消しカスビート_人参方程式-(ん)

農業高校生、のらりくらりと日々過ごしてます。

僕の母は犯罪者 5 下

2011-01-02 22:27:52 | 僕の母は犯罪者 【完】

件名なし 

送信者 豊田光樹 

日時 2010年11月7日 5:47:45

—蒼空の母さんの名前って何?— 

 

時間が止まったように感じた。 金縛りにあったように身体が動かない。 何も考えられない。

蒼空は携帯を持ったまま、母の思い出を探した。 

なるべく楽しい日々を…… 

数少ない母との思い出を頭の隅から引っ張り出す。 

小学校に入学する前、仕事を休んで、遊園地に連れて行ってくれたこと。 

身長が足りなくて、あまりアトラクションに乗れなかったため、次の日も仕事を休んで動物園に連れて行ってくれたこと。 

ホッキョクグマを見ながら売店で売っていた、アイスの白くまを食べたら、手がべとべとになったような気がする。

些細なことに喜びを感じていたあの頃。

母は最後まで俺のために色々なことをしてくれた。

眠いときも、疲れているときも、母が食事を作らなかった日はなかった。

思い出すのは母の優しさ。悪い思い出なんて浮かんでこない。自慢の母だ。

天井を見上げて、いつの間にか溢れ出していた涙をYシャツで拭う。

「わぁーーーーっっ!!」

叫ぶ。近所迷惑だとは分かっている。

それでも止められない。

気持ちが良い。僅かではあるが気分が晴れる。

黒くなっていた画面を見つめ、それからメールの返信を打ち込む。

あいかわ…相川 る…瑠 い…依…。

相川 瑠衣。

その名前を口にするのは、入学手続きの時以来だ。

この名前を送れば、きっと明日から俺は一人になる。中学生の時に戻るのだ。

母の名前を訊いてきたというのはそういうことだろう。

メールを送ってきたのは、1年生の時、同じクラスだった豊田光樹という男だ。

特に関わりはなかったが、アドレスだけは、周りが教えていたノリで交換していた。

たしか…テニス部だったような気がする。

南松中のテニス部の誰かと連絡を取っていて、俺の母の話を聞いた。その確認。

だが、豊田光樹にそんなことを教えて何になるというのだろう。

否、そんなことは分かっているのだ。目をそらしたいだけで…。

このメールを送った瞬間、学校生活が一変する。

誰も近づいてこなくなる。

 

自慢の母だ。恥じることは何もない。

そう自分に暗示を掛け、送信を押した。

 

全て受け入れよう。

只、前の生活に戻るだけだ。

 

「歴史は繰り返す」とはこのことか

そんな歌詞があったような気がする。

蒼空はふっと笑みを浮かべた。

 

 

うふん。とりあえず。謝っときます。

ごめんなさい。

あ、わたし。ハッピーエンドは書くのが苦手なんです。ごめんなさい。





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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (rose-k. )
2011-01-02 23:05:28
どきどきシマスネ‥続キ読ミタシ…
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Unknown (消しカス方程式)
2011-01-02 23:10:36
あした、また更新します。
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