた。
その時部屋の呼び出し音が鳴った。


「澪が・・・そんな事を・・・・・。」医務室でのいきさつを古代に話していた。
「俺が、こんな事いうのも変だけど・・・・普通なら彼女は澪さんにとって・恋敵・だろう?
なのに・・・・その人が居てくれて良かったなんて・・・・澪さんはなんて人なんだろうな。」
自然、笑顔になっているのに気が付いているのかいないのか古代はそんな様子の島に言葉を返した。
「スターシアさんと俺の兄貴の子供だよ。」
古代のストレートな答えに島は可笑しくなってしまった。
「違いない!」
二人は声を挙げて笑い合った。
島の手に有るカプセルペンダントに気が付いて古代が聞いた。
「それ、なんなんだい?」
下げてみせると、それはキラキラと輝いた。
「ずいぶん綺麗だな・・・お前の“お守り”か何かかい?」
「お守り・・・そうかもしれない・・・・でも・・・・。」
古代は島の今まで見た事がない明るい表情を黙ってみていた。


充分、休養した島は艦橋に戻ろうしてベットから立ちあがった。と
その時、なぜか折に触れて開く聖書に目が行った。
取り上げパラパラとページをめくると有る個所に目が止まった。
そこにはこう書かれてあった。
ー見よ。古いものは過ぎ去って全てが新しくなりました。ー
島はしばらくその個所を見つめ静かに本を閉じた。

歩きながら思っていた。自分は今まで前だけを見つめる事をしたことがあったかのかどうか
澪と手を重ねながら只まえに進む事しか考えていなかったあの時間。
本当にこれからの自分に必要なのは、あの気持ちかもしれないと島は思った。そして
古代が『未来に生きる事は出来ないのか』と自分に迫った時の思いが今わかるような
気がした。


艦橋にもどると澪も元気なようすで真田や艦橋の皆と歓談していた。
「島さん、もう大丈夫なんですか?」少し心配そうな目を向ける澪に安心させるように
「ほら、この通り!」と手を大きく振ってみせた。
「澪さんも元気になって良かった。」
満面の笑顔を見せた。
「澪さん、ほんとうにありがとう。君が確かな誘導をしてくれたから大ピンチを切り抜ける事が出来たんだ
感謝しても、したりないよ。」
歩み寄って来る島に言った。
「私もこの艦のスタッフの一人です。自分が出来る事しただけ・・大好きな皆さんと一緒に地球に行きたいと
思っただけです。」
笑顔を交わす二人。
「あ、そういえば。」澪が自分の席の椅子の上から何かを持ってもう一度島の前に立った。
「これ、お借りしてたのに何時も返すのを忘れてしまって・・・・。」
それは島が澪の肩にかけてやったニットセーターだった。
「・ひつじ・から毛を取るんでしたよね。地球に行ったらみせてくれるって約束、守ってくださいね。
私、楽しみにしてるんですから。」
ありがとうと頭をさげながら洋服を島に返す。
「ああ、今日のお礼も兼ねて約束守るよ。」
その時艦橋スタッフの一人が、あー!と声を挙げた。
「なんで澪さんが島さんの洋服もってるんですか?」
「し、島さん、真面目な人だと思ってたのに…影でこっそり~!」
「うあ~この、むっつりスケベ―!!」
次々とあがるスタッフのそんなセリフに慌てながら苦しい言いわけをする島。
「そ、それはたまたま展望室で澪さんに会った時に貸しただけの物で・・・・。」
「ええ~どうして貸したんですか?澪さんネグリジェ姿だったりしてえ~!」
そんな面白そうにヒートアップする仲間達に古代は只わらっていた。
「やめとけ、島、言いわけするほど苦しくなるぞ。」
楽しそうにわらいながら真田が言う。
「そんな~真田さん!」
島が困り切った時、誰かが地球だ!と大声で言った。
艦橋から遠くに蒼く輝く地球の姿が見えた。
「あれが・・・地球・・・・。」
澪は魅入られるように釘づけになった。
「ようし!急ぐぞ!地球に向かって全速前進!」
その声は艦橋中に響き渡った。


島の躁艦するそばに立って地球について澪と話しをする。
島と澪の新しい歩みがはじまろうとしていた。



挑戦 第8段  『鏡の中のあなた』 ~ありのままで~

2009-10-24 13:40:14 | 小編(小説)
小説を書きたくて
しかたありませんでした。
でも体調がなかなか整わず
すごく集中する事をするのが
むずかしくて本当に葛藤した
中から生まれてきたのが
このお話しです。

私は苦しさの中にある間
幾人もの人から
・自分を許しありのままの自分を
受け入れなさい・と言葉を
頂きました。
この言葉も思いやりで言って下さっていると
解っているのに出来ない事でしたが

昨日ある事をきっかけに
フッとトンネルから抜け出せたような気がしました。
そして書きかけだった小説を一気に
書きあげる事が出来たのでした。

すこしの方にでも
読んでいただけたら
本当にうれしいです。

やっと書けた第8段
どうぞよろしく
お願いいたします。



その日
宙港ターミナルに澪の姿は無かった。
妻である澪は大介の長期出張から戻った時は
必ず迎えに来ていた。
大介は笑顔で手を振り出迎える澪の姿を思い
不安になった。
宇宙にパイロットとしているうちは一切
(特例はあるにせよ)連絡は取れない。
宙港のゲートで初めて様子がわかるのだ。
不安になって携帯電話を取り出した。すると
背後から「兄さん!」と呼ぶ声がした。
「ごめん兄さん澪お義姉さんから出迎え頼まれたのに
学校のカリキュラムが長引いて遅れちゃったよ。」
肩で息をしている弟の次郎を見た。
「次郎なんでお前が?」
「お姉さん急なベビーシッターの依頼が有って代わりに
兄さん元気に戻ったか一刻も早く知りたいから僕に行って
知らせてくれないかって」
「しょうがないな澪も次郎が訓練校の授業大変なのわかってるくせに・・・・。」
「まあ、そう言わないでよ兄さん、お姉さん心配でしょうがないんだよ、それに
僕だって兄さんに会うのホントに久しぶりだよ。これがきっかけで会えて
嬉しいよ。」
「まあ、それもそうだな」
大介は笑顔を浮かべた。
「次郎も元気でよかったよ」
自分より十歳年下で14歳の弟の頭をなでた。
子供扱いされて次郎は少し抵抗してみせる。
「シッター中じゃ電話はできないなメールするよ。」
「うん!絵文字のハート沢山使ってね。」
照れ笑いしてみせる兄の姿を見て、しかし次郎は気が重たくなった。
自分が出迎えたのは他の理由も有ったからだった。
これから起こるであろう騒動の・クッション役・次郎は
そんな事もかって出ていたからである。


「澪・・・・・その髪いったい・・・一体どうしたんだ?」
澪は異星人とのハーフである。プラチナブロンドに近い透明感のある長く
美しい髪をしていた。その髪が真っ黒く染められていたのである。
その上ばっさりと短く切られていた。ショートヘアとしてのスタイル自体は
似合ってはいた。だが肌が白く、これもまた独特の肌の色である。
あきらかに・浮いて・いた。
シッターが終わり帰ってきた澪を出迎えた今、妻の姿に大介は愕然とするばかりだった。
「あ、あのさ、お姉さんこの前からイメチェンしたがっててさ」
黙って妻を見つめるきつい眼差しに次郎はハラハラしていた。
「別に、髪を切るのに一々あなたの許可取らなきゃならないほど私の自由は
ないのかしら」
大介はそのヒステリックな物言いにもショックを受けた。
「そんな事いってるつもりはないよ。ただあまりいきなりだし・・・・。」
・優しくて明るい・それが信条のような普段の澪らしくないとも思った。
「それに澪いつもの君ならイメチェンしたなら尚更よろこんで見せてくれるじゃないか
今の君は嬉しがってるようには見えないんだ。だから余計どうしたんだろうと思って・・・。」
「わたしだって喜びたいわ!」
澪は側に居た次郎にしがみついてワッと泣きだした。
「ね、姉さん」
澪と同じくらいの背丈の次郎は必死で支えた。
「まったく!なんなんだ!一か月ぶりで家に戻ったっていうのに!」
温和な大介も疲れもあってさすがに頭にきてしまい
いまいましそうに制帽をリビングの机の上に投げ出とずかずかと自分の部屋に向かって行って
しまった。
泣き続ける澪を慰めるように優しく言った
「お義姉さん、やっぱり僕じゃクッションになれなくて・・・ごめんね。」
澪はますますしがみついて首を横に振った。
次郎はしゃくりあげる澪の様子に考えあぐねたように言った。
「お義姉さん僕の家にいこうよ、父さんも母さんも姉さんに会うのしばらくぶりだし
ね、そうしようよ・・・・・。」


次郎の母は澪の姿を見ると少し驚いたが、でもすぐに笑顔になって言った。
「澪さんひさしぶりね。さあ上がってちょうだい。今日は主人も早帰りでね・・・・。」
うつむいたままの澪を優しくリビングの椅子へ案内した。
リビングでは父親がウイスキーを楽しんでいたところだった。
次郎の父は「元気そうでなによりだ澪さん」と何事もなかったかのように出迎えてくれた。
泣きはらした顔の澪の事を皆そのままで受け入れていた。歓談しているうちに澪も落ち着きを取り戻していった。



大介は家にかかってきた母親の電話の言葉を一人思い返していた。
『次郎が澪さんを家につれてきてくれたわ。話がはずんで楽しく過ごしてるわよ。大介、安心して
自分がしなければいけない事をなさいね。じゃあね』
ーしなければいけない事ー
澪の作り置きした冷凍料理を解凍しながら、何もかも見越して備えてくれるその母としての
有りように頭が下がる思いだった。
リビングの椅子に座って解凍した料理を一口食べるとそれは冷凍してあったにしてはいい味だった。
『俺は恵まれてるな』ひとりつぶやいた。そう思う一方で澪のさえなかった顔にも悩まされる。
フォークを持ちながら溜め息をついたその時電話のベルが鳴った。
座っている机の上の子機をみると[古代進]と表示されて有った。
電話を取ると聞きなれた親友の声が耳に入ってきた。
「島、ひさしぶりだな今日出張から戻ったんだろう?御苦労さまだったな。」
「ああ、ほんとに御苦労さまだよ」
大介は今の状況に心底うんざりしていたので親友の前でまで自分を飾る事は出来なかった。
「なんだ?どうしたんだ?その云い様は何かあったのか?」
古代の苦笑する顔が浮かんだが大介は愚痴り続けた。
「澪と喧嘩した。まったく一ヶ月ぶりに帰ったってのに今彼女は俺の実家だよ。」
「は?お前の実家?それでお前はそこにいるのか?久しぶりだから嬉しいだろうに・・・・
よっぽどの事したんだろう、しょ~がないな、また激しく嫌われたもんだな」
古代も遠慮がない。大介はくさりきった。
「そ~なんです!嫌われたんですよ。お前の大事な・姪・(古代進と澪は叔父と姪の関係にある)にね。
それも、さっぱり訳わからん!」
大介の荒みように古代は同情したが(古代も所帯持ちであった)伝えるべき事を伝える義務が
軍人同志としての古代には有った。
「島、色々大変なところ悪いが俺たちに辞令が下りた。」
「戻ったばかりの俺が動くって事は(普通パイロットは一定期間任務についた後はその仕事の
質をかんがみて最低でも三日の休暇を取る事になっていた。)そんなに重大な事が
起ってるのか古代!」
「いや事件や事故じゃないんだ。オブザーバー役に指名されたんだ俺達がな」
「オブザーバー?」思いがけない任務だと思って次の言葉を待った。
「新造してる護衛艦があるの知ってるだろう?それのスペックに・ベテラン・のコメントが
必要なんだそうだ。それに俺達が選ばれたって訳だ。」
聞いた大介は気を使う細かい配慮が必要なその役どころを思うと、また思わず溜め息をついた。が
母親のーしなければいけない事ーという言葉が頭をよぎった。
必要な質問をいくつかして古代との再会のあいさつをすると電話を切った。
『オブザーバーか・・・・俺たちもそういう立場ななったんだな・・・・・。』
しんとしている部屋、いつもは身軽に立ち働いている澪が居ない。
『この仕事、しっかりやって君と正面から向かい合うよ澪』
心静かに決意した。

朝になり洗面所へ行って鏡を見ると無精髭が生えているのが眼に着いた。
シェーバーを手に取って整え始めると澪の黒い髪を思い出した。

『なぜ、あんなに真っ黒だったんだろう』
思わず手が止まりハッとして・いかんいかん・と自分の両頬を叩いた。


作業着にヘルメットという井出達で古代と大介は新造艦の中を歩いていた。
うっかりして足元の工具箱を大介が蹴ってしまった。
「ばかやろう!なにやってんだ!足元位よく見て慎重に歩け!」
案内人の責任者は中央司令部直属の古代達に気を使って怒鳴った作業員に注意しようとしたが
大介が静止した。
「どうもすみませんでした。」大介は整備士に頭を下げた。
「“ばかやろう”なんて言われたの何年ぶりかな」
大介がそう古代に耳打ちすると古代は笑ってそうだなと答えた。
大介も古代も次世代を育てている立場である。自分たちが叱ってもらえる場面など無くなっていた。
二人は自身の責任の重さに改めて襟を正していた。

設計者や現場の責任者から色々な質問が有った。ふたりは誠意を尽くしてそれに答えた。
作る側からの声は真剣で答える自分達の声の一つ一つに誠実な反応が有るのは大介達にとって
嬉しい事で有った。
時間はあっという間に過ぎて昼食の時間になった。現場監督が二人を迎えに来たので、その
案内に従った。途中ドックに用事が有ったと見えるパイロットと通路ですれ違った。
「あ~さっむいなぁ~良くこんな所で作業してるよな、たっまんねぇ~!」
「ほんとだぜ、俺たちは空調きいてるところで出来る仕事でよかったぜ」
二人のパイロットが狭い通路を向こうから歩いてきたので大介達と正対して道が
塞がってしまった。
「あ~整備士さん御苦労さまです。寒いですねえ~ちょっと僕たちを先に通してもらえませんかね~
操縦桿をにぎる大事な手なんでね冷えちゃうと~~」
二人のうちのもう一人が急ぐ様子で足をバタバタさせながら背中をさすって見せた。
「僕たちがいなきゃ宇宙(そら)は飛べないんだから、そんくらいの遠慮するのが仕事のうちですよねえ
整備士さん達」
あきらかに特権意識を持って、それをひけらかしていた若いパイロット達だった。
大介達を案内していた監督がいさめ様と前に出そうになったが大介達はそれを止めた。
「フライトお疲れ様です。しかし今の意見には異論が有りますね。宇宙を飛ぶのには全ての
機関が重要で平等なのではないですか?」
大介が毅然とした態度でそう言った。
「なんだと!たかが一介の整備士が偉そうに!喧嘩ふっかける気か!?」
言うと同時に振りかざして来た血気にはやった腕を古代が慣れた手つきで受け止める。
「整備する大事な手をつまらない事で痛めたくはないんでね」
古代は余り力を入れすぎないよう、しかし多少のダメージを感じる位に受けた手をひねり挙げた。
「その位にしろよ古代」
「だから見れば分かるだろう島、手加減してるさ」
その名前を聞いた時ふたりのパイロットがぎくりとした。
「こ、こだい・・・しま?」
監督が場を〆るように言い放った。
「そうだ。そらへ行くにはどんな機関も重要だ。島航海士の言う通りだ。」
二人は震え上がりそうになりながら古代達の顔を見た。
「軍中央司令部直属、航海士長、島大介氏と護衛艦長、古代進氏だ!」
ふたりは完全に縮みあがっている。
そんな二人に大介が声をかけた。
「君達は難関をくぐってパイロットになったんだろう?」
二人は、ひきまくりながらも頷いて見せた。
「なら、もっと自分の仕事を大事にして欲しい。」
「すみません。島さん古代さん」
責任者は申し訳なさそうに言う。
「今、島さんが言った事をきちんと分かるように措置しますので。」
監督に腕を取られた犯罪者のような二人に、でも古代も大介も
「よろしくお願いします」と
頭を下げた。

帰り自宅に向かう車の中で大介はインカム越しの弟の声を聞いていた。
「兄さん、実はさ、今回の姉さんの髪・・・・仕事場で差別されたせいなんだよ」
「え?差別?」
「うん、仕事場でチョッとしたことで父兄と行き違いがあったらしいんだ・・・・」
大介はハンドルをにぎりながら弟の次の言葉を待った。
「"あなたは地球を救った星の人だから恩売っていい気になってるんじゃないの"って
言われたんだよ……。」
「なんだって?!」
思わず車を左に寄せて止まった。運転していて聞ける話ではないと思った。
「姉さんとランチの約束してた日に真っ黒な髪で店にきて、どうしたのっていっても
なにも言わなくて・・・・・なんとなくまずいなあ~と思ったから僕、食事しながら
同期の奴に"島大介の弟のくせに"って言われてスゲ~ムカついてって話きりだしたんだ
そうしたら・次郎君わたしもよ・・・・。・って、で、その話してきてさ、しまった!と
思ったんだ・・・明るい話でもすれば良かったなって、でも僕もびっくりして
髪の色みたら余計なにもいえなくなっちゃって・・・・・・。」
本線車線を行き過ぎる車の音が近づいては流れていく。その音が何処かよその場所から
聞こえてくるような感覚に大介はおちいっていた。
「兄さん、早く姉さん迎えに来てあげて姉さん仕事毎日してるけど
すごく疲れて帰ってくるんだよ父さんも母さんも心配してる・・・にいさん・・・。」

大介は次の瞬間にはアクセルをおもいきりふかせていた。


「大介・・・・・。」
玄関に迎え出てくれた母親に
「母さん長い事すみませんでした。」と澪を任せて居た事を詫びた。
母は笑顔で早く中に入るよう促した。

リビングのドアを開けると大介の声を聞きつけていた澪が眼に涙を浮かべて待っていた。
「大介さん、ごめんなさい。私あいたかった。毎日毎日あいたかった。」
「当たり前だ。僕だって仕事無かったらこんなの耐えられなかった・・・。」
近づきながら手を広げると澪が胸に飛び込んできた。
澪は腕のなかでしゃくりあげた。

そうしているとキッチンから母親が夕飯のしたくをする音が響いてきた。
二人の耳にその音が優しくとけこんだ。

「次郎が君の事はなしてくれた。」
澪はうんうんとうなずいた。
「澪・・・・・僕は君を守ってあげたいと思って一緒になったのに・・・・・ぼくも・・・くやしい・・・」
大介はギュっと抱きしめた。
その姿がくれなずむ部屋の窓ガラスに映っていた。
澪はふと窓に目をやった。
「大介さん私みにくいでしょう?この髪にあってないわよね・・・・・。」
ふたりは窓に体を向けた。
「君が・・・・笑顔なら、笑顔でいるなら、とても似合っていると思うよ」
「えがおで・・・・?」
ほほの涙をぬぐいながら言った。
「澪・・・・・悔しくはあるけれど、言われた事は何も真実がない事だ・・・・」
日が沈むまぎわの窓ガラスが輝きを見せた。
「君は人として何も恥じ入る事は無いと僕は確信するよ。」
「大介さん・・・・・。」
「君は多くの人に、古代に、次郎に、父や母に、保育士として子供達に・・・」
大介の顔に夕日が映えた。
「そして僕も・・・・君を愛してる」
二人はまたギュっと抱き合い、そして大介は言った。
「澪このガラスの鏡に向かって笑ってごらん」
言われた澪は少し戸惑ったが笑顔を向けてみた。
「ほら、とても綺麗だ・・・・。」
「大介さん・・・・。」
澪は心の中に確かな光がさしこんでくるのを
感じていた。



「まったくさ、他人って人の気もしらないで酷い事いうよな!!僕なんて何かと
いえば"島大介の弟だろう"って!知るかっての!僕は僕だよ!ほっとけっつーの!」
大介の母のこころづくしの夕食に一家そろってしたつづみを打っている。
「俺も今日さ古代と新造艦のスペックのコメントに行った先でね」
みなすいつけられるように顔を見た。
「"整備士の分際で道の真ん中堂々と歩ってるんじゃない"って新米パイロットに難癖つけられたよ。」
え~なにそれ~と大介の父でさえ目をまるくしてみせた。
「兄さん黙ってたの?」
大介は親指をグッと突き出して見せた。
「古代が黙ってると思うか?」
皆、目に見えるような気がしたのかそろって笑いあった。
「でも馬鹿みたいだよね。整備士の腕がなかったら誰も宇宙(そら)行けないって知ってるはずなのにさ~!」
パイロット候補学校に通う次郎があきれはてたように言った。
うなずく皆をみながら手をしかたなさそうに広げて
「偏見なんてそんなもんだよ。」と笑ってみせる。
「結局大事なのは自分自身の姿をどんな風にみるかなんだろうな鏡に映すようにしてね。」
みな手を止めて大介の顔を見た。
「い、いや俺自身まだまだだってことなんだけどさ。」
ドッと笑いが起る。

笑いながら、でも澪は大介の今の言葉をかみしめていた。
『鏡をみるように・・・自分の姿を有るように
みつつ歩いてゆく・・・・受け入れながら・・・・』

澪は大介にしずかに顔を向ける。

二人はおだやかに笑顔を交わし合う。

大介はただ今歩む道を信念を持ってまっすぐ歩んでゆきたいと思う。
そして、きっと明日からそうしてゆくであろう澪の心を思うのだった。