春烙

寒いなあ…

鳥族(とりぞく)の怒り

2012年08月20日 15時14分24秒 | 二次創作(少年&小説系)


 天上界にある天晶宮。
「天帝が、私を呼んでいる?」
 朱雀は回路で副官である水読(すいどく)と出会い、天上界を治める天上皇帝(てんじょうこうてい)からの言付けを水読が主君に話していた。
「そうです」
「まさか、黄竜(おうりゅう)様の事ではないでしょうね?」
 朱雀がいやいやしく『黄竜』の名を言った。
「いいえ、違います。それでしたら、本人が直接、朱雀様の所へ来ております」
「水読。様をつけないでって、言ってるでしょ」
「そうでした、朱雀」
 水読という女性は、朱雀の副官でもあり、良き友でもあった。
「じゃあ、一体」
「それは天帝様から聞いたほうがいいでしょう」
「そうするよ」
 そう言って朱雀は水読と別れ、回路を歩いた。
 王の間に着くと、扉を開けて中に入ると、朱雀は階の下まで歩み、ひざまずいた。
「十二天将、四神の朱雀。ただいま参上しました」
「ふむ。ごくろう」
 王座に座っている天上皇帝が、段差のせいで姿の見えない朱雀に言った。王座の隣には、第一王子であり『黄帝(おうてい)』の名を持つ黄竜が腕を組んで立っていた。
「今回は何の御用で」
「朱雀よ。お主は雷鳥族を知っておるか」
「は。我が鳥族の中で、雷を操る種族でございますが。何か」
「実は、雷鳥族の長から伝達があって。雷鳥族の王子、雷鴇がいなくなったと言ってきたのじゃ」
「雷鴇が、ですか!?」
 朱雀は驚いて、立ち上がり王座を見た。
「そんな……」
「事実じゃ。お主は雷鴇と親しいと聞いておるのだが」
「雷鴇は私にとって、弟のような存在。それなのに、行方をくらましてしまうとは!」
「朱雀がこんなに怒るとは……」
 貴重なものを見たっと、黄竜は怒りの炎を放つ朱雀を見つめていた。
「それでじゃ、朱雀。雷鴇と迎えに行ってはくれぬか?」
「もちろん、そのつもりです。もし、雷鴇に傷一つでもあったら、その時は……」
 朱雀は怪しげな笑みを浮かべながら笑っていた。
「黄竜よ……お前は朱雀のこの笑みを見てどう思うのじゃ?」
「綺麗だ」
 天帝が自分の息子に聞くと、考えもせずに即答で答えが返ってきた。
「目がおかしいのではないのか」
「俺の目は、おかしくない」
 黄竜は胸を張って言った。
 なお。
怒りの炎を放っている朱雀と、彼女を綺麗だっと言う黄竜は恋人同士である。
「黄竜。朱雀が暴れぬよう、螣蛇(とうだ)とともに一緒にはくれぬか。今十二天将で空いておるのが奴だけなのでな」
「ああ。それはいいがよ、親父。雷鴇は今どこにいるのか分かっているのか?」
「それがの。雷鴇は今、月にある水晶宮(すいしょうきゅう)におるのじゃ」
「月だと――!?」
 黄竜が驚くと、朱雀は怒りのオーラをといて天帝に聞いた。
「月に宮があるのですか?」
「そうじゃったな。朱雀はまだ、あ奴らに会っておらんだったな」
「あやつら?」
「親父! 今回の件、俺と螣蛇だけで行く!! 朱雀が行ったら、えらい目に会わせられるぞ」
「私がえらい目にってどういう事でしょうか、黄竜様?」
 朱雀は黄竜に向かって笑った。
「天帝。つきにあるという水晶宮とは、どのような人がいるのですか?」
「ふむ。実は」
「やめろ、親父! 朱雀に竜王(りゅうおう)のことを話すな!!」
「ほう。竜王という者がいるのですね」
「あっ……」
 自分から言ってしまった黄竜は、愕然としてしまった。
「それで。竜王というやからは、どんな人なのですか?」
「竜王というのは、竜種の者でな。お主の兄、青竜(せいりゅう)と同じ種だ」
「それでしたら、二兄もお呼びすればものの」
 朱雀が「二兄」と呼ぶのは、同じ四神の一人・青竜のことをいう。ほか、「一兄」と呼ぶのは四神の長・玄武(げんぶ)、「三兄」と呼ぶのは、四神の一人・白虎(びゃっこ)のことという。
「それがの……一応呼んだのだが、拒否されて」
「それを断ったのは、玄武だったんだと」
「……想像はついております」
 朱雀は頭に重いものを乗せたかのように下げていた。
「竜王というのは、四海竜王のことじゃ」
「東海(とうかい)青竜王、南海(なんかい)紅竜王(こうりゅうおう)、西海(さいかい)白竜王(はくりゅうおう)、北海(ほっかい)黒竜王(こくりゅうおう)。この4人を、四海竜王っていうんだ」
「兄弟という事と、考えてよろしいので?」
「ああ。俺は何度か会った事はある。青竜も、十二天将になる前は仲良かった」
「そうですか。水晶宮の住人は四海竜王で、雷鴇はそこにいるということですね」
「……そうじゃ」
「わかりました……では。雷鴇を迎えに行くため、水晶宮へと行って参りますので」
 朱雀が笑顔で言うと、黄竜は鼻から血を出して倒れ、天帝以下数名は身体を震わせていた。


 月。
「なっ、なぜ鳥族のものが、水晶宮(すいしょうきゅう)にいるのよ!?」
 竜王のいる水晶宮にやって来た太真王夫人が、黒竜王と遊んでいる小さな羽を持つ鳥族を見て驚いていた。
「気づいたら、水晶宮の中にいました」
「しかも雷鳥族よ!」
「あの子を知っているのか?」
 青竜王と紅竜王は驚いている太真王に、雷鴇の事を聞いていた。
「名は雷鴇。鳥族の中で雷を操る、雷鳥族の王子よ」
「雷鳥族なら知っています。青竜から聞いていますので」
「雷鴇は時期、雷鳥王になるお方。たとえ平和条約を交わした種でも、戦闘するわよ」
「大哥……」
 とそこへ、白竜王が暗い顔をして現れてきた。
「どうした、叔卿」
「天上界にいる青竜から連絡があった」
「あら。青竜様から?」
「雷鳥族の代わりに、十二天将が雷鴇を迎えに来るんだとっ。それも、黄竜殿も一緒だと」
「黄竜様もですか。それにしても、叔卿。何かあったのですか?」
「青竜にいろいろと聞かされたから、なんか疲れた……」
 白竜王は青竜から、天上界の暮らしや十二天将の事などを約数時間聞かされていたらしい。
「元気のようですね、あの人」
「あ、それと。迎えの一人が青竜と同じ四神だから、気をつけるようにだと」
「玄武殿はありえないな。あのお方は、天上皇帝さまの命を聞かないようだし」
「青竜もないでしょう。差し詰め、白虎殿が来るのでしょう」
「大哥、二哥。四神は四人いるんだけど」
「朱雀殿か」
「そういえば。朱雀様がお替わりになったって、聞いたわよ」
 その時。黒竜王と遊んでいた雷鴇が、4人の所へ飛んできた。
「朱雀お姉さまがどうしたの~?」
「迎えに来るんだと。多分」
「わ~い。お姉さまに会える~~」
 雷鴇は喜びながら、周りを飛んでいた。
「よかったね」
「多分だからなっ」


(途中経過)



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