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客室乗務員(CA) 1日4便 休憩なし

2025年08月19日 11時38分02秒 | 一言

過酷乗務 安全脅かす

「憧れ搾取」 CA疲弊

 羽田空港(東京都大田区)で2024年1月2日に起きた日本航空と海上保安庁の航空機衝突炎上事故―。海保機の乗員5人が死亡したものの、日航機の乗客367人、乗員12人の計379人は、客室乗務員(CA)の機敏な誘導のもと全員が脱出できました。空の安全に欠かせないCAは今、どんな労働環境にあるのでしょうか。(矢野昌弘)


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(写真)空港に駐機した旅客機

 「上空での機内の気圧は、0・7から0・8気圧。富士山の5合目ぐらいの酸素濃度です。そして湿度は10%。家庭用掃除機のモーター音に近い騒音レベルの中で働いています。地上から5合目まで短時間での登り下りを1日に4回もすれば、疲れは簡単にとれません」。そう解説するのは、外資系航空会社での勤務経験があるA子さんです。CA歴20年を超えるベテランです。

 この環境でCAは、ワゴンを押して飲み物の提供や機内販売をします。「水平飛行中でも飛行機は機首を上げながら飛ぶので、通路には傾斜があり腰に負担がかかります」とA子さん。

 CAは航空機内の特殊な環境下で、大きな負荷にさらされます。ところが、日本の航空会社ではCAが1日4回も搭乗することが珍しくありません。

 CAでつくる労働組合、ジャパンキャビンクルーユニオン(JCU)が全日空での勤務事例をまとめています。あるCAの事例では、宿泊した松山から始まって―羽田―伊丹―羽田―関空の4便乗務で勤務時間は9時間15分、この間の休憩はありません。

 目的地に着陸して乗客が降りた後もCAは一息つく暇はありません。次に乗る便の出発時刻が迫り、準備に追われるからです。

 全日空に勤務していたJCU書記長の酒井三枝子さんは「肉体的、精神的に負担が大きい勤務に加え、評価制度で笑顔の有無を査定されるなど、CAはストレスにさらされています。勤務中や次の出勤までの休みが十分でなく、憧れの職業としてCAになっても数年で大量に辞めていく。まるで『憧れ搾取』です。これでは空の保安要員が育たない」と指摘します。

 路線の拡大、機種の多様化、格安航空会社との競合、乗務員の長時間労働の常態化―。520人が犠牲となった1985年の日航機墜落事故当時にはなかったリスクを今、日本の航空業界ははらんでいます。

休み犠牲に稼働率追求

LCCジェットスターにみる

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(写真)ジェットスターの旅客機

 日航機墜落事故が起きた1985年当時にはなかった格安航空会社(LCC)の参入―。その一つ、ジェットスター・ジャパン(千葉県成田市)の客室乗務員(CA)の働き方を見てみました。

 ジェットスターは2011年に設立し、成田空港を中心に国内線と国際線を運航しています。日本航空が50%、オーストラリアのカンタス航空が33・3%を出資しています。

 LCCが安い運賃でも利益を上げるための仕組みはこうです。一つは、機内サービスや手荷物の預かりを有料化するなどの付帯サービス収入です。もう一つは、飛行機の機種を統一して整備費用や乗員の訓練費用を節約した上で、フライトを多くこなし、稼働率を上げることです。

全日空も40分だけ

 ジェットスターのCAは、例えば国内線なら成田―高松間を2往復や、成田―千歳―成田―福岡―成田など1日に計4便に搭乗します。同機の便間時間は最短で35分の設定です。

 この間にCAは、乗客の降機確認、セキュリティーチェックをし、機内清掃は専門業者でなくCA自ら行います。また次の便の打ち合わせや機内販売品の在庫準備などに追われ、すぐに次便の乗客が搭乗するあわただしさです。CAが飛行機の外に出る時間はほぼありません。

 労働組合ジェットスタークルーアソシエーション(JCA)は「疲労に関する意識調査」を実施。そこには、「便間休憩を取れず掃除ありの4レグ(4便に搭乗する勤務のこと)は負担が大きい。フライト中も休憩は取れない」「便間でもすぐ折り返さなければならず食事も取れない」と、深刻な訴えが多数寄せられました。

 こうした過密労働はLCCだけではありません。大手の全日空でもCAが1日4便に乗務し、便間時間が機種によっては40分に設定されています。

差し止めを命じる

 疲労問題が深刻となり、JCAは再三、改善を求めましたが、会社がゼロ回答を続けたため、CA35人が、勤務の差し止めと賠償を求めて東京地裁に提訴しました。

 この裁判で同社側は、“飛行中の機内で与えられている「キャビンクルーレスト」が、労働基準法でいう休憩にあたる”などと主張しました。これに対し判決は、「乗務中は機長の指揮命令下にあり、労働時間に該当する」「労働基準法34条が定める休憩を与えていなかったことは違法だ」などとして、原告全員に11万円ずつの賠償と、こうした運用の差し止めを命じました。同社側は控訴し、東京高裁での審理が続きます。

 ジャパンキャビンクルーユニオン(JCU)書記長の酒井三枝子さんは「ジェットスターだけの主張でなく、全日空も『(着陸した機内は)上空より緊張度が低い』ので『休憩に代わる時間に該当する』と主張しています。東京地裁判決は、航空会社の考えを否定した点で大きな意味がありました」と評価します。

 「全日空や日本航空もコスト削減で利益を上げるLCCのビジネスモデルを取り込んでいます。経営側は飛行機をフル稼働させるあまり、乗務員の休憩・休息をおろそかにしている」と酒井さん。

 JCAは、月によっては月間90時間以上の乗務や50回以上の着陸を強いられる勤務もあり、疲労が深刻化し、健康だけでなく安全にも影響を及ぼしかねない」と懸念を示しています。

 便間時間 前の便が到着地の空港に着陸して、機体が駐機場に入って停止した時間から、機体が次の便として駐機場を離れて滑走路に向かい始めるまでの時間を指します。

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