文庫 麦わら帽子

自作小説文庫

あの日の花が、開いた。

2013-05-09 | 小説 花園全集

あの日の花が、開いた。

ささやかで ちいさなものでなければ 
その扉は 開けなかったのです
その幸せに 気付けなかったのです

あなたは 確かな幸せを 私に教えてくれた
それは  壮大な 絢爛な教会よりも
遥かに 絶対的な 確かな幸せを
私に与え給うたのです

花よ 小さき 名もない 花よ
あなたは 母のような 愛でした

次に咲くときは 私の本当の母となってくれますか

そして ささやかな 食事という幸せを
    ささやかな 眠りという幸せを

現実のものとしてくれますか…



わたしは あのあとの雨で枯れてしまったけれど、
あなたを 忘れることができませんでした。
顔は覚えていないけど、
黒い服と 十字架が 似合うひとだったような。

ご飯は食べられましたか?
安らかに毎日を眠れましたか?
お仕事はうまくいっていましたか?

ずっと、ずっと、心配していました。

坊や。
思い出す必要もない、ありきたりの、流れの記憶です。
あなたから流れてきた、微かな、記憶です。

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