池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

ことごとく琴

2010-03-15 | レビュー/作曲

3月6日(土)洗足学園前田ホールで、現音「箏フェスタ」を聴く。ホールでの3部構成の合間、2度の休憩時にもロビーでエレクトロニクスを用いた作品が1曲ずつ演奏され、計12作品。
新作を聴く時僕が留意するのは、楽器の魅力を引き出しているか、アンサンブルなら編成を活かした音楽か、そして楽器や演奏形態を媒体として音楽そのもの、作曲家の内的存在感のインパクトの強さ…そのための音楽の器が前回はチェロだったし、今回は琴。実際、作曲家の根本的な作風は楽器の違いや編成の大小によって変わるものではない。作曲家は色んな楽器編成やサイズで、言わばひとつの音楽的人生観を構築しているのだから。

岡坂慶紀「風の森」(独奏)/琴にしか作ることの出来ない霊妙な世界に感嘆した。微分音に調弦された楽器から、掌のグリッサンドによって柔らかいざわめきが起こり、爪によって硬質の断続的な祈りが刻印される。極めて抽象化された音楽が、直接感情に訴えた。
夏田昌和「啓蟄の音」(琴五重奏)/鈴なりの風鈴のように美しいヘテロフォニー。これも微分音に調弦されているが、ペンタトニック。微分音は12半音に施すより、旋法に相性が良い。カタストロフィーで沖縄民謡。贅沢な楽器の用法、時間の作り方を堪能した。
三木 稔「カシオペア 21」(琴五重奏)/1) d mollの下行音型、2) 三和音のアルペジオが西洋とは異なる手法でずれる、3) ラ♭ソソソ…等の連打音が様々なピッチで集積し、1) に戻り自由に展開。背景のトレモロのさざ波がきれい。テンポを速めながらのクライマックスなど、西洋手法との折衷による強固な構成。
篠田大介「星月夜」(琴四重奏)/第1曲) 7の和音を多用した色彩的なポピュラー音楽風。第2曲) ラヴェル「マ・メール・ロア」の「一寸法師」のようなかわいい曲。途中、琴を叩く。第3曲) TV主題歌風のA dur。第1曲が一番良い。
蒲池 愛「21st Red Line」(独奏+エレクトロニクス)/大太鼓のような重低音のパルスとホワイトノイズの持続など、定番ながら効果的なエレクトロニクスの用法。琴だけの音楽としても完成度が高い。

他、琴と尺八や三味線、打楽器等の合奏作品もあり、中には芸術作品と言うより楽器の組み合わせのデモンストレーションのような教育的狙いかと思われるものもあった。



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