イギリスの田舎とB&Bめぐり

留学中の娘を訪ねた45日間のイギリス旅行記。月1間隔でUPしていく予定なので、ゆっくり・じっくり読み進めてください。

10、 レミントン/パート1  6月9日(金)

2009-11-18 23:11:48 | イギリス旅行記


   レミントンの正式名はRoyal Leamington Spa.と言う。イングランドのほぼ中央(いわゆるハート・オブ・イングランド)に位置する地方都市である。Royalは王室、Spaは温泉の意味。ヴィクトリア女王が好んで行幸された温泉保養地として発展した街だとか。コッツウォルズからは北へ「京都→大阪」程の位置関係である。
   レミントンに着いて最初に行ったところはレンタカー営業所。さっき返車したばかりだけど、ミチによると、レミントンでも車が必要だそうだ。ハーツと違い今度はごくローカルな会社なので、料金がうんとお得!その車でクラーク家に向かった。
   娘ミチが一年間ホームステイしていた家だ。便りや写真で既にお馴染み。初めてお会いするような気がしないが、もちろん初対面。娘の便りによれば素晴らしい家族だ。
ホストマザーのノーマは気配りが利いて朗らか、そして何より料理が得意な点が娘を魅了したそうな・・・ミチたち下宿人を家族と同じように団欒の仲に加えて下さり、買い物やパブに出かける時も、こまめに声をかけてくださったそうだ。そうではないホームステイも多々あると聞いていたので、娘は本当に幸運だった。
   ミチが渡英してすぐの頃は、ずいぶん心配したものだったが、様子を聞くうちに、クラーク家にステイしているかぎり、遠く離れている私も安心して暮らすことができたのだった。
   というわけでクラーク家、特にノーマには感謝の気持ちで一杯。この気持ちを直接伝えることが出来る時がいよいよ間近に迫り、嬉しいような怖いような気分だ。
   何度も挨拶の言葉を心のなかで反芻するうちにクラーク家に到着した。
 市の中心から、かなり離れた住宅地にある明るいレンガ造りの家で車を止めた。玄関横の小さな木戸から入ると、庭に面した家族専用の入り口があり、そこから大きな旅行ケースを押して、ミチの後ろから恐る恐る入っていくと、クラーク夫妻の明るい笑顔に迎えられた。ミチとノーマはハグをして(抱き合って)再開を喜び合っている。
   私はドギマギしながらも、考えていた挨拶言葉はどうにか話す事は出来た。然しそのあとの矢継ぎ早に交わされる会話にはお手上げだ。そんな私を察して、ノーマは一語一語切って、ゆっくり話しかけてくれるのだが、それでも半分以上はミチの通訳のお世話になった。ヒヤリングとはなんて難しいのだろう・・・と同時に、渡英前はほとんど片言英語に過ぎなかったミチが、よくぞ此処まで上達したものだと、信じられない思いだった。最初ノイローゼ気味になったこともあったらしいが。
   ひとしきり話が弾んだのち、二階の部屋に案内して下さった。私は一人娘さんゾーエ(Zoe)の部屋、ミチはかつての自分の部屋(未だ荷物を置かせてもらったままになっている)に入った。他には、夫婦の寝室と子供さん達の個室が、廊下を挟んで並んでいた。今は使われていない2つの部屋にミチともう一人ベルギー人の留学生がそれぞれステイしている。
   私が借りた部屋の主であるゾーエは大学生で、近くの街で下宿生活をしている。時々帰ってくるので、部屋には洋服や本などが片寄せて置いてあり、女の子らしい雰囲気がただよっていた。
   夕食時に、そのゾーエと顔をあわせた。なんでも、お祖母さん(ノーマの母親)の体調が悪いので、お見舞いに帰宅したとか・・・“私が部屋を占領してしまっていてどうしよう”と慌てたが、“前からの約束なのだから、気にしないで”と言われてお言葉に甘える事にした。それでも気にしてしまうのが日本人的なのかな?
   ゾーエは毛布を広げてリビングで寝るらしい。リビングには他にも人が大勢いる。ミチに聞いてみると、ゾーエのボーイフレンドとその友達(男性)、ゾーエの女友達だそうで、総勢四人が泊まるらしい。そんなに広くない部屋は彼らと彼らの荷物でいっぱいになっている。部屋があろうと無かろうと、泊まりたい人は泊めて上げるおおらかさに、度肝を抜かれるやら感心するやら・・・
   もちろん、この人数では一緒に食事は出来ない。めいめい勝手に自分の皿に取り分けて、食堂やリビングの空いている椅子に座って夕食を済ませた。
   ノーマはさすがにお料理上手で、こんな大人数分を(少なくとも見た目は)苦も無く作ってしまう。食後の積み上げられた食器を洗うのは夫ロッドの仕事だ。もっとも食洗機を使っての作業だが。食後ゆっくりソファーでくつろいでいるノーマの横に、作業を終えたロッドが座って、一緒にテレビを見るのがお決まりの風景で、ミチもよく二人に挟まれて見ていたそうだ。

 余談  この日にチラッと垣間見た、ボーイフレンドとゾーエは十年の交際を実らせて、今年の九月、めでたく結婚式を挙げた。ミチも友人として、また、プロのフォトグラファーとして招待状を頂いた。ミチは、挙式日の一週間前からクラーク家に滞在させていただき、晴れの日を待つゾーエの表情や、家中あげての準備に忙しい様子なども、つぶさに撮影してきたらしい(アルバムが未完なので未だ見ていない)。
クラーク家とミチはこの十年間、途切れることなく友情が続いて来たが、今後も続くと信じている。
   
   クラーク家には、まずは二泊三日の滞在。ぐるーと北部を廻って来て、もう一度泊めていただく事になっているのだが、今回の二日間で二つの対照的な経験をする事となった。一つは、「ライブ演奏付きパブ」。もう一つは、「中世そのままの街と庭園見物」だ。   詳細は次回に

★写真説明 
1、クラーク家 一軒家に見えて、実は真ん中で二軒に仕切られている。セミ・デタッチドハウスと呼ばれる、イギリスではごく一般的な建物

2、左からゾーエ、ミチ、ノーマ
       
3、レミントンの中心街