見出し画像

SWAN日記 ~杜の小径~

◆ ベルばらSS ◆ 〜密会①〜

✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎

7月の三が日を過ぎてしまいましたが…SSをUPいたします(*´∇`*)
数年前から三が日にと書いていたSSがやはり途中で凹んで終わらなくなり諦めました(T-T)
  ↑コレお蔵入りになるかもデス。
〜で3話UPは諦めて2話UP(密会①&②)、
既にオスカルとアンドレは両想いの設定です。

✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎

◆ ベルばらSS ◆ 〜密会①〜

初夏。
会議のため、オスカルはアンドレを共にベルサイユに向かった。
午後からの会議は問題なく早めに終わったので、オスカルは庭園を散歩してから衛兵隊に戻ろう…とアンドレに告げる。
日頃から「少し休憩しろ」と言っていたアンドレはオスカルの提案に笑みを浮べて頷いた。

宮殿の庭園は主に四季咲きの薔薇が至るところで美しさを競っている。
その中を通り過ぎた先…庭園の隅の一角に色とりどりの花が咲いていた。
「…これは?」
「グライウル(グラジオラス)だよ。6月〜10月あたりに花を咲かせる。お屋敷にもあるけどまだ蕾で…数日で咲くと思うけれどね」
「ふ〜ん。屋敷の庭園にもあったか?」
「うん。でも夏限定の花だから、庭園の奥の一角に植えてある。奥様が球根から育てたいとおっしゃったらしい。この花の形って剣に似てると思わないかい?」
「真っ直ぐ伸びた感じは想像できるな。グラディウスが名の由来とか?」
「〜そう。古代ローマの《剣》を意味するグラディウスに由来しているらしいよ。オスカルの好みは何色?」
「ん〜…薔薇のような華やかさは無いが、赤や紫、黄色のハッキリした色よりも淡い色…白や淡いピンクのほうが落ち着くな」
「うん。オスカルらしいね。グライウル全体の花言葉は、密会・用心・思い出・忘却・勝利…いろいろあるけど、色毎にもある。花言葉もグラディウス(剣)に由来に繋がる感じなのかな」
「ほう〜…。白とピンクは?」
「白色は《密会》で…、
ピンクは《たゆまぬ努力・ひたむきな愛》」
「え?ピンクは判るが白色が密会なのか?」
「うん。あとは…
赤色は《用心深い》
紫色は《情熱的な恋》
黄色は《勝利》のイメージなのかな」
「密会とは…剣から戦に繋がるのか?イメージが違うような気もするが」
「さすがオスカル、そうなんだよ。戦での密会や用心というのも考えられるけど、この花言葉は昔、人目を忍ぶ恋人達がこの花の数で密会の時間を知らせていたからともいわれてるんだ」
「なるほど…。古の時代から秘密の恋人同士の合図だったのだな。うん。やはりわたしは白と淡いピンクが好きだ。お前は?」
オスカルは白色からグラデーションがかったピンク色の淡い花弁に触れながら言った。
「…おれはピンク色が好きかな。濃いピンクでは無くて、白にピンクが混ざった淡いピンクがね。優しい色だから」
アンドレは指さすピンクは先程オスカルが触れた淡いピンク色の花。
アンドレは白色とピンク色が混ざり合う淡いピンク色のグライウルが好きだった。
優しい色合いは心が安まる。
花言葉を知ってからは尚更に……、オスカルに対する秘めた想い、ジャルジェ家の次期当主として努力し続けるオスカルを護る一途な想いは彼女に繋がる気持ちを表現したような淡いピンク色だったのだから。
「……ん。確かに優しい色合いだ。お前みたいに」
「おれはオスカルのイメージだった」
「わたしの?」
顔を覗き込むオスカルを見ながらアンドレは頷いた。

「アンドレ…、屋敷のグライウルが咲いたら、お前の部屋に持ってゆこう。リクエスト付きでな」
「何だよリクエストって」
オスカルは悪戯っ子の様に唇の端を上げて笑っている。

三日後の朝、庭園のグライウルも鈴なりに咲き始め、オスカルはアンドレにグライウルを手渡した。
早朝にコッソリ庭園に行ったとオスカルは笑う。
使用人の誰かが見ても次期当主に声はかけず見守っていたのだろう。
グライウルは白が二本、赤が一本。
白は鈴なりに計10の花を咲かせている。
赤は蕾が多く、一つだけ花をつけていた。
先日話していたオスカルのリクエストである。
可愛いく首を傾げているオスカルにアンドレは微笑む。
「了解いたしました」
頷くアンドレにオスカルは嬉しそうに笑った。

夜10時。
アンドレはオスカルの部屋を訪れた。
オスカルお気に入りの銘柄の赤ワインを一本用意して。

「アンドレ、よく判ったな」
「酒は底無しのお嬢様ですから」
「言ったな」
そう。赤いグライウルはワイン、白色は密会の時間。
フンと笑うお嬢様の額にそっとキスを落とし、アンドレが部屋に入るとドアを閉めたオスカルは広い背中に腕を回したのだった。

✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎

数日後の夜。
屋敷の仕事を終えたアンドレは自室に戻った。
着替えを済ませてオスカルの部屋に向かう為に。
お仕着せを脱ぎ、シャツ一枚の姿になったアンドレは机上に置いてあるグライウルの花に気付いた。
白色のグライウル?
誰が…?
二本のグライウルは白い花を鈴なりに咲かせていた。
アンドレは花の数を数えながら、使用人仲間の誰かだろうか?と首を傾げるが、いやいやと首を振る。
侍女達はアンドレのオスカルに対する想いを知っている者達が殆どなので考えにくい。
若い頃は何度か想いを告げられたことはあるが、良い使用人仲間を続けるためにも丁重にお断りしている。
…まさか、オスカル?
先日の彼女の言葉を思い出す。
『屋敷のグライウルが咲いたら、お前の部屋に持ってゆこう。リクエスト付きでな』
あれから2〜3日後の朝、朝食の時間に迎えに行ったオスカルの部屋で手渡されたグライウル。
その夜は指定時間にワインを持って行った。
オスカルは『お前の部屋に』と言っていたのに。
先日のグライウルはお試しか予行練習だったのか。
自分はオスカルを軸に動いているという自覚もあるから大概は阿吽の呼吸で動けると思っているが…これは彼女にしてやられたな。
アンドレは口元に笑みを浮かべる。
想いが通じて数ヶ月。
色恋には少々疎いオスカルだけれど、彼女の全てを愛している。
そんなオスカルが起こしてくれた行動…嬉しく無い筈がない。
この時間であれば使用人棟に来るまでに侍女達にも会ってしまっているだろうし……、明日は仕事が増えるか、同僚から冷やかしの言葉を受けるか…、どちらにせよ耐える自信はあるが、オスカルがおばあちゃんに会ってしまっていたら早朝からしばかれるな。
花は計11の花弁を付けている。
時計を見れば、あと20分程で時間だ。
アンドレはグライウルを抱えて自室を出た。
いつも薄着のまま動き回るオスカルの為、彼女の予備のショールもアンドレの部屋に置いてあるので、クローゼットの中からレースのショールも持ったのだった。

夕刻、衛兵隊からの帰りの馬車。
オスカルは「今夜は星が綺麗な夜になりそうだな。涼むのに丁度良い」と言っていた。
今日は天候も良い青空で微風が気持ち良かったと話しながら帰宅したのだ。
あの言葉が場所の指定ならば、オスカルは庭園にいる。
おそらくコチラが本命の密会の合図。
今夜のリクエストは…無事に密会できれば良しということか。
庭園の中ほどにあるガーデンテーブル…屋根もあるから天候が崩れても心配ないが、椅子に座って寛いでいてくれれば良いけれど。
庭園の中央に向かって歩みを進めていたアンドレの表情が和んだ。
椅子に座るシルエットが見える。
アンドレはランタンを片手に待ち人に近づいてゆく。
ランタンの灯りと人の気配に気づいたオスカルが顔を上げた。
「アンドレ」
「密会のお誘い。時間は合ってる?」
オスカルは作戦成功とばかりに嬉しそうに笑う。
「星が綺麗だ。涼むのに丁度良いな」
「うん。気持ち良い微風だね」
テーブルにグライウルとランタンを置いたアンドレはレースのショールをオスカルの肩に掛けた。
夏とはいえ夜風は身体を冷やすよ、と耳元で囁く。
「…ありがとう」
口元に笑みを浮かべて立ち上がったオスカルはアンドレの胸に顔を埋めた。
「…密会成功だ」
「まさか屋外とは…スリルがあったよ」
「ふふ、そうか?」
アンドレはオスカルの腰を抱き寄せた。
オスカルが顔を上げるとアンドレの唇がそっと合わされる。
指先は優しくオスカルの髪を梳く。
オスカルはアンドレに髪を撫でられるのが好きだった。
口元に笑みを浮かべ、オスカルもアンドレの背中に腕を回した。
啄ばむようなキスは深い接吻に変わってゆく。
長い接吻に立っていることもままならないらしいオスカルの身体を支えて椅子に座らせようとしたが、アンドレは腕を引かれ先に座らせられた。
オスカルは横抱きになるようアンドレの膝に乗った。
「一人掛けの場合はこれが良いな」
甘え口調のオスカルに応えるようにアンドレは身体を支えて頬をキスを落とした。
互いにこのひと時の時間が幸せを感じる。
「愛している」
夜空を見上げて互いに愛を囁き口づけを交わす。
アンドレはオスカルの髪を優しく梳きながら耳元にそっとキスをした。
「オスカル…使用人棟の廊下で誰にも会わずに行き来できたのかい?」
アンドレは心配そうに聞いた。
オスカルもアンドレもマロンのお小言を聞きたくはない。
オスカルはクスリと笑う。
「使用人棟の廊下でローズに会っただけだ。『ばあやさんが来るまでにお部屋にお戻りくださいませ』と言って、また厨房に戻って行ったみたいだが…ローズはわたしの就寝の準備も終わったから自室に戻るところではなかったのかな」
何か仕事が残っていたのだろうか?と首を傾げるオスカルにアンドレも「さぁ?」と首を傾げて曖昧に笑ってみせる。
ローズは祖母を使用人棟に近づけないよう動いてくれたのだろう。屋敷内にオスカルの味方がいるのは心強い。

「オスカル、そろそろ部屋に戻ったほうがいい」
「……ん……」
オスカルを胸に抱いているとはいえ、一時間近く夜風にあたれば彼女が身体を冷やす。
「アンドレと一緒にいれば温かい」
まだ離れたくないと瞳で訴えるオスカルの額にそっとキスを落とす。
「此処では身体を冷やすから……オスカルの部屋でも一緒にいられる。ショコラを飲みたい?」
「うん」
頷くオスカルの肩を抱き、屋敷に促す。
アンドレは片手にランタンを持っているためグライウルの花はオスカルが抱えた。
「ふふ。密会も楽しいひとときだな」
オスカルはグライウルの香りとアンドレの腕に包まれ微笑んだのだった。

◆終わり◆

✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎

〜追記〜
☆グライウル(グラジオラス)の花言葉は色々ありますが《忘却》の花言葉はナポレオン後のフランスでつけられたらしいデス。革命や戦争で人々が犠牲になり、いたましい出来事を忘れたい…という想いが込められているとのことデス。

✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎ ✳︎
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「ベルばら/二次創作SS」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事