前回記事にした、友達がパチンコ屋で被害に遭ったって話。
あの話で僕が考えたことを今回は書きます。
まずはXの罪責。
Xは、Aが遊戯していた台に残っていた金権カードを盗っとるわけです。
だから、窃盗罪(刑法235条)かな~って気がします。
でも、窃盗罪は、他人の財物の占有をこっそり自分に移す犯罪です。
ここで、Xがパチンコ台から9500円分のカードを抜いた時、
そのカードの占有がまだAにあったといえるでしょうか?
ちょっと考えてみます。
Xが犯行に及んだときというのは、Aが台を離れて数分経過後です。
また、その時Aはパチンコ屋から離れた景品交換所にいました。
この状況を素直に捉えると、金権カードの占有はAにないと考えられそうです。
でも、事実的支配力が及んでいれば占有が認められます(最判昭和32.11.8)。
そこで、今回の場合も金権カードにまだAの事実的支配力が及んでいたかどうかを検討します。
が、しかし、
パチンコ屋という人の出入りの激しい遊技場であって、
Aが店を出ていたことを考えると、
たとえ数分しか台を離れていなかったとしても、
金権カードに対するAの事実的支配力は離れてしまったとみるのが普通かと思います。
以上から、金権カードにAの占有は及んでいないことになります。
とすると、犯人Xは、金権カードに対するAの占有を侵害して自己の占有に移しているわけではないので、
窃盗罪は成立しないことになります。
じゃあ、どうなるか。
金権カードはAの占有を離れてしまっているので、
次に、遺失物等横領罪(刑法254条)の成立が考えられます。
これは、占有を離れた他人の物を文字通り横領する犯罪です。
ここで、「横領」がどんな行為をいうのか、について複数見解がありますが、
とりあえず、あたかも自分の物としてそれを使っちゃうこと、
くらいに考えとけばいいと思います。
するってーと、うん。
さすがに、これにはあたりそうです。
だって、Aの占有は離れてるし、Xだって自分の金にしようとしたんでしょ。
というわけで、
遺失物等横領罪が成立です。
しかーし、
よくよく考えてみると、
Aの占有を離れた瞬間、その金権カードの占有はパチンコ屋にヒュイッと移りますよね。
(パチンコ屋って店内をいろんな方法で監視・管理してますから)
とすると、
Xの行為はやっぱり窃盗罪ではないのか?
つまり、たしかにXはAの占有は侵害していないけど、
パチンコ屋Bの金権カードに対する占有は侵害したと考えられるのです。
(似た例:大判大正8.4.4と札幌高判昭和28.5.7)
というわけで、
Aに対しては遺失物等横領罪という評価となりますが、
パチンコ屋Bに対しては窃盗罪という評価となります。
ん?
じゃあ、実際Xがつかまった時、どっちの罪で処罰されるのか?
これには条文があります。
刑法54条前段(観念的競合)
「一個の行為が二個以上の罪名に触れ・・・るときは、その最も重い刑により処断する。」
窃盗罪が10年以下の懲役。
遺失物等横領罪が1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料。
だから、Xは重い方の犯罪である窃盗罪で処罰されることになります。
設問1は以上です。
次に、Aが民事上いえること
まず、犯人Xに対しては、
不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。
では、被害現場がパチンコ屋BだったんでBにも何かいえるでしょうか?
BはAから9500円分の金権カードの占有を意図せずに承継しているので、
不当利得に基づく返還請求(民法703条)ができそうです。
でも、すぐにXに盗られてしまっていて、Bの手元にそれが残っていないので
利益を得たとはいえず、703は不成立です。
あとは、
仮に従業員の数があまりに少ないetc店内の管理状況にBの落ち度があったとすれば、
ひょっとしてらそれを「過失」として709で損害賠償請求できるかもしれません。
これで以上です。
最後まで付き合ってくれた人、お疲れ様。
♪SIAM SHADE 1/3の純情な感情
あの話で僕が考えたことを今回は書きます。
まずはXの罪責。
Xは、Aが遊戯していた台に残っていた金権カードを盗っとるわけです。
だから、窃盗罪(刑法235条)かな~って気がします。
でも、窃盗罪は、他人の財物の占有をこっそり自分に移す犯罪です。
ここで、Xがパチンコ台から9500円分のカードを抜いた時、
そのカードの占有がまだAにあったといえるでしょうか?
ちょっと考えてみます。
Xが犯行に及んだときというのは、Aが台を離れて数分経過後です。
また、その時Aはパチンコ屋から離れた景品交換所にいました。
この状況を素直に捉えると、金権カードの占有はAにないと考えられそうです。
でも、事実的支配力が及んでいれば占有が認められます(最判昭和32.11.8)。
そこで、今回の場合も金権カードにまだAの事実的支配力が及んでいたかどうかを検討します。
が、しかし、
パチンコ屋という人の出入りの激しい遊技場であって、
Aが店を出ていたことを考えると、
たとえ数分しか台を離れていなかったとしても、
金権カードに対するAの事実的支配力は離れてしまったとみるのが普通かと思います。
以上から、金権カードにAの占有は及んでいないことになります。
とすると、犯人Xは、金権カードに対するAの占有を侵害して自己の占有に移しているわけではないので、
窃盗罪は成立しないことになります。
じゃあ、どうなるか。
金権カードはAの占有を離れてしまっているので、
次に、遺失物等横領罪(刑法254条)の成立が考えられます。
これは、占有を離れた他人の物を文字通り横領する犯罪です。
ここで、「横領」がどんな行為をいうのか、について複数見解がありますが、
とりあえず、あたかも自分の物としてそれを使っちゃうこと、
くらいに考えとけばいいと思います。
するってーと、うん。
さすがに、これにはあたりそうです。
だって、Aの占有は離れてるし、Xだって自分の金にしようとしたんでしょ。
というわけで、
遺失物等横領罪が成立です。
しかーし、
よくよく考えてみると、
Aの占有を離れた瞬間、その金権カードの占有はパチンコ屋にヒュイッと移りますよね。
(パチンコ屋って店内をいろんな方法で監視・管理してますから)
とすると、
Xの行為はやっぱり窃盗罪ではないのか?
つまり、たしかにXはAの占有は侵害していないけど、
パチンコ屋Bの金権カードに対する占有は侵害したと考えられるのです。
(似た例:大判大正8.4.4と札幌高判昭和28.5.7)
というわけで、
Aに対しては遺失物等横領罪という評価となりますが、
パチンコ屋Bに対しては窃盗罪という評価となります。
ん?
じゃあ、実際Xがつかまった時、どっちの罪で処罰されるのか?
これには条文があります。
刑法54条前段(観念的競合)
「一個の行為が二個以上の罪名に触れ・・・るときは、その最も重い刑により処断する。」
窃盗罪が10年以下の懲役。
遺失物等横領罪が1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料。
だから、Xは重い方の犯罪である窃盗罪で処罰されることになります。
設問1は以上です。
次に、Aが民事上いえること
まず、犯人Xに対しては、
不法行為に基づく損害賠償を請求できます(民法709条)。
では、被害現場がパチンコ屋BだったんでBにも何かいえるでしょうか?
BはAから9500円分の金権カードの占有を意図せずに承継しているので、
不当利得に基づく返還請求(民法703条)ができそうです。
でも、すぐにXに盗られてしまっていて、Bの手元にそれが残っていないので
利益を得たとはいえず、703は不成立です。
あとは、
仮に従業員の数があまりに少ないetc店内の管理状況にBの落ち度があったとすれば、
ひょっとしてらそれを「過失」として709で損害賠償請求できるかもしれません。
これで以上です。
最後まで付き合ってくれた人、お疲れ様。
♪SIAM SHADE 1/3の純情な感情
なぜなら結論は、被害者に対する窃盗罪のみが成立するからです。
最判平成16年8月25日では【公園のベンチ上に置き忘れられたポシェットを領得した行為は,被害者がベンチから約27mしか離れていない場所まで歩いて行った時点で行われたことなど判示の事実関係の下では,窃盗罪に当たる。】としたのであり、同判例の射程はこの場合にも及ぶと思われます。
その他、裁判例でも多くの場合が、占有概念を広く考えていることから、この程度の時間的場所的接着性があれば、確実に占有が認められると思われます。
次に、遺失物横領罪とは、占有者がいない場合に成立する罪ですので、仮に店に占有が移っていたとしたら、成立するものではないのです。窃盗罪と遺失物横領罪が観念的競合になる場合はほぼ見たことがありません。
あくまでmmmの意見ですがどうでしょうか。
僕自身気になっていた箇所を突いて頂きました(笑)
やっぱそう考えるべきなんですね。
実は、被害に遭った友人(問題文の中ではA)が
警察で届けを出したらしいんですが、
それが「遺失物届け」だったらしく、
僕はそれに引っ張られてしまいました・・・
いつも楽しむ拝見させていただいています。
さて、Bですが、
商法594条2項は検討する価値あるのではないでしょうか?
結論はともかく、検討する価値がありそうです。
商行為なんて勉強するのいつ以来でしょうか(苦笑)
リーガルマインドを引っ張り出しました。
こうやってたわいもないことでも
法的にいろんな問題が考えられるんですよね。
また勉強になりました。
ありがとうございます。