再び車をレンタルしてコッツウォルズへと向かった。
コッツウォルズ丘陵地帯は、その北と南の端を鉄道がかすめ通るだけなので、奥深く入ろうとすると、バスか車を利用するしかない。バスは時間、場所共に制約が多くあって、車で行くのが最適である。という訳で、車の特典を生かし、寄り道しながらコッツウォルズへ向かうことにした。
寄り道の最初はレイコック。日本ではあまり知られていないが、英国内では人気の観光地であり、村全体をナショナルトラストが所有している。
5年前初めて叔父達と一緒に英国旅行をした際に(叔父の勧めで)レイコックを訪れ、その時はなんの予備知識も無かったのだが、その佇まいにすっかり魅了されてしまった。
ナショナルトラスト(N.T)の管理の下で、中世からの村の姿がそのまま残っているのだ。その建築スタイルは木組み白壁、あるいは大小さまざまな石を巧みに組み合わせた外壁を持つ可愛らしい家々。しかも、そこには人々の生活が息づいていた。
着いてみると、5年前と何も変わらない村の風景 ! N.T管理の下では改築は許されない。が内装を変えてショップにするくらいは出来るらしくて、そこここに小さくてお洒落な店がある。
今回は少し下調べをしてきた。誰かの紀行文で知った ”King John’s Hunting Lodge”という、素敵なTee Room を大目的にして「レイコック」にやって来たのだ。
ところが、村に一歩足を踏み入れるとなかなか先へ進めない。趣のある中世の家並と、各家が寄植え鉢やハンギングフラワーで美しく 飾りつけられている様子を目の当たりにしては、とても素通りはできない。それぞれ花の横に並んで、互いにカメラのシャッターを切るのに夢中になってしまった。
心ゆくまで写真撮影したあと、地図を見ながら路地を曲がり、“King John’s ~”の入り口を示す大きなティーカップを見つけた。ぽっちゃりした形といい色艶といい、見ただけで店への期待が高まってくる。
ドアを開けるとテーブルと椅子が並んだ室内には誰もいない。しかし庭に目を転じると、広い芝生の木陰を選んで、長机とベンチが置かれ、お客達は思いおもいの席に座を占めて、お茶や食事を楽しんでいた。頭上には古木に絡みつくように伸びたイングリッシュローズが咲き誇り、心地よい香りが漂っている。庭を見下ろすように古い石造りの家が見える。それが「ハンティングロッジ」なのだろう。「キングジョン」の名前が冠されているのだから「ジョン王の狩猟小屋」・・・「ジョン王」といえば13世紀初頭の王様だけど、そんなに古い建物が残っているなんて驚きだ。きっと一部分だけであとは修復したのだろう。
さっそく私達も食事を注文した。空腹なのであれもこれもと欲が出て、中身の違うランチディッシュを二つ+アフタヌーンティーセット(二人分)を三人で分けた。三段重ねのセットには、サンドイッチの他にスコーンとデザート菓子も付いていて紅茶もたっぷり。
心地よい初夏の陽光と微風の中で食欲も旺盛となり、ぺろりと平らげてしまったのだった。
【写真 渡辺未知】
超スローテンポで更新してるので、ゆっくり過去にさかのぼって読んで下されば嬉しいです!