ゴダイゴと大林監督と斎藤洋介と岸部シローとアサノ氏と進歩と調和と

俳優の斎藤洋介氏が亡くなられた。

　斉藤氏といえば山田太一脚本のNHKドラマ「男たちの旅路」の「車輪の一歩」という回が印象に残っている。
　というのも当時、好きだったゴダイゴの「THE SUN IS SETTING ON THE WEST」が全編にフィーチャーされ感動的に仕上がっていたから（当時の感想）
　スプリングスティーンの曲が歌詞の内容を無視して保守派のキャンペーンソングに利用されたとかなんとかいうハナシもあったが、この曲とて歌詞はドラマの筋立てとは一切関係ない。
　ボストンのバークリー音楽院卒のミッキー吉野（ゴダイゴのリーダー）が劇伴をしているんだから、歌詞の内容を無視したBGMといのはアホの所業などではなく、そもそもアリなんぢゃないかと思う。今日のTBSラジオ「たまむすび」でも世の中の人の多くは日本語であっても歌詞なんか聞いちゃいないということが判明していた。

　ゴダイゴの歌詞を丸暗記したおかげで英語の学習には随分と役立ったが、この曲だけはつまづいた。英作文でTHE SUN IS SETTING ON THE WESTと書いたらしっかりバツをもらった。

　この「ザ・サン・イズ…」は「OUR DECADE」という70年代の10年間を総括するコンセプトアルバムに収録されていた曲で「日は西に沈み、東から登る」という歌詞で西洋の凋落とアジアの台頭を暗喩している。
　アルバムの冒頭は「Progress and Harmony」という曲で、日本語でいうと「進歩と調和」。これ実は大阪万博のコンセプトなんだが、この文言、リアルタイム世代ですら忘れてるのではないだろうか？

　うちの母は太陽の塔も含め岡本太郎の「顔」のシリーズは文化の盗用をしていると言い張っていた。アフリカだか南米だかのお面でそっくりなのがあったのだと。当時はデザインなんてそんなもんだろと流していたが、昨今の風潮を見ているとあながちその指摘もまちがっちゃいないかも。一過性の風潮で「罪」が決まるとするとなんとも理不尽だが、奴隷制度を辞めたような、気づきの類だとしたらそれは進歩、カイゼンだ。

　とりあえずその歌は「進歩と調和をかかげたけれど失敗におわった」というオチ。世界情勢のことを言っているのであって万博が失敗におわったと言っているわけではないが、高度成長期は量と質の区別も希薄で、とにかくなんか新しいものねじこんでおけばいいという短絡的な企みだったに違いなく、技術＆新しモノ信奉のなれのはてが原発事故ぢゃないだろうか。そんなこんなの総括もなしに、性懲りもなく、また万博をやろうってんだからなんだかなぁというハナシだ。

　五輪ですでに震災復興を妨げているのにさらにダメ押すのかという。

　アルバムの次の曲順の「DRAGON'S COME ALIVE」はピンポイントで中国のことを謳っている。ゴダイゴに出会って、バンドがやりたくなりギターをはじめたものの、彼らの楽曲は当時急激に発展したシンセサイザーなどのキーボードがメインでギターソロのある曲が少なくギター小僧の教材としては物足りなさもあった。そんな中でこの曲はギターソロをフィーチャーしたロックンロールナンバーだった。奇しくもそのギタリストの浅野孝巳氏も今年の5月に亡くなっている。

 

「OUR DECADE」は前年の日テレドラマのサントラ盤でもあった「西遊記（Magic Monkey）」による大ブレークの次にリリースされたので、なにかインパクトに欠けた印象だったが、今,聴き返してみるとポップミュージックという意味ではむしろ粒ぞろいのクオリティだ。「現代用語の基礎知識」みたいな歌詞コンセプトが説教くさく感じてたのかもしれないが、社会派の歌詞がゴダイゴの魅力だとも思っていたはずで、人の印象なんていい加減なものだ。

　その「西遊記」で沙悟浄を好演していた岸部シローも亡くなった。さらにはゴタイゴが主題歌を歌った「ハウス」で映画監督デビューした大林宣彦氏も今年の4月に鬼籍に入られた。

今年はゴダイゴの周辺がなんかつせない。
が、
これは大林宣彦氏が座長となって「総括せよ」と天国からはっぱをかけているのかもしれない。

　今の政権はせっせと文書も捨て、過去はなかったことにしようとしているが、いちいち忘れてたら進歩はない。

今も日本はバリアフリー後進国かもしれないが、昔はもっとひどかった
と
斎藤洋介氏ら名優たちの演技が伝えてくれる

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