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3時間の痛みと苦痛を伴う史上最長の死刑執行

2022年08月23日 | ヒトゴロシ
「史上最長の死刑」死刑囚が3時間苦悶、遺体の肉は裂け...人権団体が糾弾




米アラバマ州の刑務所にて7月、収監されていた死刑囚が処刑された。執行から2週間以上が経過した8月中旬になって、刑務所側の不手際により刑の執行準備に3時間以上を要していたことが発覚している。 

この間、静脈注射のため無数の針を刺され肉は裂け、死刑囚は苦悶の時間を過ごしたと指摘されている。アメリカでは24の州が死刑を認めているが、以前から密室での実行が問題視されている。 死刑はアラバマ州ジェファーソン郡にて7月28日の夜、致死薬注射により実行された。米CNNが報じたところによると、死刑囚はジョー・ネイサン・ジェームズ・ジュニアという50歳の男性であり、1994年に交際相手であった当時26歳の女性を射殺した容疑がかけられていた。女性は2児の母だった。 1996年にジェファーソン郡裁判所で行われた初審を皮切りに、判決は二転三転する。2020年になって連邦控訴裁判所が下級審による死刑判決を支持し、刑が確定した。 

 刑を執行したアラバマ州矯正局は、通常通りの手順で完了したと発表している。しかし、立ち会いを許されたメディアによると、明らかに不審な点があったようだ。午後6時に執行予定と案内されていたが、実際に現地へ通されたときには午後9時を回っていたという。 ずれ込んだ3時間のあいだ、ジェームズ受刑者は死の瀬戸際に置かれ、精神的苦痛に苛まれていたと考えられている。それに加え、肉体的苦痛も生じていたようだ。医師らとともに処刑後の遺体の検分を許された米アトランティック誌の記者は、その凄惨な様子を克明に記している。 遺体は安置所に置かれ、被せられた布は血まみれになっていたという。薬物注入に使う静脈を探すのに手こずり、3時間のあいだ身体中を針で刺されていた可能性があるようだ。記者が遺体に臨んだのは処刑から数日後であり、通常ならばむくみによって針の痕跡を探すのは難しくなっているはずだ。 だが、「通常から外れたことは何も起きなかった」と強調する矯正局の説明に反し、遺体は明らかに異常を物語っていたという。 

記者は注射痕がみつかりにくいとの予見に反し、「しかしジェームズをみた私の第一印象として、両手と両手首のうち、曲げたり伸ばしたりできる箇所がすべて、針で刺されて膨れあがっていた」と述べている。 片腕にはほぼ平行に走る2本の裂傷があり、「州は何も異常はなかったと説明しているが、弁護士が処遇に抗議したり活動家が監視したりできない閉ざされたドアの向こう側で、ジェームズはストレッチャーに縛り付けられ、手酷いことが行われていたことを物語っていた」と同誌は述べる。 遺体の検分に立ち会った米エモリー大学の麻酔学の専門家は、薬物注射のために静脈を露出する目的で腕部を切り裂いた可能性があると指摘している。通常の医療であれば、現代では行わない手法だという。強い痛みを伴うが、局所麻酔が使用されなかったおそれもあるようだ。 米総合病院のメイヨー・クリニックの病理医は、ジェームズ死刑囚が繰り返す針の痛みに耐えかね、「自身の肉を拘束具で引き裂くほど強くもがいた」可能性もあると指摘している。 

 ほか、広範囲に紫色のあざと斑点、内出血の痕がみられたようだ。肘の内側はギザギザに裂けていたという。その付近には真紅になった注射針の痕が残り、そこから青緑色に変色したあざが放射状に走っていた。 矯正局は当初、正常な手順で刑が執行されたと主張していた。しかし後日、静脈注射の用意に手間取ったことで執行が3時間遅延したと認めている。 ニューヨーク・ポスト紙は、「3時間の痛みと苦痛」を伴う「史上最長の死刑執行」であるとして、人権団体が抗議していると報じた。 午後6時を予定していた刑の執行は大幅に遅延し、執行令状が読み上げられたのは9時3分になってからだった。同4分に薬物の注入が始まり、27分に死亡が確認された。同じ刑務所の受刑者によるとジェームズ死刑囚は事前に、自身の家族への謝罪、被害者家族への謝罪、そしてイスラムの祈りの3つを最期の言葉として考えていたという。 

だが、執行の瞬間を目撃したジャーナリストたちによると、彼は終始無言・無反応であり、最期の言葉を口にすることはなかった。矯正局が使用を否定している鎮静剤が用いられ、刑の実行以前に意識を奪われていた疑いがもたれている。 被害者遺族は死刑に反対し、終身刑の適用を望んでいた模様だ。米死刑情報センターによると遺族は、「命が奪われたからといって、州が(また別の)命を奪わないことを望みます。私たちはもう、ジョー・ネイサン・ジェームズ・ジュニアさんが私たち一家に向けた残虐性を許しているのです」と述べている。 ことアラバマ州では過去にも、残虐な刑の執行が問題視されている。ニューヨーク・タイムズ紙は61歳男性の死刑執行において、静脈注射のため「股間に6回刺し、膀胱に貫通させ、大腿部の動脈を貫いた」と報じている。この死刑囚は苦痛を抱えたまま時間切れで死刑中断となり、のちにがんで死亡した。 矯正局はメディアの質問を無視することでも悪名高いという。残酷な処刑の実態が明らかになるにつれ、閉ざされた処刑場の在り方に疑問が投げかけられている。 

(2022.8.22.NEWSWEEK)
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