イギリスの田舎とB&Bめぐり

留学中の娘を訪ねた45日間のイギリス旅行記。月1間隔でUPしていく予定なので、ゆっくり・じっくり読み進めてください。

13 チェスター (木骨組み建築群) 6月16~17日(木・金)

2011-01-17 11:07:57 | イギリス旅行記

北の町、グラスゴーに別れを告げ、列車で帰路についた。
カーライルまでは来た時と同じ線を走り、カーライルから山裾を通ったローカル線と  左右に分岐して、今度は幹線で南下した。途中、「オクセンホルム」という駅に停車した。ここは湖水地方の入り口である「ウィンダミア」への乗換駅。私達も10日余り後に利用するのだが、今回は素通りである。湖水地方帰りの観光客が大勢乗ってきて、車内はほぼ満席状態になった。懐かしい日本人の顔もチラホラ…
  「クレア」でローカル線に乗り換え、すぐに「チェスター」に着いた。次の駅はもう「ウェールズ」領域という、境界ぎりぎりにある街だ。
   先ずは宿泊先へ。今回はユースホステル(YH)泊まり。初体験なので興味津々である。ミチがお屋敷風のいい感じのYHをパンフレッドで見つけて予約しておいてくれたのだった。英国各地の多くがそうであるように、ここも鉄道駅は中心地からかなり離れていた。バスでYHに向かう。バスは中心部を迂回して大きな川(river Dee)を越え、ハラハラしている間にやっとYH前に到着。徒歩圏外だったのには少しがっかりした。
  YHは、複数のとんがり屋根、赤レンガの壁、門から入口までの緑のアプローチと期待通りの姿で迎えてくれた。チェックインと同時にルームキー、寝具に掛けるカバー類、ホステルを使用するに際しての注意書きプリントが渡された。この辺はなかなか事務的な(=そっけない…)印象である。部屋は3階。幅広の立派な階段を上がり始めた。2階まではまさにお屋敷。しかし3階に上がろうとすると、突然階段の幅が半分になった。アレ?と思いながら上がっていくと、そこは2階までとは別世界。狭い廊下の両側に細かく仕切られた部屋が並んでいた。部屋の中は…壁の両サイドに2段ベッド(ホントは4人寝られる)、真ん中のスペースは、向き合ってベッドに座ると膝がくっつきそうになる。
   ミチは上段に陣取り【写真①】、その下のベッドを荷物置き場、私はもう一方の下段にベッドメーキングした。他には小さな洗面台と小窓だけでシャワーとトイレは共同。この環境には相当がっかりして、ミチに文句の一つや二つも発したと思うが、彼女にしたって中をみてから予約した訳ではないので、どうしようもない。
  宿泊費が二人で£20以下(3000円位)と安かったので、こんな事もあろうかと観念した。
  部屋に長居は無用とばかり、早速市内観光に出た。チェスターは城壁に囲まれた中世都市。美しい木骨組作り(half timbered)の建築群で有名な所。構造上必要な太い木骨の間に、細く割った木で、まるで切り紙細工を貼り付けたような壁面がメインストリートに並んでいる【写真②】。ほとんどが商店で、パブやイン(宿)もある。かなりの人ごみの中を、店舗を覗いたり建物を観賞しながら、ぶらぶら歩きを楽しんだ後、城壁に上った。城壁の通路は案外狭くて、人が横に3人並ぶと一杯になってしまうほどだ。外側の眺めは、真下にディー川と河畔の緑で清々しい【写真③】。内側は、市民が住む家(レンガのいわゆる長屋)の裏側が見えた。もう少し先まで歩くと、大聖堂のすぐ傍を通り、聖堂を上から眺められたのに、不覚にもその時は知らなかったので、次の階段から降りてしまった。
   時間はすでに6時を過ぎており、店舗は飲食店を除いて全てクローズしていた。あれほど賑わっていた通りは嘘のように人が退いてしまい、建物がいっそう存在感を主張するように迫って来た。ある骨董点のウィンドウでスージークーパーの絵皿を見つけた。買える値段かどうか判らないけど、翌日開店してから、もう一度くる事にした。
   YHに戻り、狭いベッドでの就寝どきを迎えた。緊急避難口を確認したものの、“この狭い廊下では、火事になれば逃げるのは難しいだろうな”と一抹の不安を抱きながら眠りに入ったようだった。
   翌17日、朝目覚めたとたん、“火事が無くて良かった”と胸を撫で下ろした。9時チェックアウト。昨日につづき今日も快晴。しかもイギリスに来て初めて“暑い”と感じた日だった。
   例の骨董品店、もう一度行こうとしても私には何処だったか見当がつかなかったが、ミチはちゃんと覚えていて、迷うことなく行き着くことが出来た。外国で何度も初めての街を歩き回った経験から身に付けた技であろうと、頼もしかった。
スージークーパー(1920~60年代に活躍した人気の陶磁器作家)のものは何種類か置いてあったが、径23cmの絵皿を2枚購入した。一面細かい筋(ひび割れ)が入っている格安(£6)のがあったからだ。骨董価値は低いかもしれないが、使用にはさしつかえないし、何よりも絵柄が気に入った。1930年代作特有の、乳白色の生地に淡い色調の花柄は、目に優しく、触れて温かい。特に縁のミントグリーンが美しい【写真④】。
   思わぬ掘り出し物を抱きかかえて、ほくほく顔でレミントンに到着。駅でレンタルした車で再びミチのホームステイ先、クラーク家に戻った。