小説キャンディキャンディFINAL STORY上・下巻 名木田恵子 (著) 祥伝社 (2010/11/1) の考察です 注:物語に関するネタバレがあります
2011年に当ブログを始めるきっかけとなった小説キャンディキャンディFINAL STORYのあのひと考察。当時は、一通りの考察を終えて満足していましたが、FINAL STORYを再読して、改めて「あのひと=アルバートさんじゃない」を考察したくなりました。*今になって考察したくなった背景はこちら
ということで、小説キャンディキャンディFINAL STORY あのひと考察セカンドシーズンとして、「あのひと=アルバートさんじゃない」を検証していきます。
まずはFINAL STORYの回想の始まりから。
回想は、孤児院に捨てられてから6歳になるまで、姉妹のように何でも一緒に育ってきたキャンディとアニーの別れの日のお話から始まります。
パパとママが欲しいと願ってきたアニーに、理想のパパとママ(ブライトン夫妻)が現れ、養子にもらわれていく日。
FINAL STORYでは、この日の出来事にマンガからの重要な変更が加えられています。
マンガでは、キャンディが丘の上の王子様と初めて出会ったのは、アニーから「さよならキャンディ」の手紙を受け取った日でした。でも、FINAL STORYでは、アニーにパパとママが出来た日に、キャンディは丘の上の王子様であり、のちにキャンディの養父となってキャンディを見守り続けるアルバートさんと出会っているのです。
キャンディは、実の親に対しては「ポニーの家に捨ててくれたことに感謝」し、「きっとわざわざ一番いい孤児院を探して、ポニーの家に捨ててくれたに違いない」とまで言っています。おそらく作者は本当にそのように想定したのだと、ブログ主は思っています。
けれど、ポニー先生とレイン先生は、キャンディの母的存在ではあっても親代わりではないのです。キャンディはポニーの家を故郷と呼びますが、ポニー先生とレイン先生の役割は、捨てられた子どもを引き取り、養育者へと引き継ぐことだと、小説の中で何度も言及されています。ポニー先生とレイン先生は、子どもたちの面倒を最後まで見ることはできないし、そうする余裕もないのだと。
最年長になるまで誰にも養子として引き取られずに残ってしまったキャンディ。使用人としてラガン家に引き取られたけれど、アニーにパパとママが出来た日に出会ったその人が、その後間もなくキャンディの養父になりました。FINAL STORYでは、実は物語の最初から、キャンディにも「親子の愛」のストーリーが始まっているのです。
エピローグのキャンディとアルバートさんの文通からーー
早く記憶が戻ってほしいと願いながら、このまま兄と妹して暮らすのも悪くないかな、と思ったり……今は、養女だもの!
ほんとは”父上さま"ってお呼びしなくてはいけないかも!?
ポニー先生たちには「養父として当然のことをしたまで」と伝えておいてほしい。
養父ーー!?
しまった、自分で言ってしまったか……。元気でいてくれ!子供たちによろしく!
作家として、アルバートさんをキャンディの恋愛相手としてリアルに心に描いてこの物語を書いていたとして、こんな文章が書けるでしょうか。
作者の言う「"あのひと"が誰かをきちんと描くには、長い物語が必要なのです」の長い物語が、この「父と娘」の呪縛を逃れることなのだとしたら、それはもうキャンディキャンディの世界ではないように思うのです。
エピローグのアルバートさんへの最後の手紙でキャンディは、ポニーの家に捨ててくれた両親に再び感謝します。なぜならそこは、ポニー先生とレイン先生という愛情溢れるシスターの経営する孤児院であっただけでなく、アルバートさんという最高の養父に出会えた場所でもあったからです。
これまで繰り返し言及されてきた「ポニーの家に捨ててくれた両親への感謝」を、もう一度あえてここに入れたのは、アルバートさんがキャンディにとっての「親」だからと言えるのではないでしょうか。
これまでも支えて見守ってきてくれて、これからもきみの幸せを見届けたいと言ってくれる優しい養父ーー丘の上の王子様、ウィリアム大おじさま、アルバートさん、ちっちゃなバート・・・・・・そのことを思うとキャンディにとって「今が、わたしの幸せ」なのです。
あのひと考察セカンドシーズン2 キャンディの初恋へ