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余白が広すぎる

数学の話とかをちまちまと

=とは何か~等号の一般化~

2012-07-03 | ネタメス

少し前に話題になったこの問題…見たことがある方も多いと思います。

「アナログ思考では解けない」というのをうたい文句にして、ネットでもなかなか出回りました。

ちなみに答えは「8」です。デジタル時計の棒の数、というわけですね。

 

これはまぁ、一種のクイズというか、とんち問題というか、その類のものなのですが、数学の記号を使っている以上、数学科としては数学的にメスを入れる必要があるわけです。

ということで、今回はこの等号記号"="について考えていきましょう。

上の問題において、百歩譲って1=2になっていることは認めるとしましょう。

しかし、この問題ではにのっとると、「1=2」ですが、「2≠1」です。普通の等号記号ではこんなことはありえません。更に言えば「1≠1」という、今まででの等号記号では考えられないことが起こってしまいます。

これは実に変。"="という記号が、どうやら今までのように使えていません。

 

そもそも、"="とはなんなのでしょうか?小学校からずっと使ってきた馴染みある記号ですが、改めて考えてみると良くわからなくなるものです。

等号記号とは、左右で繋がれたものが等しいことを示す記号です。当たり前に使ってきたものだからこそ、性質を過不足無く取り出して研究する必要があります。

等号の性質を取り出したものを、同値関係といいます。今から書く同値関係の3つの条件を満たすものは、全て等号と同じように扱えるわけです。

 

(1)反射律:

(2)対称律:

(3)推移律:

 

反射律は「自分は自分自身と等しい」といっています。対称律は「aとbが等しければ、bとaは等しい」ということです。

推移律は、論理的思考などでもたびたび使われますね。「aがbに等しく、bがcに等しければ、aはcに等しい」ということです。

この3つを満たすものは同値関係という、とても特別で大切な関係として扱われます。

残念ながら、上の問題の"="は同値関係の条件を1つも満たしません。そのような関係の場合、"="という記号を使うのはあまりりよろしくありませんね。せめて、"→"とかにして欲しかったです。

 

今まで習ってきた中で、同値関係を満たすものは等号記号"="以外にも存在します。

たとえば、三角形の合同などで使われた合同記号"≡"や相似をあらわす"∽"などは同値関係となります。

あとは、2つの直線が平行であることを表す平行記号"//"も同値関係になります。しかしながら、垂直記号"⊥"は同値関係になりませんね。

「対等な集合」で扱った対等"~"も同値関係になるといいました。これも3つの条件を満たしてくれるわけです。

大学数学をやれば、同値関係は最初に習います。なぜなら、様々な分野で同値関係が出てくるからです。

いくつか例を挙げると、対等、同型、同相、ホモトープ、イソトープ、などなど

 

なぜ同値関係という、等号と同じ性質を持つ記号が沢山あるのでしょうか。

それは、「それぞれの記号が重要視している部分が違う」からです。

例えば、合同記号"≡"は、三角形の3辺の長さに注目しています。しかし、相似記号"∽"は、三角形の3辺の長さの比に注目しています。

三角形という同じ対象に対する関係でも、注目している事柄が違えば、違う同値関係の記号を使わなくてはいけません。ゆえにこんなにも沢山の同値関係が出てくるのです。

数学のすごいところは、このように似ている関係たちから共通の性質を見つけ出して、「同値関係」という名前をつけてまとめてしまうことです。

例えば、同値関係について成り立つことは、=でも≡でも∽でも成り立ちます。

 

「同じ性質を持つもの同士でまとめる」という作業は、数学において頻繁に出てきます。

まとめることで、そのグループ全体に対して成り立つことを議論できます。

"="で成り立つことや"∽"で成り立つことを1つずつ探すよりも、同値関係全体で成り立つことを探したほうが手っ取り早いわけです。

数学は常に視野を広く持っています。「何か特別な状況」で成り立つことよりも、「一般的」に成り立つことのほうが好きなのです。

なので、数学者たちはすぐに一般化したがります。良いか悪いかは別として、「一般化する」ということは数学を扱うものにとって、ひとつの共通意識ともいえる行動なのです。

 

 

さて、同値関係の説明も終わったところで…

この「数学を使ったネタに数学的メスを入れる」ってのは楽しいですね!「ネタなんだから、本気になるなよ」って思うかもしれませんが、数学を学んでいるものとして黙っていられません!

ネタを見つけたらどんどんやっていこうと思います。頑張ってシリーズ化したいと思います。

ということで、次はこれに数学的メスを入れようと思います。

なるほどー、と思っちゃいますが、サックリとメスを入れたいと思います。

次回「勉強=落第」を、お楽しみに~


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2 コメント

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Unknown (komath)
2012-07-03 22:02:59
>>「1=2」ですが、「2≠1」です
この切り口にとても感動しました…。

この問題は知りませんでしたが、最近で言うと、種数に注目したトンチ問題もありましたね。

毎回まとめる、言葉遣い(言い回し)が、とても上手ですね…。そのうち本でも出すんじゃないかと思ったり。
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komathさんへ (アライ)
2012-07-04 01:38:12
感動していただけるとは…ありがとうございます!

種数のとんち!知らないです!ちょっと探してみます。

言葉遣いは、本当に難しいです。ブログをはじめてみてそのことが良くわかりました。
本…出せたらいいですねー。ちょっと頑張ってみます笑
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