池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

現代、歌とは

2008-09-13 | 作曲/言葉・声

打楽器を除き、器楽に比べて歌の歴史は長い。人類が誕生してから間もなく歌は生まれただろうし、世界でトップクラスの歌手の歌唱力を紀元前と現代とで比べたら、現代の方が果たして優れているかどうか。歌とは、遥か昔に完成した、成熟しきった表現媒体だろう。それを認めた上で、作曲家はいかに新鮮な歌を書くか。
歴史を遡れば資源の宝庫だ。楽譜が無かった時代の、或いはあっても決して記譜しなかった流派の歌を掘り起こし、五線に記譜すれば、歌そのものと五線記譜法との互換性のギャップから、複雑精緻な楽譜が出来上がる。五線記譜法を前提としたドイツリートなどと比べれば、驚異的なほど新鮮な楽譜だ。
だがこれは創作というより、むしろ聴音の営みであり、そこに創作が入り込めば入り込むほど聴音としての純度は低くなり、折衷的になる。

歌は歌のみにあらず。伴奏と一体となって成立する。
職場のレッスン室の隣から、空き時間に声楽講師が練習しているのが漏れ聞こえる。ロマン派のオペラらしい。その声に合わせ、暇つぶしに僕はピアノの低音域をドロドロ…とペダルを踏んだまま即興的にそっと弾いた。するとどうだ。官能的、サロン風だったロマン派オペラが、シリアスというのでも無調というのでも、現代音楽ですらない、まるで音楽の概念を超えた、命がけの形相の「訴え」そのものに聴こえるではないか!極言すれば、歌は伴奏次第ではないだろうか。
歌を作曲して最も屈辱的なのは、「詩だけ読んだ方がよっぽど良い」と言われること。これは作曲家の敗北を意味する。何しろ今回、テキストの原作は偉大なダンテの「神曲」だから…。
コラボレーションとは、戦いだ。

児童合唱作品「テ・ルーキス・アンテ」初演予定》
―スタンダードな児童合唱とは異なる視点の、21世紀初頭における新たな現代児童合唱の響きを提唱(唱楽Ⅲテーマ)
日本現代音楽協会〈現代の音楽展2009〉第1夜 「唱楽Ⅲ~現代児童合唱の領域」
2009年2月1日(日)(2時開演) 東京文化会館小ホール
NHK東京児童合唱団 金田典子(指揮) 前田勝則(ピアノ)



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1 コメント

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確かに、「詩だけ読んだ方がよっぽど良い」と言わ... (作曲@平良)
2008-09-27 19:09:07
確かに、「詩だけ読んだ方がよっぽど良い」と言われたら、すごい落ち込みそうです。
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