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SWAN日記 ~杜の小径~

ベルばらSS ◆◆ 納涼会 ◆◆

ベルばらSS  ◆◆ 納涼会 ◆◆

 
🌹 🌹 🌹
 
ベルばら三が日SS、一話UPします。
夏らしく、B中隊一班の納涼飲み会のお話。
今年の夏も暑くなりそうですね〜‥。゚(゚´Д`゚)゚。
 
🌹 🌹 🌹
 
◆◆ 納涼会 ◆◆
 
来週からB中隊一班のメンバーが三日間の夏休みに入る。
短い休みでも纏まった休暇は嬉しいものなのだ。
 
アランが日誌を持って夕刻の司令官室にやって来た。
「ほい、今日の日誌っすよ」
アンドレに日誌を手渡しながらアランは笑って言った。
「隊長が衛兵隊に来てから、夏と年末年始の休暇が班ごとに連休で取れるよう組んでくれたから皆んな喜んでるんすよ。兵士の家族もね」
「そうか」とオスカルも微笑んだ。
やれやれといったふうにアンドレが口を開く。
「兵士達も休暇を連休にしたのだから、隊長も合わせて休暇を取らないとな。お前、放っておくと休暇も取らないからな。
今週末はA中隊の一班が休暇だから、みんな家族と楽しく過ごしているんだろうね」
「まぁ‥数日間でも連休になれば家族と過ごせるだろうと思ったが、今までの司令官は休暇の指示は出さなかったのか?」
「兵士のことなんざ二の次ですよ。自分の休暇は長い連休取ってましたがね」
ケッとアランは口を尖らせた。
「‥耳が痛いな」とオスカルは苦笑する。
「でも、アンタが来てから食事も良くなったし、環境も良くなったんだよ。パリ市民の寄せ集めみたいな奴らだけど、以前に比べれば少しは軍隊っぽくなってきていると思うがね」
「士官学校主席のアランに言われると真実味があるな」
「あぁ?アンタだって主席同然だろうがよ。士官学校でも伝説になってたんだぜ?」
「‥わたしはアントワネット様のお輿入れに合わせて士官学校中退だったからな‥主席卒業はしていないんだ。ちょっとアランを羨ましく思うぞ」
「〜んなこと言っても、アンタなら普通に行ってても主席卒業間違い無いだろうがよ」
「‥どうだっただろうな」
口元で笑うオスカルに「言ってろ!」とアランは文句を言っている。
二人のやり取りをみていたアンドレは笑みを浮かべて日誌をオスカルに差し出した。
 
「アンドレ。休暇前の納涼会、大丈夫か?」
アランはアンドレに問う。
「納涼会?」
オスカルは首を傾げた。
「飲み会っすよ。一班の連中の誕生月にパリの下町で飲み会してるんです。7月と8月は誕生日の奴が居ないから、夏の納涼会っつ〜ことで飲み会するのがここ何年かの恒例でね。あぁ8月はアンドレが誕生日だから、今は7月の誕生日の奴が居ないから今年は7月が納涼会ですけどね。アンドレの奴、誘ってもなかなか参加しないんでね、納涼会くらい来いって一班の連中も誘ってるんですよ」
「‥‥お屋敷の予定が無ければ参加できるかもしれないけど、まだ未定かな」
オスカルはジトリとアンドレを睨む。
わたしを差し置いてお前だけ飲み会に行くのか。
わたしは何も聞いてないし、誘われてもいないのに!
「‥わたしを呼んではくれないのか?」
「あのなぁ、パリの下町なんすよ。アンタがザルなのはアンドレから聞いてるが、大貴族の令嬢のアンタに何かあったら大変でしょうが!」
「おい、ザルとは何だ」
オスカルは再びアンドレを睨みつけた。
「ソコで怒る?〜ザルとは言ってないよ。オスカルは底無しに酒が強いって言っただけだ」
「何だそれは」
不貞腐れたようにオスカルが文句を言う。
「‥同じだろ。要は酒豪ってことだよな。そんなアンタが勤務あがりに将校の軍服で下町の飲み屋に行って何かあったらどうするんだよ」
「帽子を被ってアンドレの予備の軍服を借りれば良いのか?」
「オスカル、軍服のサイズが合わないから変装したつもりでも逆に目立つぞ」
アンドレは悩む。
オスカルは身を潜めたつもりでも彼女は普通に目立つ。
このお嬢様、言い出したら聞かないのだ。
ある意味で有言実行タイプ。
「フン。ではわたし用に衛兵隊の軍服を新調してもらう」
「オスカル‥オスカルの軍服サイズは採寸したメモがあるけど今からじゃ納涼会には間に合わない」
「だろうな。アラン!次の一班の誕生月飲み会にはわたしとアンドレも参加する。衛兵隊の軍服なら問題なかろう。アンドレとアランが居れば大丈夫だろう?」
「ちょ‥っ、大丈夫だろうって何だよソノ自信は!?」
「アンドレとお前が近くに居ればわたしの身の安全は守れるだろう?来月はアンドレの誕生月だしな」
酒好きのオスカルは折れない。
呆れたアランがアンドレを見ると諦めの境地のような顔をしていた。
コイツは隊長サマの考えも阿吽の呼吸でわかるのだろうか。
「アンドレ。良い考えがある!」
目を輝かせるオスカルに嫌な予感しかない。
アンドレは眉間に指を当てながら呟いた。
「おい、まさか納涼会をジャルジェ家でやるとか言うんじゃないだろうな」
「おぉ、よく判ったな。今夏の納涼会は屋敷の庭園なら夜は涼しいだろうし、庭のテーブルと椅子を集めれば一班が集まっても大丈夫だろう?中庭なら無礼講で飲み会が出来るな」
オスカルは瞳を輝かせた。
 
こうなってしまうとオスカルの独壇場だ。
アンドレは瞬時に状況を想像する。
中庭のテーブルと椅子を集めて、食事は厨房に頼んで食べ易い料理を山盛りにしてもらって、酒は‥高価なモノは必要ないか。おれも接客に回らないと収集つかなくなる事態になるな。
 
「アンドレ、ジャルジェ家の中庭で納涼会で良いな?」
嬉々とするオスカルをみてアランもアンドレを見やると。
既に開き直っているのか、やれやれといった風に隊長をみている。
「‥‥何とかするよ」
結局アンドレが折れた。
隊長はご機嫌だ。
この二人、最近雰囲気が変わったのは気付いてたが、アンドレの片想いが通じたんだろうな。
ますますアンドレが隊長に甘くなるのは目に見えている。
アランは口元に笑みを浮かべた。
「お!やりぃ!隊長のお屋敷の中庭っすね。一班の連中も喜びますぜ」
肩を竦めるアンドレの隣でオスカルは嬉しそうに笑っている。
 
その後。
ジャルジェ家での納涼飲み会は賑やかに行われた。
休暇前の夕刻、勤務あがりに一班のメンバーでジャルジェ家に行き。
ブラウスにジレ姿のオスカルの私服に一班の連中も見惚れている。
ブラウス姿で庭に行こうとするオスカルにアンドレは慌ててジレを着させた。
(オスカル!少しは自覚してくれ)
このお嬢様は無頓着すぎるのだ。
薄着のブラウス姿では兵士達の目に毒だろう。
 
アンドレは侍女達と料理や酒を運びながら、合間合間に酒も飲み、料理もつまむ。
兵士達に料理の説明をしつつ、オスカルには「飲み過ぎるなよ」と小言も言っているが、アランや他の連中に次々に酒を注がれている。
〜が、オスカルが酔い潰れることは無さそうだ。
その辺はアランがオスカルの隣である程度制御してくれているようである。
やはりこのお嬢様はザルだな。
大酒飲みだけど、唯一無二の存在。
大切な‥愛しい女性。
 
納涼会を楽しみ、夜中になって一班の連中は帰って行った。
来月はオレの誕生月の飲み会か‥‥。
オスカルの衛兵隊軍服新調は本気も本気。
毎月からの飲み会に参加する気満々である。
静かになった中庭でほろ酔い気分のオスカルはワインを楽しんでいる。
そんなオスカルを優しく見つめ、アンドレは立ったままボトルに残ったワインをラッパ飲みした。
また来月から大変だ。
「‥行儀が悪いぞ」
「今夜は無礼講だろう?」
可笑しそうに二人で笑い合う。
アンドレは腰を屈め、オスカルの唇にキスを落としたのだった。
 
◆終わり◆
 
 
〜お読みいただき、有難うございました。
SWAN/白鳥いろは
 
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