『ビッグ・サーの南軍将軍』
リチャード・ブローティガン(米・1935-1984)
藤本和子訳
"A Confederate General From Big Sur" by Richard Brautigan(1964)
1976年・河出書房新社
2005年・河出文庫
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「俺はここで蛙を読むぜ」
と、リー・メロンが放屁した。
「なんだって、リー?
聞こえないよ。蛙の声でさ。もっと大きな声でいえよ」
とわたしも放屁した。
リー・メロンは立ちあがって、池に大きな石を投げ、
「キャンベルのスープ!」
と叫んだ。
たちまち、蛙の声がやんだ。
それでしばらく静かになるのだが、また間もなく始まる。
リー・メロンは部屋の中に石ころをいっぱい積み上げておいた。
蛙たちはいつも、どれかが一声がーと鳴くと二匹目がそれに続き、それから七四五二匹が続くのだ。
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ブローティガンはビート・ジェネレーションに区分される事もあるけど、俺としては他のビートニクたちに比べても、ブローティガンの存在が絶対的すぎて、全然納得がいかない。
別もんでしょ。
ただ、本作はブローティガンのなかでは、一番ビートっぽさがある気がするんだよね。
とは言え、例えばケルアックの『地下街の人びと』なんかの10倍は好いちゅーとよ。
ちなみに、俺の中のブローティガンランキングは『アメリカの鱒釣り』が不動の1位なんだけど、長編だと本作もいいなぁ。
そんで、この放屁しながら男子が話しあう感じ、懐かしいなぁ。
学生時代ってこんな感じあるよね。
ちなみに、このとき登場人物のリー・メロンとわたし(ジェシー)は、猫のために置かれていたものの、猫たちでさえ手をつけなかった大鯖を夕食に食べて、物凄い腹痛に悩まされている。
曰く「大鯖はからだをズタズタにする」。
そんで、放屁しながら会話してる。
っていうか、喋ると自然と出るんだろう。
コウンもちょっと、出てるかもしれないね。
蛙の池っていうのは2人が暮らす小屋の側にあって、2人はいつも7452匹の蛙の声に悩まされている。
リー・メロンは池を見ながら、何度も
「ダイナマイトがあればな」
と呟くのだが、そんなものは無いので、たまに石ころを投げ込んでは、ささやかならが蛙の殲滅を図っている。
無論、効果はないのだが。
(まあ、偶然1匹くらいは潰れてるかも新米)
ちなみに、この池は、その後2匹の鰐を放つことで、静かな池に変わる。
初めて鰐を連れてきた時の表現がまた、ブローティガンの鋭い感受性が炸裂していて、俺はとても好きだ。
こんな感じ。
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リー・メロンが鰐を連れてもどってきた。
顔に、素敵な六本歯の笑みを浮かべて。
箱を下に置くと、鰐を一匹取りだした。
鰐は自分のいるところがペット・ショップでないことに気づいて仰天した。
彼のいた水槽と隣りあわせの金網の檻の中にいた子犬たちの姿を求めて、きょろきょろしている。
子犬たちはいない。
子犬たちはどこへ行ってしまったのだろうと鰐は不思議がった。
リー・メロンが手で鰐をささえていた。
「オッス、鰐ちゃん!」
とリー・メロンがわめいた。
鰐はまだ子犬を探している。
どこへ行ってしまったんだろう?
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ペットショップで隣にいた子犬の不在を不思議がる鰐か・・・。
凡人の発想を超えてるなぁ。
ちなみに、単行本出版時の藤本さんの「訳者あとがき」は、一編のエッセイと言ってもよく、なんか得した気分。
■ブローティガンの本
・『アメリカの鱒釣り』 (藤本和子訳/ 1975年・晶文社)
・『西瓜糖の日々』 (藤本和子訳/ 1975年・河出書房新社)
・『ビッグ・サーの南軍将軍』 (藤本和子訳/ 1976年・河出書房新社)
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ビッグ・サーの南軍将軍 (河出文庫) | |
Richard Brautigan/藤本 和子(訳) | |
河出書房新社 |