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『夜間飛行』

また靴を履いて出かけるのは何故だろう
未開の地なんて、もう何処にもないのに

『プレーンソング』 保坂和志

2010-10-06 | Books(本):愛すべき活字
『プレーンソング』保坂和志(日・1956-)1990年・講談社2000年・中公文庫++++「出す」というのは中央競馬会が出すということで、普通、万馬券というものは出すのではなくて出るという言い方をするのだけれど、三谷さんは競馬会がレースを仕組んでいるという前提でしか考えていないから、「万馬券が出る」のではなくて「万馬券を出す」としか言わない。そして、「万馬券とりてえ!」と三谷さんはなかば叫んだ。「 . . . 本文を読む
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『ペット・サウンズ』 ジム・フジーリ

2010-09-23 | Books(本):愛すべき活字
『ペット・サウンズ』ジム・フジーリ(米・1953-)村上春樹訳"Pet Sounds" by Jim Fusilli (2005)2008年・新潮社++++今の若い人に、「ビーチ・ボーイズはかつて、ビートルズと同じくらい優れたバンドだったんだよ」なんて言ったら、おそらく変な顔をされるのがおちだろう。でもそれは嘘じゃない。『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』はロック時代のベス . . . 本文を読む
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『タイタンの妖女』 カート・ヴォネガット・ジュニア

2010-09-20 | Books(本):愛すべき活字
『タイタンの妖女』カート・ヴォネガット・ジュニア(米:1922-2007)浅倉久志訳"The Sirens Of Titan" by kurt Vonnegut,Jr. (1959)++++マラカイ・コンスタントが、彼女に別れを告げたとき、空はタイタンつぐみの群れに覆われた。すくなくとも一万羽の、巨大な、気高い鳥が集まったのである。鳥たちは昼を夜に変え、その羽ばたきで大地を揺るがせた。一羽の鳥も鳴 . . . 本文を読む
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『ビッグ・サーの南軍将軍』 R・ブローティガン

2010-09-05 | Books(本):愛すべき活字
『ビッグ・サーの南軍将軍』リチャード・ブローティガン(米・1935-1984)藤本和子訳"A Confederate General From Big Sur" by Richard Brautigan(1964)1976年・河出書房新社2005年・河出文庫++++「俺はここで蛙を読むぜ」と、リー・メロンが放屁した。「なんだって、リー?聞こえないよ。蛙の声でさ。もっと大きな声でいえよ」とわたしも放 . . . 本文を読む
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『酒食生活』 山口瞳

2010-08-27 | Books(本):愛すべき活字
『酒食生活』山口瞳(1926-1995)2002年・角川春樹事務所2005年・グルメ文庫++++森鴎外の『キタ・セクスアリス』に、宴会で、酒が飲めないのでキントンばかり食べている青年が出てくる。その態度が堂々としているので芸者が惚れてしまう。これでいいのではないかと思う。ところが、少し慣れてくると、急にくだけてしまう青年がいる。これが困る。地方都市から出てきて、一心不乱に東京を勉強しようとする青年 . . . 本文を読む
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『乙女の密告』 赤染晶子

2010-08-24 | Books(本):愛すべき活字
『乙女の密告』赤染 晶子(1974-)2010年・新潮社京都の外国語大学。ドイツ語のスピーチコンテストで、みか子たち乙女は、バッハマン教授から『アンネの日記』の暗唱するよう指示される。乙女たちは、期限までに必死で暗記に取り組むが。++++外国語大学の生徒たちの中で起こる差別と、アンネ・フランクが受けたユダヤ人への迫害は、その区別の曖昧さ、正体の曖昧さが共通していて、どっかで遠く繋がっていると。とい . . . 本文を読む
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『サラミスの兵士たち』 ハビエル・セルカス

2010-08-22 | Books(本):愛すべき活字
『サラミスの兵士たち』ハビエル・セルカス(西:1962-)宇野和美訳”Soldados de Salamina” by Javier Cercas(2001)2008年・河出書房新社++++1939年1月30日、内戦末期のスペイン。バルセロナ陥落前夜、共和国軍の収容所から銃殺場へと向かう50人の捕虜の中には、詩人にしてスペイン人最初のファシスト、ファランヘ党設立メンバーであ . . . 本文を読む
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『日々の泡』 ボリス・ヴィアン

2010-08-18 | Books(本):愛すべき活字
『日々の泡』ボリス・ヴィアン(仏:1920-1959)曽根 元吉 訳"L'Écume des Jours" by Boris Vian (1947) 1970年・新潮社1998年・新潮文庫++++「このうなぎのパテは驚くべきもんだね」とシックは言った。「これを作る思いつきは誰がきみにくれたんだい」「思いついたのはニコラだ。うなぎがいるもんだから―というよりうなぎがいたわけで―そいつが . . . 本文を読む
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『私が語りはじめた彼は』 三浦しをん

2010-07-30 | Books(本):愛すべき活字
『私が語りはじめた彼は』三浦しをん(1976-)2004年・新潮社2007年・新潮文庫++++「渋谷さん」と村上綾子が言った。「男の人がおじさんになるのって、いつだかわかりますか?」なんの話かわからず、俺は村上綾子の黒目を見た。頭蓋骨の内部の暗がりがそのままむきだしになったみたいな、水っぽい膜の張った穴が二つ、俺を見返していた。「年齢じゃないんですよ。女のひとにおべっかを使うようになったら、そのひ . . . 本文を読む
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『男の花道』 杉作J太郎

2010-07-24 | Books(本):愛すべき活字
『男の花道』杉作J太郎(1961-)2005年・ちくま文庫+++++だが、満足にノートをとっているような奴が身近に簡単にいるはずもなく、ノート集めは難航した。ちなみにそのエロキチは高校生の分際でピンクサロンにちょくちょく顔を出しては、「指がふやけてしまったんよ~!」なんてことを言ってる男だったが。ふと気がつくと、クラスメートの女子の家の近くにいた。俺はズバリそのコに恋心を抱いていたので、そのコの家 . . . 本文を読む
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『最後から二番目の真実』 フィリップ・K・ディック

2010-07-06 | Books(本):愛すべき活字
『最後から二番目の真実』フィリップ・K・ディック佐藤龍雄訳"The Penultimate Truth" by Philip K.Dick (1964)2007年・創元SF文庫1984年に山崎義大訳でサンリオSF文庫版が出ていたが、廃刊になっており、2007年に新訳で本書が出た。世界を二分して終わりなく続く核戦争。地上に蔓延する放射能をのがれて人びとは無数の巨大な地下塔にひそみ、過酷な生活を送って . . . 本文を読む
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『怪しい来客簿』 色川武大

2010-06-13 | Books(本):愛すべき活字
『怪しい来客簿』色川武大(1929-1989)1977年・話の特集1989年・春秋文庫++++まもなく叔父は入院し、症状を少しずつ重くして、やがて不帰の人となった。その半年ほどの間、私は叔父のことを絶えず考えていたが、とうとう一度も見舞いに行かなかった。けっしてそう望んでいないにもかかわらず、私の最初の勘をねじ伏せて叔父の前で演技することができそうもなかったから。あのときの高まりが最高で、それを心 . . . 本文を読む
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『きのうの世界』 恩田陸

2010-06-10 | Books(本):愛すべき活字
『きのうの世界』恩田陸(1964-)2008年・講談社++++「あれ」訝しげに辺りを見回す。「変だな。急に静かになった」修平はハッとした。音が消えている。車の音も、鳥の声も。不気味な沈黙が、二人を包んでいる。男の顔に、混乱と動揺が走った。「じっとしたままで、焚き火を見ていてください」修平は、早口でそう囁いた。「えっ?」「じっとして。きょろきょろしないで」男は修平の真剣な口調に従うことに決めたらしか . . . 本文を読む
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『バスジャック』 三崎亜記

2010-06-03 | Books(本):愛すべき活字
『バスジャック』三崎亜記(1970-)2005年・集英社ちょっとオッサンすぎたんだ。これを読むには、俺。思春期向けだった。星新一さんチックな不条理ものの1篇で始まり、その他は感動ものになっていって、読みながら焦点が定まらない。なんてことを、飲み屋から帰ってきたばかりの酔っ払いに言われて、作家さんは大変だよ。 バスジャック (集英社文庫) 三崎 亜記 集英社 . . . 本文を読む
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『スプーク・カントリー』 ウィリアム・ギブスン

2010-05-31 | Books(本):愛すべき活字
『スプーク・カントリー』ウィリアム・ギブスン(米:1948-)浅倉久志訳"Spook Country" by William Gibson(2007)2008年・早川書房++++昔、彼は国家保安部門にいたんだ。アメリカ政府の。キャリア組だった。退職したのが、九・一一事件の二、三年前。はっきりいって、あの事件からちょっぴり野生化したんだと思う。口角泡を吹くようになった。彼の前であの話題を持ちだしちゃ . . . 本文を読む
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