「なみだ橋を逆に渡る」お互いそう誓って船出をした丹下拳闘クラブだったが、段平の過去の素行により、プロボクシングジムのライセンスをもらえず、明日への夢は暗礁に乗り上げた。
白木ジムは、ジョー、西ともに身請けしたいと提案してきた。このままではプロボクシングができない・・道は一つしかないではないか。決心したかに見えたジョーの前に、たくましくなった力石が現れた。その練習風景をみてジョーの心は決まった。白木ジムには入らない!と。
理由は簡単だ、同じジムの選手同士は試合ができないからだ。宿命のライバル、力石と戦えないのならボクサーになる意味すらない。
段平の説得も振り切り、白木ジムを後にするジョーたち。葉子と力石はさげすむようにその姿を見ていた。
ジョーには考えがあった、誰もがジョーをプロボクシングのリングにあげるしかないやり方が。日本バンタム級新人王のウルフ金串にけんかをうることだ。新人王戦のさなか、試合会場に姿を現したジョーは、言葉巧みにウルフを挑発する。そして、ついに切れて殴りかかってきたウルフに、ジョーのクロスカウンターが決まった。ダブルノックダウンとはいえ、素人が新人王を一撃でKOしたのだ。
マスコミが放っておくはずはない。それをジョーはねらっていた。素人離れした謎の人物、矢吹丈はボクシングライセンスをもらえない、しかもそれに反対しているのはウルフのジムの会長だということをマスコミに知らしめたのだ。ウルフが負けるのが怖くてジョーにライセンスを与えないと邪推を生んでしまうのは困る・・・そして、丹下拳闘クラブはライセンスを取得したのだ。
そして、ジョーと西はプロテストを受けることになった。いきなりB級を申請したジョーは、ボクシングのルールすらしらない。ペーパーテストはぼろぼろ、いきり立ってテストスパーリングをしたものの、むきになって相手を半殺しにしてしまい、テストは不合格になった。しかし、二回目のテストでは冷静に事をすすめ、無事にプロテストに合格した。
合格祝いに、ジョーと西が働く乾物屋の娘、紀子はトランクスをプレゼントした。トランクスをはいて、はしゃぐジョー。紀子のプレゼントがうれしかったのだと、皆に冷やかされるジョーはぽつりと言った。
「おれは その・・・
いままで世の中を渡ってきて・・・な なにをやっても、不合格の烙印を押されつづけてきた。それが・・・け 拳闘だけが俺を合格させてくれたんだ。そ・・・そいつがうれしかったんだ。」
段平もいう
「わしにしたところで同じ事よ。生まれてこの方、つきに見放されっぱなしのようなうらぶれた人生を送ってきたわしが、自分の手で自分の夢を- ともかく、軌道に乗せることができたんだ!
レールに乗せたばかりだから万事これからにせよ・・
どんなに苦しいときも、この今の感激をわすれまいぞ、ジョー!」
「わ、わかってらい」
今日、日本人が好きな英雄100人という番組をやっていた。その中で何位かわすれたが、黒澤明監督がでていた。遺作となった「まあだだよ」の中で老教師が子供達に最後のメッセージを託すシーンをやっていた。正確ではないが、まあこんなことだ
「本当に好きなもの、自分にとって本当に大切なものを見つけてください。見つかったら、その大切なもののために努力しなさい」
というセリフを紹介していた。当たり前のことだが、良い言葉だ。
本当に大切なものを見つけるためには、本当に大切ではない物に目を奪われてはいけないし、本当に大切ではない物はいくら後ろ髪を引かれても捨てていかなければならない。
今の時代、あまりにも簡単に物や事が手に入りそうな幻想を植え付けられ、一度にいろいろな物をもてるような錯覚に陥って、結局は一番大事な物が見極められない、つかみきれない・・そういう時代なのだと思う。
適当に手に入れ、適当に努力し、そこになにが得られるというのだろう。打算、利害、欲得、損得・・そんなものの向こうに何があるのだろう。
すべてを犠牲にして、自分にとって本当に大事な物だけ見据え、それに向けて努力する。そんな当たり前のことが如何に難しいことか・・・
大前提として、すべてを捨てて打ち込める大好きな物に巡り会うことが如何に難しいことか・・それに巡り会えた人は幸いであろう。ただ、それは、すべてを犠牲にする覚悟と引き替えだとも言える。世の中、みんなが、命がけで何かに取り組んでいるような世の中は恐ろしく不気味であるが、そこまで行かなくても、皆が真面目に一生懸命、人と比べることなく、自分の道を地に足をつけて生きられる世の中は素敵だ。そのためには、皆が同じ価値に向かうことをやめなくてはいけない、人と比べる、人をうらやむことをやめなくてはならない。
かつてわしが、自分は運がない、何をやってもうまくいかないと悩んでいたときに親に言われたことがある
「今ある道が自分の道と思え」
そう、自分に言い聞かせて生きてきた。
ちょっとテーマがずれるかもしれないが、後に書く予定の空手バカ一代のアニメ主題歌が好きだ
一番「空手一代、誓った日から、命も捨てた、名もいらぬ。空手一筋バカになり、果てなき修行まっしぐら・・・」
二番「人はバカだと笑おうが、この世に利口はあふれている。空手一筋バカになり、七度転んで八度起き・・・」
三番「醜い利口になるよりは、きれいなバカで生きてやる。空手一筋バカになり、鉄の拳に火のファイト・・・」
このくらいの気持ちで、自分の信じた道を歩いていきたい。