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安倍政権の負の遺産を解消するための少数与党体制を理解できない政治家とメディアの知的レベル (抄)

2025-08-03 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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安倍政権の負の遺産を解消するための少数与党体制を理解できない政治家とメディアの知的レベル


  


 第27回参議院選挙はフーテンの想定とほぼ変わらない結末になった。与党は過半数を取れず、しかし石破総理は続投を表明する。そして野党第一党の立憲民主党は伸びない。少数与党体制は継続されるが、野党内部の軋みが大きくなり、リベラル勢力は退潮する。それがフーテンの事前の想定である。

 ところがメディアは与党が目標とした50議席に3議席足りなかったことを、与党過半数割れというところだけに着目し、続投表明した石破総理を非難して、あたかも民主主義が棄損されたかのように喧伝している。だが騒いでいる政治家も野党も日本の政治が大転換したのは昨年の衆議院選挙から始まった少数与党体制によることに気づいていない。

 昨年の衆議院選挙で与党と野党が政権交代を目指した政治は終わったとフーテンは考えている。少数与党体制によって自民党政権はひたすら野党の要求を受け入れる以外に政権運営の方法はない。一方の野党はそのことによって多様な民意を政権に飲ませる責任を負った。こうして「熟議の国会」が始まったのである。石破総理は続投表明によって野党に頭を下げるしかない役割をこれからも続けていくことになる。

 日本政治を大転換させた昨年の衆議院選挙は仕組まれたものである。何のために。安倍政権の負の遺産である「一強他弱」体制の歪みを是正するためである。かつての55年体制は政権交代を狙わない野党が国民の目を欺いて自民党権力と戦うふりをしながら、自民党とは水面下でしっかりと手を握り、米国の富を吸い上げるために協力する体制だった。

 その結果、日本は高度経済成長をなし遂げ、85年に世界一の債権国になり、米国が世界一の債務国に転落した。そこから米国の逆襲が始まる。しかし憲法9条で軍事を米国に委ねた日本は米国の言われるままになるしかない。その日本に米国は政権交代のない政治構造は民主主義でないと迫ってきた。

 それを受け90年代初頭に起きた「政治改革」は政権交代可能な政治構造を作るための作業だった。中選挙区制をやめて小選挙区比例代表並立制を採用し、自民党政権を下野させることに成功したが、55年体制に安住してきた野党は政権運営のノウハウを知らず、強力な官僚機構をコントロールすることができずに未熟さを露呈した。その反動が安倍政権を誕生させて「一強他弱」体制をもたらした。

 野党が「他弱」になったのは、小選挙区比例代表並立制が英国や米国の小選挙区制とは全く異なり、比例代表に重心がある制度だったからだ。そのため小党が次々にできて野党は全くまとまることのできないバラバラ状態になった。

 比例代表制を導入する欧州などの国々は選挙で政権の枠組みを作ることができない。過半数を超える政党が誕生することは少なく、多党化した政党が選挙結果を受けて連立の作業に入り、選挙から2,3か月後に連立の枠組みが決まることもある。従って有権者が最も支持した政党の政策がそのまま実行されることにならない。キャスティングボートを握った小政党の政策が重視されることもある。

 しかし安倍政権下では野党はただバラバラの状態で、対する自民党は選挙で旧統一教会の組織活動に支えられ、しかも解散・総選挙を頻繁に行うことで権力を強め、麻生太郎副総裁が「ナチスを真似たらどうか」と口走ったように合法的に独裁政権を目指すようになった。それが「モリ・カケ・サクラ」に代表される権力の私物化を招き、そのため事件にならないよう検事総長人事に介入したことから検察の怒りを買った。

 一昨年、検察が長年見逃されてきた安倍派の裏金事件を摘発したのはそのためである。それは自民党に大打撃を与えたが、裏金スキームの首謀者とみられる森喜朗元総理は真相を明らかにすることなく、逆に岸田総理を辞めさせて小泉進次郎氏を総理に担ぎ、解散・総選挙に打って出て禊を済ませる計画を立てた。

 その動きを逆手にとって岸田総理は退陣し、自民党総裁選を行うことで反安倍の筆頭である石破茂氏を総理に就任させ、同時に自民党を少数野党に転落させて、かつて日本の政治が経験したことのない少数与党体制を作ったのが、昨年の衆議院選挙だった。

 この選挙を仕組まれたとフーテンが考えるのは、森山幹事長が選挙で非公認にした裏金議員に選挙直前に2千万円配ったことである。これで国民の怒りは爆発し、配られた裏金議員も顔面蒼白になった。その結果、思惑通りに自公は過半数割れを起こし、その状況を耐える役割を石破総理は負わせられたのである。

 少数与党体制は自民党で権力基盤の弱い石破総理を引きずりおろせなくする絶妙の方法だ。野党に頭を下げるしかない総理になりたい人間がいるはずはないからだ。それは同時に一強体制とは真逆の与野党の協力関係を作り出した。

 自民党の総理がひたすら野党に頭を下げることで与野党が政策に責任を共有する体制が生まれたのである。55年体制には「事前協議制」という仕組みがあり、官僚が作った法案は国会に提出される前に自民党の部会で審査され、自民党議員には法案修正行う機会が与えられていた。

 そして事前審査を受けた法案が総務会で全会一致で決定されると、自民党議員には党議拘束がかかる。それから法案は閣議決定され、国会に提出されていた。自民党議員に党議拘束がかかれば法案成立は決定的である。従って国会での与野党論戦は実は意味がなかった。そのため野党は審議拒否をするか、スキャンダル追及して国民にアピールするしかなかったのだ。

 しかし少数与党体制では自民党の事前審査より野党の事前審査を尊重しなければならなくなった。これは革命的変化である。つまり官僚と自民党が結託してきた日本の政治は昨年の衆議院選挙で大転換を遂げ、今回の参議院選挙はその延長に位置付けられた。政治家やメディアは参議院選挙を「政権選択選挙」と言ったが、実は自民党が過半数を割ってもこれまでと変わらぬ政治が続くだけである。

 自民党の中にはそうしたことを理解せず、石破総理の続投を「とんでもない」と怒りを露わに「石破おろし」によって総裁選に持ち込もうとする議員もいる。それなら誰が候補に手を挙げて総裁選に出馬するのか。前回の総裁選を振り返れば、決選投票で石破総理に敗れたのは高市早苗候補だった。手を挙げるべき筆頭は彼女だろう。

 高市候補は議員票では支持がそれほどではなかったが地方票で圧倒的な強さを見せた。旧統一教会や日本会議などの組織票のためだとみられる。仮に石破総理が退陣を余儀なくされ、総裁選が行われるとすれば両院議員総会になるだろうから高市候補は強みを発揮できないが、それでも当選すると仮定すれば、高市総裁は総理指名選挙で立憲民主党の野田代表と争うことになる。

 今回躍進した国民民主党や参政党が野田代表に投票するとは思えない。維新も同様だ。すると高市総理が誕生する。だがこの総理は野党第一党の立憲民主党に頭を下げなければ何も決められない総理になる。立憲民主党と高市候補の主張は水と油である。それでも高市総理は頭を下げるしかない。それができるか。

 高市総理がそれを避けるには連立を組むことだ。高市総理と連立を組める野党の候補と考えられるのは参政党だ。選択的夫婦別姓や同性婚に反対の主張は一致する。外国人政策でも一致できるだろう。

 ・・・・・。



       この記事は有料記事のため抄録です。
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