イギリスの田舎とB&Bめぐり

留学中の娘を訪ねた45日間のイギリス旅行記。月1間隔でUPしていく予定なので、ゆっくり・じっくり読み進めてください。

12 グラスゴー(マッキントッシュ)  パート2  6月15日(木)

2010-11-13 20:26:59 | イギリス旅行記
グラスゴーに来たのはマッキントッシュの遺産をみるため。
 マッキントッシュといえば、コンピューターを思い浮かべる人がほとんどだろう。
 私たちがはるばるグラスゴーまでやって来た目的は、レニー・マッキントッシュ(Rennie
 Mackintosh 1868-1928)以下Mackと表記)。グラスゴー生まれのインテリア・デザイナーである
   彼の名前は、有名な椅子のデザイナーとして知ってはいた。頭の上にまで真っすぐに聳え立つ背を持った木製の椅子(high-backed chair)、そのシンプルな美しさは世界中で愛されているらしく、インテリア雑誌で何度か見た記憶がある。しかし家具だけではなく建築、金属及びガラス工芸、テキスタイル等々…これほど多才な人とは行ってみるまで知らなかった。
   ミチはイギリス滞在中、美味しい紅茶とスコーンを出してくれるティールームを訪ねることに情熱を傾けていたが、Mackがデザインした「ウィロウ・ティールーム」が現存していると知り、グラスゴーを旅行日程に加える事を提案してきたのだった。
   他に、彼が手がけた最大の建築物である「アート・スクール」も見物することにして、その近くに宿を決めた。
   宿の名前はそのものズバリ「マッキントッシュ・ホテル」。ただし名前を戴いているだけで、彼がデザインしたホテルではない。扉を開けてハハーンと納得。ロビーやラウンジは全てMack風のインテリア(コピー)で埋め尽くされ、彼のスタイルの特徴を大雑把ではあるがつかむ事ができた。それは、簡単に言えばアールヌーボーとアールデコの融合。直線と曲線の組み合わせ。長方形と正方形が特にお好みらしい(写真1)。
   翌日、ホテルから数分の「アート・スクール」見学へ。こちらは正真正銘、Mackが設計とインテリアを手がけ、そのうえ彼自身も教鞭をとっていた学校だ。正面から見上げると、広いガラス窓と、鉄製の飾りが窓や外壁にくっついた、近代的な建築である(写真2)。続々と登校してくる学生たちは、奇抜な服装や髪型をしていたり、一見性別が判らなかったり(もちろん全部ではない)と、さすがアートスクール!と目をみはった。
   彼らに混じって校内に入ると、中は以外にも木材をふんだんに使った、薄暗く落ち着いた印象。受付で聞くと、係員が校内をガイドして廻ってくれるそうだ。30分ほど時間があったので、玄関脇のショップでパンフレットや絵葉書を買ったり、ベンチに腰掛けて、入ってくる学生たちを興味津々の眼差しで眺めたりしていた。
   時間が来ると、見学者は10人余りになっていた。英語の説明は私にはほとんど聞き取れなかったが、見るだけでも大変面白かった。各部屋はそれぞれ目的に合わせて使いやすく、しかも、凝りに凝った芸術的デザインが施されていて、年数と費用を要したことが偲ばれた。日本から取り寄せた竹を使ったインテリアもあった。圧巻は図書室。椅子、机、それを取り囲む書庫のデザイン等が、何時間でも座って読書していたいような気分にさせられた(※残念ながら校内は撮影禁止だった)。
   すっかりMackのトリコになった二人。今度はミチ待望の「ウィローティールーム」に向かった。ホテルやアートスクールは街の高台に位置していたので、中心街に向かう急な坂道を下っていった。街全体が北国らしく灰色にくすんでいて、老舗らしい店舗が並んでいる。
   ティールームの店内。一階はショップになっていて、Mackのデザインを取り入れた工芸品やアクセサリーがガラスケースに収められ、美しく陳列されていた。どれも高価なものばかりなので素通りし、二階のティールームへ。
   ほぼ満席だったが、運良く空いていた座席に案内された。かなりお腹が空いていたので、食事とデザートが同時に食べられる三段重ねのアフタヌーンティーセットを注文した。おいしい~おいしい~と舌鼓をうちながら、周囲のインテリアに注目(写真3)。手摺、柱、照明器具、奥に見える壁面、木製のカップボード・・・彼の華やかな特徴を今に残している。一階から吹き抜けになっていて、手摺から覗くと、階下のショップが丸見え。手摺が低くちょっと怖い気がした。
   旅行していて気が付いたのだが、このような類のティールームに入って、子供づれに出会った事は一度もなかった。そのことが、落ち着いた時間を過ごせる大きな要因になっている。だから、手摺が低くても、(子供がいたら危ないなどと)気にする事はないのだと、つい日本にいる時のくせが出てしまった自分に苦笑い。
   グラスゴーには他にもMackがデザインした個人住宅、自分たちの新婚時代の住宅、商業ビルなどが残されている。建築家やデザイナーにとって興味は尽きないだろうけど、私たちは二箇所で満足。もう一晩泊ってからチェスターにむかった。

    写真4   グラスゴーで買ってきたマッキントッシュに関する小冊子と、
彼のデザインが描かれたウィローティールームの紅茶缶。