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SWAN日記 ~杜の小径~

間の楔SS ◆◆熱帯夜のオアシス◆◆

💐 💐 💐
 
白鳥です。
昨日は猛暑の夏コミ会場のベルばらスペースで書き掛けの楔SSをポチポチと進めてました。
気持ちだけでも涼しくなると良いなぁ‥と(笑)
2024年夏コミ、ホント暑かったデス。
夏コミにサークル参加&一般参加された皆さま、お疲れ様でした。
スペースにお立ち寄りくださった皆さまも有難うございました^_^
 
💐 💐 💐
 
注:《間の楔》二次創作SSです。
イアソン×リキ。
アパティア時代の二人のお話てす。
 
💐 💐 💐
 
《間の楔》二次創作SS
◆◆熱帯夜のオアシス◆◆
 
ブラック・マーケットで仕事を終えた夕刻。
「リキ、お疲れ。イアソンは今夜アパティアに来るのだろう?」
「うん。昨日まで外交で何日か他の惑星行ってたからな」
リキは肩や首を回す仕草をして笑った。
「どうした?」
「何か朝からちょっと怠くてさ」
そういえばリキは昼食も少ししか摂っていなかったとカッツェも思いあたる。
「朝メシは食べてきたのか?」
「食欲無かったから珈琲だけ」
カッツェは大きく溜息。
イアソンにも《リキは一人になると生活が乱れがちになるようだから様子をみてやってほしい》と言われていたカッツェである。
黙ってリキの額に手を添えた。
‥やっぱり熱っぽい。
風邪ひいてるな。
「‥喉は?」
「痛く無えよ」
声は掠れてはいない‥風邪の発熱だろう。
リキは疲れている時に一人だとシャワー後そのままソファーで寝てしまったりするらしく、夜中にエオスからアパティアに来たものの、その姿をみて口では注意するが内心呆れながらベッドに運ぶことがある‥とイアソンも言っていた。
氷の帝王といわれたあのイアソン・ミンクがペットのリキに執着し、心配までしているのだ。
イアソンもカッツェに対して命令している訳では無い。
リキは無頓着すぎるところがあるため放っておけないのだ。
カッツェも元ファニチャーゆえ、手取り足取り面倒を見ることも出来るが、性格上リキは嫌がるだろうことも判っているため、流石に心配な時は手を出すが普段は注意や小言で済ませている。
「熱っぽいぞ。何か軽く用意するから食べて解熱剤も飲んでから帰れ」
「悪りぃからいいよ」
「ダメだ。お前そのまま帰って寝てしまうだろう。またイアソンに怒られるぞ」
リキは不貞腐れた顔をする。
イアソンに怒られるのは嫌なようで、そんなリキをみてカッツェも苦笑いだ。
おそらく怒られるだけでは済まされないのだろうが‥‥イアソンなりの仕置きもあるのだろう。
「ちょっと待ってろ。インスタントで悪いがスープを温めてやる。サラダとパンも食べるんだぞ」
簡易キッチンに入って行ってしまったカッツェをみて、立っていたリキは椅子に座った。
世話焼きモードに入ってしまったカッツェに反発するのも大変なのだ。
少しするとカッツェはトレイを持って戻って来た。
「俺も一緒に食べるから、お前も食べるんだぞ」
「‥ん。悪りぃなカッツェ」
リキも素直に答えた。
普段の言葉遣いはスラム上がりの口調であるものの元々リキは素直な性格だ。
スラムでもリキを嫌う者は居なかったのだろう。
イアソンもそんなリキに魅了されたのかもしれない。
用意した夕食をゆっくりながら半分以上は食べたので、水と解熱剤の錠剤をリキの前に置く。
「本当はラウール様の薬のほうが効きは早いんだろうが‥とりあえず飲んでおけ」
「‥ん。サンキュ」
解熱剤を飲むのを確認したカッツェは、帰るリキをドアまで見送った。
「アパティアまで送ったほうが良いか?」
「‥大丈夫だよ。子どもじゃねえし。カッツェだって忙しいだろ」
「お前が途中でブッ倒れる方が心配だ」
お前よりイアソンが心配して大騒ぎしそうなのだから。
「イアソンもカッツェも過保護過ぎじゃね?」
「放っておくと薬も飲まずに悪化しそうだからな」
笑うカッツェにリキは口を尖らせた。
「メシ食って薬も飲んだから、アパティア帰ってイアソン戻るまで寝てりゃ少しは楽になってるだろ。悪かったなカッツェ」
「なに、気にするな。気をつけて帰れよ」
「‥ん。じゃあな」
「ちゃんとベッドで寝るんだぞ!」
リキの背中に声をかけると、了解とばかりに右手を上げてリキはエアカーに乗り込んだ。
 
リキを見送ったカッツェはイアソンに電話を入れる。
「どうしたカッツェ?」
「イアソン様、先程リキを帰宅させました。風邪気味で少し熱っぽかったので軽く夕食を食べさせて解熱剤も飲ませてあります」
カッツェはリキの様子を細かく伝えた。
「世話を掛けたな。リキもベッドで寝てくれていれば良いのだが」
「一応注意はしておきましたが‥‥」
「そうか。言いつけを守っていることを願おう。明日はリキを休ませる」
「‥はい。わかりました」
イアソンは昨夜外交から帰ったとのことだから明日はオフなのだろう。
リキの体調が本調子で無いならアパティアから出さないだろうと思っていたのでカッツェとしても想定内ゆえ問題は無い。
 
イアソンがアパティアの最上階にあるプライベートルームに入ると部屋の灯りは消えていた。
廊下を歩くとセンサーが感知し灯りを付けてゆく。
リビングのソファーには居ない。
『カッツェの言いつけを守ったようだな』
キッチンから氷と冷たい水を入れたグラスを持ち、寝室のドアを開けて確認するとキングサイズのベッドの端でリキは眠っていた。
タンクトップ一枚と下着姿、熱いのかシーツは足元に蹴飛ばし、額に汗をかいていて顔も赤いようだ。
「‥リキ。大丈夫か」
イアソンの指がリキの頬を触ると、ゆっくりと目蓋を開いたリキはイアソンを見た。
グラスをそっと頬に付ける。
「‥お帰り‥。あんた冷たくて気持ちいい‥」
イアソンの髪がリキの肩に流れ、指とグラスに触れられた頬も体温が上がっているリキには気持ちが良いらしい。
「まだ熱は下がって無いようだな」
「ん‥。カッツェに薬貰ったんだけど、もっと早く飲んどけば良かったかも‥‥」
「朝から怠かったようだが?」
「朝イチは肌寒いのも気のせいかと思ってたら熱あがっちまったみてぇ」
「‥そうか」
こんなリキだから、カッツェもダリルもキャルも世話焼きになってしまうのだろうとイアソンは思う。
イアソンは服を脱ぎ、ベッドに入った。
氷と水を口に含み、リキに口付ける。
リキは喉を鳴らして水を飲み込み、氷を噛み砕いた。
「冷たくてうまい」
「もう少ししたら薬を飲め。ラウールから解熱剤を貰ってきた」
「‥‥ん‥‥」
身体が怠いらしいリキはイアソンの髪を掴んで胸に抱き込んでいる。
髪が涼しいのか。
イアソンは口元に笑みを浮かべ、優しくリキを抱き締めると。
人工体の身体の温度を下げた。
イアソンの身体の体温がヒンヤリとしてくる。
「‥冷たくて気持ちいい‥‥人工体ってそんなコトも出来んのか」
リキ的には熱帯夜のオアシスだった。
「ブロンディーはな。普段は人肌の体温だ」
「‥体温も上げられるってことか?」
「そうだな」
「‥これから熱出て熱くても寒くてもあんたが居れば快適‥」
「好き好んで発熱されても困る」
「はは‥なぁ‥このまま寝てもいい‥?」
「あぁ。その前に薬だ」
イアソンは薬と水を口に含み、再びリキに口移しで飲ませた。
リキが薬を飲み込んだのを確認したイアソンは言う。
「暫くこうしているから少し眠れ」
「‥ん‥‥」
小さく頷いたリキは人工体の身体に抱きついた。
普段反抗的な態度のリキも流石に身体がつらかったのか素直に抱きついてくる。
素面で抱きついてくることは無いであろうリキ。
漆黒のバジュラ。
どちらのリキも《リキ》なのだ。
気持ちが良いのか直ぐに寝息を立て始めたリキの髪をイアソンは優しく梳く。
 
「‥リキ。早く熱を下げろ。明日はゆっくり寝られると思うなよ」
既に夢の中にいるリキの耳元にイアソンは囁いた。
 
翌朝リキの体調が本調子でなく熱もあるようなら‥とラウールが持たせた薬も解熱剤の他にある。
『ラウール曰く、手っ取り早いと言っていたが坐薬はリキが嫌がるだろうから‥眠っている朝方にでも入れておくとするか』
明日の朝またリキが睨みながら文句を言って食ってかかる顔が目に浮かびイアソンは口元に笑みを作る。
ーーーその表情が私を煽っているというのにリキ本人は自覚が無いのだから。
リキをそっと抱きしめ、イアソンはひとときの眠りについたのだった。
 
 
🌻後日談🌻
 
ブラック・マーケット。
リキは一日休み、翌日には仕事復帰していた。
朝、カッツェはリキをみて言う。
「リキ、体調は大丈夫なのか?」
「うん。イアソンって体温上げたり下げたり出来るんだぜ?なんか超快適だった。ラウールの薬飲んで、イアソンが体温下げてくれて抱きついて寝てたら一晩で熱は下がったんだ」
「お前‥イアソンを抱き枕にしたのか」
「抱き枕っていうか‥保冷イアソン?」
キョトンとしているリキにカッツェは呆れながら煙草に火をつけた。
この惑星アモイでブロンディーを抱き枕に出来る人間はリキだけだろう。
其れを許すのもリキ限定でイアソン・ミンクだけだろう。
「でも熱下がったら容赦無いんだぜイアソンの野郎」
「そりゃ熱っぽいリキに対して一晩抱き枕に徹したのなら反動もあるだろうな」
言動とは裏腹にイアソンもリキの体調不良を心配していただろうことは判る。
お前の言動や表情もイアソンを煽る要因だろうに‥‥という言葉は飲み込んだ。
リキの首元には情事の痕が残っている。
身体にも多数の痕があるのだろう。
「しかも朝方寝てる間に坐薬も入れやがった」
そん時に目が覚めたけど抵抗出来ねえし。
早く体調戻せるからとか何とか‥ラウールに持たされたらしいんだけど、とリキは愚痴っている。
「お前が素面なら暴れるからだろう」
「そりゃ暴れるだろ」
「でも体調も戻ったのだから結果オーライじゃないのか」
「カッツェ、あんたどっちの味方だよ」
「さぁな」
カッツェは肩を竦ませて笑った。
イアソンとリキが普段の通常モードになれば、周囲も上手く回るし、ラウールも自分もトバッチリを受けなくて済む。ゆえにラウールもリキの体調を戻すためにアレコレと世話を焼きイアソンにリキ用の薬を持たせたのだろう。
自分がファニチャー時代のイアソンとラウールからは考えられない変化だ。
イアソンとリキ。
この二人を繋ぐものはブロンディーとペットという鎖だけでは無いのだろう‥と、イアソンがリキの居住をアパティアに移してからの様子をみてカッツェも日々感じていた。
また愚痴り始めたリキの前にカッツェは珈琲を置いたのだった。
 
◆終わり◆ 
 
✴︎お読みいただき有難うございました。
タイトルこそ《熱帯夜のオアシス》なんてお洒落を気取ってますが‥副題は《抱き枕》です(笑)
 
SWAN/白鳥いろは

コメント一覧

白鳥いろは
マリPさま

こんにちは。白鳥です。
マリPさま、コメント有難うございます^_^
先日のコミケ、暑い中お疲れ様でした。
ベルばら同人誌もご購入いただき有難うございました。
スペースでは楔のお話をたくさんてきて嬉しかったです。
幸せなひとときでした(≧∇≦)
暑さのなか朦朧としながらSS仕上げてました(笑)

またいつかお会いできる日を願いつつ‥
今後ともよろしくお願いいたします。

SWAN/白鳥いろは
マリP
Swanさま

こんにちは!先日コミケで隣におりました、間の楔ファンでございます。偶然の出会いでベルばらの本を購入でき、間の楔のお話もできてすごくうれしかったです。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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