春烙

寒いなあ…

咲かない花 5

2008年05月30日 20時38分05秒 | 外伝小説
 なぜ俺は、あんなことを言ったんだ。
 言わない方が良いと思っていたのに……

 自分の手で、終わらせたかったのかもしれない。
 自分からやり出したことだから。

 もう……あいつの苦しむのは見たくない
 あのままでいると、あいつを悲しませるだけだから。


「……まだ、帰ってこない」
 妹から、告げられた言葉。
「水奈兄さんがまだ帰ってこない」
 その言葉が、心に突き刺さるような感じがした。

「ここにいていいのかよ」
 紅く、怒りの目が、俺を睨みつける。

「傷つけるだけで、逃げ出すのか?」
「それでいいと思うのか?」

「違うな。逃げても何も変わらない」

「このままでいると苦しむのは、兄さんの方だよ」

 翼乃の言葉は、重く、何かを突きつけるような感じがしてくる。
 こいつには、何もかも知っている。
「迎えにいきなよ。水奈兄さんが待ってるよ」

 翼乃は――とても不思議な妹だ
 所々で対応でき、
 子供とは思えない事を言う。
「お前は、誰なんだ?」

 そいつは、俺に微笑みかけてこう告げた。

「兄さん達と同じ日に生まれ、特別な力を持ち、神の名前を持つ
 ――泳地兄さんの妹だよ」


 人の心は壊れやすいもの――
 壊れたら、そこでおしまい。
 僕の心は、壊れようとしている。

 会いたい……
 会って伝えたい……
 あなたがうえつけた、この思いを―――



コメントを投稿