セントシュタイン三丁目

DQ9の二次創作(主にイザ女主小説)の、全くの個人的趣味なブログです。攻略の役には立ちません。悪しからずご了承ください。

たまには依頼側

2011年09月16日 23時55分14秒 | クエスト184以降
 今日も忙しい一日を終えて、ミミは充実感を伴う疲労で、くたりと気持ち良さそうに大きなクッションにもたれていた。
 入浴を終えて部屋に戻ってきたイザヤールは、そんな彼女を見つめ、呟いた。
「考えてみたら、おまえは人の頼みごとばかりしていて、自分ではあまり頼みごとをしないな」
 そう言われて、ミミは閉じていた長い睫毛を持ち上げて、きょとんとイザヤールを見つめた。
「え?そんなことないですよ」
「そうかな?」
 イザヤールはしばらく考えていたが、やがて微笑んで囁いた。
「たまには、おまえが私にクエスト依頼をする、というのはどうだ?なんでもいいぞ」
「え・・・」
 でも。ミミは、少し考え込んだ。イザヤール様は、魔王戦にも錬金素材集めにも、いつも喜んでついてきてくれるし。綺麗な物もときどきプレゼントしてくれるし。頼みごと・・・。
 なでなでしてください、とか、キスして・・・とか、は・・・。クエストじゃないし・・・。あれ、でも、前にイザヤール様に「頬にキスしてくれ」ってクエスト受けたことがあったっけ。でもでも。・・・クエストにしなくても、してくれるように・・・なったし・・・。
 考えているうちに頬が染まってきたのを、イザヤールに見咎められた。
「どうした?」
「いえ、なんでもないです・・・」
「ひょっとして、良からぬ依頼か?」彼のからかうような笑顔に、艶然とした気配が加わった。「どんな依頼だ?言ってごらん」
 ミミがクッションに隠れるようにして首をぷるぷる振ると、イザヤールはミミの傍にしゃがみこんできて、濃い紫の瞳を覗き込んで、熱っぽく囁いた。
「言いなさい」
「ほんとに・・・思いつかないんです・・・だって」ミミは瞳を潤ませ、イザヤールを見上げた。「今、幸せなんだもの・・・。この幸せが続きますように、それしか願いごと、ないんだもの・・・」
「ミミ・・・」
 彼は恋人の名を呟くと、彼もまた幸せそうに吐息して、瞳を閉じ、先ほどミミが思った「クエストでなくてもしてくれること」をしてきた。

 ようやく顔が離れて、ミミは頬を染めたまま呟いた。
「あ・・・ひとつ、思い付きました」
「なんだ?」
「実は明日の晩、またダンスの前座頼まれているんです。今回も一緒に踊って頂けませんか」
「喜んで」
 イザヤールはクエスト「たまには依頼側」を引き受けた!
「・・・イザヤール様と一緒に踊ってもらえるなんて、天使だった頃には夢にも思いませんでした・・・」
 幸せそうに呟くミミ。
「私もまさか、人前で踊るようになるとは、そもそも踊ることがあるとは思わなかった」
 彼は答えて、愉しげに笑った。
「あ、でも、お礼はどうしよう」
 ミミが少し悩み始めると、そんなに厳密にしなくても、とイザヤールは苦笑する。
「礼はキスがいい」
 彼が笑って言うと、お礼じゃなくてもします、とミミが口を滑らせた。
「そうか。ならまたさっそく」
 冗談めかした口調でイザヤールが目を閉じると、意地悪、とミミは少し目を潤ませてから、彼の指先に唇を触れた。
「これもキスには違いないです」
「・・・おまえこそ意地悪だな」
 やられた。そんな表情で、彼はまた苦笑した。

 翌晩。大喝采の中無事舞台も終わり、二人きりの急ごしらえの楽屋で、ミミは少し緊張した顔で、イザヤールを見上げた。
「どうした?出番前より緊張した顔をして?」
 彼が首を傾げると、ミミは消え入りそうな声で囁いた。
「クエストの、お礼・・・」
 華奢な腕が逞しい首に回され、少しためらうように、ゆっくりと花びらのような唇が、イザヤールのそれに重ねられてきた。
「・・・っ」
 今宵の衣装は、二人とも、肌を大胆に露にしたもの。舞い終えた汗ばむ体が、いつもより広く直接触れ合う。それが更に熱を増していく。優しさや愛情だけでないものが、互いの体を支配していった。
 火を点けた。そんな言葉が相応しく、その熱に僅かにミミは怯え、だがすっかりその熱に囚われた。一時解放され、覗き込んでくる瞳は、その熱全て封じ込めたように、熱い。
 壁の向こうから聞こえる拍手が、二人に今居る場所を思い出させた。名残惜しそうにもう一度軽く唇を重ねてから、二人は体を離す。そして間もなく、メインの踊り子が、上機嫌で楽屋に入ってきた。
「おかげで今日も大成功~♪ま、あたしとあなたたちなら、当然よね、祝杯に行きましょ☆」
 これは一晩中付き合わされそうだ。続きはまた当分、お預け。
 イザヤールはまたもや苦笑し、ミミは恥ずかしそうに目を伏せてローブをはおり、一同は酒場へと向かった。〈了〉

コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
1日で3本更新とは凄いですっ!! (ちいはゲーマー)
2011-09-17 00:31:21
照れながらクエストのお礼をするミミさんとその後イザヤール師匠のお預けを食らった光景を頭に浮かべたら思わずニヤニヤしてしまいました




あっ、下記は個人的意見ですので無視していただいて構わないです

先程のミミさんたちにはフリージアでしたが、肌を露出したこのダンスシーンのイメージだとコルチカムが合うかもしれませんね
ちなみに花言葉は"危険な美しさ"
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ちょっと反省 (津久井大海)
2011-09-17 02:32:10
ちいはゲーマー様

おおお、こちらにも!申し訳ないやらありがたいやら・・・!
自分でも三本は更新し過ぎだと、ちょっと反省しました。読む方の身にもなれ、と。捏造クエストシリーズ休みたくなくてつい・・・///もう当分やりません(爆)

コルチカムってサフラン系だったんですね、鮮やかな色が印象的な、綺麗な花ですね☆(検索機能万歳)
再会話から約一年半経つとこうなってる、みたいな感じになってしまいましたw
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