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たたらワークス★漫画・ドラマ・小説のネタバレ感想

池井戸潤著『アキラとあきら』上下巻あらすじと感想-泣ける長編小説

『アキラとあきら』あらすじ・ネタバレ感想。
池井戸潤のブレイク前に書いた小説と言える。
なぜか書籍化されない幻の長編小説だった。

『アキラとあきら』あらすじ・ネタバレ感想 

tataraworks

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『アキラとあきら』について

『アキラとあきら』あらすじ・ネタバレ感想




『アキラとあきら』について 

池井戸潤さんの小説『アキラとあきら』は、【問題小説】に2006年12月号から2009年4月号まで連載された。
なぜか書籍化されない幻の長編小説だったが、大幅に加筆修正して2017年5月17日にオリジナル文庫として、株式会社徳間書店の徳間文庫より刊行(15章構成で705ページ)された。
2020年8月20日には株式会社集英社から上下巻分冊の上、集英社文庫版が刊行。

2017年7月9日から同年9月3日までドラマが放送された。
ドラマは、山崎瑛を斎藤工さん、階堂彬を向井理さんが演じた。
その後、2022年に映画化、2024年にはラジオドラマ化された。

現在の池井戸作品ほどエンターテインメント性は高くないが、青臭さが胸にくる作品で泣ける。



『アキラとあきら』あらすじ

主人公は、山崎瑛(アキラ)と階堂彬(あきら)の2人。
前半は子供時代のお話で主にアキラが中心。
大人になってからの後半はあきらが中心。

前半・山崎瑛メイン----
アキラは、ささやかながら幸せな生活をおくっていた。しかし、父の工場の経営が傾くと夜には両親が言い争うような声が聞こえてくる。従業員のヤスさんはアキラをとても可愛がってくれたが、経営上の理由から退職してもらうことになった。泣いてすがるアキラに、ヤスさんはお守りとしてロザリオをくれた。

小学5年のある日、アキラは学校を早退した。迎えに来た母に手を引かれ、まだ保育園の年長組の妹とともに帰宅すると、そこには声を荒げる男達と父の姿。父の工場が倒産したのだ。男達が家や工場に踏み込んでいる間に、父を残して3人で母の実家を目指す。学校の友達とはもう会えないと悟った。ヤスさんがくれたロザリオを握りしめ、電車で4時間ほどかけて母の実家に辿り着いた時には不安と疲労でヘトヘトだった。父とは、その日を境に離れて暮らすことになる。


後半・階堂彬メイン----
大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬は、子供の頃から祖父に帝王学を教わっていた。周囲も皆、優秀なあきらが跡を継ぐものと思っていた。ところが、あきらは東海郵船への入社および後継者として歩むことを拒否。父・一磨からも期待されていることは分かっていたが、最終的に産業中央銀行に入行した。祖父が亡くなった時に相続でもめ、東海郵船グループは3つの会社に分かれた。父の弟達は、父への対抗心から無理な事業に手を出しては債務を膨らませていた。

父が亡くなり、一旦は社員の小西が社長になったものの叔父達の策略でまだ若い弟・龍馬がクーデターにより社長になる。2人の叔父は、債務を膨らませているホテル事業の連帯保証に東海郵船を組み込む為に、龍馬を社長にする必要があった。龍馬もまた優秀な兄のあきらへの対抗心に囚われていた。叔父達にのせられたことに気づいた時にはもう遅く、日増しに苦悩が増す。龍馬は総合失調症で入院することになる。

見舞いに来たあきらを前に、病院のベッドの上で龍馬は「悔しい」と涙を流す。龍馬はあきらに、東海郵船の経営を引き継いで欲しいと頼む。果たしてあきらは140億円の負債を抱えた叔父の会社を再建し、東海郵船の従業員を守ることができるのか?



『アキラとあきら』ネタバレ感想 

個人的に私はアキラの方が好きだ。
子供時代に苦労して、親思いで妹思いで凄く健気。
私の中のアキラのイメージは「お地蔵様」だ。
優しい子なんですよぉ~(ノД`)
子供なりにいろいろ考えてなんとか親の支えになろうと頑張るアキラ。
昼休みに社食で読んでいたら思わず涙がこぼれてしまい焦った。


『アキラとあきら』は、「2人のアキラの運命が交錯する感動巨篇」というのが売り文句だ。
しかし、実はそれほど交錯してない。
子供時代、学生時代はニアミス程度で銀行に入行後もさほど接点はない。
ただ、あきらが銀行を辞め社長を引き継いでから、銀行側の担当者になったのがアキラだった。
あきらの会社が巨額の債務を抱えている為、お互いの現場でどう乗り切るか模索に必死でベッタリしているわけじゃないけれど、相手の能力の高さや仕事ぶりに対しての信頼度はかなり強い。


やはり池井戸潤さんの小説は面白い!
読むと金融にちょっと興味がわく。
ものを知らないのは怖いなとか、自分にとって耳の痛い話を聞かない人はしくじりやすいなとか教訓もある。
池井戸潤さんが元銀行員の経験をいかして書いた小説は多々あるが、池井戸さんが銀行員とはどうあるべきか本当に伝えたかったのはこの本の中にこそあるような気がする。


314ページ羽根田部長の言葉
「儲かるとなればなりふり構わず貸すのが金貸しなら、相手を見て生きた金を貸すのがバンカーだ」
「バンカーの貸す金は輝いていなければならない」
「金は人のために貸せ」
新人研修の最終日に羽根田部長が言った言葉をアキラとあきらは心に刻んでバンカーとして働く。
697ページでアキラも
「会社にカネを貸すのではなく、人に貸す。これはそのための稟議です」
と言って上司を説得しようとする。
どこぞのシェアハウス問題で注目を浴びた銀行の偉い人に聞かせたい言葉だな。


『アキラとあきら』は、主人公2人の30年にわたる物語がじっくり丁寧に描かれている。
1970年代に苦労を強いられた子どものアキラがどんな銀行員に成長したか、読んでいて胸がすっとした。
爽やかな気持ちで本を閉じることができた。

☆…☆…☆…☆…☆…☆…☆

ご訪問ありがとうございました

コメント一覧

tataraworks-lynx50
ヌマンタさま、コメントありがとうございます。
お金持ち相手に相続対策として庶民には目が出るような超高額の保険をおすすめするほうが、保険会社からびっくりするような手数料をお支払いいただけますもんね。
ア〇〇〇クなんかだと1件契約してもらっても、手数料が1万円もしなかったような気がします。
なのでそういう安い保険にしか手が出ない客のことはちょっと小馬鹿にしてたりしますよね。
田舎の銀行員に限られるかもしれませんけど、FPの資格も合格して銀行から報奨金をもらったら更新しないで肩書きだけ口にしている人がいます。
30年くらい前は確かに真面目な人が多かった気がしますが、今は銀行員というだけで信用せず、自分で頑張って勉強するなり調べるなりするのが一番かなと思います。
ヌマンタ
この作品は未読ですが、まぁ色々と思うことは多々あります。もうアキラのような銀行員は皆無に近いです。融資の判断はコンピューターソフトに任せるか、関連会社にやらせて、投資信託や生命保険の売り込みに夢中な銀行員だらけです。人をみて融資をする目を、かつての銀行員は確かに持っていました。もう過去形でして、復活は難しいでしょうね。金融庁も足を引っ張るばかりで、指導は重箱の隅をつつくことだと考えているようですから。

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