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「死刑をお願いします」宮本浩志被告

2022年09月16日 | ヒトゴロシ
大阪市北区のカラオケパブ「ごまちゃん」で昨年6月、オーナーの稲田真優子(まゆこ)さん=当時(25)=を殺害したとして、殺人の罪に問われた無職、宮本浩志被告(57)の裁判員裁判初公判が16日、大阪地裁(大寄淳裁判長)で開かれた。

被告は起訴内容について認否を黙秘し、裁判員らに向けて「死刑をお願いします」「判決に従い、控訴することはありません」と述べた。弁護側は「犯人性を争う」とした。

検察側は冒頭陳述で、店の常連だった宮本被告が、稲田さんに抱いた一方的な好意が満たされず、犯行に及んだと指摘。いったん店を出た後に再び戻り、「稲田さんが一人きりになったタイミングで襲った」とした。被告の着衣などに稲田さんの血液が付着していたことも明かした。

起訴状などによると、宮本被告は昨年6月11日夜、同市北区のカラオケパブの店内で、稲田さんの首や胸などを刃物で多数回突き刺すなどして失血死させたとしている。稲田さんは3日後の14日午前、店の床に血まみれで倒れているのが見つかった。
稲田さんは以前から周囲に「(被告からの)連絡がしつこい」などと悩みを漏らしていた。

「判決は死刑をお願いします」と被告の男 大阪・カラオケパブ女性オーナー殺害事件 初公判で「質問に答える気はありません」「被害者家族の意図をくむよう是非とも死刑求刑を」 弁護士は「犯人性を争います」

宮本被告は、これまでの調べで、事件への関与について否認していました。 16日、大阪地裁で初公判が開かれ、宮本被告は公判冒頭、名前や生年月日を聞かれた際には無言で、住所を聞かれた際には「現住所は大阪拘置所です。何か意味はありますか。儀礼的なら飛ばしてください」と述べました。

 起訴内容を認めるかどうかの問いに対しては答えず、「裁判員の方にお願いします。判決は死刑をお願いします」と述べました。 また「被害者家族の意図をくむように是非とも死刑を求刑してもらいたい」「弁護人には反対尋問を一切しないように伝えています。私については質問に答える気はありません。特に確認は必要ありません。しゃべることができる時だけ手を上げます」と述べました。

 宮本被告の弁護士は「犯人性を争います」と主張しました。 一方、検察側は「一方的な好意が満たされないことから、必死に抵抗する被害者を無残に殺害した悪質な犯行」と述べました。

(8関テレ 2022.9. 16)




大阪・天満の飲食店でオーナーの稲田真優子さんが殺害された事件の初公判が、9月16日に大阪地裁で開かれます。
 関西テレビの取材で、真優子さんと被告の男が事件直前にSNSでやり取りした内容が明らかになりました。
――Q:裁判までの期間はどう過ごしました?
【亡くなった真優子さんの母・稲田由美子さん】
「(真優子さんが亡くなって)急に月日が過ぎるのがゆっくりになったような、時間が止まったような…1年もたったんだなって」
 事件の後、カメラの前で初めて気持ちを語った稲田由美子さん(65)。娘の真優子さんを亡くしてから、大きな悲しみを抱えて過ごしてきました。
【稲田由美子さん】
「まゆっちのスマホです。(Q:中は見られました?)はい、見ました」
 真優子さんのスマートフォンに残されていたやり取りから分かったのは、被告の男の異常とも言える執着でした。
 2021年6月、大阪・天満のカラオケパブ「ごまちゃん」で、店のオーナー稲田真優子さん(25)が首や胸を刺され殺害されました。真優子さんは顔など10カ所以上を傷つけられていて、非常に強い殺意があったとみられています。
 捜査の末に殺人の罪で逮捕・起訴されたのは、店の常連客・宮本浩志被告です。事件当時、知人や店の客は、宮本被告についてこう証言しています。
【真優子さんの10年来の知人】
「西宮から通っている人で『しつこいお客さんがいるんだ』って聞いたことがある。携帯電話に1日に連絡が20~30件入ってくるのを見せてもらったことがある」
【店の常連客】
「迷惑な話を聞いていたので、まゆ自身が僕に『あの人やで』と教えてくれた、こっそりと。ラインが多いとか。電話が多いとか。やり取りがしつこいとか」
 警察は、宮本被告が一方的に真優子さんに対する好意を募らせ、犯行に及んだとみています。
 2人は、真優子さんが以前に勤めていた飲食店で知り合いました。真優子さんのスマートフォンに残されていた宮本被告とのやり取りには…
<2020年11月の宮本被告からのメッセージ>
「あー、まゆさんの声、聞きたいな。眠れてないんです。勝手なことですが。1時間おきに目が覚めて」
「別の店に行っても、まゆさんみたいにかわいくて心地よい声いないよ、ほんとにね。連休中に、声聞かせて~」
 真優子さんから返事がないにも関わらず、深夜から早朝にかけて、何十件も一方的にメッセージを送り続けています。真優子さんは時々短い返信をする程度にとどめていましたが、宮本被告からの執拗(しつよう)な連絡が途絶えることはありません。
【稲田由美子さん】
「夜の仕事やから、酔っ払いとか変なお客さんとか、絡まれたりないかなと心配だったけど。『そんなん全然ないよー』って言ってたけど、『あったんや…』と思って」
 そして、6月11日の犯行当日も…
<2021年6月11日の宮本被告からのメッセージ>
「今日は、中華丼を食べました~。昼を乗りきって素敵なまゆに会いに行くね」
 犯行当日、宮本被告が店から帰る際に撮ったとみられる写真も残っていました。撮影時間は午後9時9分となっています。警察の発表によれば、犯行時刻は午後9時~10時ごろ。この写真を撮影したすぐ後に、宮本被告は犯行に及んだことになります。
 捜査関係者によると、宮本被告は店を出た後にビルの中に潜み、他の従業員が帰る姿を確認。真優子さんが一人になったところを狙って、犯行に及んだとみられます。さらに、犯行現場には宮本被告の指輪が残されていたことも新たに分かりました。
 しかし宮本被告は、警察の調べに対し犯行を否認。2人の間に何があったのかは、今も分かっていません。
【真優子さんの母・由美子さん】
「6年前に誕生日に感謝状もらったの、うれしかった。まゆっちの部屋行って、オムライス作ってもらって、初めて。感謝状までもらって、贈呈式があった」
 由美子さんが受け取った感謝状には、日頃の感謝や誕生日を祝う言葉とともに、「これからも家族みんなで思い出を作りましょう」の一文が。末尾には「あなたの愛娘」とありました。
【真優子さんの母・由美子さん】
「夢見るときある、たわいもないこと。急に帰ってきて、『お母さん帰ってきたよー』って言って。旅行行ってたから、洗濯物がいっぱいあって、『洗濯すんでー』って言って、うちで。それがなかなか終わらない、何回も何回も。『いいかげん自分の家帰ってしいや』って帰らそうとしてるところで目が覚めて…『あっ、なんで(現実には)まゆっちいないのに…あんなこと言わなければよかった』って」
 9月16日に迎える初公判。家族は、自分の娘がなぜ亡くなったのか。せめてその理由だけでも知りたいと、裁判に臨みます。
 裁判のポイントについて、関西テレビの神崎博解説員に聞きました。
【神崎博解説員】
「宮本被告はいまだ自供しておらず、また、密室での犯行だったため目撃者もいません。被害者のDNAが付着した衣類や靴しか状況証拠がない中で始まる裁判のポイントは、『“被告以外あり得ない”ということの立証』です。宮本被告が犯行に及んだという証拠はありませんが、該当時間に建物を出入りした人を洗い出し、全員のアリバイをつぶしていくという作業、『他の人は犯行をしていない』と立証して宮本被告だけを残すという、丁寧な過程が必要になってきます」
(関西テレビ「報道ランナー」2022年9月15日放送)

去年6月、大阪市北区のカラオケパブを経営していた25歳の女性が殺害された事件。16日の初公判を前に、常連客だった被告が事件前に女性と交わしていたやりとりの詳細がはじめて明らかになりました。  LINE上に残された、大量の不在着信。その間隔は、わずか数分おきでした。    「見てもいい気はしないと分かってはいたが、見ていたらここまでひどい、ひどかったんやなって。ほとんどが一方的に送ってきているという感じですよね」    おかえりのカメラの前でこう話したのは、稲田雄介さん。去年6月、25歳という若さで殺害された、稲田真優子さんのお兄さんです。  雄介さんの手元にあるのは、真優子さんの遺品となったスマートフォンです。その中には…  (宮本浩志被告)「ちょっと残業するから、1日の最後にまゆさんに会いに行こうかな」、「居留守みたいなことされて、残念でした。ほかの方とは電話してたのにね」  真優子さんに対して続く、執拗な連絡が残されていました。    (真優子さん)「いっぱい掛かってきて怖いんですが、何が聞きたいんですか?」  (宮本被告)「電話出て」、「出ないのが、悪いでしょ」、「出るまでかけるよ」    連絡の主は、殺人の罪で起訴されている宮本浩志被告(57)。  宮本被告は、大阪市北区のカラオケパブでオーナーの真優子さん(当時25)を殺害した罪に問われています。  宮本被告は去年6月11日、真優子さんに見送られ店を出たあと、真優子さんが店で一人になるまでビルに潜み、犯行に及んだとみられています。  ただ、宮本被告は「店には行ったがやっていない」と犯行を否定しています。  真優子さんに対して、午前2時すぎまでくり返したメッセージや電話。  しかし、そのわずか3時間後には…  (宮本被告)「おはよう!お疲れさまです。今日は夕方まで雨ですね。気をつけて下さいね。また電話しますね」  メッセージは、真優子さんが殺害された当日にも送られていました。  (宮本被告)「そういえば今日は惣菜系なんか準備してるの?」  (真優子さん)「今日はありませんよー」  (宮本被告)「はーい」  最後のやりとりは、午後7時前。  宮本被告は、何気ないこんなメッセージを送った後に犯行に及んだのでしょうか。  事件発生から約1年3ヵ月。16日に開かれる初公判に向け兄の雄介さんは…。  「どんな判決が出ても、どっちにしても妹は戻ってこない。僕や家族が思うのは素直に認めてもらう、素直に話をしてもらう。しっかり反省をする、やったことを後悔する、それですね。亡くなったあとも真優子のことを苦しめないでほしいと思う」

(ABCテレビ)

大阪北区の天満でカラオケパブ「ごまちゃん」を経営していた稲田真優子さん(当時25)が、店内で首や胸など10箇所以上も刺されて死亡した事件から1年3カ月――。生前の稲田さんを知る私は、取材者という立場でもこの事件に接した。彼女が見つかった状況が明らかになればなるほど、凶器を手にした犯人に対し抵抗しようとする彼女の叫びが脳内に響き、彼女の最期の姿がリアルに浮かぶ。


 いち常連客に過ぎなかった私でさえこうなのだから、遺族や交際相手の男性、あるいは連絡が取れないことを不審に思ってごまちゃんに駆けつけて第一発見者となったふたりの知人らの哀しみや苦悩は計り知れず、事件以前の平穏な時間の流れは誰も取り戻せていない。


 稲田さんを殺害した罪に問われているのは、事件当時、新大阪の会社に勤務していた宮本浩志被告(57)。稲田さんが2020年7月まで勤務していたカラオケバー「ラブリッシュ」時代から彼女に好意を寄せており、9月16日に行われた初公判では、ごまちゃんがグランドオープンした昨年1月18日から事件が起きた6月までのおよそ5カ月間に、83回も通い詰めていたことが明らかになった。
稲田さんにとって長年の夢だった“自分の店”の船出は、決して順風に背を押される形ではなかった。新型コロナの感染対策として出た緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の時期と重なり時短営業を余儀なくされ、アルコールも提供できない時期が長かった。店内に人が少なければ、稲田さんを独占できる時間が長くなる。宮本被告がそう考えて来店回数を増やしていったことは容易に想像がつく。


 およそ2日に1回のペースでとなる来店頻度もさることながら、一方的な好意――いや、異常なまでの粘着性が見て取れるのはLINEのメッセージや通話の頻度だ。


 初公判の前々日に私は稲田さんの実家を訪れ、8月末にようやく検察から戻ってきた稲田さんのスマートフォンに残っていたLINE履歴を見せてもらった。LINEの履歴は私信に属するが、事件の全容を理解するためには、そこで交わされたやりとりを検証する必要がある。稲田さんの遺族の許可を得て、その内容を公開する。


 1月18日のグランドオープンの日の朝、被告は稲田さんに対し、《まゆさんのスタートにふさわしい綺麗な朝焼けだったよ。さあ出発だね》と送り、店にも足を運んでいる。だが、店にはすでに先客がいた。1人目になれなかったことがよほど悔しかったのか、会計を済ませた退店後、3件の不在着信のあと、こんなメッセージを送り続けている
被告 最後におめでとうって言いたかったけど、それも聞いてくれないぐらい、僕はゴミなんだね。今日来てごめんね。


被告 記念の日に写真も撮らせてくれないなんて、まゆさんにとってはゴミなんだなー。残念でした。これからは、ゴミなりに接するようにしますね。


被告 まゆさんの扱いを再確認できました。今日はありがとう。まゆさんはこれからも大丈夫だよ。


 オープンの日とあって、稲田さんは忙しかったはずだ。稲田さんはいつも会計を終えた常連客をエレベーターまで見送っていたが、この日は宮本被告を見送ることはなく、被告が望んでいたツーショット写真を撮ることができなかった。その不満を稲田さんにぶつけ、さらに執拗なLINE電話とメッセージが続いた。


 不在着信


被告 友達と二次会かな? お祝いの一言も話せないね。残念です。


 不在着信


被告 また、後で電話しますね。


被告 やっぱり直接伝えたいのでね。


 不在着信


 不在着信


被告 また、後で電話するね。


被告 0時ごろ電話するね。


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


 不在着信


被告 最後に出てきてくれると思ってた。その時、おめでとうって言いたかった。それを直接言いたいだけなのに聞いてくれないんだね。


 12回の連続不在着信は、画面で見るだけでも恐怖を感じる。これがリアルタイムに、続々と送られている時に稲田さんはどんな感情で受け止めていたのだろう。


「ゴミの声は聞きたくないんだね」と送信した後にも不在着信
 そして再び、宮本被告の文面に「ゴミ」という単語が登場する。


被告 すぐかけた電話に出てくれたら、こんなに何回もかけなかったよ。まゆさんにとってはやっぱりゴミ、いやゴミ以下なんだね。悲しいです。


 不在着信


被告 ゴミの声は聞きたくないんだね。でも、ありがとう。まゆさんの声はかわいくて心地よくて好きでした。ありがとね。


 不在着信


被告 聞かせてくれないかな?


 不在着信


被告 声聞きたかった。


 稲田さんが返信をしたのは19日の午後に入ってから。《こんにちは! お電話いっぱい、、色々言いたい事があるのですね。ごめんなさい。前進できるようになんとか、、続けますよ》と、戸惑いを明かしつつ、常連客である宮本被告の機嫌を損ねないように配慮した文面に映る。


 しかし、1月31日から翌2月1日にかけたやりとりでは、再び、見送りがなかったことへの強い不満をぶつける被告に対し、仕事中だった稲田さんも強く反論している。


被告 今日はありがとね。でもやっぱり苦手なんだね。


稲田さん お店がバタバタしていたらお見送りできません。


被告 他の方と明らかに区別していますよ。無意識に。まゆさんは可愛いし、声も好きだし、嫌いになることができないです。ただ、最後に見送るのが店長の役目ではないですか。違いますか。自分の行動がどうだったか振り返ってみてくださいね。


稲田さん そう思うならもっと好かれてくださいよ。店長の役目などは自分が決めます。店内の状況など、お客様一人ひとりのことを考えているのはひろしさんじゃなく、自分ですよ。お仕事に戻りますね。
さらに3月1日のやりとりである。


被告 席空いていますか? 30分後ぐらいに。


稲田さん ありがとうございます。今バタバタしています。


被告 じゃあ、バタバタ具合見に行くね。


 宮本被告は入店後、しばらく滞在して帰路につく。しかし、店内で納得できないことがあったのか、執拗な電話連絡が続く。堪えきれなかった稲田さんは1度メッセージを送り、その後は被告の稲田さんに対する怒りのマグマが噴出するように、おぞましいほどの着信とメッセージが続く。


稲田さん 今は接客しているの知ってると思うんですが、電話は控えて、LINEメッセージで連絡ください!


被告 他のひとならすぐに電話に出るのにね。出ないから何回もかけてしまう。これも、まゆさんに問題があるんじゃないの? 人のせいばかりしないでね。


被告 まゆさんはいつも正しいと思ってるのかな~。


被告 まゆさん、我慢して付き合ってくれてるの? どうなの?


被告 こんな話は、直接はなすことで字面ではつたえきれないよ。LINEしろというからこんなかんじになってるけど。反応ないじゃない。


「電話でないのがわるいのに、これも、人のせいにするの?」
  その後も怒濤の不在着信とメッセージの連続に、とうとう、稲田さんも我慢がならなかったのだろう。被告に対して幾度かメッセージを送信している。


(5回の不在着信)


被告 まだ既読にならないね。どういうこと。


被告 地声で説明して!


(3回の不在着信)


被告 説明義務はあるよ。


(2回の不在着信)


稲田さん いっぱい掛かってきて怖いんですが、何が聞きたいんですか?


被告 電話出て。


(1回の不在着信)


稲田さん 今日はもう終わって今から休みます。こんな電話が続いてよく分からないのですが、疲れているので電話はごめんなさい。


被告 電話でないのがわるいのに、これも、人のせいにするの?


(日付が3月2日になり、6 回の不在着信のあと)


被告 日が変わったけど、朝も昼も時間があればかけるよ。よろしく


その後も宮本被告からの一方的なメッセージは続き、稲田さんがメッセージを送ったのはしばらく時間が経った2日の14時22分だ。


稲田さん ひろしさんからの電話は出たくなかったのですよ。とても迷惑だったので今後は1回電話して出なかったら、何度もかけるのやめてください。迷惑だと思ったら普通に無視します。お仕事行ってきます。


被告 ありがとね。ただ1回では取り損ねもあるでしょうから、連絡は2回までにします。


 1月の段階では自らを「ゴミ」と卑下して、稲田さんのつれない反応に不満をぶつけていた被告だが、3月になると言葉に非難の色が濃くなり、攻撃性を強めていった印象だ。稲田さんも冷静に言葉を選びながら、態度と行動を改めるように求めている。しかし心労の程は察せられる。


 被告との間でこのやりとりがあった3月1日に、私も「ごまちゃん」を訪れていた。私と稲田さんとのLINEのやりとりを見返していて判明したことだが、ごまちゃんに到着したとき、既に先客がいた記憶は確かにある。それが宮本被告だった可能性が高い。翌2日の早朝、私の携帯電話には稲田さんから御礼のメッセージが届いていた。


《昨日終わってから梅田に飲みに行ってました。ダメダメですね》


 被告には「もう休みます」とメッセージを送る一方で、彼女自身は梅田に足を伸ばしていたということが分かる。また、スマートフォンに被告からの連絡が絶え間なく届いている間でも、店では気丈に振る舞い、御礼の連絡を忘れないところにも彼女の人柄が表れている。


事件の直前から、文面が「まゆさん」から「まゆ」に
 稲田さんは宮本被告のLINE連絡を近しい知人には相談していたが、警察に相談することは考えなかったのだろうか。9月16日の初公判で、検察は稲田さんと交際していた男性の供述調書を読み上げた。


「『まあ(稲田さんに対する呼称)』に言い寄ってくる男は他にもいたと思います。でもまあは、お客さんからどんな無茶な話を振られても、怒ったりせず、多少もめても、話し合って解決しようとする優しい子でした」


 事件が起こった2021年6月に入ると、宮本被告と稲田さんのLINEのやりとりには、大きな変化がある。かねてより「まゆさん」と呼んでいた被告の稲田さんに対する呼称が「まゆ」と呼び捨てになっているのだ。


 6月7日のLINEである。


被告 まゆにはかなわないな。ほんと魔法使いだね。(中略)まゆの声聞けてぐっすり眠れそうです。ありがとうね。


 事件の4日前となるこの日、稲田さんと被告は新大阪の居酒屋で食事をしている。本来ならふたりで食事することすら忌避していたが、6月2日が被告の誕生日であったためにどうしても同席せざるを得なかったのだ。ふたりきりになる状況を避けるべく、稲田さんは個室ではなく、カウンターの向こうに居酒屋の店主が立つ店をわざわざ選んだと交際相手は証言している。


 被告の誕生日を祝うこの席で、稲田さんは宮本被告に対してこう告げたという。


「もう店には来ないでいただけますか」と――。



「『ラブリッシュ』時代から、まあ(交際相手の男性の稲田さんに対する呼び方)は“ウェザー”のことを『結婚して子どもがいる』『○△の団地に住んでいる』『新大阪で働いている』などと話していました」  ウェザーとは稲田さんと交際相手の間で宮本被告のことを指す“隠語”で、毎朝のように天気予報をLINEで送っていたことに由来していたという。 「ウェザーはまあに、LINEで尋常じゃない数のメッセージを送ってきていました。私とまあが一緒にいる時に電話をしてきたこともありました。『ごめん、ウェザーから電話が来た。すぐに終わらせるから』と言って、電話していました。ウェザーと電話することについて、『ほんまに喋るのいや。そもそも喋ることないし、気持ち悪い、気持ち悪い』などと話していました」
「ウェザー」の調書が読み上げられる間、被告は一点を見つめ…
 確かに、稲田さんへのLINEメッセージを辿っていくと、毎朝の連絡では天気予報が欠かさずに書かれており、6月に入ってからは「熱中症に気をつけてください」といったメッセージも多い。  法廷で、好意を寄せていた相手に「ウェザー」と揶揄されていた事実を知ることは、被告にとって決して気分が穏やかではないはずだ。そもそも稲田さんに交際相手がいたことを知っていたのだろうか。  検察官が調書を読み上げるのをメモしながら、私は時折、被告人席に座っている宮本被告を凝視した。じっとして動かず、視線は一点を見つめている。マスクで表情ははっきりとしないが、動揺は見て取れなかった。
交際相手の男性は、宮本被告はプレゼントを渡すと言って稲田さんを店外に呼び出そうとしたり、稲田さんと同じ電車に乗ってお店に行こうとすることが度々あったと証言している。また、一緒に写真を撮る際に稲田さんに身体を寄せてきたこともあり、「やめてください。近すぎるのは嫌です」とはっきり咎めたこともあったという。  そして調書は、時短営業を強いられアルコール類の提供ができなくなった時期の話題に入ってゆく。 「ごまちゃんの営業時間が午後8時までになり、“ウェザー”を含めた常連さんばかりが来るようになりました。その頃から“ウェザー”の愚痴を聞く回数も、格段に増えました」
「もう店にも来ないでいただけますか」
 そして、事件が起きる6月11日の4日前、6月7日の出来事について決定的な証言が飛び出した。 「“ウェザー”の誕生日を祝うために、新大阪の近くの飲食店にふたりで行くと聞いていました。その店にはカウンターがあって『目の前には大将がいるからふたりきりにはならない』と説明していましたが、『行くのは嫌やけど、行かなしゃあない』とも言っていました」  その食事が終わったあと、稲田さんは被告にこう告げたという。 「もう店には来ないでいただけますか」  供述調書の読み上げは続いた。 「それまでにも2、3回は『店に来ないで欲しい』と伝えたと聞いていました。いくら“ウェザー”でも、誕生日に拒絶されたらきついだろうなと思いました。一方で、誕生日祝いの席ですらはっきり『いや』と伝えるほど、まあが切羽詰まっていたことも伝わってきました」  ごまちゃんがオープンした2021年1月以降、稲田さんのスマートフォンには宮本被告からの大量のLINEメッセージや着信記録が残っている。LINEの文面の中には、宮本被告と距離を取ろうと苦心する稲田さんの心中が察せられるものも多い。そしてついに稲田さんは、宮本被告に決定的な「断絶」を通告したのだ。
「まゆの声聞けてぐっすり眠れそうです」
 だが、その希望が宮本被告に届くことはなかった。その日の夜、宮本被告はこうLINEのメッセージを送っている。 《まゆにはかなわないな。ほんと魔法使いだね。(中略)まゆの声聞けてぐっすり眠れそうです。ありがとうね》  そして4日後の6月11日、つまり稲田さんが殺害された日も、宮本被告は客として「ごまちゃん」を訪れたことがわかっている。  その日、宮本被告は21時頃に会計を済ませると、見送りに出た稲田さんとツーショット写真を撮った。その後エレベーターに乗って一度は1階に降りたが、ビルのらせん階段に身を隠して稲田さんがひとりになるのを待ち、アルバイト店員が退店したのを見計らって再び店内に戻り、稲田さんを殺害したと見られている。  事件から1週間後の6月18日に逮捕された宮本被告は、大阪府警の取り調べに対して「店には行ったがやっていない」と話したのみで、以後は黙秘を続けている。そして初公判でも「いかなる質問にも答えない」と異例の宣言をした。


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