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SWAN日記 ~杜の小径~

月イチ企画SS《8月》◆レモネード◆

ベルばら/月イチ企画SS《8月》◆レモネード◆
…無駄に長い話になってしまいました;^_^A

〜アンドレお誕生日SS〜
◆◆◆レモネード◆◆◆

オスカルは悩んでいた。
夜、自室で本をめくりながらも内容は頭に入らず、指でページをペラペラと弄んでいるにすぎなかった。
明後日はアンドレの誕生日である。
毎年恒例となったプレゼントももちろん用意してある。
今年はクラバットにした。
先月のアンドレが夜勤の日、ジャルジェ家に出入りしている店のオーナーに来てもらい、色やデザインを決めたのだ。
それを先日の夕刻に屋敷に届けてもらった。
わたしの誕生日にもアンドレは毎年プレゼントを用意してくれる。
これも幼い頃から、お互いの恒例行事だ。
子どもの頃のアンドレは手作りの品が多かったと記憶している。最初は木彫りの馬。昔から彼は手先が器用だった。
大人になってからのアンドレはわたしの好みに合わせて品物をオーダーして作ってくれたり、用意した品物に自ら一手間加えてプレゼントしてくれたり。
そんな彼に対して、わたしが幼い頃からアンドレの誕生日にプレゼントといえば、購入したものばかり…。アンドレに気に入ってもらえるよう、好みも考えて、アンドレが必要としているだろう品を考えてきた。
大人になるにつれ、アンドレの為にオーダーした品物をプレゼントするようになったが、手作りの品をプレゼントしたことは無かった。
数ヶ月前に想いが通じ、周囲に秘密とはいえ、晴れて恋人となった私達。
毎年、アンドレはわたしからの誕生日プレゼントを喜んでくれる。
12月に彼がわたしの為に用意してくれる誕生日プレゼントも毎年趣向が凝っていて嬉しい品ばかりだった。
幼い頃にアンドレから貰った木彫りの馬は今でも自室に飾ってある。アンドレは「何十年も昔のモノで恥ずかしい」というが、わたしには宝物だ。あの時の言葉と共に。
『この木彫りの馬…アンドレが作ったの?』
『うん。お屋敷のジルに教わりながら、道具を一式貸してもらって作ったんだ』
『怪我とかしなかった?』
『うん、大丈夫。…オスカルは何を喜ぶかな?って考えて、オスカルのプレゼントを選ぶのは楽しいんだけど、みんなオスカルは持ってるから…世界に一つだけのモノを手作りしたかったんだ。僕の生まれた村では誕生日には友達同士で手作りの品をプレゼントをしたりしていてね。他にも川で拾った綺麗な石とか…女の子達は村に咲いている季節の花とかをね。母さんも夕食に僕の好物を作ってくれたんだよ』
『有難う!アンドレからのプレゼントは何でも嬉しい!これは世界に一つだけの木彫りの馬だもの。ずっと大事にする!」
そう言って笑ったわたしにアンドレも嬉しそうに頷いた。
本当はあの時、アンドレが左手の指に小さな怪我をしていたのを知っている。
わたしの誕生日の数日前だったか…どうしたのかと聞いたら、屋敷の仕事中にヘマをしちゃって…と笑ってたけど、おそらく木彫りの馬を製作中だったのだろう。
当時のことを思い出しながら、オスカルの指は悪戯に本をペラペラとめくっていた。
しばらくして。
部屋のドアがノックされ、侍女のマリアが湯浴みの準備が出来たと告げに来た。
長年わたし付きの侍女をしている彼女はアンドレとわたしの関係にも直ぐに気付いたようで影ながら味方をしてくれるひとりで心強い存在だ。
「誕生日のプレゼントは用意してあるとはいえ、今から手作りを品を添えるのも無理だし、一手間加えるなんて芸当はわたしには出来ないしな…」
湯に浸かりながら、ぽつりと呟いた。
「オスカルさま。もうすぐアンドレの誕生日ですものね。オスカルさまからのプレゼントですもの、どんな品物でもアンドレは喜びますわ」
「…うん。アンドレは毎年わたしの誕生日には手作りの品や、オーダーした品や、選んだ品に一手間加えてくれたり…あいつは幼い頃から手先が器用だったからね。子どもの頃から手先の器用さは叶わないんだ」
少し寂しそうに口元で笑うオスカルに、マリアは何かを思いついたように瞳を見開いた。
「〜ならば、オスカルさま。アンドレに飲み物など作ってみてはいかがでしょう?」
「…飲み物?ばあや直伝のショコラは無理だ。アンドレに太刀打ちできない」
「手作りの品は…お気持ちの表現ですわ。夏の夜などに冷たいレモネードなどはいかがでしょう?」
「レモネード?」
「はい。オスカルさま、お手伝いいたしますわ」
マリアは優しく微笑んだ。

マリアとそんな会話をした後、迎えたアンドレの誕生日。
朝、衛兵隊に向かう馬車の中で誕生日祝いの言葉は伝えた。
そして、日中の勤務も問題無く終えて、二人は早めに帰路につくことが出来た。
「…今日は早く帰り仕度が出来そうだな」
いつもアンドレは抜かりなく仕事は早いのだが、今日は定刻よりもかなり前に指令官室に戻ってきたアンドレにオスカルが微笑む。
「倉庫で整理仕事してたら皆んなに『誕生日なんだから早く帰れ』って強制的に追い出されたというか…アランを筆頭に酷い言いようだったぞ。みんなの気持ちは嬉しいんだけどね」
オスカルには言えないが、恋人になった二人の関係を真っ先に感づいたらしいアランを筆頭に、オレ達の雰囲気が変わったから何かイイコトあったのかと他の奴らからも色事で散々揶揄われて倉庫にいた一班の連中に追い出されたのだ。明日の朝、一班の連中から何を言われるか…アンドレは肩を竦めて笑った。
何を言われたのかは知らないが嬉しそうに話すアンドレの顔をみて、釣られるようにオスカルも口元で笑う。
馬車に並んで座るオスカルはアンドレの肩に頭を預けた。
「今夜はショコラも良いがワインが飲みたい。最初に言ってしまうが誕生日のプレゼントはクラバットにした」
秘密にしておこうと思っていたけど我慢できないとオスカルは笑った。
「有難う…オスカル。お屋敷の仕事が済んだらワインを届けるよ」

夜。
アンドレは屋敷の仕事をしている。
仕事が一段落したら、自室で着替えて厨房に行きショコラを作る。
その日の天候や私の体調を考えてショコラの濃さや甘味を調整してくれているのも知っている。
…だから、アンドレがわたしの為に作ってくれるショコラは絶品の味わいなのだろう。
これも毎夜の営みで、希望すればアンドレはワインも持ってきてくれる。

マリアが厨房の使用人達に話をつけてくれ、夕食後の厨房で準備は出来ているという。
今朝の出勤前、アンドレがジャンと馬車の準備をしている時、ばあやに捕まった。
「オスカルお嬢さま!マリアから聞きましたよ!お嬢さまが厨房に…っ」
〜入るなどなりません!と続けたかったらしい言葉は、マロンを抱きしめたオスカルによって遮られた。
「はあや。厨房のみんなには迷惑をかけてしまうけど、アンドレの誕生日の記念だ。わたしの我が儘をゆるしてもらえるかな?…そうだ、ばあや。味見してもらえないだろうか?」
「はぁ…味見、でございますか?」
「うん。一番最初の味見をね。マリアに手伝ってもらうから大丈夫だと思うのだけど…」
大切なお嬢様さまが厨房に立つなんて…使用人達が出入りする厨房に次期当主としてお育てしたお嬢様が足を踏み入れるなどトンデモナイ。お嬢さまの心配もあるが厨房の機能が停止しかねないのである。
…でもレモネードならば火を使う事もないから火傷やお怪我の心配もない。
何だかんだと言ってもマロンはオスカルさまが大切なのだ。出来れば願いを聞きてさしあげたいし…わたしに最初の味見を頼みたいとは何と嬉しいことだろう。
「…仕方ないですねぇ。ちゃんとマリアの話を聞いてくださいませね」
「うん。ありがとう…ばあや」
嬉しそうに笑うオスカルを見てマロンの顔にも笑みがこぼれる。
オスカルの笑顔はマロンの幸せの源なのだ。
「ばあや、アンドレには内緒だぞ?」
「はいはい。お嬢さま承知しておりますよ」
人差し指を口元に立てるオスカルを真似てマロンも同じ仕草をして笑った。

屋敷に帰宅後、夕食と湯浴みも済ませたオスカルはマリアを待っていた。
部屋で寛いでいるとドアがノックされ、マリアがやってきた。
「お待たせいたしましたオスカルさま!アンドレもしばらく厨房には近づきませんわ。いつものお屋敷の仕事をしているところで執事さんに呼ばれて話し込んでいます」
「執事のクロードもグルなのか…?」
「オスカルさま、ジャルジェ家に仕える者達の結束を舐めてはいけませんわ」
レモネードを作るだけなのに…とオスカルは困惑顔の中にも笑みを浮かべた。
「氷室担当のジャックに氷は用意してもらってあります。さぁ、厨房に参りましょう」
「うん」
オスカルとマリアは厨房に向かった。
一階の厨房には既にレモンと蜂蜜、氷が用意されていた。

先ずは練習、とグラスを三つ用意した。
オスカルとマリアは幾つかのレモンを絞ってゆく。
グラスにレモン汁を入れ、蜂蜜を垂らして氷と井戸水で割り、かき混ぜた。
カットしたレモンとミントの葉を一枚のせて完成した。
「うん。なかなか良い見栄えだね。味は分からないけれど…」
「うふ。きっとばあやさんもお待ちかねですわ。呼んできますね」
マリアが厨房のドアを開けた途端に声を上げた。
「まあ!ばあやさん!」
「…ばあや?」
待ちかねて廊下で待機していたらしいマロンにオスカルとマリアも笑った。

「それでは お嬢様、頂きます」
マロンは差し出されたグラスのレモネードを一口飲む。
オスカルは一緒にレモネードを作ったマリアにもグラスを手渡した。
「頂きますオスカルさま」
冷たいレモネードが喉を潤してゆく。
レモネードの清々しい酸味と甘味に二人は笑顔になる。
「ほぅ…。大変美味しゅうございます。アンドレには勿体無い贅沢です」
「美味しいです。オスカルお手製のレモネードをいただけるなんて…幸せです」
「二人とも大袈裟だなぁ。よし、ばあやとマリアに合格をもらえれば大丈夫だな」
美味しそうに飲む二人を見ながら、オスカルもレモネードを一口飲み、納得顔で頷いた。

そこへ。
ノックと共に突然アンドレが厨房のドアを開けた。
「「「アンドレ!?」」」
「何?なんだい? 皆んな血相変えて。…っていうか何でオスカルが厨房に?喉が渇いたなら呼んでもらえれば…」
そんなに暑かったのか?とアンドレは真面目に首を傾げる。
「ちが〜うッ!」
ご立腹らしいオスカルは声をあげた。
「オスカル?」
「お前こそ、厨房に何の用だ!」
「オレ?…執事さんとの話も終わったから、おばあちゃんに頼まれてる玄関ホールの燭台の蝋燭を取り替えに行く途中なんだけど、ちょっと喉が渇いたから水を飲みに来たんだよ。あ、そのレモネードもらっても良いの?」
オスカルが一口飲み、テーブルに置いたグラスを指差してアンドレが言った。
よほど喉が渇いていたらしいアンドレにオスカルも咄嗟に答えた。
「あ、コレで良いのか?」
「うん」
コクコクと飲みきったアンドレは生き返ったとばかりに気持ち良さそうに息をつく。
「ふ〜…美味しい。ご馳走さま」
唖然としているオスカルと空のグラスを手に持ったまま固まるマロンとマリアを見て、アンドレは首を傾げている。
オスカルが小さく呟いた。
「…こんなハズでは…」
「うん?」
「それは練習用だったのに…」
ガックリと肩を落とすオスカルの落ち込みようにアンドレの頭は疑問符だらけだ。
「え?なに?オスカル?」
テーブルに手をつくオスカルの隣でマリアがレモネードを作った経緯を簡単に説明し、マロンは思い切り孫の足を踏んづけた。
「まったくお前は!」
「痛てっ」
態とらしく足を摩るフリをしながら、アンドレはオスカルの顔を覗き込む。
少々不貞腐れ気味のお嬢様。
気分を取り直すようにアンドレは微笑んだ。
「うん。そういうことなら、有り難くいただきます。オスカル、おかわりもらえる?」
「は?おかわり?」
「オスカルのお手製レモネードならピッチャーでも飲みきるぞ」
ホントに喉が渇いてるんだよ、と笑うアンドレにオスカルも呆れ顔で笑う。
オスカルの機嫌も浮上傾向にあるのを見て、アンドレは安心しつつ、再度おかわりを要求した。
「オスカルさま、お味は充分ですわ。アンドレに作って差し上げてくださいませ」
「アンドレ、後片付け頼むよ。玄関ホールの燭台はジャックに頼んでおくから安心おし」
マリアとマロンが退出した厨房に残されたのはオスカルとアンドレの二人。
マリアに教わった通りにグラスにレモネードを作ってゆくオスカルの手元をアンドレは嬉しそうに見ている。
そして、完成したレモネードをアンドレに手渡した。
美味しそうに味わいながら飲んでいるらしいアンドレを見上げてオスカルは言う。
「…本当は誕生日のサプライズで驚かせようとしたのだが…逆に驚かされた展開だ」
「ご馳走さま」と告げるアンドレは満足そうな笑顔で言葉を続ける。
「ごめんごめん。そのオスカルの気持ちだけでも充分なのに、ホントにレモネードも美味しかったぞ。ピッチャーでレモネード作らないのか?」
「お前の誕生日にサプライズしたくてマリアとばあやに手伝ってもらって厨房にいたんだ。そんなに沢山作っても…」
「…本当にごめん。オレがタイミング悪く厨房に来ちゃったんだね。でも、喉も渇いていたから至極の美味さだったよ。オレはピッチャーの量でも飲めるぞ。オスカルのお手製を独り占め出来るのは嬉しいけど…こんなに美味しいのだから旦那さまや奥さまにも召し上がってもらいたいなぁ…と。ピッチャーで作れば執事のクロードさんや使用人の皆んなにも飲んでもらえるぞ?」
アンドレの話を聞きながら、オスカルの目元は悪戯っ子のように笑っている。
突然厨房にやって来てしまったアンドレは予定外の不可効力であったが、今夜厨房を使う為に協力してくれた屋敷の者達を労いたい気持ちもある。
「ふふ。材料も沢山あることだし、ピッチャーで作ってみようか。またアンドレも飲んでくれるのだろう?」
「もちろん頂くよ。ピッチャーで作る分はオレもお手伝いいたしますお嬢様」
「お前の誕生日なのに…」
「お手製レモネードは頂いたよ。贅沢におかわりしちゃったけど。元気も出たから今からお嬢様のお手伝い。おばあちゃんとマリアも仕事に戻ったから一人でピッチャーで作るのは大変だろう?」
「…確かにピッチャーで作るには分量の配分が判らない…」
「うん。そうだろうね」
真面目に頷きながら微笑むアンドレを肘鉄でポンと押しながらオスカルも笑う。
「父上と母上にはグラスで作って…あとはピッチャーで沢山作りたい」
「了解!」
アンドレは笑って頷いた。
暑い夏夜、ピッチャーで沢山レモネードを作ったのならば使用人達も気兼ねなく飲むことができる。
使用人達がオスカルお手製のレモネードを楽しんだとあれば、旦那さまや奥さまも「飲みたい」とおっしゃるだろうから。
ジャルジェ家にいる全ての人にレモネードが行き渡れば皆んな幸せだ。
夕刻からの事を振り返ってアンドレは合点がいった。
今日は早めに帰宅できたから、今夜は遅くならずにオスカルの部屋に会いに行けると思っていたのに、何故か今夜に限って数人から多数の仕事を頼まれた。
そう、オレを厨房とオスカルの部屋から遠ざける為だったのだろう。
オスカルが厨房に籠るため、皆んなが協力していたのだ。
オレを厨房から遠ざけていたのに、想定外に厨房に入ったのだから、三人の驚きようも頷ける。

両親用にグラスを用意したオスカルはレモネードを作ってゆく。
ピッチャーでの材料配分はアンドレに手伝ってもらいながら一緒に作った。
「オスカル、旦那さまと奥さまのグラスは自ら持って行くかい?今の時間は居間でお二人とも寛いでいると思うけれど」
「わたしが届けたら居間から出られなくなってしまう。ばあやに頼もう」
「了解。おばあちゃんに頼んでおくよ」
オスカルと視線を合わせてアンドレも笑う。早く二人の時間を持ちたいのは同じ思いだった。

部屋で寛ぐオスカルの元にアンドレがやってきた。
「お待たせ」
アンドレが押してきたワゴンにはワインボトルとグラス、ピッチャーのレモネードとカットされた果物数種類が皿に盛られていた。
「本当にピッチャー全て飲む気なのか?」
「うん」
呆れ顔のオスカルを見てアンドレも笑い、グラスや果物をワゴンからテーブルに移してゆく。
ひと通り準備が終わるとアンドレはオスカルの隣に腰掛けた。
オスカルは長椅子の脇に置いておいたラッピングされた箱を祝いの言葉と共にアンドレに手渡した。
「有難う。クラバット、見ても良い?」
「うん」
リボンを解いて箱の中のグラハットを手に取ったアンドレは満面の笑みを浮かべて、オスカルの肩を抱き寄せた。
「…有難うオスカル。大切にするよ」
そっと額にキスを落とす。
「今年の誕生日祝いのクラバットは前から決めていたんだ。何か手作りの品も添えたいと悩んでいたんだが…」
「其れがレモネード?」
「うん。簡単に出来るもの…と夏夜にレモネードはどうかとマリアの案に乗っかったもののレモネードを作るだけだったのに屋敷中を巻き込んでしまった」
「でも皆んな喜んでいたよ。誕生日に周囲の笑顔が見られるのも嬉しい」
「…確かに。笑顔は嬉しいな」
「レモネード、ピッチャーの量を飲みきる自信はあるんだけど、ちょっと果物もね」
アンドレはカットされた果物を沢山いれたうえにレモネードでグラスを満たした。
スプーンも添えてオスカルに手渡す。
「ふふ。果実が入るとまた美味しいな。では、アンドレの分は私が作ろう」
見よう見まねでアンドレのグラスに果実を入れ、レモネードを注いだ。
「有難うオスカル」
レモネードを飲みながら果実を頬張るアンドレの頬にチュッとキスをおくる。
「アンドレ、誕生日おめでとう」
クスクスと笑い合いながら、二人はレモネードを味わったのだった。

ベッドの枕元の棚には子どもの頃アンドレが作ってくれた木彫りの馬。
昔から変わらず定位置に飾ってある。
子どもの頃の手作りで恥ずかしいと言うアンドレの言葉は聞き流し、オスカルは笑っている。
「わたしの宝物だ」
アンドレが初めて手作りしてプレゼントしてくれた木彫りの馬。
いつか手作りの品を…と思いつつ、何十年も経ってしまったけれど。
今夜、クラバットと自ら作ったレモネードをおくることが出来たオスカルは長年の願いが叶って幸せを感じていた。

翌朝。
オスカルお手製レモネードは両親はもちろんのこと、ジャルジェ家の使用人達にも大好評だった。
アンドレと共に馬車に向かうオスカルにばあやが嬉しそうに告げる。
「オスカルお嬢様、旦那さまと奥さまも大変お喜びされていました。また、わたしも一杯いただきましたが、美味しゅうございました」
「うん。喜んでもらえて良かったよ」
オスカルも微笑む。
朝から顔を合わせる侍女達にもレモネードの礼を言われていたので、使用人達にも行き渡ったのだと安心していると。
「あぁ…お嬢様。奥さまから伝言です」
「…母上から?」
「はい」
何やらニコニコ笑っているマロンに少々嫌な予感を持ちつつ、オスカルは笑みを浮かべて首を傾げてみせる。
「毎年アンドレの誕生日にはジャルジェ家の者達にレモネードを振る舞ってほしいとのことでございます」
笑顔を崩さずに自分を見上げるマロンにオスカルは固まった。

車寄せに向かい、後ろを歩くアンドレは笑いながら言う。
「オスカル、来年も手伝うよ。たくさんレモネードを作ろう」

◆おわり◆

*・゜゚・*:.。..。.:*・'(*゚▽゚*)'・*:.。. .。.:*・゜゚・*

アンドレお誕生日おめでとうo(≧▽≦)o

〜レモネードのネタ…前に同人誌でも書きましたが、季節ネタということで再びレモネードのお話でした(笑)
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