JINX 猫強

 オリジナルとかパロ小説とかをやっている猫好きパワーストーン好きのブログです。
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転生したら飼い猫だった件 (転生編)5

2022-12-28 00:39:02 | 日記

ーー我は先生に抱えられ台の上に乗せられ、注射を打たれた…。

ーーその瞬間。我の記憶に、以前に同じ公園に住んでいた同胞の言葉が蘇った…。その同胞は以前に人間に飼われていた飼い猫であった。だが、その飼主とはあまり性格が合わず家を出たのだという。その同胞は外に出歩くのが好きだった。狩りも我よりも上手であった。人間になど養われずとも、十分に生活する力があったのだ…。

ーーその同胞は人間に飼われる前に”保健所”というところにいたという。

ーー”保健所”とは、飼い主のいない犬や猫を一定期間保護し、そして、引き取り手のない我らを殺処分する場所だという…。

ーー殺処分?

ーー不吉な響きのある言葉の意味を、我は同法に問うた。

ーーそして、恐ろしい事実を聞かされたのだ。

ーー殺処分とは、我らを殺して処分する、ということだ、と…。

ーー何故だ。

ーー何故、公園の片隅で、平和に暮らしている我らを捕らえて、そんな残酷なことをするのか…。

ーー我らが、人間に何をしたというのか…。

ーー保健所とは、一定の数の同胞を纏めて…と聞いていたが…。

ーーここでは我だけを…。

ーー1頭一頭…。

ーーそして、あの人間は、何故、我をこのような場所に連れてきたのか…。

ーー我に飽(あ)いたのなら、なぜあの公園にそっと話してくれなんだのか…。

ーーうらむぞ、人間。

ーー絶対に、許さぬ…。

ーー腕に冷たい液体が入っていくのが解る…。

ーーチクリとはしたが、コレで我は、もう怖い思いをせぬのだな…。

ーー人間に、淡い期待を抱いた我が馬鹿だったのだ…。

ーー意識が霞む…。

ーー顔に、何かが被せられた…。

ーー我の意識は、途絶えた…。

 

■ ■ ■

 

ーー下腹部に違和感がある…。

ーーん、ここはどこだ?

ーー我は周囲を見回した。

 ………。

ーー視界が霞む…。

ーーうむ、眠い…。

ーー我は眠りに付いた。

 

ーー我は意識を取り戻した。

ーーここは、元の部屋か…。

ーー我は周囲を見回した。

ーーなんか、下腹部と、視界に違和感が…。

ーー視界が、狭い…。

ーーん?

ーー首にも違和感が…。

ーーちょいと、首でも掻き掻きしよう、と…。

 カツッーー。

ーーなんだ。むずい場所に爪が届かぬ。

ーーなにか、首に嵌められておるぞ。

ーーなんだ、コレはッ!

ーー我は、首を振った。

 ガン! ガンッ!

ーー狭い空間に虚しい音が響き渡る。

ーー何故だ、何故、我がこんな目に…。

ーーさっきからうるさいわねぇ!

ーー不意に、床下から声が上がった。

ーー私達は、病気や怪我でここにいるんだ。そんなに騒いだり、物音を立てるのはやめておくれよ。

ーーそ、それは済まなんだ。我はその…。

ーーまったく、うるさいったらないね…たかが避妊じゃあないか。

ーーな、なにもそんなに怒らんでも…それに”避妊”とは、我は、その…。

ーーまぁ、いきなり連れてこられて眠らされたんだ、仔猫じゃ怖くなるのも仕方がないね…。

ーーわ、我は仔猫ではないぞ。取り乱し、騒いだのは悪かったが、我は立派な成猫であるぞ。

ーーなにを言っているんだい、私もここにいる皆も、あんたがここに運ばれて、手術室に連れて行かれたのも見てるんだよ、注射に怯えてピーピー泣いて。それが大人のやることかい。

ーーな、なにも、そんなに怒らんでも…わ、我は、殺処分されると思ったのじゃ、だから…その…。

ーー殺処分? バカ言ってるんじゃないよ。ここは病院、そんなコトするはずがないだろう。

ーーだ、だが、我は…(あまりの剣幕に、我は言葉を続けられなんだ)

ーーあんたは、避妊。全くの健康体、避妊以外、何もせらちゃあいないよ。

ーーな、なぜ、そんなことが主に解るのだ、そ、それに主は誰だ。

ーー私は”クロ”飼い猫さ。

ーーな、なんと、飼い猫とな…。その飼い猫がなぜ、こんな場所に、そなたも避妊手術を受けたのか?

ーーフンッ。私の避妊はずっと昔、あんたの生まれるずっと前さ。

ーー馬鹿にするでないわ。我は、見た目よりも、だいぶ長く生きておるのだぞ。

ーーあーぁ、可哀想に…先生は麻酔の量を間違えちゃったのねぇー。

ーー(”麻酔”の意味は解らぬが、馬鹿にされたのは解ったぞ)な、何をいうか、我はこんな姿だが、目覚める前は成猫の、人間のいうキジ猫であったのだッ!

ーーそうかい、寝ぼけているんだね、もう少し休んだらどうだい?

ーーバ、バカにするでないわ、我は正気ぞ、お目々もぱっちりぞ!

ーーあぁ、そうかい。解った解った、それじゃあ私は休むから…。

ーーな、さっきから何じゃその態度は、我は目覚める前は公園で自立した猫であったのだ。そなたに馬鹿にされるいわれはないぞッ! (小馬鹿にしたような態度に、我は肚を立てた)

ーーなんだい? あんたもしかして転生猫かい?

ーー転生猫とはなんだ? 我はさっきから生意気な口を聞く”クロ”の姿を見ようと檻の入り口に移動し、下を覗き込もうとしたが、首に巻き付き、視野を妨げる人工物に妨げられ、その姿を見ることはできんかった。

ーー生まれ変わり猫のことさ…。稀にいるというーー亡くなるときに強い思いを残した猫と、身体にはまだ余裕があるけど、精神が身体から離脱してしまった同胞が近くにいたときに、奇跡的に起こるという現象のことさ。

ーーなんと、我が生まれ変わり…(我は爪が根本から抜かれてしまった爪と、無残に断ち切られてしまったはずのしっぽを見た。

ーーよほど酷い目に遭ったんだね。きついことを言って悪かったよ。

ーー(”クロ”はトーンダウンしたようじゃった)いや、我は気にしてはおらんよ。我は小さなことは気にせん猫じゃからな。

ーーそうかい、あんたはいい猫なんだね。

ーー良いかどうかは解らんが散々な目に遭わされたわ。

ーーそれは、大変だったね。

ーーそなたはどうなのだ、人間の許を離れた猫には、人間は勝手だと聞いておったが…?

ーー私は、大切にされた猫なのさ。

ーーそういった”クロ”の声は、本当に幸せそうに聞こえたーー。