文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫) (文庫)
京極 夏彦 (著)
「漸く死人が生き返った。これで僕の反魂の術は成功だ!」, 2008/9/27 ☆☆☆☆☆
死んで首を落とされたはずの夫が、生き返って家にやってくる。
教会に相談に来た女が仰天するような告白をする。
その告白を聞いた牧師と元精神科医は、それぞれ自分自身の「トラウマ」と対峙せざるを得なくなり煩悶する。
告白を聞いた元精神科医は、木場刑事と榎木津探偵の幼馴染だった。
たくさんの事件と謎が詰め込まれていて、読んでいてあきさせません。
また、本ならではのトリックがあって最後の事件が収束していく様に
「ああ、そうか」
と膝をたたきました。
これだけ厚いのに混乱しないで面白く読み薦める事が出来るのにも感心しました。
面白かったです。
文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫) (文庫)
以下個人的な感想です
お話の重要な部分がわかる記述がありますので、未読の方はご遠慮ください。
小説の語り部が途中で何回も変り
記されている時間も時間そのものを明記せずに
前後させてあるため
ますます、何が起きているか「謎」に思う
という手法でした。
(これは前作と同じ)
この本はそのうえに
二人の女性が同一の名前を名のっている事で
「同一人物」と思い込む混乱がはいっていて面白いです。
画像がないために起きる錯誤で
(アガサクリスティの「パーカーパインの事件簿」に同様のトリックがでてくる)
面白かったです。
そのうえに「不思議な事がありえない」という京極堂の「憑物落とし」によって
合理的な謎解きが待っているので
読んでいて、最後がとっても楽しみでした。
ただ、小説家関口の語りに入ると、とたんに神秘主義風味の、幻想的な記述が長々とつづくのには食傷気味です。
最初の金色の髑髏と、次の色がついていないふつうの髑髏、そして、三度あらわれた肉片がついた首
をいっしょのものとして、恐怖を感じて色々妄想してけっこうページを割いているのです。
その順番なら「それぞれが別物だ」と誰でもすぐわかるだろうに、ナゼ怖がるんだろう。とひっかかっちゃうのです。
今回、関口の語りは最初の宇田川に相談を持ちかけられるあたりでたくさん使われ、物語を京極堂の周辺に引き寄せる重要な導入部をつくっています。
ところが最後は伊佐間の語りで終わるため、
「結局関口は、この事件をどう受け止めたのかな」というのがちょっと気になりました。
第三者なのに「髑髏にかかる不気味な事件」を妄想いっぱいにすごく幻想的に膨らませてずっと語りページを埋めていたのが関口だったのに、解決したあとはその妄想について、どう思ったのかはかかれないで居るためです。
榎木津の馬鹿馬鹿しい発言が、一番自分にしっくり来るので読んでいて笑ってしまいました。
「助けるのはお前だ。それから救うのはあそこにいる牧師だ。治すのはそこにいる変な医者だ。逮捕するのはそこにいる刑事だ。探偵と拝み屋の役目は終わった!」
登場人物が一杯だから、役目も色々あるよね。
以下は個人的なメモです。
武御名方が諏訪に敗走
後醍醐天皇が即位
明治10年 鷺宮宗周が真言立川流のために寺の地所を購入
白丘が子どもの時、骨の入った箱を見せられ4人の神主に脅される。
(白丘のトラウマ)
(神主達の目的 遺骨を集めて武御名方を生き返らせる)
関東大震災 降旗が二子山山中で立川流法界髏を目撃
(法界髏の最中の民江の母を見る)(法界髏の目的 本尊を得 呪術を手に入れ皇位奪回)
宗像民江が鴨田酒造に奉公に出される。(本人は売られたと記憶している。)
南方朱美が鴨田酒造に奉公に出される。
南方朱美が家で祭っている髑髏の話を鴨田酒造で話し、(髑髏1)
立川流の鷺宮周三の耳に入る。
4人の神主の耳にも入る
南方朱美の実家放火(鷺宮邦貴による犯行 南方のご本尊 武御名方の頭を盗む)
宗像民江が誤って佐田申義に髑髏のことを話してしまう。
宗像民江に佐田申義接近(目的 髑髏を使って父親の病気を治す薬を作る)
民江 申義に恋をする。
佐田申義 南方朱美結婚
佐田申義徴兵 脱走
佐田朱美 憲兵に拷問を受ける
民江に(髑髏1)を盗ませて佐田申義が薬を作る。
佐田申義 家に帰り薬を父に飲ませる。
佐田申義 宗像民江と逃走。
佐田朱美 佐田の父を看取る
「4人の神主」のうちの一人(流浪の神人)が、(髑髏1)を追って佐田の家にきて葬儀を手伝う。
佐田申義 宗像民江に殺される 人の気配に民江髑髏を持って隠れる。
「4人の神主」のうちの一人(流浪の神人)が、(髑髏1)を追って佐田申義の遺体発見
頭部(髑髏2)を切り取り持ち去る。宗像民江がその様を見ていて記憶する。
宗像民江(髑髏1)を持って逃亡。
逗子の本山に向かっていた宗像民江が
放浪していた南方朱美と偶然出会い、取っ組み合いになって
二人とも利根川に落ちる。(髑髏1)流れ去る。
宗像民江が作家の宇田川崇に助けられる。
記憶を失っていたため、勘違いで自分が朱美と思い込む。宇田川朱美と名乗る
南方朱美が一柳史郎(朱美を拷問した憲兵の一人)に助けられ結婚する
流浪の神人が(髑髏2)を聖宝院に持っていく
白丘牧師の下で死亡。武御名方の遺骨が白丘の手元に残る
宗像民江の消息を知って一柳夫妻が隣に住む
昭和27年 立川流信徒 二子山集団自殺
宗像民江=宇田川朱美の元に兄 宗像賢造が復員服を着て尋ねてくる。
宗像民江=宇田川朱美は賢造を「佐田申義のよみがえり」と勘違いする。
宗像賢造は宗像民江=宇田川朱美を佐田朱美と勘違いする。
伊佐間 南方朱美と出会う
鷺宮邦貴が復員服を着て宗像民江=宇田川朱美の元をたずねる。
暴行し家を荒らして髑髏1をさがす。
「佐田申義のよみがえり 2回目」と民江は勘違いする。
鷺宮邦貴が復員服を着て宗像民江=宇田川朱美の元を再びたずねる。
「佐田申義のよみがえり 3回目」
民江に殺され頭部を海に投棄される。(頭部切り取りの殺人1)
「佐田申義のよみがえり 4回目」
宗像賢造が送り込んだ人物(不明)民江に殺され頭部を海に投棄される。(頭部切り取りの殺人2)
「佐田申義のよみがえり 5回目」
宗像賢造が送り込んだ人物(矢沢駿六)民江に殺され頭部を海に投棄される。(頭部切り取りの殺人3)
宗像民江=宇田川朱美教会で告白をする。
「佐田申義のよみがえり 6回目」
宗像賢造が送り込んだ復員服を着せられた宇田川崇 民江に殺される。
南方朱美、民江を匿う。
南方朱美が身代わりになって逮捕される。
京極 夏彦 (著)
「漸く死人が生き返った。これで僕の反魂の術は成功だ!」, 2008/9/27 ☆☆☆☆☆
死んで首を落とされたはずの夫が、生き返って家にやってくる。
教会に相談に来た女が仰天するような告白をする。
その告白を聞いた牧師と元精神科医は、それぞれ自分自身の「トラウマ」と対峙せざるを得なくなり煩悶する。
告白を聞いた元精神科医は、木場刑事と榎木津探偵の幼馴染だった。
たくさんの事件と謎が詰め込まれていて、読んでいてあきさせません。
また、本ならではのトリックがあって最後の事件が収束していく様に
「ああ、そうか」
と膝をたたきました。
これだけ厚いのに混乱しないで面白く読み薦める事が出来るのにも感心しました。
面白かったです。
文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫) (文庫)
以下個人的な感想です
お話の重要な部分がわかる記述がありますので、未読の方はご遠慮ください。
小説の語り部が途中で何回も変り
記されている時間も時間そのものを明記せずに
前後させてあるため
ますます、何が起きているか「謎」に思う
という手法でした。
(これは前作と同じ)
この本はそのうえに
二人の女性が同一の名前を名のっている事で
「同一人物」と思い込む混乱がはいっていて面白いです。
画像がないために起きる錯誤で
(アガサクリスティの「パーカーパインの事件簿」に同様のトリックがでてくる)
面白かったです。
そのうえに「不思議な事がありえない」という京極堂の「憑物落とし」によって
合理的な謎解きが待っているので
読んでいて、最後がとっても楽しみでした。
ただ、小説家関口の語りに入ると、とたんに神秘主義風味の、幻想的な記述が長々とつづくのには食傷気味です。
最初の金色の髑髏と、次の色がついていないふつうの髑髏、そして、三度あらわれた肉片がついた首
をいっしょのものとして、恐怖を感じて色々妄想してけっこうページを割いているのです。
その順番なら「それぞれが別物だ」と誰でもすぐわかるだろうに、ナゼ怖がるんだろう。とひっかかっちゃうのです。
今回、関口の語りは最初の宇田川に相談を持ちかけられるあたりでたくさん使われ、物語を京極堂の周辺に引き寄せる重要な導入部をつくっています。
ところが最後は伊佐間の語りで終わるため、
「結局関口は、この事件をどう受け止めたのかな」というのがちょっと気になりました。
第三者なのに「髑髏にかかる不気味な事件」を妄想いっぱいにすごく幻想的に膨らませてずっと語りページを埋めていたのが関口だったのに、解決したあとはその妄想について、どう思ったのかはかかれないで居るためです。
榎木津の馬鹿馬鹿しい発言が、一番自分にしっくり来るので読んでいて笑ってしまいました。
「助けるのはお前だ。それから救うのはあそこにいる牧師だ。治すのはそこにいる変な医者だ。逮捕するのはそこにいる刑事だ。探偵と拝み屋の役目は終わった!」
登場人物が一杯だから、役目も色々あるよね。
以下は個人的なメモです。
武御名方が諏訪に敗走
後醍醐天皇が即位
明治10年 鷺宮宗周が真言立川流のために寺の地所を購入
白丘が子どもの時、骨の入った箱を見せられ4人の神主に脅される。
(白丘のトラウマ)
(神主達の目的 遺骨を集めて武御名方を生き返らせる)
関東大震災 降旗が二子山山中で立川流法界髏を目撃
(法界髏の最中の民江の母を見る)(法界髏の目的 本尊を得 呪術を手に入れ皇位奪回)
宗像民江が鴨田酒造に奉公に出される。(本人は売られたと記憶している。)
南方朱美が鴨田酒造に奉公に出される。
南方朱美が家で祭っている髑髏の話を鴨田酒造で話し、(髑髏1)
立川流の鷺宮周三の耳に入る。
4人の神主の耳にも入る
南方朱美の実家放火(鷺宮邦貴による犯行 南方のご本尊 武御名方の頭を盗む)
宗像民江が誤って佐田申義に髑髏のことを話してしまう。
宗像民江に佐田申義接近(目的 髑髏を使って父親の病気を治す薬を作る)
民江 申義に恋をする。
佐田申義 南方朱美結婚
佐田申義徴兵 脱走
佐田朱美 憲兵に拷問を受ける
民江に(髑髏1)を盗ませて佐田申義が薬を作る。
佐田申義 家に帰り薬を父に飲ませる。
佐田申義 宗像民江と逃走。
佐田朱美 佐田の父を看取る
「4人の神主」のうちの一人(流浪の神人)が、(髑髏1)を追って佐田の家にきて葬儀を手伝う。
佐田申義 宗像民江に殺される 人の気配に民江髑髏を持って隠れる。
「4人の神主」のうちの一人(流浪の神人)が、(髑髏1)を追って佐田申義の遺体発見
頭部(髑髏2)を切り取り持ち去る。宗像民江がその様を見ていて記憶する。
宗像民江(髑髏1)を持って逃亡。
逗子の本山に向かっていた宗像民江が
放浪していた南方朱美と偶然出会い、取っ組み合いになって
二人とも利根川に落ちる。(髑髏1)流れ去る。
宗像民江が作家の宇田川崇に助けられる。
記憶を失っていたため、勘違いで自分が朱美と思い込む。宇田川朱美と名乗る
南方朱美が一柳史郎(朱美を拷問した憲兵の一人)に助けられ結婚する
流浪の神人が(髑髏2)を聖宝院に持っていく
白丘牧師の下で死亡。武御名方の遺骨が白丘の手元に残る
宗像民江の消息を知って一柳夫妻が隣に住む
昭和27年 立川流信徒 二子山集団自殺
宗像民江=宇田川朱美の元に兄 宗像賢造が復員服を着て尋ねてくる。
宗像民江=宇田川朱美は賢造を「佐田申義のよみがえり」と勘違いする。
宗像賢造は宗像民江=宇田川朱美を佐田朱美と勘違いする。
伊佐間 南方朱美と出会う
鷺宮邦貴が復員服を着て宗像民江=宇田川朱美の元をたずねる。
暴行し家を荒らして髑髏1をさがす。
「佐田申義のよみがえり 2回目」と民江は勘違いする。
鷺宮邦貴が復員服を着て宗像民江=宇田川朱美の元を再びたずねる。
「佐田申義のよみがえり 3回目」
民江に殺され頭部を海に投棄される。(頭部切り取りの殺人1)
「佐田申義のよみがえり 4回目」
宗像賢造が送り込んだ人物(不明)民江に殺され頭部を海に投棄される。(頭部切り取りの殺人2)
「佐田申義のよみがえり 5回目」
宗像賢造が送り込んだ人物(矢沢駿六)民江に殺され頭部を海に投棄される。(頭部切り取りの殺人3)
宗像民江=宇田川朱美教会で告白をする。
「佐田申義のよみがえり 6回目」
宗像賢造が送り込んだ復員服を着せられた宇田川崇 民江に殺される。
南方朱美、民江を匿う。
南方朱美が身代わりになって逮捕される。
樽井です。
えへへへ。はまっていてくれて嬉しいです。このあたりまではまだ薄い京極堂シリーズです。この狂骨の夢も面白かったですねぇ、いまだに時々読みます。次の「鉄鼠の檻」もこれ以上に面白いですし、このシリーズは面白いのだらけです。
(トリックについては読んじゃう人がいるので割愛で)
榎木津探偵は、本当に面白いし、かっこいいです。その台詞のあとに「うじうじするのは、そこの猿みたいな男だ」と関口くんのことをあしざまにいうのが頭に浮かぶ様です。
うわー!
樽井さんとは本の趣味が重なるので、きっと次々とはまっていくんだろう、と思います。
面白い本後紹介していただいてありがとうございます。
今、鉄鼠の檻を読んでいます。
お坊さんが廊下を疾走している場面が面白くて
「これ、映画になったら楽しいだろうなあ、映像で見たいな」
なんて思っていました。