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阪神間で暮らす-4

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16年前の麻生太郎氏より重い「結果責任」も続投明言 石破氏進退問題は自民「公開権力闘争」へ

2025-07-28 | いろいろ



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中山知子 取材備忘録 16年前の麻生太郎氏より重い「結果責任」も続投明言 石破氏進退問題は自民「公開権力闘争」へ


  


 7月20日の参院選で大敗し、自民党は結党以来初めて衆議院、参議院でともに少数与党に陥った。当然ながら、石破茂首相への退陣要求が自民党内で勢いを増している。政権を手放す「下野」をしてでも退陣を、と求めるような動きまである。2度の野党陥落をへても復活し、政権を担うことへの執念が活力の1つでもある自民党には考えられない動きだが、それだけ石破首相の続投を容認できない空気が、党内に漂っている。ただ石破首相は続投の方針を明言。「退陣号外」が配られたり、非主流派主導による「石破おろし」が起きていることに、怒りをみせているとも伝えられる。

 これまで、参院選で敗れてすぐ辞任した首相はいる。リクルート事件や初めて導入された消費税が影響した宇野宗佑氏や、「恒久減税」をめぐる発言が物議を醸した橋本龍太郎氏は、敗北から時を置かず職を退いた。今回、石破首相にとっては、昨年の衆院選、6月の東京都議選に続く3連敗で、退陣論拡大はある意味、仕方ないかもしれない。ただ、大苦戦が指摘されていた選挙戦中も、一部で「石破首相は辞めない」との観測もあった。首相にとっては、2008年の総裁選初立候補から昨年の5度目の挑戦で当選するまで、16年かけて上り詰めた立場。それでも首相の進退問題は、自民党内の分断を招きかねない状況だ。

 その「石破おろし」の今後へ向けて1つのヤマ場になるのが、7日28日に開かれる両院議員懇談会。執行部の面々がひな壇に並び、出席議員が意見をぶつけていく。批判が飛んでも執行部は受け止めるだけで、「ガス抜き」といわれる。同様に敗北した昨年の衆院選後にも開かれ約3時間、60人が意見を述べ、首相への批判も相当出たが、それ以上事態は進まなかった。その果てに今年6月の東京都議選、そして今回の参院選の大敗だ。たまり続けた不満や怒りが爆発した結果が、今の石破おろし拡大につながっていると感じる。

 時の首相に対する両院議員懇談会で思い出すのは、2009年7月、当時政権を率いながら、窮地にあった麻生太郎首相が出席した会合。会合前、麻生氏の衆院解散戦略に反対する議員が、懇談会と違って議決権のある両院議員総会の開催を求め、署名活動が行われた。今回と流れは同じだ。この時、直接面会して退陣を迫ったのが当時農相だった石破首相で、今回16年の時をへて「ブーメラン」になっていると言われるゆえんだ。当時の石破首相を含めた「反麻生」議員の署名は、「総会」開催要求に必要な党所属国会議員の3分の1超が集まったが、執行部側が名簿の点検に着手すると署名を取り下げる議員も出たりして、最終的に「総会」開催に至らなかった。開かれたのは「懇談会」だったが会直前、麻生氏は解散総選挙の方針を表明。懇談会はガス向きにもならず、約30分で終了した。

 この時、麻生氏は涙ながらに結束を求め、批判的な意見もほぼ出なかった。表向きの「結束」を演出して自民党は衆院選に突入したが、歴史的大敗で政権を民主党に明け渡し、麻生氏は退陣した。当時の記事には「親麻生でも反麻生でも一枚岩になれず、抗争に明け暮れる自民党。都議選惨敗後から続く混乱は結局何も生み出さず、有権者の不信感だけが残りそうだ」と書いたが、今の自民党の姿にどこか重なって見えてしまう。

 今回、当時と状況が違うのは、選挙の結果がより深刻ということと、当面の間、国政選挙がないこと。昨年の衆院選から東京都議選、参院選と3連敗した石破首相は、当時の麻生氏より重い「結果責任」を突きつけられているのは確かだ。

 それでも24日に石破首相に面会した自民党の鈴木宗男氏によると「総理は淡々としていたが、目力というか、気合が入っていた」という。日米関税交渉の今後を念頭に「国益を損ねてはいけない。国民生活を守るのが私に与えられた最大の使命という強い決意と覚悟」を漂わせていたそうだ。首相続投を求める異例の「激励デモ」も開かれた。

 「出処進退は政治家個人の判断」と言われる。特に、時の首相にとっての進退判断は孤独で重いが、今の石破首相には「石破おろしが強まれば強まるほど、踏みとどまろうとするだろう」(自民党関係者)との見方が強い。その見立てを聞いて思い出すのが、首相就任直後の2010年7月の参院選で大敗しながら、その翌年3月に発生した東日本大震災や原発事故への対応優先を理由に、辞任要求を突っぱね続けた民主党政権の菅直人首相。早期退陣を求める声は与野党に広がったが菅氏は応じず、報道でも「驚異の粘り腰」「1人『菅』軍」とやゆされた。退陣は、参院選から1年以上が過ぎた2011年9月だった。

 石破首相自身は選挙敗北の責任は自覚しつつ、関税交渉の今後の対応などを、自身の「使命」と感じているともいわれる。首相の意地と、それを認めない「石破おろし」のぶつかり合い。「ここまで露骨なのは久しぶりでは」との声もある自民党の「公開権力闘争」が、本格的に始まる。

 【中山知子】(ニッカンスポーツ・コム/社会コラム「取材備忘録」)



◆中山知子(なかやま・ともこ)
  1992年に日本新党が結成され、自民党政権→非自民の細川連立政権へ最初の政権交代が起きたころから、永田町を中心に取材を始める。1人で各党や政治家を回り「ひとり政治部」とも。小泉純一郎首相の北朝鮮訪問に2度同行取材。文化社会部記者&デスク、日刊スポーツNEWSデジタル編集部デスクを経て、社会/地域情報部記者。福岡県出身。青学大卒。
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 2009年に退陣したアベ首相(当時)に対して辞職を迫ったのが石破、そして麻生に対しても反麻生勢力を集めたのが石破、それじゃ麻生が反発するのは間違いない。ブーメランと言われるが二度もやったら当然反響は強いだろう。




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トランプが「対ロ圧力路線に転換した」というのは本当なのか (抄)

2025-07-27 | いろいろ

ジャーナリスト田中良紹氏のヤフーニュースのコラムより

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トランプが「対ロ圧力路線に転換した」というのは本当なのか


  


 トランプ米大統領は14日、NATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長と会談した際、ウクライナとの停戦交渉に応じようとしないロシアのプーチン大統領に対し「失望した」と激しく非難し、ウクライナに大量の武器を送ると同時に、ロシア産原油を購入する国に100%の関税を課す考えを表明した。

 西側メディアはこれをプーチン大統領に融和的だったトランプ大統領の対ロシア圧力路線への転換として歓迎する記事を掲載している。しかしこれが本当に対ロ圧力路線への転換なのだろうか。西側メディアはいまだにウクライナ戦争をプーチンの侵略という視点でしか見ることができず、トランプの真意も理解していない。

 ウクライナ戦争の停戦交渉に乗り出したトランプはプーチンと何度も電話会談を行っている。それもかなり長い時間をかけた会談だった。そこでプーチンが繰り返し表明したことは「問題の根本原因の除去がなければ戦争は終われない」ということだ。

 「問題の根本原因の除去」とは何か。それを西側メディアは「ウクライナのNATO加盟断念」と解説している。しかし冷戦後の米国政治を見てきたフーテンは、そんなことではないと考えている。第二次大戦後の米国外交の基本を覆したクリントン大統領の「NATO東方拡大」こそプーチンの言う「問題の根本原因」なのだ。

 第二次大戦後の米国外交を作成した外交官ジョージ・ケナンは「NATO東方拡大」を「米国が冷戦後に犯した最大の誤り」と厳しく批判した。しかし当時の米国には共産主義に対する民主主義の勝利を喜ぶ風潮が蔓延し、共産主義に対して好戦的なネオコン思想が台頭しているさなかだった。ケナンの批判はそうした風潮の中で無視された。

 一方、ソ連共産主義を排して資本主義を取り入れたロシアのエリツィン大統領は格差拡大と経済混乱に直面し、大統領職をKGB出身のプーチンに譲った。プーチンはエネルギー産業を国有化し、資本主義を国家資本主義に転換して経済混乱を収め、外交では米国に協力する姿勢を打ち出した。

 ブッシュ(子)政権の「テロとの戦い」に全面協力すると同時に、ロシアを敵視するNATOに加盟する努力を行い、将来の加盟を約束された準加盟国となった。ロシアがNATOに加盟すれば冷戦時代以来の敵対関係は解消され、NATOは事実上無意味になる。ところがブッシュ政権は「NATO東方拡大」をやめようとせず、ロシアが絶対に認められないと何度も表明してきたウクライナとグルジアのNATO加盟を実現しようとした。

 プーチンが融和から対決姿勢に転じたのは大統領就任から8年後の08年である。フーテンの目から見るとプーチンを追い詰めたのは米国で、理由は大統領選挙での票集めのためだった。クリントンは再選が危ぶまれた大統領選挙で東欧移民の票を獲得するため「NATO東方拡大」に舵を切った。妻のヒラリーも女性初の大統領になるため共和党保守派の支持を得ようと「リベラル・ホーク(鷹)」になり、プーチンを悪の権化と強調した。

 つまりウクライナ戦争は根本原因をたどればクリントンの「NATO東方拡大」に行きつく。それをトランプは理解しているはずだ。メディアや識者はトランプを「予測不能」と言うが、フーテンは極めて分かりやすい大統領だと思っている。トランプはクリントンがやったことをすべて否定しようとする大統領だからだ。

 クリントンは大統領に就任するとまず自身のレガシー(遺産)を作るため、南北朝鮮統一を考えた。しかし東アジアに10万の米軍を配置する必要があるとの進言があり、北朝鮮を危険な国にしておくことにして、一転してイスラエルとパレスチナの「二国家共存」を合意させ、この「オスロ合意」を自分のレガシーにした。

 だからトランプは一期目で北朝鮮の金正恩と2度も会談し、クリントンが放棄した南北朝鮮統一を実現しようとした。政権内のネオコンに妨害されて成功しなかったが、本人はまだ意欲を持っていると思う。そしてクリントンのレガシーである「二国家共存」とは真逆の「二国家分離」、すなわちパレスチナ人を移住させて別の場所にパレスチナ国家を建設しようとしている。

 クリントンは民主主義のイデオロギーで世界を統一しようとする米国の一極支配を考えた。そのためにはまず日本との経済戦争に勝つ必要がある。製造業で日本に敗れた状況を転換するため、IT革命を起こして米国産業を情報と金融に特化する一方、中国を国際経済に招き入れ、中国を「世界の工場」にして日本に対抗させた。その結果、米国の製造業は見捨てられ、ラスト・ベルト(さび付いた工業地帯)の白人労働者は悲惨な状況に陥った。

 トランプを大統領に押し上げたのはその悲惨な労働者の怨念である。だからトランプは米国が一国で世界を支配しようとは考えない。クリントンが経済大国に押し上げた中国を最大の競争相手としながらも、中国やロシアと共存する多極構造の世界を作ろうとしている。そして米国の製造業を復活させるためにあらゆる手を講じようとする。世界を震撼させている関税政策もその一つだ。

 そこでトランプの「対ロ圧力路線への転換」である。トランプはウクライナがロシアの激しい空襲に見舞われていることから地対空ミサイル「パトリオット」をNATOに購入させ、それをウクライナに提供することにした。これは米国が「世界の警察官」ではないことを意味する。

 「世界の警察官」ならば国際法を犯した国や民主主義を破壊する国に対して戦争するのは当然のことだ。しかし「世界の警察官」でない国は自国の国民や領土に被害が及ぶことになれば戦争をするが、そうでなければ「正義のため」の戦争はやらない。トランプは「世界の警察官」をやめると宣言して大統領になった。ロシアと戦争する理屈は立たないのである。

 今回のトランプの兵器提供ただのビジネスだ。ウクライナを助けたいNATOがいるのでビジネスとしてNATOに兵器を売る。それをNATOがウクライナに無償で提供する。負担はNATOが負う。米国はロシアと敵対していない。ウクライナ戦争を欧州の戦争にして米国は戦争から距離を取る。

 これはトランプが「NATO東方拡大」をウクライナ戦争の根本原因と考えていることを示唆している。つまりトランプは心の中では「NATO不要論」を持ちながら、現実にはNATOがウクライナを支えているので、それをやらせてNATOの負担を増やし、いずれはNATOが継続できないようにしている。

 そもそもNATOがおかしいのは、ウクライナをNATOに加盟させる気がなく、しかしウクライナがロシアに敗れれば自分たちが次に侵略されると考えて支援を続けていることだ。加盟させれば本格的に戦争しなければならないのでそれは避けたい。しかしウクライナが負けない程度の支援はするというNATOの姿勢が戦争を長期化させている。

 トランプはその間隙でビジネスをやっただけだ。しかしNATOもウクライナのゼレンスキー大統領もトランプに感謝の言葉を贈らざるを得ない。今後NATOの中では負担の割合をどうするかで様々な駆け引きが繰り返され、決して結束強化の方向にはならないだろう。

 そしてより問題なのはロシアの原油を購入する国に制裁として100%の関税をかけるという話だ。50日以内に停戦しなければという条件がつく。トランプの表明から50日後は9月2日に当たる。9月2日は第二次大戦に敗れた日本が東京湾に浮かぶ戦艦ミズーリ号の甲板上で降伏文書に署名した日である。

 中国は9月3日を「抗日戦勝記念日」として今年は天安門広場で軍事パレードを行う予定である。そこにはロシアのプーチンが招待されているほか、トランプも招待されると伝えられている。もしトランプが招待に応ずれば、米中ロの3首脳が一堂に会する画期的な場が出現する。

 ・・・・・。



       この記事は有料記事のため抄録です。
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選挙後に待つ日米交渉という難題 石破首相「なめられてたまるか」発言を批判する人たちはアメリカと対峙できるのか

2025-07-26 | いろいろ




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選挙後に待つ日米交渉という難題 石破首相「なめられてたまるか」発言を批判する人たちはアメリカと対峙できるのか

政官財の罪と罰


 古賀茂明




 参議院選挙で与党が大敗し、今後の政局がどうなるかに関心が集まっているが、もう一つ、目の前に迫った課題として、8月1日に交渉期限が定められた日米関税交渉がある。

 先週配信の本コラム「なぜか『台湾有事』をどの政党も口にしない異常事態…参院選は隠れた『戦争絶対反対派』の政治家を発掘して当選させよ」の最後に、「『何がなんでも戦争しない』という立場を取るためには、アメリカとの関係を根本から見直すことも必要だ」と書いた。

 日米交渉は、今後の政局との関係でも重要な要素となる。そこで、今回は、「日米関係の抜本的見直し」をテーマにしてみたい。

 今、「戦争しない」と言うと、すぐに「お花畑」と批判される。戦争しないと言っているだけで防衛力拡大をしなければ、逆に戦争を招くと言うのだ。その前提として、日本の周辺国は「恐ろしい国」ばかりで、いつでも日本を攻撃しようと虎視眈々と狙っているという状況認識がある。

 ロシア、北朝鮮の話もあるが、焦点は、先週も取り上げた中国と台湾有事だ。

「独裁者習近平は2027年までに台湾を武力攻撃するが、その次は沖縄だ」という脅しが自民党保守派やネトウヨなどだけでなく、マスコミからも流布される。こうした「怖い」「危ない」という情報に日々接する日本の国民は、知らず知らずのうちに、演出された「危機」を現実のものだと思い込むようになった。

 その結果、日本の防衛費の拡大を「この厳しい環境の中ではやむを得ない」と受け入れる人が増えていく。

 この厳しい環境下で、アメリカは日本を守ってくれる大事な同盟国だから、日米関係は、日本外交にとって最も重要な関係だと言われて、異論を挟むのは難しくなった。

 さらに、アメリカに日本を守ってもらうためには、アメリカを怒らせてはいけないという対米忖度論に対しても、その通りだということになる。

 アメリカに日本を守ってもらうには、日米安保条約が命綱で、これを有効に機能させるための日米地位協定は、米側優越に見えるが、やむを得ないことだと言われれば、仕方なく頷く人が多い。

 仮に地位協定の理不尽さに気づき、沖縄の基地負担の過大さに不満を感じても、アメリカとの関係があるから変えるのは無理だと言われると、黙ってしまう。

 こうしてアメリカ依存は絶対だという意識は日本人の思考を完全に支配するようになった。まるで、日本人のDNAの一部になってしまったかのようだ。人々は、アメリカは日本を守る守護神で、そのおかげで日本人は戦後一度も戦争をすることなく平和な日々を過ごすことができたと信じ、感謝さえしている。

 アメリカは、太平洋戦争で非人道的な民間人への無差別爆撃や核爆弾投下という戦争犯罪を行った。だが、そんな負の歴史は綺麗さっぱりと忘れ去られている。思い出すのは終戦記念日の時だけだ。

 アメリカが行った日本への数々の不合理な経済的要求もその時だけは国難だと騒ぐものの、1年もしないうちに忘れてしまう。


【写真】日本に対する関税を通知する書簡を公表する米大統領報道官がこちら

    



アメリカ=善、中国=悪という定式

 アメリカ=善、中国=悪という命題は、もはや寸分の疑いも入る余地がない「真理」に昇華した。

 先週の本コラムで指摘したとおり、選挙の結果や今後の政局の展開がどうなるかにかかわらず、外交安全保障政策については、基本的にこれまでと同じ方向性が維持されそうだ。

 ということは、台湾有事=日本有事と考える多くの自民党議員とそれを肯定する多くの野党議員が、台湾有事が起きる前提で、それに備えた「戦争の準備」を着々と進めるということを意味する。

 私は、台湾有事は基本的に起こらないと考えてきた。また、それを起こさないようにすることも決して難しくないことを先週の本コラムで述べた。日本が、台湾有事において参戦しないこと、在日米軍基地の使用を米軍に認めないことを宣言してこれを実行すれば、アメリカは、日本抜きでは中国に勝てないので、やむを得ず、なんとかして台湾有事を起こさないように外交努力を行わざるを得なくなる。つまり、日本に決定権があるのである。

 だが、そこには私たち日本人の心の中にある高い障壁がある。すなわち前述したアメリカ=善、中国=悪という定式とアメリカに守ってもらうためにはアメリカを怒らせてはいけないという「無条件忖度の論理」である。

 日本人の多くはこれを信じ込まされている。マスコミも同じ状況だから、およそこれを壊す手段が見つからない。

 その結果、中国では、日米が台湾有事に備えるために行う軍事演習や、台湾へのアメリカの最新鋭武器の売却などを見て、日米が共同で台湾の独立を企てているという恐怖感が高まっている。日米と中国の間で恐怖と憎悪の拡大スパイラルが生まれ、本来はあり得なかった台湾有事が起きる可能性がある。

 先週紹介したが、7月9日に始まった米空軍による日本周辺における大規模演習「レゾリュート・フォース・パシフィック」に日米やその他の同盟国から300機超の戦闘機が参加すると伝えられているが、これは明らかに中国との戦争を念頭に置いたものだ。

 7月9日と10日に中国軍機が自衛隊機に異常接近したと伝えられたが、これは今回の演習に対する抗議の行動である。しかし、日本のマスコミは、単に中国側が何の理由もなく危険な行為を仕掛けてきたと伝えている。

 背景を解説すれば、日米の行動が中国の反応を呼んだことがわかるのだが、それを報じないから、何も知らない日本国民はさらに中国への嫌悪感を強めるという結果を生んでいる。

 こうしたことは日常茶飯事で、もはや止めようがない。それどころか、アメリカや日本の一部の保守政治家には、こうした両国間の不信拡大のスパイラルを狙っていると疑われる人たちがいる。



石破茂首相「なめられてたまるか」発言

 その先にあるのは偶発的な日中間の衝突だ。それを機に、アメリカの対中最強硬派が、「台湾有事」だと叫び、先週紹介したヘグセス国防長官の言葉のとおり、日本がその最前線に駆り出される。そのシナリオが見えるのに、日本の国民はそんなことは無想だにしない。マスコミもせっせと中国批判の記事を書いては、嫌中意識に染まった国民の歓心を買っている。

 そうした状況を見ると、日本が率先して台湾有事誘発に貢献することまで想定せざるを得ない。そして、それを避ける道がない。

 絶望的な状況だ。

 しかし、そこに微かな希望の光が差してきた。

 それは、トランプ米大統領やその側近たちの「驕り」である。

 彼らは、日本人は、アメリカに無条件に従属していると考えている。日本側もそう思わせる言動を続けてきた。トランプ関税が発表されても、「報復しない」と宣言した。アメリカは、関税協議では、期待をもたせたかと思えば日本を突然悪者扱いする。報復すればただでは済まないと脅しをかける。日本に原爆を落としたことも正当化する発言をして日本人の神経を逆撫でする。日本は西太平洋で、最前線で戦うと事実上の命令を発する。

 これらの行為は、日本を独立国とはみなしていないことを示し、日本はアメリカの奴隷であるという認識に立ったものだとしか考えられない。

 だが、それでも、日本は、米側と「ウィンウィンの結果を目指して誠意を持って交渉する」と従順な姿勢を変えない。

 中国もEUもカナダもインドも対米報復を実施したり、その予告をしたりして闘っている。日本が馬鹿にされるのは当然だろう。

 アメリカの驕りはどんどんエスカレートしているように見える。はなはだ不愉快なことだが、ここまで馬鹿にされれば、少しはアメリカに対して敵愾心を燃やす人が出てもおかしくない。

 そう思っていたら、石破茂首相から「なめられてたまるか」という発言が出た。

 これを聞いて、「そうだ、そうだ!」「石破がんばれ!」となるのかと思ったが、違った。

 中国では、アメリカの145%の追加関税に対して125%報復関税を宣言した習近平国家主席に対して、中国国民から圧倒的な支持の声が集まった。カナダでは、カーニー首相がアメリカと闘う宣言をしたことで、不利だった選挙で逆転勝利した。

 ところが日本では、そうはならない。「どうせ口だけ」と言うのはまだわかるが、「アメリカを怒らせてどうするんだ!」「アメリカとうまくやれない首相は失格。即刻退陣せよ」というような批判が飛び交った。



日本はアメリカに反撃せよ!

 アメリカが言っていること、やっていることは理不尽で無礼で野蛮である。明らかに日本を「なめている」からだ。これに対して「なめられてたまるか」と言った石破首相に対して、もっとアメリカと仲良くやれという声が出る。

 国民のこの意識はなんなのか。暗澹たる気持ちになる。

 そんな折、格好のチャンスが与えられた。

 英紙フィナンシャル・タイムズが、コルビー米国防次官が日豪国防当局者に台湾有事の際の役割を明確にするよう求めたと報じたのだ。

 歴代米政府は、台湾有事の際の対応について、明確にしない「曖昧戦略」を維持してきた。トランプ大統領は公式には何も語っていないが、支持者との会合で、中国が台湾に侵攻したら北京を爆撃すると習近平国家主席に伝えたと語ったと報じられている。

 このようなトランプ大統領の考えを忖度して、側近たちが、同盟国に台湾有事に参戦するように圧力を強めているのかもしれない。政権交代前に日本から台湾有事の際に参戦するという言質をとろうとしたとも考えられる。

 日本とともに、態度を示せと迫られた豪州は、アルバニージー首相が、アメリカが曖昧戦略を取るのに豪州にあらかじめ対応を約束するように要求するのは不合理ではないかという記者の質問をうまく利用しながら、事実上それを肯定する回答を行った。閣僚レベルでは、より明確に、アメリカが台湾有事に際してどうするか約束していないことに明示的に言及しつつ、緊急事態が生じた時は、その時の政府が対応を判断すると言って、現時点での約束を明確に拒否している。

 日本はどうするのか。

 これを機に反撃に出てはどうか。

 米側に、「質問されたので」と断って、「台湾有事の際には、日本は完全に中立を守ります」と答えるのだ。さらに、「在日米軍基地の使用については事前協議が必要ですが、あらかじめそれを拒否することをお伝えします」と付け加える。

 これを石破首相からトランプ大統領に宛てた正式な外交文書として発出し、SNSで公表するというのはどうだろう。

 トランプ大統領は激怒して、500%関税をかけると叫ぶかもしれない。そして、「日本を守るのはやめた。日本から米軍を退去させる」と切り札を出してくる。

 だが、それはこちらの思う壺だ。

「了解しました。では年末までに撤退してください」と答えれば良い。

 在日米軍基地がなくなれば、アメリカは対中国の最重要拠点を失う。台湾有事では中国に手も足も出ない。どうするかという話になる。

 トランプ大統領は、譲歩するのを嫌って、さらに驚くような制裁を加えてくるかもしれない。



日本は世界最大の米国債保有国

 だが、それにも対抗措置はある。「日本政府は、米国債を大量に売却するかもしれない。ただし、アメリカが一連の制裁を解除すればそれを停止する」と言うのだ。この春、アメリカは、トランプ関税発表で物価・金利上昇と景気後退への懸念に火がつき、株、債券、為替のトリプル安に見舞われて、わずか1日で高率追加関税の実施延期に追い込まれた。日本は、世界最大の米国債保有国だ。その日本が大量売却に踏み込むと言うだけで、アメリカは制裁を停止して「協議」を求めてくるだろう。

 そこまでいけば、日米関係は、かなり対等な関係に修正される。

 こんなにラディカルな話は、「洗脳された」国民やマスコミには相手にされないかもしれない。

 しかし、アメリカ追従で戦争に巻き込まれるリスクが顕在化してきたこと、さらに戦争になる前にアメリカからの武器爆買いのための巨額の防衛費負担に耐えきれずに事実上の財政破綻になるリスクも考えれば、それくらいの覚悟を持って対米関係の抜本的見直しに踏み込むことは、決してバランスを失した行動だとは言えない。

「なめられてたまるか」と言った石破首相はもとより、その後を狙う次の首相候補にこのような具体策があるのか。その覚悟のほどを問いただしていかなければならない。



古賀茂明 (こが・しげあき)
  古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。
  1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『分断と凋落の日本』(日刊現代)など
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これがウクライナの「現実」…ゼレンスキー大統領追放のカウントダウンが始まった!

2025-07-24 | いろいろ



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これがウクライナの「現実」…ゼレンスキー大統領追放のカウントダウンが始まった!

塩原俊彦
 評論家



 最近、欧米や日本のマスメディアは、米国のドナルド・トランプ大統領がウラジーミル・プーチンを見限ったかのような報道が頻繁にみられる。それは、7月14日、トランプが北大西洋条約機構(NATO)のマーク・ルッテ事務総長との会談(下の写真)の際、ウクライナ紛争が50日以内に解決しなければ、ロシアとその貿易パートナーに100%の「非常に厳しい」関税を課すと脅したからである。しかし、ウクライナのゼレンスキー大統領の肩をもつ西側メディアは「現実」をまったく伝えていない。


  



シーモア・ハーシュの爆弾記事

 7月19日になって、アメリカの著名なジャーナリスト、シーモア・ハーシュは自分の運営するサイトで、「ゼレンスキーの終わり? ワシントンはウクライナ大統領の退陣を望んでいるが、それは実現するのか?」という記事を公開した。

 ハーシュについては、拙著『帝国主義アメリカの野望』において、つぎのように書いておいた(106頁)。

 「ピューリッツァー賞の受賞歴のあるジャーナリスト、シーモア・ハーシュは2023年2月8日、「アメリカはいかにしてノルドストリーム・パイプラインを破壊したのか」という長文の記事を公開した。そのなかで、彼は『作戦計画を直接知っている』ある無名の情報源を引用して、米海軍の『熟練深海ダイバー』が2022年6月の訓練中にC-4爆薬を仕掛け、その3カ月後に遠隔操作で爆発させた方法を詳述している。バルト海海底に敷設されたガス輸送用PL爆破の命令を下したのは、バイデン大統領であるというのだ」

 この優れたジャーナリストであるハーシュは、19日の記事のなかで、実にショッキングなことを明らかにしている。「ドナルド・トランプ大統領が決断すれば、ゼレンスキーは国外追放の候補に挙がっている」というのだ。さらにつづけて、ハーシュはつぎのように書いている。

 「もしゼレンスキーがオフィスを去ることを拒否すれば、おそらくそうなるだろうが、ある米政府関係者は私にこう言った。『彼は力ずくで追放されるだろう。ボールは彼のコートにある』」

 重要なのは、ハーシュのつぎの指摘である。「ワシントンとウクライナには、エスカレートするロシアとの空中戦を、プーチン大統領との和解のチャンスがあるうちに、すぐに終わらせなければならないと考えている人が大勢いる」というのがそれである。その一人がトランプであり、迅速な停戦・和平を実現するうえで、ゼレンスキーが「邪魔者」であることが広く認識されていることになる。

 このサイトで何度も指摘しているように、ゼレンスキーは戦争継続派であり、戦争をつづけることで、昨年5月に任期が切れている大統領の地位にしがみつこうとしている。戦争が長引けば長引くほど、ウクライナ国民の死傷者が増えるにもかかわらず、表面上はロシアに即時停戦を求めながら、実際には戦争継続に余念がない。米国から武器を購入するために欧州の支援を求め、ロシアに近接する欧州諸国はゼレンスキーの権力維持の企みを黙認している。

 それでも、7月15日付の「ニューヨークタイムズ」の記事のなかで、パリ政治学院の教授でフランス首相のアドバイザーを務めるザキ・ライディはきわめて的確な指摘をしている。

 新たな武器の流入はウクライナ人を助けるだろうが、「現地の状況をわずかに変えるだけだ」とライディはいう。そのうえで、彼は、「この戦争は軍事的手段では終わらない。 いずれにせよ、私たちは政治的解決に取り組まなければならない」とのべている。そう、本当に必要なのは政治的解決なのだ。



「法の支配」無視のゼレンスキー

 政治的解決には、一方的な解決はありえない。妥協の産物として、ウクライナとロシアの双方が折り合う必要がある。そう考えるとき、ウクライナのゼレンスキーにばかり肩入れしてきた日本や欧米のマスメディアの論調は大いに批判されなければならないだろう。

 このサイトで紹介してきたように、ゼレンスキー政権は兵員不足に悩んでおり、男性国民を無理やり動員するためにバスに押し込めるという「バス化」を繰り返している(拙稿「ウクライナで恐ろしい「バス化」=路上強制兵役連行が頻発中!」を参照)。はっきり言えば、ウクライナには「法の支配」など存在しない。

 最近になって、「法の支配」を無視するゼレンスキー政権の別の証拠が明らかになった。それは、裁判への露骨な干渉である。7月14日付の「フィナンシャルタイムズ」の報道によると、ゼレンスキー政権は最近、二つの米国系ファンドが、以前、オデーサ港にあるオリンぺクス・ターミナル(下の写真)を所有し貸し倒れを起こしたオデーサの大物実業家ウォロディミール・ナウメンコから、その9500万ドルの担保をファンドの債権回収のために入手するのを支援したのである。すなわち、5月にナウメンコが債権者を詐取した容疑で逮捕された後、ウクライナの最高裁判所は7月に、年間500万トン近い生産能力を持つ、国内最大級のターミナルの主要資産の引き渡しに署名した。しかも、それを「調整」したことをアンドリー・イェルマーク大統領府長官が自ら認めている。

 つまり、行政権だけでなく、「独裁的な権力」をもつ大統領府は、司法の最高機関である最高裁の判決にまで露骨に干渉して、米国のご機嫌取りを強いているというのだ。


  



女性新首相にも「腐敗臭」

 ゼレンスキーは7月に内閣改造を断行した。西側のマスメディアは、この改造が「腐敗隠し」のための工作でしかないことを報じない。だが、少なくとも米国側はゼレンスキー政権のひどさに気づいている。ゆえに、ウクライナ内部からもゼレンスキーへの批判が少しずつ沸き上がるようになっている。

 まず、不可思議なのは、戒厳令法第10条第1項において、ウクライナ大統領、ウクライナ最高議会、ウクライナ内閣などは、「戒厳令の期間中、それらの権限を停止することはできない」と規定されているにもかかわらず、内閣改造を断行したことである。

 この規定があったためか、2020年3月に首相になったデニス・シュミハリは5年以上も首相の座にあった。ところが、7月15日、シュミハリはウクライナ最高議会に対して辞表を提出し、議会は辞任を承認した。ゼレンスキーは後任にユリア・スヴィリデンコ第一副首相兼経済相を指名し、17日、議会はスヴィリデンコら新内閣を承認した。どうして戒厳令法を無視できるのか、理由はよくわからない。

 首相となったスヴィリデンコ(下の写真)は、イェルマーク大統領府長官の子飼いだ。2020年12月から、大統領府副長官を務めた「縁」が二人の関係を強めた。そんな彼女が首相に抜擢されたのは、米国との鉱物資源協定を結ぶ際、米国の理不尽とも言える要求を何とかまとめ上げた功績によるらしい。といっても、拙稿「トランプの『ウクライナ植民地計画』をなぜゼレンスキーは容認したのか?」に書いたように、ウクライナ側は屈辱外交を二つのサブ協定の隠蔽で蓋っただけの話だ。


  


 例によって彼女にも「腐敗臭」が漂っている。2023年から私立キーウ経済大学(KSE)の客員講師を務める彼女は、2024年の教師収入として310万フリヴニャ(約1100万円)を申告した。KSEの学長は、スヴィリデンコがたしかに大学で毎月6000ドル以上を受け取っていることを認めたという(ロシア報道による)。これは、西側の「常識」からみても、腐敗のニオイがする。今年に入って、国家反腐敗局(NABU)は彼女に対する汚職防止法遵守チェックを開始した。

 ついでに、彼女の兄弟の一人は、ウクライナ戦争の4年目にロンドンに飛び立ち、戻っていない(ウクライナ報道による)。動員忌避者を家族にもつ人物が首相を務めることになる。

 ゼレンスキーは元欧州・大西洋統合担当副首相で法務大臣のオリガ・ステファニシナを駐米大使に任命した。ところが、前述したNABUは6月から、彼女に対して重大な結果をもたらす権力または公的地位の濫用に関する条文に基づき、刑事訴訟手続きを調査している。ステファニシナの元夫に関連すると思われる企業が、以前差し押さえられた資産を国から受け取って管理しているという情報が流れ、訴訟手続きがはじまったのだ。

 しかし、今回の人事で、彼女は米国へ逃避することが可能となる。

 ゼレンスキー政権はまだまだたくさんの汚職事案をかかえている。だからこそ、彼は権力にしがみつき、大統領任期が切れて1年以上経っても戦争を継続することで、戒厳令下にウクライナを置くことで選挙を回避しているとも言える。



ザルジニーに賭けるトランプ政権

 こうした事情を知ったうえで、トランプ政権の中枢部には、ゼレンスキーを大統領の座から追放し、戦争の停止と和平を本格化する必要性を強く訴える者がいる。先に紹介したハーシュは、紹介した記事のなかで、つぎのような決定的な話も明らかにしている。

 「ザルジニーは現在、ゼレンスキーの後継者としてもっとも信頼できるとみられている。私は、ワシントンの事情通の高官から、数カ月以内にその仕事が彼のものになるかもしれないと聞いている。」


  


 ザルジニーとは、ヴァレリー・ザルジニーのことである。元ウクライナ軍総司令官で、現在、駐英ウクライナ大使を務めている。

 問題は、どのようにゼレンスキーを追い出すかにかかっている。力ずくで追放するにしても、一体、どのように行うのか。



楽観的なシナリオもある

 もっとも楽観的な見通しを披歴すると、それは、9月上旬までにゼレンスキーおよびその背後にいるイェルマークを追放するというシナリオである。理由は簡単だ。The Timesがプーチン、トランプ、習近平の3人が9月の第二次世界大戦終結80周年記念式典で会談する可能性があると報じているからだ。


  


 もしこれが実現するとすれば、それなりに画期的な進展がウクライナ戦争について起こると予測できる。つまり、戦争継続派のゼレンスキーやイェルマークを追い出し、ザルジニーを大統領に据える方向性を明確にして、一次停戦を実行に移すのである。あまりにも楽観的すぎるかもしれないが、頭の片隅にとどめておくだけの価値はあるだろう。




塩原 俊彦 (しおばら としひこ)
  評論家。1956年生まれ。
  一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士。日本経済新聞社、朝日新聞社(モスクワ特派員)勤務を経て高知大学大学院准教授などを歴任。陸海空およびサイバー空間の地政学・地経学を研究。ウクライナ問題の第一人者。著書に『ウクライナ・ゲート』、『ウクライナ2.0』、『ウクライナ3.0』、『プーチン3.0』、『復讐としてのウクライナ戦争』、『サイバー空間をめぐる覇権争奪』(いずれも社会評論社)、『ロシアの軍需産業』(岩波新書)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(岩波書店)、『ビジネス・エシックス』(講談社現代新書)、近著に『ウクライナ戦争をどうみるか』(花伝社)や『知られざる地政学』〈上下巻〉(社会評論社)がある。
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吉永小百合も「残念というだけでは済まされない」と…自民党・西田昌司氏の地元からも怒りの声が相次いだ“選挙戦”

2025-07-23 | いろいろ



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吉永小百合も「残念というだけでは済まされない」と…自民党・西田昌司氏の地元からも怒りの声が相次いだ“選挙戦”






 参院選が終わったが、選挙期間中は有権者にとってはチャンスでもある。普段はなかなか会えない候補者(政治家)を生で見て、会話もできるかもしれないからだ。

 私はここ数年、ラッパーのダースレイダーと一緒に全国の選挙現場を見ている(その成果は2本のドキュメンタリー映画にもなった)。


  


 というわけで我々は今回京都へ向かった。京都には注目せざるを得ない候補者がいた。自民党の西田昌司氏である。以下の京都新聞を見てほしい。



歴史の書き換え」などと主張した西田氏

『自民・西田議員「ひめゆり、歴史書き換え」発言 地元・京都からも怒りの声が相次ぐ』(5月8日)

《沖縄戦で犠牲となった女子学徒隊らを慰霊する「ひめゆりの塔」(沖縄県糸満市)の説明を巡り、自民党の西田昌司参院議員(京都選挙区)が歴史を書き換えている、と発言したことに京都の関係者から疑問や怒りの声が相次いだ。》

 各紙の報道をまとめると、西田氏は太平洋戦争末期の沖縄戦で犠牲になった学徒隊の生徒や教員らを慰霊する「ひめゆりの塔」の説明書きについて「歴史の書き換え」などと主張した。

「日本軍がどんどん入ってきて、ひめゆりの隊が死ぬことになった。そしてアメリカが入ってきて、沖縄が解放されたと、そういう文脈で書いているじゃないですか」と講演会で述べた。しかし、現場ではそんなことは書かれていない。

 地元からも怒りの声が相次ぐ、という西田氏はどんな選挙戦をおこなっているのか。ぜひ見ておきたい。できれば会話したい。

 最近だと俳優の吉永小百合さんの沖縄タイムスでのインタビューが話題になった。

「残念というだけでは済まされないです。ちゃんと勉強していないんじゃないかという気がします。私たちが選挙でそういう人を選んでいること自体、良くないと思います」(7月14日)

 このことを西田氏はどう思うのだろうか?



西田氏を追って、京都に入ると…

 我々が京都に入ったのは7月15日。京都新聞の一面トップは『自公が苦戦、過半数微妙』。京都選挙区情勢では「維新を共産・自民追う」とあった。定数は2なので自民党の西田氏は3番手に読める。さらに西田氏については「(自民)党支持層の半数の支持しか得られない」とあった。なんということだ。

 レンタカーを借り、西田氏が公表していた当日の活動スケジュールを確認すると、14時からの「舞鶴市 バザールタウン舞鶴」に間に合いそう。京都市からはけっこう時間がかかりそうなので余裕をもってその演説会にした。

 ようやく現地に到着すると西田氏の街宣カーはバザールタウン舞鶴ではなく隣接する立正佼成会の前にあった。演説も立正佼成会の建物から出てきた人に向けてやっていた。ピンポイントである。我々は建物の外で見ていた。演説が終わった西田氏はこちらにもやってきた。チャンスだ。いよいよ会話ができるかもしれない!

 さて、ここで我々が事前に準備した「西田対策」を書いておこう。ジャーナリストの鈴木エイトさんが序盤に京都に入って西田氏に質問をしたら、「ひめゆりの発言については雑誌『正論』に書いたので、メディアには答えていない」と言われたという。つまり『正論』を読んでから来いという言い方にも思えるし、逃げにも思える。エイトさん情報があったので私は『正論』7月号を購入して備えた。これが西田対策である。

 では現場に話を戻そう。西田氏は小走りでこちらにやってきた。握手をしながら私は聞いてみた。

――今日の京都新聞に西田氏は自民党支持層の半数の支持しか得られないとありました。原因はなんだと自己分析されてますか?

西田「いろいろあってわかりませんけど教えてください」

 西田氏は立ち去ろうとした。そのときだ、ダースレイダーが「西田さん、『正論』読みました!」とその背中に呼びかける。

 すると西田氏がピタッと止まった。くるりとこちらを向いて再びこちらに近づいてきたではないか。西田作戦、大成功である。



「スタンスは石破首相と実は同じでは?」と問うと…

 ダースさんは「対米自立をするというスタンスは石破首相と実は同じでは?」と質問した。石破批判の急先鋒でもある西田氏にあえて問うたのだ。

西田「石破さんはちょっとそこらへんの話はちょっとよくわからないね」

 あらためて私が質問した。

――吉永小百合さんがひめゆり発言に対して「ちゃんと勉強していないんじゃないかという気がします。そういう人を選んでいること自体、良くないと思います」と述べましたがどう思いますか?

西田「それはおそらく私が何を言ったかご存じないんじゃないですか。まず私の『正論』読んだりYouTubeを見てもらって」


  


――読んだらなおさら酷かったというパターンは?

西田「それはない」

 そう言って西田氏は次の現場に向かっていった。

 西田氏が読めと言う『正論』には以下のことが書いてあった。「東京裁判史観」を押し付けられてきたこと、「日本は自らの歴史を取り戻せているとは言えません」などなど。自分の「歴史観」がズラリ。ひめゆり発言をお詫びした理由については、

《「ひめゆりの塔」が、県民の皆さん方にとって本当に耐え難い大きな苦しみの歴史、トラウマであるとの理解に立つと、いま沖縄の地でむやみやたらに口にする必要はなかった、私はそう反省したのです。いわば「TPO」を弁えない発言だった。》

 疑問なのは「ひめゆりの塔」のことを沖縄の地でむやみやたらと口にする必要はない、という点だ。まるでタブー案件のよう。むしろ沖縄県民の多くは沖縄戦やひめゆりの塔のことを広く正しく伝えてほしいと願っているのではないか。

 西田氏が「訂正」の対象にしたのは、「講演の中でひめゆりの塔を持ち出した」ことだけだった。

《「歴史の書き換え」と指摘した資料はひめゆりの塔に存在したと主張し、「めちゃくちゃな教育のされ方」という発言も撤回していない。発言の根幹部分は訂正しておらず、「訂正した」というのは不正確だ。》(琉球新報・参院選ファクトチェック取材班)

 接戦の末に西田氏は当選したが、今も自国の歴史や自分の発言と向き合っていないように思えたのである。

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 文春オンラインで好評連載のプチ鹿島さんの政治コラムが一冊の本になりました。タイトルは『お笑い公文書2025 裏ガネ地獄変 プチ鹿島政治コラム集2』。

  




  1970年生まれ。長野県出身。
  時事ネタと見立てを得意とする芸風で、新聞、雑誌などにコラムを多数寄稿。TBSラジオ『東京ポッド許可局』『荒川強啓 デイ・キャッチ!』出演ほか、『教養としてのプロレス』(双葉文庫)、『芸人式 新聞の読み方』(幻冬舎文庫)などの著書がある。
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 選挙中は「助けてください」泣き声だったのに当選したら何の反省もなく「石破はやめろ」などおだをあげている、と。


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