昨日、格ゲーにおける基本「投げ」に関して記載した。
2D格闘ゲームにおいて「投げ」は、「ガン待ち大有利」にならないために作られたシステムだと説明した。
だが、3D格闘ゲームにおいては、「投げ」は「投げ」ではない。
鉄拳7のトップ層の試合を見たことがあるだろうか。
いや、おい、地味だなあ… と思いませんか?
両選手とも技を撃ち合わず、ステップを使いカサカサ動きながら、見合う時間が長く技の撃ち合いも極端に少ない。つまり、互いに2D格闘でいう、「ガン待ち状態」なのである。
もちろん、2D格闘でいう「投げ」がないだけで、そうなっているわけではない。
「リスクとリターン」、そして「読みあい」について考えてから、プロの動きを見返して欲しい。
1. 期待値と運ゲー
「読みあい」とはつまり、算数でいうところの期待値の考えをもとに構築されている。
そのため、今回はモデルを簡略化して、サンプルを考えてみる。
【状況】
・お互い プラスマイナス0フレームの状態からスタート。
・仮にフェン対ブライアンを想定し、フェン側が攻める、ブライアン側が守る という構図とする。
フェン側選択肢 / ブライアン側選択肢
(1) 9RK(中段技) a. 立ちガード
(2) 1RK(下段技) b. しゃがみガード
(3) 4LP(暴れ技) c. LPRP(暴れ技)
そして、その勝ち負けと、ダメージが以下の通り フェン側目線
(1)の選択肢 a.-24dmg b.+64dmg c.-45dmg*
(2)の選択肢 a.+14dmg b.-70dmg c.+34dmg
(3)の選択肢 a.-15dmg b. -10dmg* c.+50dmg
*上級者の場合、もっとダメージを増やせる場合もあるが、今回はこれで説明する。
以上のように、仮定した場合の、(1)~(3)の選択肢に対する、期待値は以下のようになる。
各選択肢の確率は等しい場合。プラスマイナスはお互いの相対的な体力差(結果)
(1)の期待値 -1.6dmg
(2)の期待値 -7.3dmg
(3)の期待値 +8.3dmg
*この攻防の全体の期待値は、-0.6dmg(フェン側不利)となる。
フェン側が何も行動をしない場合、
ブライアン側からの能動的な期待値は0のため、ゲームとしては勝利することは出来ない。
*ただし、フェン側も(1)~(3)をすればするほど期待値はどんどん不利になる。
期待値を見る限り、フェン側は、(3) 4LP が良い選択肢ということが分かる。
他の選択肢は期待値がマイナスのため、リターンよりリスクが大きく、使わない方が良いという結果だ。
その結果として、フェン側は (3) 4LP を打ち続けることになる。
対して、ブライアン側は a~c を等しい確率で選択する状態が
ブライアン側が
「運ゲーしている」や「かみ合えば勝てる」「対策してない」などと呼ばれている状態である。
*2/3でブライアン側がdmgゲット、1/3でフェン側がdmgゲット。
先に全体力分をゲットした方が勝ちなので、確率が偏れば、ブライアン側が勝つ場合も当然ある。
格闘ゲームで指す「運ゲー」とは
「相手の取りうる選択肢の期待値がこちらより高く、こちら側は確率の偏りが絡まないと勝つことが難しい」状態を指しているのである。
2. 「読みあい」と期待値
上記の例から、ブライアン側からすれば、相手の(3) 4LP が自分にとって一番効率が悪い選択肢なのだから、
(3) 4LPに対してリターンが取れる選択肢を多く選びたいところだ。
ブライアン側が (3) 4LP がマイナスの期待値に転じる、 a. を他の選択肢の3倍、選択するように仮定する。
前提条件から、相手の(3) 4LP という選択肢が多いことを理として「読み」それに対して回答を用意する。
これが「読みあい」ということである。
以下が「読みあい」の結果。 a. を増やしたことで、どうなるのか。
*あくまでも、目線はフェン側で表記する。
(1)の選択肢 a.-24dmg(3/5) b.+64dmg(1/5) c.-45dmg*(1/5) 期待値 -10.6dmg
(2)の選択肢 a.+14dmg(3/5) b.-70dmg(1/5) c.+34dmg(1/5) 期待値+1.2dmg
(3)の選択肢 a.-15dmg(3/5) b. -10dmg*(1/5) c.+50dmg(1/5) 期待値 -1dmg
*この攻防による全体の期待値は、-10.4dmg (フェン側不利)
フェン側の技の選択が確率的に等しい状態でも、フェン側の不利が先程にも増して拡大しているのがわかるだろう。
そして、当初は期待値が高いとされていた (3) 4LP の期待値も-1となっており、(3) 4LP 打ち続けてもフェン側が不利になってしまうのである。(これがキャラ対策の部分的説明でもある)
長くなったので、次回のブログ 「じゃあ、初心者はどうするべきなの?」 に続きます。
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