酒の誕生
現代社会でも重要な飲料である酒が盛んに作られるようになったのは古代文明からだ。それまでは、せいぜい蜂蜜が発酵した蜂蜜酒くらいしかなかった。
本格的な酒造りは農耕の発展とともに始まった。というのも、酒を造るためには材料となる穀物や果実などが必須であり、それらが食べる以上に余っていないと酒造りに回せないからだ。つまり、作物の生産量が増えて余剰分が出てきたために、酒造りが始まったと考えられる。
酒に含まれるアルコールはほとんどの場合、酵母のアルコール発酵によって作られる。酵母は糖を分解して炭酸ガスとアルコールを生成する。このアルコールが蓄積されることで酒ができるのだ。
ワインなどの果実酒は、果実中の糖分が直接アルコール発酵されることで作られる。一方、オオムギやコメには糖分が含まれていないため、ビールや日本酒を作る場合はデンプンをまず糖に変える工程が必要となる。ビールの場合は、オオムギを発芽させることで生じたデンプン分解酵素によってデンプンを糖に変える。日本酒の場合は、コメのデンプンを麹菌の持つデンプン分解酵素で糖にする。こうして生じた糖を酵母によってアルコールに変える。
酵母によるアルコール発酵で作った酒を「醸造酒」と呼ぶ。酵母はアルコール濃度が高くなると発酵を止めてしまう。このため、醸造酒のアルコール度数は高くても20%までだ。一方、醸造酒を加熱してアルコール分を蒸発させ、それを冷却して液体にすることで高アルコール濃度の酒を作ることができる。これが「蒸留酒」で、高いアルコール濃度のため常温での保存が可能だ。
楽しく飲む酒は人生に潤いを与え、人間関係を潤滑にする。また、血行を良くし、食欲を高め、ストレス解消の効果もある。
しかし、酒の飲み過ぎは肝臓障害や痛風、糖尿病などの代謝性疾患の原因となる。また、アルコールは、脳内の快楽中枢である「報酬系」に働いて快感を生み出す。このため、過度の飲酒は、酒の誘惑から抜け出すことができなくなるアルコール依存症の原因となる。古代メソポタミアや古代エジプトの記録にも酒の飲み過ぎの害が記されていることから、昔から酒との付き合いは難しかったようだ。