春烙

寒いなあ…

幼馴染のでき方

2008年10月13日 01時06分07秒 | 二次創作(少年&小説系)

 俺がまだ4歳になったばかりで、弟が生まれた時のこと。

「泳地。実はお前に、紹介したい子がいるんじゃ」
 爺が俺に言った。爺というのは、俺の祖父だ。
 クソ爺は、俺をとある家へと連れて行った。
「この家はな、わしの友人の家なんじゃぞ」
 そんな事知るか。
「おーい。火宮」
 火宮というのは、この家の苗字だ。
 家の玄関が開き、中から爺と同じくらいの年齢の人と、二人の子供が出てきた。
「やあ、りくも」
 ちなみに、爺の名は『りくも』という。
「こいつが、孫の泳地だ」
 俺の頭をポンッと叩いて、爺は言った。
「そうかそうか。お、そうだ」
 おじさんは、後ろにいる二人の子供を前に出させた。
「こっちは孫の、トキエ」
 おじさんの右手が肩に乗っている女の子。
「こっちは、千一。親戚の子だ」
 左手が乗っている女の子……いや、女装している男の子。
「トキエ、千一君。あっちにいるのは俺の友人で、隣にいるのは泳地君だ」
 おじさんが言うと、二人は俺を見つめた。
 おじさんの家に入ると、爺とおじさんは、俺達をリビングに残して、別の部屋にいった。
「ねえ」
 女装している千一が、俺に話しかけてきた。
「ねえ、名前なに?」
 さっき言っていただろっ。
「泳地」
「俺、千一っていうの。あっちはトキエちゃんっていうんだよ」
 トキエという少女は、ソファーに座ってこちらを見ていた。
「泳地君って。何歳なの?」
「……4つ」
「へえ。俺はもう少ししたら、4つだよ。同い年だね」
「ああ」
 俺は短く答えた。こいつとはどうも、かみ合わないような気がしたからだ。
「トキエちゃんは、2つ。誕生日が早いんだよ」
「そうか」
「千一」
 と、トキエが千一を呼んだ。
「なに?」
 千一はトキエの方へと向かった。
「彼、弟がいるわよ」
「!?」
 初対面なのに、なぜ弟がいることがわかったんだ!?
「へえ~。トキちゃん、見えたの?」
「ええ」
「泳地君。トキちゃんはね、未来が見えるんだよ」
「?」
 未来が見える? たしか、予知能力という物だったか。
「ま、私も弟ができるみたいだけど」
 トキエは俺と同じ、大人びている。
「すごいね~」
 逆に千一は子供だ。
「ねえねえ! 友達になろうよ~」
 俺の腕を掴みながら、千一がせがんできた。
「私も、なりたいわね」
 目を鋭くさせたトキエが言った。あの目は何か考えている目だと思った。
「トキちゃんもいってるからさ~」
 それでいいのかっと、俺はその時思った。
 しかし、その時の俺は、「わかった」と言うことしかできなかった。

 次の日。二人と友達となった事を、俺は病院にいる母さんに話した。
「よかったわね。お友達ができて」
 別に良いとは思っていない。
「みずな~。お兄ちゃんにお友達ができたって」
 母さんは腕の中にいる弟に言った。
 すると突然、水奈が泣き始めた。
「あら。どうしたのかしら?」
 母さんはあやしたが、水奈は泣き止もうとはしなかった。それどころか、さらに泣き出したのだ。
「ちょっと、泳地。あやしてくれない?」
 と言って、母さんは俺に水奈を渡した。
 すると。
「あら。泣き止んだわね」
 俺は泣き止んだ弟を母さんに渡した。だが。
「あらら?」
 母さんに渡そうとすると、水奈はまた泣き出した。
「……ああ。そういう事ね」
 母さんは俺と腕の中にいる弟を見て、何かを納得していた。
「泳地。あなた、愛されているわね」
 愛されている? 誰が、誰に。
「フフッ。良いお嫁さんになるわね」
 そう言うと、母さんは弟の髪を撫でた。

 お嫁さんって、普通、女性に言うんじゃ……
 この時の俺は、まだ母さんが言っている意味を知らなかった。

 また別の日。
 今度は幼い弟と一緒に、別の家へと連れて行かれた。
「この家はな。わしの友人の家なんじゃぞ」
 それ、前にも聞いたぞ。
 門をくぐり、玄関まで行くと、爺はチャイムを鳴らした。
 数分も経たずドアが開かれた。開けたのは、若い男性の人だ。
「どちら様でしょうか?」
「お前さんはたしか、司の息子の維くんじゃったな。覚えておるか? 神 りくもじゃよ」
「あ~、りくもさん。お久しぶりです。元気にしていましたか?」
「おー。まだまだ元気じゃ!」
 いや。もういいから。
 早く死んでくれ。俺のために。
「お前さんらの結婚式以来じゃったのう。会うのは」
「そうですね。お嬢さんは元気ですか?」
「あいつなら元気じゃよ。証拠にほれ。わしの孫達じゃ」
 爺が俺の背中を叩くので一歩前に出て、維さんに頭を下げた。
「ご兄弟ですか? お名前は??」
「えいじ」
「泳ぐ地と書いて、泳地じゃ。弟は水の奈で、水奈じゃ」
「泳地くんに、水奈ちゃんですか」
 ガクッ。なんでちゃん付けなんだ。
「水奈は男じゃよ」
「あっ、そうですか。女の子だと思いまして……すみません」
「いや、いいんじゃよ。水奈はあいつに似ておるんでな」
 いいのか。それでいいのか!
「あ、すみません。どうぞ、中で」
 やっとのことで、中に入れた。
「二人は居間の方にいてね」
 維さんに言われて、俺たちは居間に入った。
 狭い部屋だ。
「家におるのは、お前さんだけか?」
「いえ。母さんがいないだけで、あとは全員いますよ。父さんは今、書斎にいると思いますので」
「あいつはいる場所が決まっておるからのう」
 爺と維さんがいなくなると、俺はソファーに座った。
 水奈は俺の服を掴んで、ぐっすりと眠っていた。どこが女の子に見えるんだか。
「あら……?」
 と。入ってきた所に、女性の人と俺より数センチ低い少年が立っていた。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。どこの子かしら?」
 入ってくると、俺と水奈をじろじろと見ていた。
「どうした」
 別の所から、爺と同年らしい男が現れ、居間に入ってきた。
「あ、お父さん。いつの間にか子供が入ってきたらしくて」
「迷子か」
「さあー」
 おい。迷子じゃないぞ。
「どうしましょうか、迷子だったら。警察に言うわけにはいきませんし」
「そうじゃな」
 迷子じゃないって!
「それにしても、可愛い子ねえ」
 女性の人が手を伸ばして、眠っている弟の頬を撫でてきた。
 その瞬間。
「あらら? 泣いちゃったわ」
 俺は泣き出した弟をあやしていた。
「あやすの、上手なのね」
 何度も泣かれているから。
「ああ、ここにいた」
 とそこへ、爺と維さんがやってきた。
「よお、司。元気にしておったか?」
「あら、りくもさん。お久しぶりですわね」
「元気にしよる。それより、何しに来たんじゃ」
「友人が来たっというのに、冷たい態度をとるんじゃのう」
 はっ。ざまあみろよ。
「せっかく。孫を連れてきたというのに」
「孫だと?」
「もしかして、この子達ですか?」
 女性の人、たぶん維さんの奥さんが俺たちを交互に指して言った。
「そうじゃ。泳地と水奈じゃよ」
「へぇ。泳地くんと、水奈ちゃんですか」
 あんたもかっ。
「水奈くんは、男の子だよ」
「あら。そうだったの」
 驚くか。
「女の子だと思ったんだが……珍しいな」
 珍しいのか!?
「…?」
 さっきから。維さんの奥さんの隣にいる少年が、俺を睨むように見ている。
「あ。この子は、始っていうんだよ」
 俺の様子に気づいた維さんが、自分達の息子を紹介した。
 始という名ってことは、俺と同じ長男だな。
「ほら、始。泳地くんにあいさつして」
 維さんに言われているが。始は黙ったままで頭を下げた。
「泳地くん。時々でもいいから、始と遊んでくれないかな?」
 面倒なことを押し付けくれるよなっ。
「それはよいのう、泳地。友は多い方が良いからのう~」
 まじで、早く亡くなってくれ。爺。

 数日後のことだが。俺はなぜか千と一緒に竜堂家に行かされた。居間で始と初対面を果たした千は、
「友達になろうよ、始ちゃん!」
 と言った。ちゃん付けはないだろう、と思った俺だが。驚いたあいつの顔を見て、思わず笑ってしまった。
「えいちゃんも、いいよね?」
 千は俺の事をなぜか、『えいちゃん』と呼んでくる。逆に俺は、千一の事を『千』と呼んでいる。
 俺はその名で呼ばれるとムカッとするので、千の頭をグーで殴った。
「いたいなぁ~」
 殴られた所を押さえながら、千は俺を見ていた。
「変な名前で、呼ぶな」
「ううっ。ひどいよォ~」
「酷くない」
 泣きまねをする千に、冷たく言い放った始。案外やるんだな。
「君までえ~~!」
「本当のことだろっ」
 てか。耳いたッ。
「二人とも、酷い過ぎるっ。酷い目にあうよ、絶対」
「そちらが遭うのでは」
「俺、わかるもんね! 絶対に、二人は大変なことになる!!」
「「……」」

 その時の俺と始は、千の言う事なんぞ聞き耳持っていなかった。
「あっ。俺と友達になることは、トキエちゃんとも友達になるってことだから」
 千と友達になる=トキエと友達になる……ってことかよ!?
「今度、トキエちゃんに会わせるからね。始ちゃん」
「ちゃんを付けるな」
「まあまあ。減るものじゃないのだから~」
 そう言って、千は指先で始の頬を、チョンチョンッと突付いた。
「突付くな」
 それに怒った始が、千の手を払った。
「いいじゃん。別に」
 千はこりずに始の頬を触り、始は千の手を払っていた。
 二人の光景を、俺は黙って見守っていた。

「……その後。『やっぱり止めとけばよかった』と思った」
「「早く気づけよなっ」」
 神家の屋根上で、翼乃と佑希は泳地の話を聞きながら真夜中の月見を感応していた。
「大体よっ。お前らの祖父さんは、どんな性格してんだ?」
「まあ。お祖父ちゃんは、元気いっぱい性格だったかな」
 翼乃は月見用の団子を手に、佑希に答えた。
「てか。俺は、2~4歳の子供がそんな事を言っていたのかっと、疑問に思うんだけど」
「ああ。たしかに」
 翼乃と佑希は、月を眺めている泳地の方を向いた。
「どうなんだ、泳地」
「さあな。気づいたら、口に出していたんだ」
「トキエさんって。俺と同じで、生まれた時から使えてたんだな」
 と言って、翼乃は団子を味わいながら食べていた。
「しっかしまあ。お前らの出会いって、祖父さんのおかげなんだな」
「フンッ。誰があのくそ爺なんか」
 煙草に火をつけながら、泳地は呆れて言った。
「……泳地兄さんの話を聞いて、分かったことがあるんだけどさ……」
 団子を食べ終わらせた翼乃は、兄と同じ月を見ながらこう言った。
「水奈兄さんって、生まれた時から意識していたんだなっ」
「ああ。そうだな」
 佑希は団子を口に銜えながら、月を拝んでいた。
「それに気づかない、泳地兄さんも何だと思うけど」
「仕方ないだろ。まだ4歳だったんだから」
「お前らの母親は、何でもお見通しなんだな」
 佑希は口に銜えた団子を食べて言うと、泳地と翼乃はなぜか深くため息を吐いたのだった。



 過去・泳地視点&現在・三人称で、幼馴染4人の出会い方でした!
 過去の話で、泳地←水奈+千一+トキエ+始。
 現在では、泳地×水奈+翼乃+佑希です。

 まずは過去ですが。
 数日後、まだ会っていない2人が初対面を果たし。1~2年後、始とトキエに弟(続とジュン)ができ。公園で4人がボール遊びをするのだが――と。
 そこは『神の劇 ~A drama of God~』で紹介いたします(笑)

 そして、現在では。
 翼乃が月見をしている所に泳地と佑希が現れて、3人で見ていたわけで。「そういえば。お前らはどんな風に出会ったんだ?」と佑希が聞いてきて、翼乃も気になっていたので泳地は渋々と語ったのです。



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