テレビ会議・WEB会議について語る人

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オリンピック期間の「テレワーク」…システム導入よりも大事なもの

2020-02-05 21:51:47 | ホットな話題

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「テレワーク」 五輪・パラ期間中の呼びかけへ 政府

オリンピックという特殊な事情があるとはいえ、いよいよ「テレワーク」が政府お墨付きの業務スタイルとして推奨されたわけです。

しかしながら、ここで言う「テレワーク」が何かというところが気になります。

  • 離れた社員どおしで音声(+カメラ映像)をやりとりできれば会社に集まる必要ないでしょ、ということなのか
  • WEB会議or音声会議繋ぎっぱなし状態にすれば働いている証拠になるから、会社に来なくても大丈夫でしょ、ということなのか
  • 社内のみならずパートナーとの会合も自宅からできるでしょ、ということなのか・・・

おそらく一番目のことだと思いますが、「テレワーク」という、遠隔コミュニケーションを前提とした表現がされているのは、今回の問題解消に対しての本質ではないような気がしてなりません。

本質的な意味で「テレワーク」を可能とするのは

  • 業務開始・終了を確実にトレースし勤務時間管理ができること
  • 業務システムや会社メールなどを自宅から閲覧できるためのクライアント環境を自宅に提供できること
  • 「時間の拘束」の証明はもはや無理なので、勤務成果を適正に評価できる仕組みを構築すること

といった面が何より重要なのではないでしょうか。

つまりこれらが揃っているのならば、別に声とカメラ映像などなくてslackなどのテキストベースであっても、きちんとコミュニケーションが取れるので、システムこだわる必要が全くないわけです。

そもそもオリンピック中ということは、自宅にいるならば「テレワーク」中であっても絶対にテレビをつけてオリンピックを見ていると思います。

ですから政府がそれを推奨するのならば、「テレワーク」という、"会議システム"のイメージが想起されるような言葉を前面に出すよりも、「自宅で業務できるような社内規定(勤務ルール+システム利用ルール)の策定」を企業に推進させるために、成功例のモデルケースを示して啓蒙するとか、それを実施した企業には何かインセンティブを与えるとか、そういうことが大事なのではないかと思いました。

いずれにせよ、手段としてWEB会議の利用率がその瞬間急上昇することは間違いないでしょう。
マイクスピーカー、ヘッドセットマイクなどハード関係の市場在庫枯渇や、WEB会議サービスのサポート窓口のパンクなどが考えられます。

この特需に乗って遠隔会議システムが普及し、Microsoft Office製品よろしく「使えて当たり前」のものになってくれたとするならば、日本は世界でもこの分野をリードできるポジションにおどり出るかもしれませんね。
いや、そうなってほしいです。


「Krisp」をブイキューブが提供。その技術とは。

2019-11-27 22:45:14 | TV会議/WEB会議メーカーの話題

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ブイキューブ、ノイズ軽減の「Krisp」を国内提供--ウェブ会議の音声品質改善に

 krispNet DNNと呼ばれる積層ニューラルネットワークモデルを開発し、3万人2500時間の音声データ、2万種類の騒音データを学習させたサービスで、ノイズキャンセリング機能を持たないヘッドセットやマイクスピーカーを用いても、快適にコミュニケーションを実現できる点が特徴としている。Salesforceやintelへの導入実績があり、米国をはじめとした世界150カ国以上、3万人を超えるユーザーが利用しているという。

つまり、Krispというものは、「音声コミュニケーションに必要な情報以外はキャンセルする」技術と読めます。

こういう技術は定常的なノイズであったり、人間の音声帯域と明らかに周波数帯域が異なるとか、時系列的なパターンが音声と似ても似つかないものをフィルタするものです。似たものとしてSONYなどに代表されるノイズキャンセリングヘッドホンがありますが、あれは環境音をリアルタイムで分析し逆位相の音を当てて消し込むものだったと思うで、似て非なるものです。

この技術はWEB会議・テレビ会議で邪魔となるキーボード打鍵音や外部のノイズに対しては大きな効力を発揮することでしょう。

しかし、「他人の音声」の判別は困難です。
つまりシェアオフィス・コワーキングスペースといった他人が入り混じる空間での部外者の声を判断し減衰させるのは技術的に難しいと思います。
もしかして「積層ニューラルネットワークモデル」というものが、日本語の文脈や「間」の傾向まで学習した上で、統計的にノイズと判定できるような入力はキャンセルするとか、そこまでやってくれるならばすごい技術革新です。
なにせリアルタイムで遅延なくその判断をしなければいけないわけですから。 

 

私のサイトでヤマハのYVC-1000をマイクスピーカとして推奨しているのは、初期設定で「空間的な特徴」を事前に掴んだ上で、それを利用して不要な情報をフィルタしたり必要な情報を持ち上げたりしている点が素晴らしいと思うからです。

つまり、AI的な技術に頼る前に、少しでもノイズか否かの判断材料となるような情報がシステムに与えられれば、ずっと正確に取捨選択できるはずなのです。

既にボツになってそうなアイディアかもしれませんが、例えばTV会議の際は冒頭に参加者に挨拶していただいて、そのときに参加者各自の音声特徴と座席の位置を認識し、そのパターンに外れる音声は減衰させる、エコーキャンセルする、などといった機能はどうでしょう。

「個人の音声の特徴」を人間がつぶさに聞き分けるように、その物理的な特性というのはもっと音声デバイスにおいて活用されるべきと思います。

予想するに、ブイキューブを使っていて何か音声が途切れるとか聞こえにくいといった場合のトラブルシューティングの中に「Krisp機能をオフにしてお試しください」というFAQが載る気がしてなりません。

 

ところで、TV会議とは外れますが、姉妹サイトを立ち上げましたのでご興味あれば。

「SEに疲れたら経理をやろう。地方の中小企業で。」

 


企業のテレワーク導入の課題と可能性<東邦銀行の試行について当方で思考したこと>

2019-05-27 21:46:03 | ホットな話題

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東邦銀行がテレワーク試行導入

東邦銀行といえば福島県内トップの銀行。
業態的にも、書類作成や稟議、承認、決裁など書類回付業務は非常に多いと思われます。
また、社内定例会議も多そうですね。

求職者に未だに人気の地方主要銀行といえども、昨今の「働き方改革」により、柔軟で効率的な勤務形態が求められています。
ましてや優秀な女性が長期間働いてもらえる職場にすることは、もはや企業にとって対応が必須なものです。 

つまりは「社外での業務遂行」が地方企業でどこまで実現されるかについてモデルケースとなりうる事案です。

 

対象は六つの部署の管理職や一般職員ら計18人とのこと。 

また、対象業務は、

「企画、会議・報告資料の作成をはじめタブレット端末にて実施可能な業務」

とのことです。範囲が広いですね。
というより、「テレワークの試行導入」という題目と、資料作成がどう直接関係あるのかが不明です。

上で私は「社外での業務遂行」とあえて書きました。
これが今回の試行目的であれば納得なのですが、テレワークと書類作成は、業務としてはシーンが連続していたとしても、要素技術的には切り離されたものです。

そもそも、別の記事も読むと、「渉外担当者らが取引先を回る際に持ち歩いて使っている情報タブレット端末」というのがもともとあったようです。
それはこれまでどのような使い方をされてきたのか。

車内の書類をデータとして持ち出し閲覧できるだけなのか。
もしくは認証を通して社内の基幹システムに接続することもできていたのか。

いずれにせよ「書類作成」 は今回からのようなので、そういった使われ方はしてこなかったのでしょう。

 

となると、今回の試行は新しい要素が盛りだくさんではないでしょうか。

  • 本人認証の使い勝手、情報漏洩やセキュリティリスクの評価
  • 書類作成のためのツールとしてのタブレットのハードウェア性能評価
  • 書類作成ソフトウェアの使い勝手の評価
  • 書類回付(承認プロセス)のグループウェアの評価
  • それら書類を用いたテレビ会議システム(もしくはWeb会議システム)の評価
    • 会議システムを使うためのタブレットのハードウェア(マイク・スピーカ・カメラ)評価
    • 会議システムの使い勝手(操作しやすさ、分かりやすさ)の評価
    • 会議システムと書類閲覧・共有ソフトウェアとの相性評価
      (もしくはそれらが一体となった会議システムであれば、書類登録・閲覧・会議記録保存等の評価)
  • 業務開始・終了エビデンスの取得、保管、信ぴょう性の担保等のガバナンス面

・・・たくさんありすぎてとても書ききれませんね。
おわかりのとおり題目の「テレワーク導入」は一部のトピックにすぎず、それ以外のもっとクリティカルな要素が満載です。 

ましてやこれらの要素は、年齢や性別、利用環境、ITリテラシーなどにより変わるものであり、主観評価しかできません
(もともと18人での調査とのことで、統計的評価はもとより系統的な分析も困難) 

そうなると、何か課題があぶり出されたとしても、次のアクションとしてどの要素を改善して潰していくべきかの動きがとても難しいです。

 

どうせならもっと目的を絞って、たとえば

「テレワーク」による「仕事と家庭の両立支援」と銘打ち、

  • 育児のために産休や時短勤務状態の女性社員を自宅から社内会議へ遠隔参加させる。
  • 共有されるメディアは音声のみとして、カメラ前に居座る負担はかけない。
  • それにより仕事から離れていても情報を共有でき、仕事に参画できるため、精神的なギャップも少なくフルタイムの職場復帰がしやすくする。
  • ただし、勤務に対する報酬は支払われるため、意見を集約する、まとめるといった成果文書は提出させる。
  • また、これにより同部署の他メンバーの負荷増大が抑制され、不満が減ったかどうかを匿名でアンケート回収する。

といったくらいまで突き詰めた設定があれば、効果や課題、その解決方法が見出しやすいのではないでしょうか。

 


続続:テレビ会議による「遠隔授業」は被災地の子どもに何をもたらすか

2018-10-20 20:08:34 | ユースケース

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前回の記事では、『福島県内で東京電力原発事故により避難指示が出された小中学校で、生徒数や教員数現象による教育的格差を解消するために「遠隔合同授業」を実施する』という記事を紹介しました。その中で、

  1. 「遠隔授業」がなぜ難しいか

について少し掘り下げて記述しました。 

今回は、なんとかポジティブに、

「遠隔授業が成功するとしたらどのようなストーリーが考えられるか」

についてアイディアを書きたいと思います。

 

「TV会議システムの不確定性」を乗り越えるために

テレビ会議を使った遠隔授業の困難さは、前回記述した「TV会議システムの不確定性」が現在学校の授業にはミスマッチ、相性最悪という点に尽きます。

しかしそれはあくまで、求める授業の内容が現在学校で行われている範疇を超えず、その延長線上だけで考えているからです。

会社業務のICT化でも何でもそうですが、単にそれまでの業務スタイルをIT化によって効率化する、より便利にする、という姿勢では、ほぼ失敗します

むしろ、業務をICTに寄せていく、誤解を恐れず言えば「人間が機械に合わせる」といった姿勢と覚悟が不可欠なのです。

たとえば車やパソコンは、それに取って替わられた馬車やワープロの「完全上位互換」ではありません。
馬車はガソリンスタンドが無くても前に進みます。ワープロには「筆記用具の延長線上風の道具感」といった質感的な良さがあるでしょう。

しかしいまだに馬車やワープロを使う人がいるとすれば、それはいたって少数であり、趣味の範疇にしかなりません。 スマートフォンのソフトウェアキーボードがいまだに慣れず、ガラケーの物理ボタンを傾慕する人もおり、馬車やワープロよりは多いだろうもののこれも年々減少するでしょう。

人間が身につけるべきスキルということで言えば、昔の人のほうが達筆だったといえるでしょう。そろばんも今より普及していましたから、暗算が得意な人も多かったでしょう。それらは今でもあるに越したことはありませんが、机上にそろばんを置いたり筆を置いて仕事をするシーンはほぼなくなりました。

例を言い出せば枚挙にいとまがありません。物であれスキルであれ、新しくより時代によりフィットするものができれば必ず失われる何かがあり、 それを受け入れて進む道を我々は選んできたわけです。その中で、良いか悪いかは別として、その時代時代で尊重された物やスキルは失われ、より必要とされるものに適応せざるを得ません。

さて、「テレビ会議やWEB会議を使った遠隔授業」に置き換えて考える場合、それに対して我々が必要な適応とは何か、また、革新とは何か、についてきっちり考えなければいけません。

我々が現在会社で求められることは、いかに短い時間で多くの作業を終えるか、もしくは創造的アイディアを創出するか、に尽きます。

更には、ビッグデータとAIを駆使して、人間の想像の範疇を超えた発見をし、世の中に適用していくというフェーズに入ろうとしています。

そのような中で、勤勉で忠実な人材を大量生産することを目的とした教育だけで足りるはずはありません

座学スタイルの授業は極力減らす

今や多くの企業で、一人一人順番に状況を報告するような会議は時間の無駄であると気づいています。
Slackなどの同時平行コミュニケーションツールでリーダーに報告して完了、というスタイルも珍しくありません。

案件の進捗などもすべてデータ化してBIツールに入力すれば、ツールが解析・可視化して人間にボトルネックや課題を提示してくれます。そのようなプロセスにおいて人間が発声しそれを書き取りキーボードで入力するという作業は2度手間3度手間でしかないのです。

つまり、「考えのまとめ方や発言の仕方を学ぶ」だとか「人の意見の聞き方・捉え方を学ぶ」「討論する」といった基礎要素自身の習得を明確な目的とした授業以外は、先生→生徒の一方的な座学や、他の人の発表を黙って聞いているといったスタイルの授業は一切やめたら良いと思います

なお、黒板を写すことで頭に入るだとか、他人の発言を聞くことを強いられることで思わぬ気づきがあるといった従来のメリットも当然あるでしょう。ここで言うのは、それで失われる時間を今後必要とされるスキルを学ぶ教育に割り当てたほうがより有効なのではないかということです。

例えばそれは、以下のような力を育む教育です。

  • 多くの情報から重要なものを抽出・整理する
  • 世の中の事象を符号化する
  • それらのデータから傾向を導き出し、理屈の通った提案を数多く出す

学問では統計学、プログラミング、論理学などが該当するでしょうか。ともすれば哲学や戦術学も、より容易で現代風にできたならば、必要かもしれません。

ちなみに先に述べた「考えのまとめ方や発言の仕方を学ぶ」「人の意見の聞き方・捉え方を学ぶ」「討論する」ということは全ての基礎となり非常に大事ですが、私はこれらを中等教育で「習った」おぼえがほとんどありません。結果的に身についたということはあったかもしれませんが、もしそのような成果を目的として明確に掲げてプログラムされていたとすればとても非効率なものだったと言わざるを得ません。つまり今の日本の教育にそんなに守るべきものがあるのか疑問です。

「読み書きそろばん」を上書きする初等教育の基盤を定義しなおす

上で挙げたような分野に力点をおいて新しい教育の基盤を構築したならば、子どもたちにとってICTツールは空気のようになっているでしょう。

なにせ、統計やプログラムといった授業の中身自体が密接に関連するものはもちろんのこと、全てのコミュニケーションがICTツール経由となります。
従来のように紙に書かれた連絡帳で教師と生徒・親がやりとりするなどという全時代的な儀式もなくなり、テキストチャットやマルチメディアコミュニケーションツールを使うでしょう。行事日程などのスケジュール管理やToDoリストなどのタスク管理、目標設定とそのプロセス管理などビジネスでは当たり前にPC内でやっていることです。
アナログなスタイルの授業であっても指示や説明はデータで提供され、提出もできるだけデータになるでしょう。 

従来の「読み書きそろばん」は、歴史を紐解けば、庄屋が年貢諸役を遂行するのに必要とされたスキルだという説があります。つまり今で言えば役人が役人たるためのスキルです。
しかし、今や日本のお役所のやり方は時代遅れです。一般企業で入札参加でもしてみたことがあれば痛いほどわかります。

お役所仕事など遠に置き去りにして上場企業ではITにより仕事のスタイルがまったく変わっています。役所も中小企業も遅かれ追従するでしょう。つまり初等教育がそれに追随してこないというのはありえない話でなければいけません。

「読み書きそろばん」だけ信奉することをやめ、教育の礎を再定義すべきフェーズがやってくるはずです。 
個人的には、「読み」はずっと必要ですが「書き」「そろばん(筆算)」の時間は段階的に減らして別のことに時間を割くべきではないかと思います。 

想像する近未来のビデオコミュニケーション

この話にこれ以上深入りするとキリがないのでやめますが、そのような変化が起き教育の素地が変われば、ビデオコミュニケーションツールというのは導入する・しないというものではなく「当たり前のもの」になります。

あえて「ビデオコミュニケーションツール」と表現しましたが、ビデオ会議専用機というのが存在し続ける可能性は薄いと考えます。
確かに性能が良く使いやすいかもしれませんが、「単一機能の専用デバイス」というもの自体が淘汰されることでしょう。
電話もテキストチャットもメールもカメラもゲームも本も財布も、全部がスマートフォンに集約されたようにです。

Web会議についても、「Web会議」という言葉はなくなり、通信プロトコルや圧縮技術、UIなどの要素技術が継承された上で、「授業を行うためのボタンのひとつ」というニュアンスに近くなります。

テレビ会議システムを使った遠隔授業の近未来

ハードウェアが今の形の範疇を超えない形で存在する前提で、近未来を想像してみます。

教室内には既にマイクアレイ・スピーカーアレイがセル上に多数配置され、AIによる予測に応じてダイナミックに指向性を変化させます。音声も誰に向けたものかが予測・解析され事前に定位情報が重畳されます。

もちろんこれらの設定は全て自動です。
そこに以前のような「音声のストレス」はなくなっていることでしょう。

ネットワークはさらなるブロードバンド化が進み、冗長化コストも劇的に下がり、障害が起きても自動的に回復されます。

遠隔会議を使って実施される授業内容は、以前のような座学スタイルではありません。
海外の人と同時にプログラムを作り上げ共同作業するような内容かもしれませんし、 お互いの地域の特色を紹介するビデオを見せ合って感想を集約し、さらにはネット上にアップして全世界からフィードバックを得る、などという、1:NやN:Nを超えて1:∞, N:∞の世界かもしれません。

さらに、これらを指導するのは、上記のような教育を幼少より受けたデジタルネイティブたる先生方なので、何か問題があったとしても、「どうしたら良いか」を正しく判断できる論理力と経験的勘(IT的センス)が備わっています
直接設定をいじれる人もいれば、ある程度原因を見定めて必要な情報を迅速にサポートに連絡し、リモートから回復してもらいます。

さらなる未来に遠隔授業はどうなるか

人間が五感を捨てない限りは人間とのインターフェースに関するハードウェアと技術は残ります。今で言えばスピーカーとマイクになるわけです。

しかしもう少し先の未来では、聴覚刺激を脳に伝播する神経細胞に直接はたらきかける技術が生まれたのならスピーカーは要りません
同様に、発声する前段の脳の指令を符号として取り出す技術ができればマイクは要りません。それに変わる電極なりなんなりが必要なハードウェアとなり、音響工学は神経生理学に取り込まれます。

こうなってくるとそもそも「遠隔」とは何かという話にさえなりそうです。 

まとまらない話のまとめ

 さて、突拍子のない長文になりましたが、「遠隔会議を授業で使う」ためには、初等教育でITが空気のように使われるようなプログラムが組まれる必要があるということです。
教育の中身を変え、技術も進歩させ、ソフト面ハード面両面の機が熟してはじめて可能となります。
単なる物理的な距離感を解消するだけという目的で、今のやり方のまま補助ツールとして使うならば、成功させることは極めて難しいです。
 
それでも、少子化や災害による孤立化などにより相互扶助の精神で何とか使ってあげないといけない状況があるならば、役所からの補助金に頼って高コストをかけて実施するか、もしくはボランティア精神あふれる一般企業に広告宣伝費扱いで引き受けてもらうか、という選択肢くらいしか考えられません。
 
いずれにせよ未来への前段として、現行教員へのデジタル教育とIT道徳教育が急がれます。
一定のレベルをクリアできない教員は役職をつけないこと。
無限の可能性を持つ貴重な子どもたちに対し、現場の水準前提の教育しかしようとしないならば、全日本人にとって何よりの損失です。

 

 

 

 


続:テレビ会議による「遠隔授業」は被災地の子どもに何をもたらすか

2018-09-17 19:48:50 | ユースケース

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前回の記事では、福島県内で東京電力原発事故により避難指示が出された小中学校で、生徒数や教員数現象による教育的格差を解消するために「遠隔合同授業」を実施する、という記事を紹介しました。

それを実現する困難さについては既に専門家による指摘もあるようですが、それでもなお、本気でやる価値があるのではないか、ということを述べたつもりです。

今回からは、下記の2点を掘り下げたいと思います。

  1. 「遠隔授業」がなぜ難しいか
  2. 「遠隔授業が成功するとしたらどのようなストーリーが考えられるか」

「遠隔授業」がなぜ難しいか

TV会議システムの不確定性

日本では古くから、TVとビデオデッキ(今はDVDプレイヤー)を使った授業が行われていると思います。
そこで必要なものは、TV(モニタ)とメディアプレイヤーです。

TVもメディアプレイヤーもは普通に電気屋で売っているものを使うことが多いと思います。 
それらは工業製品として完成されたものであり、値段も安いです。
それ故に替わりが利きます
もし故障してもいざとなれば隣の教室から別のものを借りてくれば良いだけかもしれません。
コンテンツとなるディスクなどのメディアも、そう簡単に読めなくなるものでもありません。 

しかしTV会議システムとなってくると話は変わります。

”故障の原因に気づく”難しさ

もし「TV会議が動作しない」という現象に遭遇した場合、考えられる原因は、TV&DVDとは違ってその数が膨大です。

電源を入れても何も映らない、というだけでも4〜5種類原因が考えられそうですが、さらにやっかいなのは「繋がらない」
自分の問題なのか、相手の問題なのか、自分ならばネットワークはどうなのか、設定はおかしくないか・・・

運良く繋がったとしても、今度は「相手の声が聞こえない、または相手にこちらの声が聞こえない」
これもまた、自分の問題なのか、相手の問題なのか、設定の問題なのか、音響機器の故障なのか、配線は正しいか・・・

これらを素早く切り分け、原因を特定し、直ちにトラブルシューティングできるなどということは、オーディオマニアやPCオタクの先生がたまたまいるなど個人のスキルに頼って解決することはあっても、組織としてのシステマチックな対策は困難といえるでしょう。

”代替”の難しさ

モニタやTV会議システム本体が故障するということは、業務用であればまずないでしょう。
しかし、故障の可能性があるのならば故障時の代替え品は持たないといけません
その値段を考えると、5万円くらいの液晶テレビとは違って、数十万円オーダーというのもおかしくありません。

また、仮に代替え品を用意したとして、その設定はどうするのでしょうか

視聴覚室のような固定された1台に対しての代替えであれば設定もあらかじめできるでしょうけど、教室Aと教室Bそれぞれに設置した会議システムの代替品を1つとした場合に、いざ代替えを使おうとしても、設定Aとなっているシステムは教室Bでは使えないのです。

また、線を2、3本繋げばOKのTV&DVDと違って、TV会議は少なくも、マイク、スピーカー、ネットワーク、映像出力といった配線の接続が必要で、マイクが多ければそれだけ増えますし、現場の先生が故障に気づいて(まずこれが難しい)冷や汗をかきながらそれを接続し直していたら、授業時間は半分終わるのではないでしょうか。

何よりつらいのが「相手がいる」こと

TV&DVDであれば、「なんだか今回は機械の調子が悪いようだから、ビデオ鑑賞は次回にしましょう」なんてことで許されるのかもしれません。

しかしながらTV会議には相手がいます。
おたがいが綿密にスケジュール調整をするわけです。
しかも「今回はごめんなさーい」で済むような気の知れた相手とあればよいのですが、今回のユースケースでは「他校の先生・生徒が相手」であるわけです。

私がもし教員であれば、絶対やりたくないと思います。

 

しかし、ここまでの話だけではあまりに救いがありません。

前回の記事で述べたような、先生方の崇高な志と気概を無駄にしたくはありません。

「遠隔授業が成功するとしたらどのようなストーリーが考えられるか」

について次回考えてみたいと思います。