ちゃりんこ消えた

愛用していた自転車が、朝起きて窓を開けると消えていた。ごく希に施錠するのを忘れることもあるが、いつも自宅敷地内に置いている。通行人に丸見えの位置だ。
4年前の秋に作曲の賞金で買ったもの。乗り尽くし、老朽化していた。汚れ、ガタも来て、パンクも2度した。金銭的価値はゼロに等しい。そろそろ替え時だった。むしろ廃棄料が浮いたと思えば、そんな自転車を一体なぜ？
放置自転車の処分に税金がかかり、社会問題になっているというのに。確かに放置自転車にはあまり無い型だが…。
個人的に恨みがある者か、熱烈なファンの仕業か？もう買い替えよ、という神のお告げか？

一応交番に届けた。自転車の損失を訴えるため、と言うより、これ以上大きな損害を被らないように。
若い巡査が事実関係を再三確認しながら調書に一字一句、かっちりした字で記すので30分近くかかった。
時価を訊かれ、詰まっていたら、1万円という事になった。あっちこっちに印鑑を押した。初めての体験。

犯罪者までもが僕の作曲に気を遣うのか、追い込みの真っ最中では無く、完成直後の最も弛緩した時期だったことを、だからと言って「不幸中の幸い」程にも感じない。
いそいそと新しい自転車（写真）を買いに行った。僕にとって自転車は生活の足、ストレス解消必需品。今度のは持って行かれないよう、柱につないで置こう。

※同年12月25日、失った自転車が放置自転車として保管されているとの葉書が届いた。
交番に行き、被害届を取下げた。理由の書き方や事件番号の照会のため巡査が警察署に電話し、今度も30分程かかった。