イギリスの田舎とB&Bめぐり

留学中の娘を訪ねた45日間のイギリス旅行記。月1間隔でUPしていく予定なので、ゆっくり・じっくり読み進めてください。

11 ベイクウェル  パート1(ハドンホール)  6月12日(月)

2010-04-28 21:35:15 | イギリス旅行記
  一晩ぐっすり眠って疲れが取れた…と言いたい所だが、部屋が、ラウンドアバウトに面していたため、小さな町とはいえ車の音でよく眠れなかった。
  で、朝早く目覚めた私は、眠っているミチを置いて散歩に出かけた。
  ベイクウェルはThe Peak district(山岳)国立公園のなかにある静かな町の一つ。早朝はまだシーンとしていて、こんな時間帯に歩き回るのが、旅行の醍醐味とばかりに、心弾ませて川の方向へ歩いて行った。川にはすぐに着いた。岸辺の柳が水面まで枝を垂らし、両岸は遊歩道になっているが、まだ、人っ子一人居ない。ベンチに座って、岸辺を闊歩したり、水と戯れたりしている鳥たちを、しばらく眺めたあと引き返した。
  すると、さっきは何も無かった広場が何やら賑やか・・・人々がストール(屋根付き屋台)の組み立てをしている。朝市が始まるらしい。時刻は7時30分で、8時にならないと始まらないらしいので、いったんホテルに戻った。
  朝食時、ミチに頼んで、もう少し表通りから離れた部屋に変えてくれるように、掛け合ってもらった。ミチはこういった類の交渉を嫌がったが、「あと二泊もするんだから」と強引な私に負けて頼んでくれ、ホテルも気持ち良く応じてくれた。実際に移るのは帰ってからということにして、安心して観光に出かけた。
  まず、先ほどの朝市に行ってみると、すでに大賑わい。売られている物は、地元産の野菜、手作りのパン、ケーキ、衣類、雑貨、CD等々・・・何でもある。羊のぬいぐるみをわずか1ポンドで買った他は冷やかしただけで、会場を後にした。
(イギリスは羊が身近にいるだけあって、見たら買わずにはいられない、可愛らしいぬいぐるみがいっぱいある)
  
  いよいよ、旅行のハイライトの一つであり、前からあこがれていた「ハドンホール」に向かった。 「ハドンホール(Haddon Hall)」というのはイギリスに数多く残されているカントリーハウス(貴族の館)の一つで、国内が安定して内乱が減ってきたエリザベス朝(16世紀)期に、古い城郭から居住性を重視したこのスタイルに改造したり、新築するのがブームになったそうだ。観光用に公開されているものだけで250もあるらしい。
  このあたりの事情は「イギリス歴史の旅 高橋哲雄著(1996)、朝日選書」に詳しい。この本は私達の愛読書ナンバーワンで、この中で取り上げられた「ハドンホール」の記事を読み、“絶対に行こう!”と決めたのだった。
  ホテルの前からバスに乗り15分ほどで到着した。川と牧草地と木々に囲まれてひっそりと建つこのカントリーハウスは、初期建設は12世紀。何度か増改築もされたが、それも16世紀でストップし、以降あまり手が付けられることが無かったとのこと。そのお陰で中世の素朴な様式が残っているのだそうだ。見て回ったどの部屋も、控えめな装飾と温かみのある家具が醸しだす雰囲気が心地よく、いつまでも留まりたいに気分にさせられた。
庭園は斜面を利用して、建物の各階から出られるようになった三段テラス式。それぞれの高さの庭から、建物の外観を間近に鑑賞できたのが素晴らしかった。館の外壁に絡み付いて咲き誇るクレマチスやローズには目を奪われた。庭の端から、12世紀の城壁にもたれて見下ろすと、目の下には大きくカーブを取った川とそれをまたぐ石橋、木陰で休む羊たち(なんと横向きに寝そべっている)、遠くを見ればピークの稜線の連なりと、まるでこの世の天国。こんな所で毎日生活していると、どんな人間になるのだろうか・・・この館には、代々受け継いだ子孫が今も生活しており、一部分だけが公開されている。庭を歩いていて、閉ざされた門扉にプライベートの札が下げてあるのを見ると、覗き見心をそそられてしまう。
  併設のティールームでアップルパイとたっぷりの紅茶で一服し、三時間余りを過ごしたカントリーハウスを後にした。
  町に戻ると、アンティークフェア会場を発見し、吸い寄せられて入場。何も買わなかったが、見るだけ話すだけで本当に楽しい。
  ホテルに戻ると、新しい部屋が用意されていたので早速移動した。このホテル、正面はラウンドアバウト(ロータリー)に向き合い、ホテルの両サイドも脇道に面している。ホテル中央は吹き抜けの階段スペースなので、結局どの部屋も道路に面していることが判った。しかし、車の交通量は正面よりは少ないので、やや静かになった感じがする。
  夕食はパブへ出かけた。中ではサッカー中継をやっていて客はほとんど男性。皆ビール片手にTVに釘付け。ときどき、雄たけびがおこる。私たちだけTV に背を向けて、男たちの表情を鑑賞しながら、じゃが芋がごろごろ乗った一品料理を平らげた。
  帰りに、これも楽しみにしていた名物「ベイクウェル・プディング」を買って帰り、デザートはゆっくりホテルの部屋で味わった。

写真説明
1 ハドンホール室内の一角。 ダイヤカットされたガラスを透かして見る庭の緑が美しい(ガラス窓は17th初頭)
2 壁に絡まる花々。ダイヤカットされたガラスは乱反射して室内を外から見透かせなくしている
3 庭園の最上段テラスからの眺め
4 名物「ベイクウェル・プディング」