ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

161. プラスマイナスでセーフ

2020-02-01 | エッセイ

北のベランダで咲いた月下美人

ああ~寒い寒い~。炬燵が欲しい~。

部屋の中は底冷えがする。スマホで天気を見ると気温16℃。足元からしんしんと冷えが立ち昇ってくる。狭い居間にはオイルヒーターが1台。部屋はほのぼのと温かいのだが、身体はなかなか温まらない。これでも南向きの部屋だから、晴れの日は窓際に座ると太陽がさんさんと当たって、天国だ。ところがいったん曇ると一転して地獄の寒さ。一方、北向きの部屋はまるで冷凍庫のように冷えて寒地獄。昔、家族で行ったことのある阿蘇のすそ野の温泉。それはたしか寒地獄という名前の冷泉で、真夏なのに氷水に手を付けた様に冷たくて震え上がったのを思い出す。

ポルトガルの冬は過ごしにくい。暖炉のある家は良いかもしれないが、我が家はマンションで、そんなものは付いていない。もし暖炉があっても燃やす薪がない。広い庭に木がたくさん生い茂っている一戸建てだったら、伐採した枝を燃料にできるのだろうが、あいにく狭いベランダが二つあるだけだ。

そのベランダではプランターで栽培しているニラやパセリがたいした世話もしていないのにすくすく育ち、花を着けたかと思うと、種になり、それがいつの間にか落ちて、そこから芽が出てくる。それは南向きのベランダではなく、北向きのベランダだ。その他にもサボテンの「月下美人」が3鉢あって、もう20年以上も昔から毎年花を咲かせている。大きくて立派な花だ。でも月下美人というだけあって、夕方遅く、8時か9時ごろにならないと開花しない。最初のころはまだ株が小さかったので、ベランダで花が咲き始めると、鉢ごと居間に持って来て蕾がほころび始めてから開花するまで観察できた。開花と同時に良い香りが部屋中に漂い、思わずうっとりして眺めていた。でもこのごろは鉢が大きくなって、開花する時に居間に持ち運びが出来なくなってしまった。北のベランダに置きっぱなしで、いつ開くのかわからない。朝、ベランダを見ると前夜に開花したらしく、花はすっかり萎んでだらんと垂れ下がっている。「しまった~」と嘆き悲しまなくてよいのです。この花はこれからもうひと花咲かせるのです。

萎んだ花を細かく刻んで、炊き立てご飯にのせて生卵やノリと一緒に混ぜると、花のネバネバが美味しい納豆かけ御飯の出来上がり。サボテンの花とは思えない、まるで納豆のネバネバ御飯。この話をすると、皆さん、顔を引きつらせておののきます。まるで毒草を進められたかのように、「そんなの食べたらしんじゃうよ」と腰を抜かさんばかり。

でも心配ご無用。私たちは毎年花の咲くのが楽しみで、6月から9月まで花を愛で、花を食しているのです。

南のベランダからはサド湾を出入りする船やヨットが見られるし、北のベランダではニラやパセリ、そして納豆ご飯の元が収穫できるのです。

冬の間、少々寒くてもプラスマイナスでセーフです。

 

ポルトガルのえんとつ MUZの部屋 エッセイの本棚へ


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする