いとおしい。
朝の6時頃、電話が鳴った。病院からだった。車を走らせる。
看護師さんの腕の中に小さな、小さな女の子。
僕の腕にそっと渡された。
初めての孫。こわごわ、わくわく。何だか妙な感覚。
腕にきゅっと力を入れた。
側にいる、その子はもう26歳。
アメリカの大学に留学・卒業し、東京にある会社に入社した。
すごい頑張りようでパソコンを開き、
「私、こんな仕事をしているのよ」と話して聞かせる。
僕の世界を超越し、よく理解できぬまま「頑張りなさい」と返す。
あんな小さな、小さな子が、こんなに大きく成長し、
やがて手の届かないところへ行ってしまうのだろう。
いとおしい。
背中のギターが体をすっぽり隠している。
この子が「僕、ギターやりたい」と言ったのは小学5年生の時だった。
それから高校を卒業するまでミュージック・スクールに通った。
煽られるように僕も同じスクールで歌を習い始めた。
そして、孫との共演が2度実現した。
斉藤和義の「やさしくなりたい」とビートルズの「Something」、
忘れられるはずもない。
だが、高校3年生の時同級生とバンドを組み、
文化祭で青春を思い切り発散させたのを最後にギターはやめてしまった。
大学生になるとギターに代わって、ひどく興味を示したのがファッションだ。
何せ,184㌢の長身。うん、なかなかに格好良い。
モデルまがいの見栄えだ。
ギターをやめたのは残念だが、これも彼なりの生き方。
来春には大学院を終え社会人となる。
あんな小さな、小さな子が、こんなに大きく成長し、
やがて手の届かないところへ行ってしまうのだろう。
いとおしい。
来年4月には大学4年生になる。早いものだ
小学校の校門の前で真新しいランドセルを背に
記念写真を撮ったのは、ついこの間のように思える。
背丈も僕を追い越した。
がんを克服した母が産んでくれた、大事な、大事な一人娘。
そして、この娘が大きくなっていくにつれ、
母娘はまるで友人みたいになっていった。
旅行に行くのもいつも2人一緒だし、娘が高校生になると
母が子に従うようにさえなった。
また、母娘とも「嵐」の大ファン。コンサートにも一緒に行くほどだ。
そんな娘が大学生に。嬉しさ半分、寂しさ半分……。
じぃじ、ばぁばも同じ気持ち。
僕の3人の孫たち。
あんな小さな、小さな子たちが、こんなに大きく成長し、
やがて手の届かないところへ行ってしまうのだろうね。