21世紀中年

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杭打ち不正は建物だけじゃない

2015-11-03 19:20:58 | 政治にモノ申す

 マンションや公営住宅など高層建築物の杭打工事データの改ざんが世間を震撼させているが、本当に建造物だけなのだろうか。

 私が編集記者をしていた時代の話だが、実は道路や橋の公共事業における基礎工事の欠陥や不正を追いかけたことがあった。かれこれ20余年も前のことだが、一連の報道で当時の事が蘇ってきた。

 それはデータの改ざんではなく、実際の杭打ち工事にかかわった業者の現場代人による、岩着しない杭の切断という不正工事の告発だった。

 道路や橋梁の基礎工事における杭打ちといえば、規模も強度も建造物の杭打ちレベルではない。内容も岩盤に届けばいいというものではなく、岩盤を1m以上掘削しはめ込み強度を確保しなければならない。天変地異に耐えることはもとろん、ひっきりなしに車が走る橋や道路を何十年もを支えるわけだから、強度を保つのは当然だろう。

 そうした杭打ちでどんな不正が行われたのかというと、アースオーガーやロックオーガーという特殊な岩盤掘削機(当時)で地面を掘り進め、岩盤に到達してからさらに硬い岩を削るわけだが、事前の調査データ以上に岩盤が硬かったとしたらどうなるか。当然、掘削することができなくなる。普通なら設計変更し、別の機械で掘削することになるはずだが、もし掘削可能な機械がないとしたらどうするか。安全性を考慮すれば、ルート変更、あるいは最悪中止というのが賢明な判断だろう。しかし、実際は違っていた。掘削不可能なら、到達しただけで良しとし、設計変更も工期の延長も行われなかった。

 工事の現場では、何が行われていたのか。当然、岩盤を掘らない分杭の長さは短くなるわで、その分を切断し、それを穴に埋めていたというのである。つまり、設計上の強度が確保されない安全性に問題がある道路や橋が出来上がっていたのだ。

 当時の取材の記憶をたどると、疑いのある工事は国道、道道で20か所近くあったはずだ。開発局やゼネコンにも取材したが、関係書類に不備はなく、欠陥ならびに不正は認められない。工事責任者が退職するなど、証言を得るのは困難という話だった。欠陥が認められない以上、掘り返すなど調査はできないということだった。

 そりゃあそうだろう。下請けの独断ではなくゼネコンぐるみで不正を行ったのだから、書類上に不備などあるわけがない。一現場代人の日誌や証言だけでは、工事の不正は暴けないという仕組みなのだ。もし、道路や橋が崩落したら、当然、大問題になるが、幸か不幸か取材対象の現場でまだ事故は起きていない。ただ、近くの別の現場で実際に崩落事故は起きていたが、トンネル工事の欠陥は騒ぎになったものの杭関係に疑いの目は向けられなかった。

 それにしても、今回のデータ改ざんだが、役所の監督機能が麻痺しているのは明らかだが、専門家もマスコミもなぜかそこを追及しない。私が追いかけた工事は書類上は一応完璧だったが、データ改ざんとなると話は別だ。きちんとチェックすればその時点で問題は浮き彫りになったはずだ。その証拠に、今、どんどん不正が明らかになっているではないか。大甘もいいとこだ。

 つまり、マンションが傾かなけれな、事件にならなかったのだ

 欠陥基礎工事は埋まってしまえば「ハイ、それまでーよ」が日本の工事の常識となっている。今でも日本中の道路や橋で崩落のカウントダウンは続いている。もしどこかでゼロになったとき、そこかしこでバタバタと道路や橋の崩落が始まるかもしれない。

 


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