ONLY DAILY ・・・ あおいあお

毎日が昨日になり、今日になり、明日になる。
誰のものでもない、自分の心を自分の言葉で。

極彩色の蝶

2024年06月23日 | 記し

ある日、90歳を超える母が目を丸くしてこう云うのだ。

「夜中に目が覚めるとね、黒い蝶が飛んでいたの」

母は、認知症の症状は一切ない人である。

多少神経質で心配性ではあるが、日常生活に差し障りがあるわけではない。

肉体的には弱ってきてはいるが、自立した生活を送っている。

ただ心配事が多く、ストレスも一人で抱え込むタイプである。

なかなか寝付けなく、処方してもらった睡眠薬を飲まないと眠れないとも言っていた。

私は、夢でも見たのだろうと、軽く受け流した。

その日母もそれ以上はそのことに触れなかった。

それから数日して、母は再び同じことを言った。

「黒い蝶がひらひらと飛んでいるのよ。本当よ」

何か訴えているかのようでもあった。

母は2ヶ月に一度のペースで通う内科の主治医がいる。

私は次に先生に会う時に話してみようと母を落ち着かせた。

何の心配もいらないという態度を見せながら、私の頭の中は、認知症の予兆なのかと不安が横切った。

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