春烙

寒いなあ…

2月29日の悪魔

2008年03月09日 01時31分48秒 | 二次創作(WJ)

 4年に一度しかない日、2月29日――

「4年に一度だけ出てくる妖怪~?」
 ある日のこと。
 俺はトラが面白い話があると言ってきたので、ジュンとアスカと一緒に聞いていた。
「そうだ」
「そんなのいるのかよ?」
「俺は見た事はないが。他の奴は見たんだと」
 それはそうだろう。妖怪は何百年も生きているんだから。
(そういう事言うか)
「(いいだろ、別に)」
 俺は今、焔斬・チビを憑依していた。
「それで。どんな妖怪なんだ?」
「なんでもその妖怪は、同じ日の人間を食う妖怪のようでな」
「同じ日って、2月29日か?」
「ああ」
「(本当か)」
 俺は長生き爺に聞いた。
(爺はよけいじゃ)
「(じじいだろうが)」
(じじいー、じじいーー)
(うるさい!……本当じゃ)
「(爺が、か?)」
(いっぺん、死ぬか?)
「(いや、いいです……)」
「その日に生まれた奴は不思議な力を持っていて、その力を奪うそうだ」
「力って?」
「生まれた奴は聖なる力、つまり『光』を持っていて、妖怪はその『光』を奪うんだとか」
(『光』というても、それは特殊の『光』じゃ)
「(ほうー)」
「その妖怪ってさ。何人食うわけ?」
「さあな。29日に生まれる奴って少ねえんだろ」
「珍しいからな」
「そいつが現れるのは、その日から1週間前だ」
「そんなにか?」
「完全になるのが29日なんだ。それまでは力を蓄えるための準備だと」
「おっそろしい~」
「まっ。いるわけないけどな」
「たしかにそうだよな」

「っで。どうなんだ?」
 あの後。俺は家を出て、人気(ひとけ)のない所で、焔斬とチビを呼び出した。
『単に1週間前というわけじゃない』
「そんなに前から出てくるのか?」
『わしも会ったことがあるが……』
 深刻そう(?)にしている。
「なんだ?」
『一撃で……』
「『一撃で??』」
『あっさりと勝った』
「『よわっ!!』」
 なんかさくっとしないなあ~
『じゃがな。わしが倒したのは完全ではなかったのじゃ』
『弱い者虐めだ――』
『やかましい!』
 そう言って、焔斬はチビを追い回した。
「ちょっと、会ってみたくなったなぁ……その『光』を食う妖怪に」
『ぼく、『闇』だけど、会ってみたい~』
「さすが。俺の闇で生まれたってことはあるな~~」
『フンっ。ほざけ』

 その後。東京周辺で人が消えていく事件が多くなった……

 2月28日。
 俺はある人と待ち合わせをしていて、青春台へと来ていた。
(買い物、買い物ー)
(うるさい)
 なぜか、焔斬・火飛・チビが一緒に来ていた。(と言っても、憑依状態だけど)
(別にいいでしょ。チビはまだ子供なんだから)
「確かに……子供虐めはいけないぞ」
(それでよいのか!?)
(わーいっ)
「はあー……」
 そうしているうちに。待ち合わせ人が来た。
「遅れてすまない」
「いや、いいよ」
(くにちゃんだ――)
 俺は自分の腹を叩いた。
「気にするなよ、手塚。憑依中の妖が変なことを言ったから」
「あ、ああ……」
 俺が待っていたのは、同い年の手塚国光。
 どうやって知り合ったのかは、また後日(笑)
「それじゃ、行こうか」
「ああ」

(キラキラがいっぱい~)
 俺達は雑貨店にいた。
 なぜ? それは明日の29日にある。
「これはどうだ?」
「……」
「駄目ね。じゃあ、これは??」
(ぼくはこれがいいー)
「(選ばなくていいから)」
 肩がこりそう……
「これは、どうか」
 彼が選んだのは、小さな熊のついたネックレス
「んっ。いいんじゃねえの」
(私なら、こっちの方がいいわね)
 火飛もかよ!?
「俺はこれを買おうかな」
 俺は、青いリボンと袋。
「じゃあ。買おうか」
「ああ」

 買い終え、店を出た。
 が。
「あ、よっちゃん」
「なっ!?」
 出た瞬間、健次とクリスが現れた。
「健次、クリス!?」
「……」
「他にもいるって。しかも迷子になった!?」
 健次は普段、しゃべらない。が、彼を理解できる人には、彼が何を言っているのか、すぐにわかるんだ。
「よっちゃん、よっちゃん。もう一人、いるんだよ」
「もう一人?……あっ」
 健次が横にずれると、そこにいたのが……!
「やあ、二人とも」
「不二……!」
「エ――っ!?」
 手塚と同じ中学に通っている、不二周助だった!!
(驚きすぎだ)
(驚くわよ、普通)
「何しているの?」
「「…買い物だけど……」」
「へえ」
 怒ってる。不二は絶対に怒ってる!!
 俺が手塚と一緒にいるからか!? 
 別に彼氏とったわけじゃねえし!!
(一緒にいると悪いの、ママ(←火飛のこと)?)
(いえ、違うわよ)
「こ、これには、ちょっとした訳が……」
「どんな訳なの?」
(明日のことを言った方がいいぞ、朱雀)
 と、焔斬が言ってきた。たしかにその方が納得してくれるはず……

 だが。さらなるハプニングのせいで駄目になった。
「うわっ!」
『!?』
 突然、とてつもない風が吹き始めた。
(朱雀! これは妖気だ!!)
「な、なに!?」
 焔斬が言うと、確かに気配はあった。
「でも。この妖気、感じたことねえぞ!!」
(これ、『光』が混じってるよ)
(これは……まさか!)
「知っているのか、焔……」
 焔斬を呼ぼうとした、その時だった!
 突然、竜巻が消えた。
 不二とクリスと一緒に。
「クリス……!」
「不二!!」
「しまった!!」
 不二はともかく、クリスまで連れ攫うなんて!
「どっちだ、焔斬!」
(右じゃっ)
 俺は二人を置いて、妖気の風を追いかけていった。

「……それで…」
 妖気の後を追い、空き地へと来た……俺達。
 俺と憑依中の焔斬、現化したチビと火飛(小)、俺の後を追ってきた健次と手塚、その二人を追ってきた連、通、亮、大石、菊丸。
「これはどういうことなんだ、トラ」
 俺が連絡を入れた、ジュン、トラ。そして。
「なんで、アスカが小さくなっているんだ」
 ミニサイズくらいに縮んだアスカ。
「お、俺はしらねえぞ!」
「ジュン」
「俺もしらねえ(薬をかけたってことを)」
「ジュンッ!」
 絞め殺そうとしたが、そんなことしてる場合じゃなかった。
「よくっち。よくっち。この氷、何?」
 と、ミニアスカが凍りついた木を指して聞いてきた。
「妖気の氷だ。けど、この氷はちょっと違うなっ」
 俺の変わりに、トラが答えた。
「どんな風ににゃあ?」
「なんというか……通常の妖気じゃない」
「たしかに。それに、『光』の力が混じってるし」
「不思議な感じだね」
「……ああ」
「翼乃。ちょっと、技でやってみろよ」
 俺がその木に技をかけようとしたら、焔斬に止められてしまう。
「業火……」
(待て、朱雀)
「……なんだよ、焔斬?」
(その氷は通常の技では、溶けぬ)
「なんじゃそりゃ!!」
 『火』の技じゃ、この氷は溶けないらしい。
「『炎』じゃ、駄目なのか?」
(できるのはできるが。『光』の結界もある)
「じゃあ。どうするんだ?」
『 『光』なら、僕がやる~』
(なるほど。それなら可能じゃ)
「よし!」
 俺が左腕を伸ばすと、チビが腕に乗ってきた。そして、チビの姿が銃へと変わった。
「全員、離れろ!!」
 ジュンが言い、全員、俺から離れていく。
『素早いわね』
 火飛だけは残っていてくれた。
(最小限でやれ)
「いくぜ、チビ!」
『うん!』
「ダーク・フレイムショット!」
 銃から黒い炎球が飛び出し、氷に当たった。
 妖気でできた氷は見る見るうちに溶けていった。
「命中だ!」
『ちょっと、焦げてるわね……まあ。いいわ』
「入れるか?」
(入れる)
「よっしょあ!」
 俺は先に木の中へと入っていった。
『先にいくなっ!』

「わあ、綺麗……」
 木の中は氷で埋め尽くされていた。
『とても、妖気で作ったとは思えないわ』
(気をつけろ。この中にはどんな罠があるか)
「焔斬。俺を誰だと思ってるんだ」
『罠に掛からない神様~』
「そういうことだ」
(……後ろのやつらが心配じゃ)
 その後。
 焔斬が言ったとおりに、後ろの人たちは罠に掛かっていた。
「平気かな?」
「平気だろう」
 ただし、ジュンを除いて。

 奥の部屋と思われる所へと来た。
『一番~』
「そうだね……いた!」
 祭壇と思われるテーブルの上に不二がいた。
「よっちゃん!」
「クリス!」
 クリスは壁に吊られていた。
 俺とジュンは先にクリスの方へと駆け寄った。
「無事か、クリス」
「うん。あれ、皆は?」
「置いて来た」
 俺は氷の輪を溶かして、クリスを助けた。
「何もされなかったか?」
「うん。周ちゃんもだよ」
(なにか、おる!)

 焔斬が言うと、部屋の中心に竜巻が現れた。
「これか!?」
「うん!」

「誰だ、貴様らは」
 竜巻が消えると、黒いマントを着た男が現れた。
「「お前こそ、誰なんだ!!」」
 洋風の服を着て、『誰だ、貴様らは』って言われて、答えるかよ!
「ふん。答える気はない」
(こやつは、西洋に出てくる、吸血鬼とやらじゃ)
 と、焔斬が言った。
「吸血鬼だって」
「なるほど、妖魔か」
「妖魔ではない!」
 と、否定してきた。
「何が違うの?」
「まあ、あれだな。妖魔は『光』を嫌うからな」
 クリスの問いに、ジュンが答える。
「吸血鬼も同じだろ?」
『そうだ、そうだ!』
「俺は特別なんだ」
 なるほど。
 さすが、29日の悪魔だ。
『どうするの、朱雀。黄竜』
 俺とジュンは武器を取り出した。
「やるしかないだろ!」
「攻撃したら、こいつがどうなってもいいのか」
 と言って、吸血鬼が鋭い爪を不二に近づけた。
「「なっ!?」」
「『卑怯だ――!!』」
「こいつを傷付けたくなければ、動くな」
 敵らしい言葉を言ってやがる。
「ジュン。ここは」
「わかってる……」
「武器を直せ。さもないと……」
 人質をとられて、俺とジュンは吸血鬼の言うとおりに武器を下ろした。
「貴様らは背を壁につけろ」
 言うとおりに、俺とジュンは壁に背をつけた。すると、両手首に氷の輪が付けられてしまう。
「お前らは、大人しくしていろ」
 クリス、火飛、チビは俺の近くでじっとしている。
「つめてぇ――!」
「おい、お前。攫った人たちはどこにいるんだ!」
 人が消えた事件の犯人は、多分こいつだろう。
「力を奪って、この部屋のどこかにいる」
「不二をどうするつもりだ!?」
「もちろん。こいつの力も奪うつもりだ。だが……」
 吸血鬼は不二の姿を眺めていた。
「それだけじゃもったいない」
「「「『『はあ?』』」」」
(……)
「こいつは美しい。だから、俺のものにする」

 あー……その台詞、どっかで聞き覚えがあるような……
「一応言っておくけど。その人、男だけど」
「それは知ってる」
「てか。なんでクリスも?」
 ジュンの質問はないと思った。
「ジュン。こいつに答えさせる前に、自分で考えてみてよ」
「なんだよ? 何を考えるんだよ」
「とっても簡単な事だよ♪」
「うーんっ……」
 ジュンは考えて、考えて……そして。
「わからへん」
「ジュン!

「悪かった。俺が悪かったから、教えてくれよ!!」
「いいよ」
 結局、それになるかよ。
「ジュン……子供を産めない夫婦がいます。しかし、その夫婦は子供を欲しがっています。さて、夫婦のとった行動はなんでしょう?」
「って、クイズ!?」
「養子をとる」
 と、吸血鬼が答えた。
「正解!」
「そういう事か――!!」
 やっと、わかってくれたよ、この人。
「子供に相応しいからな」
「いや……それはちょっと無理だろ」
 クリスには、保護者いるし。
『そうだ、そうだ!』
「やかましい!」
 あんたがやかましいよ!
「しかし。この時代にはまともな奴はいないな。あやつの方が手ごたえはあったのだが……」
 たぶん、焔斬のことだろう。
「あの時は完全に力が戻っていなかったから負けたが。会うことがあっても、あの爺には負けないなっ」

 ………カチッ…

 爺って誰のことなんだ?
「……」
 隣が熱い。
 見ると、翼乃の氷の輪が溶け出していた。
「大事なときに入りやがって」
 完全に溶けると、翼乃は吸血鬼の方へ歩き出す。
「あの、傲慢で、世間知らず」
 少しずつスピードを速めていき。
「うるさい爺さんが」
『爺言うな――ッ!!」
 パンチを食らわした。
 よく見ると、翼乃はいつの間にか眼鏡をかけていた。
『久しぶりだのう~。御主」
 焔斬に変わっていた。
「お、お前は、あの時の!?」
『少しは強くなったか?」
 なんか怒っている。
『なんなら、わしが試してやろうか」
 焔斬様、なぜ怒っておいでですか?
『「やれ―、やれ――」』
 エール、送られている。
『心配するな。手加減はせんから」
「ヒイイ――っ!!」
 普通は手加減するだろっと思っているうちに、焔斬は吸血鬼に攻撃を始めた。
『たしか、御主。わしの事を傲慢で、世間知らずで、うるさい爺さんっと言っておったな」
 蹴り・蹴り・蹴り。
『そういうヤカラは、わしは大嫌いなんじゃ」
 パンチ・パンチ・パンチ
『也よりも、わしが一番嫌いなのは……爺って言われることじゃ!!」
 アッパー炸裂。
「やる~」
『ふんっ。いい解消にはなるな」
 そう言って、焔斬は俺のほうに近づいて、氷の輪を溶かしてくれた。
「サンキュー」
『別にかまわん」
「あいつに、なんか言われたのか?」
『それは、朱雀にでも聞け」
 けちだなっ。
「お、おのれ……」
 焔斬の攻撃を喰らったというのに、吸血鬼が起き上がった。
「まだ、生きてるぜ」
『ほっとけ」
 そう言って、焔斬は吸血鬼を踏み歩き、不二の方へと行った。
「あのさ。ほっとけって言っといてさ。ふんでんじゃん」
『おい。動いていいぞ。火飛・チビスケ」
 って。聞いてないし。
『わ~い』
『息が詰まっていたのよ』
「ねえ~。周ちゃんを助けて」
『言われなくても」
 そう言って、焔斬は氷の輪を溶かした。
『おい、起きろ」
「ん……二重声?」
 たしかに二重に聞こえるがよ……
「あれ?」
「なんとか無事かぁ」
『あとは、消えた人間どもを見つけることだ」
 と言いつつ、踏みつけている。
「この部屋ってことは間違いないなっ」
『面倒だ。焼き尽くす」
「それは絶対に駄目!」
 そんなことをしたら、出られなくなるぞ。
「もう少し考えろよ」
『そういうのは頭が痛くなる」

「へんなの」
 ほらみろ。不二に言われてるぞ。
「考えるだけで痛くなるなんて」
『お主こそ。頭だけでなく、心も痛むのではないか?」
 はあ? 何のことだ?
「別に」
『意地を張るのか」
「張ってないよ」
『うそじゃな」
「違うっ」
 何がなんだかわかんねえ――!
「おいっ!」
 と。やっとトラ達がやって来た。
「無事か!?」
「ああ。焔斬が全部やった」
『違わん」
「違う」
「言い争い?」
 俺は後から人たちに今まであった事を話すと、ごく一部の表情が変わってきていた。
「ほへ~」
「はあ……」
「……」
 なんか一人、汗かいてるが。
『違わん」
「じゃあ。何が違うって言うのさ?」
『……言おうか?」
 と。焔斬が手塚を見て聞いた。
「……お願いします…」
『……違うっていうのはな」
 承諾を得ると、焔斬は不二を見た。
「なに」
『あの男は、お前のためにプレゼントを買っていたんじゃ。明日、誕生日なんじゃろ?」
「えっ……」
『その為に、朱雀は選ぶのに付き添ったんじゃ。だから、別にお主の考えておるような事ではない」
 あ~。翼乃が青春台に行くって言っていたのは、誕生日プレゼント選びに付き添ってたわけか。
「じゃあ、僕……」
『早とちりしたわけじゃ」
「……ごめんなさいっ!」
『わしに謝ってどうする。謝るんなら朱雀と、あの男に言え」
 焔斬って、意外に良い奴なんだな。
『どういうことじゃ、黄竜」
「『心読み』使うなよっ」
『だったら、使わせるな」
 うぜーっ。
『言ってないで。隠し部屋でも探しておれ」
「わかったよっ」
 人扱い荒い奴だよ、まったく。

『お主等は、仲直りが先じゃ」
 と。探そうとした手塚と不二をとめた。
『朱雀が言っていたからな」
(いってねえよ)
「ええと…あの……」
「……」
『戸惑う事があるのか」
(戸惑うだろっ!)
『人間という生き物が分からんっ」
 なんだよ、それ。
「その……ごめん」
「いや…おれの方こそ。お前を困らせて」
 「どこにあるの?」
 「こっちじゃねえのか」
 「つめたいにゃあ」
「誕生日。覚えてていたんだね」
 「硬い……」
 「どこかな」
 「さあな」
「ああ」
「嬉しいよ……」
 「喧嘩していたのかな?」
 「痴話喧嘩だよ」
 「そうか?」
「翼乃ちゃんと一緒に選んでた?」
「そういうの、得意と言っていたから」
 「ねえー。ここ硬くないよ」
 「そこか!」
「そうなんだ」
 「おらっ!」
 「やった、ビンゴ!」
「選ばなくてよかったのに……」
 「うわっ、なんだ!?」
 「凍りつけられているにゃあ!」
 「こりゃあ。もう死んでんな」
「僕は……君と一緒にいられれば、それだけで十分だよ」
「……」
 「そうなの?」
 「ああ。凍り付いてから、かなり時間が経っている。それにもう、生命力が……」
「ねえ。明日、一緒にいてくれる?」
「……もちろん。そのつもりだ」
「ありがとう……」
 やっと、二人とも、仲直りした(途中、話が入ったけど)
「おーい。部屋見つけたぞ?」
『そうか……ああ、そうじゃ」
 と。焔斬が俺の懐から袋を取り出し、不二に渡す。
『一日早いが。これ」
「僕に?」
『朱雀が選んだやつじゃ。大切に使え」
「うん」
「鳥さーん。死んだ人たち、どうするの~?」
 うわっ! アスカにナイフを投げるなよ!!
「……くすっ」
 って。なに笑ってるんだよ、二人して。

「……くあ~っ」
 吸血鬼のいた木を燃やした焔斬と入れ替わった俺。
「疲れた――」
 大きく背伸びをしていると、不二が俺の方に近づいてきた。
「翼乃ちゃん」
「なに?」
「その……ごめんね」
「いいよ、別に」
 話は聞いていたから。

「ああ。それと」
「うん?」
「一日早いけどよ……不二、誕生日おめでとう」
「ありがとう、翼乃ちゃん」
「甘えろよ。手塚に」
 驚いておるぞ。赤くして。
 あの男もなぜか、顔を赤くしておる。
「人間の、感情の表れ方だ。これが」
 と、朱雀が語った。

 人間というのは、実に分かりにくく、なぜか面白い生物じゃ――

 あの吸血鬼は、また、現れてくるのだろうか。
 4年に一度、2月29日に。
 現れないで欲しい。
 この、幸せな二人の前に。絶対に。


 翼乃・ジュン・焔斬視点&不二BDで、手塚×不二+翼乃でした。
 2月29日にしかでてこない妖怪設定をしてみました。
アスカ「遅れた事を、許してください」
翼乃「アスカ。あなたが誤らなくていいのよ」



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