高校1、2年生? いや、まだ中学生かもしれない。
並んでこちらへやってくる。
だが、女の子は足首でも挫いたのか足を引きずるようにして歩いている。
心配して声を掛けていた男の子が、やおら女の子に身を寄せた。
女の子は、照れたようなしぐさでその肩に腕を回し、
男の子にもたれかかり片足を持ち上げるようにして歩いた。
すぐ近くのマンションが女の子の住まいのようで、
女の子は肩から腕を外し足を引きずり玄関ドアへ向かっていった。
男の子は2、3歩後を追おうとしたが、足を止め、心配そうに見送っている。
小さな初恋物語、そのように見える風景に思わず頬が緩んだ。
4月も下旬となり、気温がいきなり25度を超えた。
いつもの川べりをウオーキングすると、頭上からの陽が容赦ない。
帽子の隙間から汗がしたたってくる。
いつも石段に陰を作ってくれる、わずか二本の桜の木は薄色の花弁は散り去り、
緑一色の枝葉に頼っている。
若い男女(と言っても年の頃は2人とも30前後と見える)が
向かいからやってきて、その石段の木陰に座った。
少し早めの昼食だったのだろうか、近くのスーパーのらしいレジ袋から
ドーナツみたいな、そんな形をしたパンを取り出した彼女は、
かすかな笑みを浮かべながら彼に渡した。同じように缶ジュースも。
彼は無言のまま手を差し出して受け取り、
時折彼女の方に目をやりながらパンをかじり、合い間にジュースを飲んだ。
2人は2人きりの時をはしゃぐでもなく、浮かれるふうもなく、
年相応といえばそうなのだが、物静かなたたずまいであった。
2人の前を通り過ぎ、50㍍ほど進んだ時、がしゃという音がした。
振り向けば、踏みつぶされぺしゃんこになった缶が彼の足元にあった。
彼女はなぜか彼に背を向け、一人歩み去ろうとしていた。
彼はただ、つぶれた缶を睨みつけるだけ。
わずかばかりの時間に何があったのか。
ゲートボールの、あのカーンという乾いた音がする。
ウオーキングコースに隣接する広場に目をやれば、
相手ボールに狙いを定めたお爺さんがスティックを振ろうとしている。
だが、残念。
転がったボールは相手・お婆さんのボールの右側をかすめるように転がっていった。
「あらら、振られてしもうた」悔し紛れにスティックで土を小突く。
「あ~あ」僕のため息は青空高くに昇っていく。