碁席秀策へようこそ!

徹夜で打てる新宿の碁会所「秀策」の
出来事や大会などをお伝えします。
プロ・県代表クラスもよく来ている碁会所です。

目碁と歴史

2013-07-07 10:45:15 | 過去の出来事




昔の新宿の碁会所には真剣師(懸賞打ち)が溢れるほどでした。

今となっては真剣師も指で数える程・・でしょうか。

真剣師達の間でよく行なわれていた賭け碁の方法についてのお話です。

「目碁」とは普通の勝ち負けで支払う賭け碁とは違います。

整地する時の地合いの目数によって額が変化する。

台が500円で目が50円だとします。

台とは勝ち負けでまずもらえる額です。 目は10目単位で額が上乗せされます。


たとえば、先程の設定で9目半勝ち、又は10目勝ちになったとしましょう。
その場合は目は一番と言います。勝った人が550円もらえます。

10目半勝ちあるいは20目勝ちは二番で 600円という感じです。

地方の碁席でも目碁は有名です。ローカルルールでは一目単位で額が変化するものも
あるようです。 

それと目碁は投了ができない。整地まで持っていく事がルールです。
例外もあり、投了は5番や10番など対局前に取り決めをしたりします。 

賭け碁や目碁には先人達の経験からの格言もあります。
「負ける時は1番勝つ時は10番勝敗は3勝2敗くらいが望ましい」
「一番負けようと思う気持ちも大切。 そうするといつのまにか大勝していた」
「対局中は人を近付けさせない事」「半コウ争いはほぼ意味がない」
「セキ崩れはとても大きい」
「隅の地は最初に取ってはいけない、後で荒らして地になるのが良い」
「石は序盤で取ってはいけない」など他にも色々あります。

対局中人を近付けさせない事などは知っている方もいると思います。
古くは徳川家康と浅野長政の対局で
家康が本因坊算砂に自分にしか分からない助言のサインを送らせていた事などから
出来た言葉ではないでしょうか。(結局浅野長政も分かっていた。)



ある時私はこんな光景を見た事があります

投げ3番というルールで 局面はまだ手所が残る中盤戦でした。

数えてみると黒は40目くらい白地は100目弱ありました。

両対局者も形勢は分かっているようで 黒は細かくするチャンスが無くなったら投げる
つもりだったはず。 黒が最後の勝負手を打ちました。
黒はここで見事に成功し30目近く得しました。
白の人の棋力なら読めば間違えないような所だった気がしますが(?)

投げようと思っていたはずの黒も30目も得しては投げません。
その後の白はヨセていたような気がします。

作ってみたら結果は白の41目勝ちの五番でした。 投げれば三番なのに・・・
と思うのは対局心理的に酷でしょうか、真相は言わずもがなです。

まぁこれはイカサマとかではないので優しいものでしょう。(少しせこいと思うかもしれませんが)

これに限らず真剣師とはまことに引き出しの多いことと思った次第。


碁で生計を立てる裏プロ達...その中でも相手の対局心理を知り尽くした先人達は
イカサマなどせずとも十分に強いです。

江戸時代では四宮米蔵、勝田栄輔、幕末では若かりし頃の水谷縫次。
昭和の佐々木修氏然り、石塚勇二氏然り。
無名でも恐ろしく強い人達それが真剣師でした。










囲碁・将棋 ブログランキングへ